Infini-T Forceを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
死に魅入られた我が子を救うため、父は世界を贄に捧げる。すれ違う二つの世界で、すれ違う二つの心。混じり合う思い出と親子の絆が、無残に可能性を噛み砕く。
英雄軍団VSクローンのロマン満載バトルを背景に、物語の謎が一気に深まり感情が動く回。最終話前ってテンションだ!
今回のお話は界堂親子のカフェでのすれ違いと、異世界でのヒーローバトル両方がすれ違い、二軸のすれ違いが同時並列で進行するテクニカルな構成。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
父と娘。個人と英雄。それぞれの思いと戦いは位相がずれていて、顔を見ることも、問題を直接ぶつけて解決することも出来ない。が、つながってはいる。
すれ違っているのに、繋がっている。繋がっているはずなのに、すれ違っている。アンビバレントな心理を反映するように、並行世界設定が紐解かれ、物語への疑問がどんどん氷解していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
なぜ笑は物語の中心にいるのか。ラスボスの狙いは。ヒーローが集結した意味とは。カタルシス満載だ。
まず、娘のいるカフェと父のいるカフェ、二つが重ね合わされた舞台美術がとても良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
都会の中心なのに、誰も客がいない不思議な空疎。滅びきった世界の中で、たった二つ父と娘の空席だけが約束された場所。触れ合いたい相手がそこにいない空虚さが、じわじわ蓄積して最後の笑の訴えで効いてくる。
色んな真実が明らかになる今回、一番重たいのは界堂親子の愛の真実だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
パパにとって、笑は世界の全てだった。笑にとって、パパは世界の全てだった。そういう、世界観が密着して融合可能な、人生のある一時期。
そこで親子が離れてしまった結果、笑は10年間時間を止めた子供のままだし、Zは修羅となる
笑の、そしてZの胸を埋めていた、真っ赤な太陽の世界。全てが充足され、幸福だった時間の描き方がとても見事だったので、それが失われたあとの空疎も、視聴者の胸にスッと届く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
大きくて熱くて赤いものが失われたなら、世界は空っぽに冷えていく。世界を食い殺してでも、感情の熱的死を埋める欲望。
大人であるZは、笑を置き去りにしても笑を守る、ヒロイックな別離を選んだ。世界全てを贄にして、娘の命を守る父親の決断をした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
心の隙間を奪って埋める。それは自分で生き方を決め、それを世界と他者に押し付けることが出来る、大人の選択肢だ。是非はともかく。
子供である笑は、大人が選んだ選択を前にただ座り込み、置いていかれる。自分で選んで、道を切り開く力も権利もないまま、パパのいなくなった冷たい世界をただ受け入れるしか、道がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
10年間凍結された心はすっかり冷え切って、なかなかのクソアマを醸造した。まぁ、アレは歪むわ。
笑の生死は世界全てを捧げた大きなものであると同時に、Zの個人的な悲願に支えられた個人的な体験であり、同時に笑個人の尊厳でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
第1話で描写された無謀な運転は、笑が無意識に『死ぬ権利』を父に問い、あるいは父の愛を試していたようにも見える。
お父さん、私のために殺して、守ってくれる?
無論、父は三千世界を殺し、娘を活かし続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
今になって思うと、あのバイクでもろっと死んだ世界も、当然存在してるんだろうなぁ…。
可能性の枝を切り落とし、笑が生きる唯一の世界だけを残す剪定の衝撃。『牛乳の世界』と『コーヒーの世界』の幻想的な重ね合わせは、とても効果的だった。
笑とZの世界は物理的・設定的に切断されているわけだが、身体的・心理的にもズレている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
今回の対話に退屈しないのは、無論絵的なワクワクを随所に埋め込み、合間合間にバトルが入る構成もあるが、設定語りにキャラクターの感情や価値観がしっかり入り込んでいるからだ。
Zにとって『生きる』とは『死なない』ということだ。世界による連続差殺人の当事者ではなく、それを防ぐ探偵役であるZ。彼はあくまで観察者であり、その立場から笑の生存を考える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
生きて、生きて、生きつづけることが幸福なのだと思いこんで、世界を砕いて娘を延命する。
だが笑にとって、『生きている』ということは『死んでいない』ということと同質ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
パパを奪われたまま、冷たい世界で実感なく息をして、ただ生き残る。それは『死んだも同然』の生だ。それを断ち切りたくて、笑はバイクで死を遊び、父を試した。…背教者と神の関係みたいだな。
ただただ娘の生存を望む、傍観者としての父の愛。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
自分が当事者である生に、熱をとりもどすためなら命をチップにすることも厭わない、娘の願い。
今回一番すれ違っていたのは、『生きる』という現象の解釈であり、人生の当事者と傍観者という、立場の違いだった気がする。
笑にZが押し付けた、実感なき冷たい生。彼の魂の根源、ヒーローとしてのオリジンが『太陽』であることを考えると、二つのカフェの空疎な雰囲気はとても皮肉だし、良く効いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
ああいう情景から始まったはずなのに、何故かとても遠い、正反対の場所に流れ着いてしまった。どこで間違えたのか。
Zが笑の『生の実感』に無理解であるように、笑もまた父の愛を解しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
世界全てを贄にしてでも、娘を活かし続ける。修羅の決意はあくまでZ個人のものであって、それを向けられる笑には受け入れられない。お互いがお互いを思っているはずなのに、触れ合えない対話。
笑がZを指弾する時、あって当然の『貴方が殺した人たち』への言及はない。それはむしろ、当然だと思う。10年間時間が凍っていた笑にとって、そんな大きい他人事は実感がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
あるのはまず、置いて行かれた自分の痛みと、10年の間に知らず伸びてしまっていたプライド。その個人主義は、誠実でもある。
いかに歪んだ発育/未発達を経験したとは言え、笑は10年間生き延びてきた。パパのいない世界で、不本意ながら積み上げてきた経験と自負は、『私が私の生き方を選ぶんだ』というプライドを育んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
どんなに歪でも、その成長を大事にするから、ケンは笑を指弾する仲間を最後のシーン、止めたんだと思う。
Zの中の笑は、あの太陽の中で微笑んだ小さな天使のままだが、実態としての笑はボンボーンの究極ボディの中に、クソガキ精神を詰め込んだクソアマだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
父が持つ『守る/支配するべきか弱い娘』イメージと、娘が持つ『自分で決める大人』という自意識のズレも、あのカフェですれ違ったものなのだろう。
かのように、設定的/世界的/身体的/精神的にすれ違う親子を描き続けるカメラは、そこで足を止めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
空疎なすれ違いと裏腹に存在している、確かな絆。今も自分を動かす美しい思い出が、二人を繋いでいることもしっかり切り取っていく。その矛盾した思いの描き方が、今回とても良い。
10年の不在ですっかり冷えてしまった笑だが、Zの指摘通り胸には太陽が焼き付いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
去ってしまったパパの愛を再獲得したいから、空疎な現状を否定するべく自分を強く固めあげる。『世界に愛とか希望とか、パパが代表していたものなんてないんだ。ヒーローなんていないんだ』と思い込もうとする。
笑のニヒリズムは子供の自己防衛であり、同時に叶えられない望みを忘れるための麻酔でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
Zが見せた赤い光景は、その鎧と麻酔を引き剥がし、むき出しの笑を呼び覚ますパワーが有った。本当の願いに触れられたからこそ、笑は父にコードを預けてしまったのだろう。
パパ、私を守ってくれる?
『ちっぽけでも本当の願いを叫ぶことが、人間の生き方なんだ』と。テツヤは第5話で言った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
『胸が動くから、俺達はヒーローなんだ』と。タケシは第6話で叫んだ。
界堂親子の原風景、美しい望みと魂の躍動を生み出す場所を描く今回は、彼らが『ヒーロー』であることを確認する回でもある。
しかし未だ物語の渦中にいる彼らは、自分たちのヒロイズムを完走しきれていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
未熟で、思いやりがなく、自分勝手なただの人間として、誰かを傷つけ殺しながら、必死に走っている最中だ。
そういう風に、完成への契機と未完成な実態を同時に見せてくれたのが、凄い良かった。『まだ7話だ』って感じ
ラジャ・カーンが否定した『笑の未来』を、父たるZは当然肯定する。『拗ねた子供』でしかないってことは、道を見定め『いい大人』になる可能性があるってことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
笑のヒロイズムは、特別なパワーであるケースを失った今回から、本格的に駆動するのだろう。その時対峙するべきなのは、やっぱパパなのだ
守るべきものを抱えた『大人』として、多世界規模の大量殺戮者であることを選んだZに『未来』はあるのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
ヒーローを皆殺しにし、笑が永遠に生存し続ける歪な世界の剪定を続ける『未来』は、あまりに身勝手だし被害も大きい。
それ以外の道を、修羅と化したZ自身は選べなくても、見つけること。
それがヒーロー・界堂笑の物語であり、10年間時間が凍っていた女の子が、自分の人生に太陽を取り戻すために必要な戦いなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
世界設定的にも、キャラクターの心情的にも、これは笑自身が闘うしかないし、一人では戦いきれない闘争だ。こういう当事者性の獲得法、ほんといいと思います。
笑が追求しなかった、滅ぼされた世界と人命へのZの責任。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
これを問うことが出来るのは、当事者として自分の物語からはじき出されたヒーロー達だ。
今回は親子の共感と離別をしっかり追う回なので、ヒーローとZは物理的に遭遇しない。そこ触ってると軸がブレるからな。
物語的な足止め要請を、テキトーなイベントではなく大興奮のバトルに仕上げるサービス精神も、今回全開であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
コピー軍団は人間的対話はしてこないが、それを補ってあまりうる浪漫がある。バードランを使いこなすポリマー、テックランサーを振るうキャシャーン!
夢のクロスオーバーを『敵』にやらせる所がニクいが、足止めされるのに十分な説得力(何しろ敵は自分自身だ!)があったし、殺陣の組み立ても凝っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
比較的生身に近いケンが、ハメ技でダメージを入れて、それを敵が返して、最後は自分たちがキャシャーン地雷でハメ返して勝利。素晴らしい。
前回の能力封印知略バトルもそうだが、毎回色んなバトルを組んで飽きさせないよう工夫してくれるのは、とてもありがたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
『あのヒーローが、現代風の装いで復活!』の興奮を一通り堪能させた後は、チームバトルの楽しさとか、素裸の謀略戦とか、俺VS俺とか、ちょっとヒネって味変える。素晴らしい。
バラエティ豊かなアクションの中に哲学があって、毎回それを確認するのも強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
やっぱり一人で戦ってるときはピンチになって、力を合わせると状況が改善する。『ヒーローの力は団結の力』てのは、ずっと継承されている描写だ。
こうやって汗と肉で裏打ちすることで、題目は説得力を持つのだなぁ。
そんなわけで、世界設定の開示、主役と対応するヴィランの間にある空疎と情熱、失われたものと奪われたもの、ヒーローVSヒーローの熱い闘い、いろんなものを詰め込んだ欲張りキング回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
まゆしぃ役の花澤さんが出てるんで、Zが堕ちきった岡部くんに見えたよ(シュタゲ大好き人間)
愛と正義故に、人は世界を殺す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
Zの凶暴なヒロイズムも、ここまでヴィランを『ヒーロの鏡』として描いてきたITFの筆を引き継いでいる。魅力的なヴィランと対話することで、レジェンドヒーローがどんなか答えを出し、どんな熱量を放散してきたかを思い出せば、未来への期待は跳ね上がる。
ストレスだった笑の冷たさの起源も見え、それを乗り越えるための道筋も見えた。その困難さ、込められた情と業の濃さも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
険しい道を乗り越えてこそ、果たされた成長と勝利は輝いて見えると思う。物語への期待をグンと跳ね上げ、ここまでの描写に納得を与える。素晴らしい回だったと思います。楽しみ。
しかし、父を失って以来喜怒哀楽の『怒』だけがあった笑に、最初に獲得されたのが『哀』の涙だというのは、面白い運びだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
愉快なヒーロー軍団と同居し、日常を共有することで『喜』や『楽』も再獲得されつつあるんだけども、それは未だ笑を別の場所に開放するほど、強い感情ではないのね。
『感情を奪われた機械』というのはキャシャーンとも通じる属性で、『父との確執』はガッチャマンにも響く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
こういう風にレジェンドヒーローと共鳴する要素を埋め込みつつ、あくまで笑個人のヒロイズム、幼児期で止まった時間を再動させる人生の苦闘として、当事者性を持って話を進めているのが良い。
この話は笑が、心から笑えた太陽と、それを形にする鉛筆を取り戻すまでの物語なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
そしてそれは、彼女一人の戦いであると同時に、一人では絶対勝てない戦いでもある。あんだけクソアマだと、自力更生は絶対ムリだ。
なので、レジェンドヒーローの助力が(武力的にもモラル的にも)必要になる。
新主人公であり、守られるべき弱者であり、自分の道を選び直す新米ヒーローであり、世界を滅ぼしかねないヴィラン候補でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
タツノコ・ヒロイズムを再話するこのアニメの中心として、笑はとても良いキャラクターだと思う。彼女の英雄譚が始まる瞬間を、心から待っている。
あと、子供の笑たんが本当は求めていた『パパとの接触』を、クソウザイ昭和のオッサン・ガッチャマンがズカズカ踏み込んで満たしていく構図は、とても良いと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
Zとケンも『父』として鏡合わせ。『子供』の笑を両方大事にしつつ、自尊する『大人』としての部分を許容できてるかが、二人の違い。
『触らないで! でも触って! 私に優しく気を使って、心の底から求めるけど正しく突き放して!』っていうクソ面倒くさい要求は、人間みんな口では言わないけども望んでいる、根源的な矛盾だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月14日
そこら辺に折り合いつける方法を、10年間の孤独は教えてくれなかったんだなぁ。頑張れ笑、大丈夫だ