ルパン三世PART5を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
怪盗紳士は、異国に倒れ伏す。
国を背負って矢を放つ決意。男を抱きしめ戦い抜く決意。クーデターの渦中で、女たちの意志が火花を散らす。
学校では教えてくれない悪党教育は、血と涙をペン先に浸して続いていく。生死の間で、少女は一体何を学ぶのか。
というわけで、腹ぶち抜かれたルパンをお荷物に、不二子とアミのふたり旅なお話である。ドルマ王女とマクガイヤの関係も見えてきて、女の意志がクーデターを貫く縦軸になっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
ルパンに守られるだけだったヒロインから、自分の腕で未来を切り開く悪党へ。アミの修行時代はなかなかハードだ。
アミはルパンに憧れ、ルパンになりたいと願う少女だ。しかしそのルパンは、今回徹底的に無力である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
腹をぶち抜かれ、痛みと寒さに怯える。赤ん坊、あるいは『女』の記号を背負うことで、世紀の大怪盗はちっぽけな存在に成り下がる。甘えることは出来ない。
原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV pic.twitter.com/gc6bZu4ah1
EP1ではアミを檻から出し、希望を与えていたルパン。EP3でアミを成長させるのは、不二子の仕事になる。その仕事をさせるために、ルパンを無力な状態に落とした、とも言えるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
元気だと、ゴエちゃんが悩んでたように一人で何でもやっちゃうからね。
不二子は女なので、アミとは恋仲にならない。ルパンにアミが見ている不正、あるいは性的アピールから遠ざけられていることで、不二子はルパンには与えられないものをアミに与える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
憧れ、共感、あるいは嫌悪と反発。色んな感情があって初めて、少女は悪党になりうる。
アミが獲得していく感情と能力の多様性を反射し、不二子もまた多彩な顔を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
ルパンを軽々抱えるタフさ、修羅場に動じない強さ。震えるルパンを裸で温める優しさ、偽悪で自分を覆って囮を演じる強がり。
そして、失ってしまった初恋の甘さ、
アミは裸のルパンを前に赤面する。自分の中の性欲を巧く乗りこなせない。状況がラブコメやってる場合じゃないのに、年相応の反応を返す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
一方不二子は冷徹に腹の穴を塞ぎ、ルパンの命を救う。裸になってもセックスはせず、奪われた体温を補う。アミが踊らされているものを、自在に乗りこなす。
サイドカーの運転席に不二子が乗っている描写。あるいは、不二子が命じた『扉を閉じて』というオーダーをアミが守らなかった結果、軍に包囲される展開。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
制御権はあくまで『大人の不二子』にあり、アミはその姿を遠くに見つめ続ける。それはEP1でルパンを見ていた視点と同じ、子供の視座だ。
腕利き、腕前。”腕”という言葉にはプロフェッショナルの証明という意味もある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
今回アミは不二子の腕、あるいは自分の腕を見つめるシーンが多い。ルパンが死にかけている時、何も出来ない自分の前に突き出された不二子の太い腕。
原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV pic.twitter.com/sFOl35tXnN
あるいは、手榴弾で命を奪った自分の腕。クーデターの渦中で、アミはプロの腕前、そこには届かない自分の無力さ…と、そこから出つつある自分を認識していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
不二子が『相棒』と声をかけた時、アミは悪党の、殺人者の自分を肯定する。暴力は防衛力でもある、と。
原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV pic.twitter.com/yscAolXzPo
アミがチャイルドポルノの被写体(候補)であり、誰かの腕に蹂躙されるばかりの存在であったこと、セックスを他者から強要される立場であったことを思い出すと、レジェンドビッチの腕前を至近で見ることは、過去から脱皮するための儀礼であることが判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
そこに殺人を含むのが、PART5らしい血生臭さだ
アミは不二子を通じて、あるべき自分の姿を確認していく。タフで、セックス(に付随するエゴ)を制御し、油断なく力強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
腕一本で人を救い、人を殺せる孤高の悪党。怪盗紳士がなかなか見せてくれない本音の部分を、恋敵はしっかり教えてくれる。そんな二人の関係は、見ていてとても面白い。
複雑さを学んでいるのは、若いアミだけではない。アミの甘さ、純情、ひたむきさはかつて不二子にもあったものであり、それを切り捨ててプロになったものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
遠い日の熾火のような荒々しい感情は、しかし消え去ったわけではない。クーデターの渦中で、初恋が灯る。
海賊に扮した過去の思い出は、果たして誰が見ていたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
肌と肌を通じて、かつて一緒に死のうと(そして生き延びようと)誓った二人が、同じ床で同じ夢を見ていたのではないかと思うのは、過剰なロマンチシズムか。
ドルマに裏切られ、それでもドルマを思うアミの関係は、不二子とルパンに似てないか
激しさを増すクーデターの中で、悪党たちはより感情的になっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
冷徹なプロの立場からはみ出す(あるいは感傷に満ちた少女から脱皮する)ことが、物語の核心にたどり着くためには大事なのだろう。
感情の熱量を制御しつつ、無視はしないこと。”らしく”ない自分を認め、時に暴走させること。
不二子はアミを見守り、ルパンを抱きしめる中で、そういうルールを思い出したのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
敵であり、味方であり、恋人であり、子供でもあるような不思議な男と、自分自身の関係。それを確認しなければ一歩も進めないところへ、自分を投げ出す気になれたのは。
やっぱアミがいたからだと思う。
不二子が”血と涙の雫”を盗み、これ見よがしに胸元に飾っているのは何故か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
お宝とあらば何でもつまみ食いしたくなる、強欲なビッチだからか。クーデター軍という巨大な暴力を、自分に引き付ける狼煙にするためか。
その心理は語られないので、視聴者が想像するしか無い。そういう書き方が好きだ。
寒い寒いと震えるルパンを、その豊かな肉体で抱きしめる。不二子はアミだけでなく、ルパンにとっても『母』となるわけだが、アミはその決定的なシーンを夢うつつで見る。セックスに接近しつつ、セックスに接触しない大人の関係は、おぼろの中で曖昧だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV pic.twitter.com/ibu0RemyKL
そのおぼろげなフィルターが、アミが身を置く青春気の迷いを、巧く表現しているように思えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
すでに自分のスタイルと答えを見つけてしまった『大人』は、アミからはまだまだ遠い。アミはPART5全部を使って、自分なりの答えを出さなきゃいけないのだから、今は曖昧でいいのだ。
いつかアミが、自分の恋心とか殺意とか憎悪とか欲望とか、そういう全部をひっくるめた素裸の自分自身を見つけた時。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
今回ルパンと不二子の裸身を覆っていた曖昧さは晴れて、彼女は己と、己を取り巻くセックスを透明に見つめることが出来るだろう。
自分ガルパンとどうなりたいか、不二子をどう思うか。
その距離感が鮮明になるまでが、PART5におけるアミの物語なのかもしれない。そこで不二子が強い存在感を放っていること、(反面)教師としてタフな仕事をしていることが、彼女が好きな僕には嬉しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
そんな”プロ”の不二子もまた揺らぎ、血と涙を隠していることが、編みの物語を通じて見えるのも。
アミの成長を照らすもう一つの光は、ドルマ王女から伸びている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
学舎でのんびり友情出来ていた過去は、けして嘘ではない。それでも、友情よりも大事なモノを鏃に乗せて、王女はルパンを撃った。
誇り、決意、あるいは忠誠。ドルマ王女もまた、自分の”腕”で震えながら未来を探す存在だ。
便利な舞台装置かと思ってたCIAエージェントが、凄い勢いでエモさと真実の名前を獲得しキャラ立てたのは、なかなか痛快だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
失われた祖国、略奪された過去と純情。アミと不二子が相互交換しているノスタルジーを、王女とエージェントもまた共有している。
国を変え、理想を突き通す。己に誇れる己になり、その腕で未来を掴み取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
アミと王女は、共に青春の息吹のただ中にいる。だからこそ、どれだけ思い合っても譲れないものがある。その的になったルパンはご愁傷様だが。麗しい友情のキャンバスに慣れて、色男冥利には尽きるわな。
ルパンが無力化され、不二子と共に走る中で、アミは譲れない自分、悪党のスタイルを実地で学習した。タフに、プロになってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
その力強さだけが、王女の抱えるシリアスな問題へのパスポートになる。学園で友情ごっこしているだけじゃ、国を思う親友の心は盗めない。
おそらく次回がEP5ラストだろうが、アミと王女のダンスはしっかり描ききって欲しい。二人の未来を力強く描くことが、彼女たちを見守った大人たちの生き様を、より強く輝かせることになるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
不二子がいろいろお世話した成果を、アミには思いっきり見せて欲しいところだ。
個人の感情と成長が渦を巻く中、クーデターは勝手に加速する。悪巧みは積み重なり、裏切りと出し抜けが錯綜する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
旧弊なクーデター軍をビッグデータの暴力で殴りつけ、あざ笑うかのように飛行船が飛ぶ。国家の軛、感情の重さから無縁なメガコーポが、PART5の黒幕…になるのかな?
既存の秩序に不意打ちかましたつもりのクーデター軍は、情報インフラに毒を仕込んだ企業に出し抜かれている。知恵者たちのチェスゲームに、ルパンはどこで一撃かますか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
最後に笑うのは誰か、そもそもこの混乱の狙いはどこか。そこら辺も、終盤への布石かねて来週見えるところかな。
不二子ちゃんに見せ場を譲る形で、すーっかり弱ったルパン。大逆転に向けての”タメ”だとは思うし、色んな顔が見れて楽しいけれども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
矢を抜く手術が擬似的なホモセックス(あるいは出産)のイマージュに溢れてて、エロティックでいいなと思いました。PART5は時に露骨に、時に隠微にエロスを使うね。
あんまりルパンが音沙汰ないんで、ゴエちゃんが不安になってたけども。クーデターの中で今回の悩みを回収するのなら、これは”ルパン一味”への根本的なアンサー足り得るので、非常に楽しみ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
『私たちって、一体ルパンにとってなんなの?』と聞くのは、不二子だけの特権じゃないわけだ。
そこで”ルパン”を再定義してくるのは、やっぱPART5らしいなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
今まさにここで『ルパン』をやる意味。肥大化したイメージを切り裂いて、真実”ルパン”だと思えるものを掴み取る意志。
それがあるから、PART5は幾度も、いろんな形で”ルパン”を問う。そして答える。
未熟なアミが、失敗したり赤面したり殺人したりしながら、一端の悪党(”ルパン”に連なるもの)に成長しているのも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
ハードな事件の中で、ルパン一味が己の関係性を問い直すのも。
ゲストキャラクターを鏡に、様々な角度から”ルパンらしさ”を再描写するのも。
PART5らしくて、僕はとても好きだ。
EP3もまた、様々な問いと答えに満ち、そして独立したストーリーとしてとても面白い。若い二人の友情は、国を背負ったクーデターは、一体どこに行き着くか。とてもワクワクしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
『初恋の話をしよう』というタイトルが煮えすぎてて、期待が高まる。それは不二子の? はたまたアミの?
今回初顔合わせのメンバーも、”ルパン”を体現するおなじみのキャラも、両方大事に進めているPART5。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月17日
次回描かれる『初恋』も、魅力的な多層性をしっかり折り込み、豊かなものになってくれると良い。友情や忠誠という名前の恋なら、王女とアミ、王女とダヌーもそうか…。
来週も楽しみですね。