ヤマノススメ サードシーズンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
街が魔法をかけてくれないなら、山に頼ろう。素敵な景色、特別な空。みんなで手をつないで支え合い、手に入れる素晴らしい景色。それさえあれば、すれ違った心も繋がるから。
そんな望みをかけて挑む瑞牆山-金峰山縦走。
でも、ただ登るだけじゃ魔法は遠い。
というわけで、ひなた迷妄編決着ゥゥゥッ! とはいかない、山登り前半である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
考えてみれば第7話から、ひなたの重力はジットリと軋んできた。シリーズの半分くらいは、重たく暗く隠微な空気を描き続けているわけだ。なかなかチャレンジブルな構成だと言える。俺は大好きよウン。
超絶美麗な美術が唸る、久々の山回。そんな特別な景色もひなたのわだかまりを解消はせず、むしろ加速させていく。むっつりとふさぎこんだ感情は出口を見つけられず、独走する足はズキズキ痛む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
セカンドシーズンであおいの富士登山を失敗させた状況が、主客を変えてひなたを襲う、とも言えるか。
山に登る前から、ひなたとあおいの間には暗雲が立ち込めている。空は秋晴れながら、二人の周辺はじっとりと影が差して色彩が重い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
あからさまにひなたの主観で世界を染めていく心理主義が、湿度高くていい。
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二人の気持ちは寄り添いつつすれ違い、交わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
橋桁を巧妙に使った境界線の描写。言えないままかぶってしまったすすきの木菟は、『目なんか合わせてやるもんか』とばかりにそっぽを向いている。
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当たり前に過ぎ去る、幸福な学生時代。そこに不穏な空気、別離の気配を執拗に埋め込んでいくスタイルは、サードシーズン後半を貫通するものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
ドラマはあらゆる場所にある。目立った理由もなく、だからこそ行き場を見つけられないひなたの思春期は、ありきたりだからこそ確かな質感を持っている。
そんな特別性を際だたせるように、バキッと攻めた画角が顔を出す。フツーの生活を追いかけてるはずなのに、時折カメラアングルがキレ過ぎてて、サスペンスの空気になってる所が好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
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特別な筆でじゃないと描けない、"当たり前"に潜んだ淀み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
後に孤立するひなたを暗示するように、彼女の荷物は反対側の座席に置かれている。
体は一緒にいるのに、心が混ざり合わない、混ざり合えない不自由さ。それは八高線始発の孤独な風景の中に、すでに描かれているわけだ。
手すりから延びる線が、明瞭にひなたと三人を切り離すレイアウト。窓ガラスに反射した自我は肥大化して歪み、過剰な言葉となって飛び出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
明確な理由のない苛立ちは、ひなた自身にも制御しきれない。
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ドッペルゲンガーに追い立てられるようなすれ違いだが、元を探れば愛と友情に行き着く。あおいとここなが遅刻したのだって、"みんなのため"に料理の仕込みを頑張ったから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
ひなたが苛立ちを貯め込むのも、あおいが自立し自分が"特別な一人"でなくなってしまう恐怖…愛の裏返しからだ。
重要なのは、そんなあおいの自立はひなたの支援と愛あっての結果だ、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
あの子にもっと笑ってほしくて、背中を支えた。世界を広げ、一緒に見守り、共に歩いた。
なのに、その果てにたどり着いてみると寂しい。人間心理は複雑怪奇である。
人格強者にみえたひなたもまた、あおいが思い悩んだのとはまた別の方向でウジウジして、当たり前に高校二年生であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
サードシーズン後半戦は、等身大のひなたにどっしりカメラを据え、その迷いと成長を描くドキュメンタリーだ、とも言える。ドキュメンタリーというには、少し演出が強いが。
迷いのドラマは美しい山の中で更に加速し、ひなたはむっつりと塞ぎ込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
人にあったらまず挨拶、安全な登山は健全なコミュニケーションから。
ファーストシーズンでひなたが伝えた"ヤマノススメ"から、ひなた自身が逸脱している。それは心と体を蝕んでいく。かつての富士登山のように。
ナビゲーターを任せられて、みんなの安全のために視野を広げているあおいと、それに従わず独走するひなた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
"ヤマノススメ"の基本形は気づけば逆転し、子供っぽいひなたを大人になった(なってしまった)あおいが導…くことに、失敗しつつある状況が生まれる。
危うい山行を乗り越えて、美しい景色の中で自分の真実、真実の私達に出会い直すことが出来るのか。いつもの"ヤマノススメ"のルールに、乗っかり直すことが出来るのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
その結末は、今回判断保留とされる。決戦は二日目、金峰山である。
相変わらず山のロケハンと美術はバッキバキで、本当に美しいものだった。だからこそ、そこに目を向けず下を向いて、自分の気持ちにふさぎ込んでるひなたが際立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
自分とだけ向き合っても、自分の姿はみえない。それも、このアニメがずっと書いてきたことである。
美しい空の下、ひなたは一人崖っぷちにいる。それが自然のスケッチではなく心理の描画であるのは、後半の筆使いを思えば当然であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
あおいはそこに手を伸ばして、ちゃんとすくい上げてあげられるのか。
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かつて自分を救ってくれた女の子が、迷いに迷っている状況を見て取り、今度は自分が手を差し伸べられるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
久々に四人で登った山は、あんまり楽しくありません。それを楽しくするためには、ザイルパートナーの体重をしっかり受け止める必要がある。そのための足腰は、ちゃんと鍛えた。
ズルズル滑り落ちていきそうな重たさを支えるためのフックとして、あおいが街の中で自分の居場所を見つけ、そこから自分と他人と世界を一歩ずつ見つけ直すエピソードがあった気もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
今こそ、ひなたから受け取ったものを、ひなたのために使う時…ゴミクズ人間のままじゃアカンねんひなた君!!
そんな状況をジットリ取り回す、爽やかな秋の登山でした。ひなた周辺以外はホント穏やかなのに、ブラックホールの中心が重い、重たすぎる…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
かえでさんのリーダーシップ、ここなちゃんの天真が見れてよかったんですが、やっぱひなたから伸びる闇の濃さがな…100%で気持ちよさを味わせてくれん。
僕はやっぱり、仲良しなひなたとあおいが好きなので。向日葵は常に太陽の方を向いて、太陽は向日葵を見つめている関係の純度が好きなので。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月11日
金峰山山頂では曇りなく空を見上げ、お互いの瞳をしっかり見つめてほしいと思います。来週が楽しみ。