ハクメイとミコチを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
夜汽車の度は釣り場に続く。雰囲気極上のナイトツアーから、少しギクシャクした釣り旅へ。ハクメイとミコチの休日は、夜気と雨音に包まれて複雑な色合い。
どっしりカメラを据えて、ゆったりした時の流れ、漂う旅情を切り取ってくれる雰囲気回。パートナーシップの描写も良し
というわけで、原作でもいっとう好きなエピソードを、完璧にアニメ化してくれた回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
作り込んだ美術、冴え渡る音響。焦りのない筆致で旅と釣りを描き、キャラクターが包まれている世界の匂いを伝えてくれる運び。求めていたものが、ミットの真ん中にズドンと飛び込んできた。最高。
今回は趣味…というか『楽しみ』の共有が話を貫通していて、Aパートは風景に食事に、旅という時間そのものを共有して、二人は公平に楽しめている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
しかしBパートになると、永遠の少年ハート・ハクメイくんが釣りキチ大興奮して、ミコチは置いてけぼりである。完全に旦那の趣味に付き合う奥さん。
ここの落差をつけるべく、Aパートは二人が一緒に楽しめるものが画面に満ちる。暖かな食事、何度もお代りされるホットな飲み物。移り変わる景色、旅それ自体。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
抜かりなく小物を設定して、ノスタルジーにエンジンと車輪を付けたような夜汽車の存在感が、エピソードを分厚く支える。
列車の巨大感、なにかすごいものが動き出すワクワク感をしっかり作り上げて、しかし車窓から見えるのは『樹』ではなく『草』である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
このちょっとした酩酊感が、異界を旅するハクミコとのシンクロ率を上げ、エピソードにぐいっと引き込む。ここら辺の腕力ある静かな演出は、流石の一言。
サイズ感を大事にしつつ、嘘つくところではちゃんと嘘をついていて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
雨粒は人間が見ているサイズに縮小して、異物感なく無視できる程度に抑え込む。表面張力考えるとデカくなるはずだけど、それだと『風景』じゃなく『脅威』になる。悪目立ちだ。
『雨』も『夜』と同じく、旅を彩る小道具のひとつ。それをどうやったら使いこなせるかを考え抜いて、描写のピースをはめていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
異世界の異質さと共通点を、どう作り上げてどう魅せるか。ファンタジーを加速させていくのに必要な心遣いが、画面中に満ちるような旅路である。ありがたいなぁホント。
移動する列車に乗って、時間もまた遷移していく。肌寒い深夜から薄暮を経て、次第に朝ぼらけ。道行きを暗示するように雲がかかって、雨が降る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
しかし天井がある間は、雨もまた眼の養いである。自分が直接打たれ、興味もないのに長々歩く内に、曇天が恨めしくなってくる。
作中のイベントが派手には動かない分、時間と空間の移動は非常に丁寧に、繊細な移り変わりを宿す。ここで移り変わりをナイーブに、楽しく描いているからこそ、Bパートでミコチが置いていかれる停滞が、ズシンと響く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
セリフにする部分、しない部分含め、よく出来た構成である。
元々メシがヤバいアニメだが、今回は夜の気配の描写がうまく、つまりそれを跳ね除ける暖かさの描写も刺さる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
サクサクの揚げ山芋、マズいけど旨いコーヒー、見た目のキレイな丸茶。旅路特有の、ちょっとスペシャルな食料達が、素敵な顔でこちらを睨む。腹減るなぁホント…。
旅を彩るサブキャラクターも魅力的で、一瞬でキャラ立てるみーちゃんと先輩、清川さんの声がベストマッチな爺ちゃんと、道連れもいい顔をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
景色や食事だけでなく、人と出会えるのも旅の醍醐味。そういう喜びを、実際の描写に乗せて無言で書ききる腕前が、このアニメにはある。
朝の市場で『布』にこだわるミコチが、微笑ましくも未来を予感させていて良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
ミコチにとっての『布』が、ハクメイにとっての『釣り』だ。片方は『あとで』なのに、もう一方は『今、一緒に』である。ミコチのぶんむくれも、不当な感情ではなかろう。
いつもは目のいいハクメイも、釣りキチ本能を刺激されては配慮が鈍る。『付いてきてくれたんだから、楽しんでくれるはず』という予断を載せて、奥さん置いてけぼりで大興奮である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
『釣り』っていう題材が、絶妙にすれ違いを納得させる。まぁ少年ハートがないと、そこまで面白くもないよな…。
可愛いかっぱを着て、雨の中釣り糸を垂れる。時刻は昼になっても、まだ寒い季節。灰色の世界に積み重なる重たさが、口には出さないミコチの心情を巧く推測させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
今回は上がり調子も下げ調子も、キャラの心に視聴者を乗っける運びが非常に鮮明、明瞭であった。演出の腕が良い。
ハクメイが突っ走らないと話が最後まで行けないので、彼女は今回盲目だ。しかしミコチのやるせなさを、誰かが拾ってやらないとちょっとシンドい。なので、爺ちゃんが言葉をかけて、その重荷を一瞬、軽くする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
釣り小屋での会話が巧い息継ぎになって、話が重くなりすぎない。上手いタイミングだと思う
灰色の世界に、椿花の赤。色彩の対比も鮮やかに、ミコチが本心を口にする頃合いを予言する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
本音はいつでも、赤い色をしている。それでパートナーを傷つけないよう、ずっと黙ってついてきたけども。それでも、ちゃんと言葉にしたほうが良いと思ったから、ミコチは『つまんない』と言う。
ここまで付いてきたミコチも、それでも溢れる本音を受け止めるハクメイも。二人の関係性は悪いものじゃなく、それは『つまんない』が表に出ても変わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
むしろそれを言葉にしたことで雨は上がり、日がさす。円満のコツは、溜め込みすぎず共有すること。不満も喜びも。
かくして旅は終わり…と思ったところで、デカい獲物が引っかかって、なれないミコチはバラす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
釣りは坊主に終わったが、水に落ちかけたミコチといういちばん大事な獲物は、きっちり両手で拾い上げる所がハクメイのハクメイ力である。スパダリかよおめー。
逃した大きな獲物は、老練の釣り師がキッチリ陸に上げる。釣り上げることではなく、逃がすことでミコチの釣りキチ少年ハートに火が入り、『つまんない』は『今度、また』になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
自分が楽しい遠い釣り場ではなく、身近なマキタナの延長線上から、じっくり始めればいい。
釣って楽しいハイ次も、ではなく、逃した魚のデカさが燃料になって、胸の釣りキチ列車が走り出すオチにしたのは、ちょっとビターで深みがあって、このお話にふさわしいなぁと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
成功の体験だけが、何かを動かすわけじゃない。『つまんない』を共有できることも、二人の絆を強くしていく。
そんな感じの、ハクミコ夫婦旅行でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
お互いがお互いを思いやるしっとりした空気を、たっぷり胸に詰め込めるAパート。それが釣り場の興奮で一回流れて、もう一度別の形で詰め直すBパート。
それそれの魅力を引き出しつつ、お互いの強みも存分に暴れる、いいエピソードでした。
色彩の感覚が非常に良くて、夜闇の中で光るオレンジの炎、次第に開ける薄暮、朝霧を吸って光る緑。曇天のねずみ色、そこに映える椿花と、色が旅情を掻き立ててくれました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
あえて生活音を強めに入れる音響も、旅路の特別さを際立たせてくれて、非常に良かった。全方向で日常をやりきる気概。
仲良しな二人にも当然ギャップはあって、すれ違いも起きる。それを受け入れた上で、どうやって『つまんない』を共有し、可能であれば『面白い』に変えていくか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月23日
ハクミコの距離感がどうやって培われているか、その魔法を確認するような、素敵な旅でした。最終回何を語ってくれるか、とても楽しみ。