ブギーポップは笑わない を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
かくして、中心なき事件が終わる。
心の花を整えても、歪みは形を整える。イマジネーターに植え付けられた思いは、四月の雪のように解けていく。末真和子は、事件の中心には間に合わない。
殺すべき”世界の敵”は、最初から永遠の落下に封じられていた事件が終わる。
というわけで、VSイマジネーター最終回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
物語に終わりをもたらす死神が本格参戦するなり、バッタバッタと状況が終わっていくが、しかしそれは開始から定まっていたことであり、最初から飛鳥井仁はヒトに突破をもたらす”イマジネーター”足り得なかった。
だから、仁兄さんは墜ちない。
谷口正樹の独り相撲も、飛鳥井仁に届く前にヘロヘロになって、しかし一人の女の子と出会い直す物語には、幸福な決着がつく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
末真和子は相変わらず、自分を取り巻く異能に踏み込めないまま終わってしまうが、泣きじゃくる琴絵ちゃんを見て燃え上がった義憤は、やはり無意味ではない。
最初から決まっていた落着に全てが落ち着いたような、しかし何も中心に至れなかったような、そんな不気味で半端な、最初から始動などしていなかった小さな身じろぎ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
それでもスプーキーEは死に、琴絵ちゃんは仁兄さんともう会えず、正樹とカミールは恋人同士に為り直す。
全てが曖昧な紫色の、夕焼けと夜闇の中間地点に塗られて、曖昧でいながらなにか凄く大事なものを見つけられたような、不思議な読後感に収まっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
原作を飲み干した時の読後感が上手くアニメにされていて、大満足の終わり方であった。
正樹はブギーポップの装束を脱ぎ捨て、素肌のままで必死に走る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
自分が何を求めていたか、織機綺の真実が何だったのか。自分の足で必死に走り、自分の目で確かめていく。
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そんな等身大の無様さに向き合い、形だけかっこつけた道化をやめることこそが、自分の物語を掴み取る足場だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
『でも僕は、君が好きなんだよ!』
正樹が言葉にできて、仁兄さんが言えなかった言葉。結局の所、それが全てである。この異能物語は、根源的にロマンスなのだ。なら素直になるしか勝ちはない
織機綺の嘘、かっこつけの自意識、世界の裏で蠢く謀略、スプーキーEの残滓。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
色んな衣装を脱ぎ捨てた正樹は、ガード下の境界線で彩と通話し、今まで直面できなかった闇に向き合う。白々しい日常の仮面を投げ捨てて、カミールが身を置く薄暗がりに、痛みを込めて踏み込むことにする。
それこそが、彼がボーイ・ミーツ・ガールの主人公に相応しく、女の子の手を取ってハッピーエンドにたどり着けた条件である。仁兄さんが向き合えなかったものでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
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深い闇に顔を隠して、イマジネーターに植え付けられた救済願望、人類の突破を虚しく語る仁兄さんは、膝を折る女の子に寄り添えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
とても辛くて寂しい時に、声をかけて寄り添ってくれた。正樹やカミールを突き動かす想い…カミールを異能力から守ったものを、心の奥に抱えているのに、表に出せない
仁兄さんが自分の限界を突きつけられた時、脳裏に過るのは非日常ではない。当たり前の日常の中で、悲しく犠牲になるしかなかった身近な人々。救済を焦がれつつ、虚しく消える勝利者の礎達だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
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父や教え子や好きになった女の子が、巨大なシステムの中で食い物にされ、それになんの救いも与えられない無力に、仁兄さんは耐えられなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
優しいからイマジネーターを見て、自分に出来る救済と突破を夢見た。でもそれは、自分すら騙せない夢でしか無い。
世界にとっての悪夢にもなれないまま、仁兄さんは落下し、墜落しない。水乃星透子のように、永遠に静止した墜落を続けはしないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
それが幸福な敗北なのか、残酷な終わりなのか。
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僕は決定的な失敗を前に、全てをリセットする”消毒薬”に手をかけて、でもバルブを捻れない兄さんが好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
水乃星透子は、バルブをひねろうとした。だからブギーは止めた。
兄さんは殺せない。だって突破したいわけじゃなくて、泣いている可哀想な人に、どうにか優しくしてあげたかったのだから。
タロットカードの””吊られた男”のように、飛鳥井仁は宙ぶらりんだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
早乙女くんのようなラスボスにもなれず、正樹のような主人公にもなれず、”世界の敵”として墜ち続けることも出来ない。
でもその半端な立場こそが、実はVSイマジネーターとして、他人の世界を拒絶してあり続けることなのだと思う。
ギリギリのところで、兄さんは人間としてブギーに救われ(ムチウチにはなったけど)、イマジネーターとしてではなく無様な生存者として生き残ることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
ブギーポップは常に、飛鳥井仁の後ろを見ていた。イマジネーターとはかつてあった存在の残響でしかなく、兄さんの能力は何も変え得ない。
最初から、語られざる過去の激戦の後始末でしかない物語は、こうして決着していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
その半端な立ち位置が、僕はとても好きだ。誰も中心にはおらず、だがたしかになにかが変わって、そしてそれはとてもちっぽけな、淡雪のような儚さに満ちている。
どれだけ終わった物語の後始末でも、そこで流れる魂の血潮は本物だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
”棘”を奪われたスプーキーEが、自身の虚無に食われて自殺したように。
二人のイマジネーター(未満)に振り回された琴絵ちゃんの想いも、けして嘘ではない。
その赤い血潮を、末真和子は本気で受け取る。
ウォオオオ!と自電車全力で漕いで、今度こそは事件の中心に居合わせる!飛鳥井仁を殴ってダチに詫びさせる!!!と吠えた末真だが、やっぱり彼女は間に合わない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
たどり着いたときにはすべてが終わり、彼女もまた、無様に宙ぶらりんに立ち尽くす。
では、そこに意味はないのか。眼鏡を掛けた熱血女の大爆走は、飛鳥井仁に追いつけなかった疾走は、無駄だったのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
仁兄さんと同じく、僕はその半端さが好きだ。不自由で不器用で、でもそこに込められた思いは本物で、あやふやなまま輝いている。
末真博士は最初から自分の意志で、徹底的に戦い続けた。誰かのイマジネーションに飲み込まれず、自分が見据えた世界、哀しさ、痛みを引き受けながら、唯の人間として突っ走る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
その無能こそが、やっぱり作中最大の異能なのだと思う。とにかく、末真和子は間違えないのだ。
まぁその情熱は、彼女が切望する事件の中心には毎度たどり着けずに、異能に傷つけられた人たちの代理人として正しく怒ったり、正しさを肯定したりするだけなのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
そういう事が出来ないと、スプーキーEのように世界と己を憎み切ったり、仁兄さんのように自分を見失って宙吊りにされたりする。
正樹はキグルミとモブピエロを相手に大暴れし、薬に負けて飛鳥井仁にはたどり着けない。衣装とメイクに心を隠し、誰かのイマジネーションに押し流される”敵”は、つまり過去の正樹だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
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そんな幻像と対峙し、VSイマジネーター出来た時点で…織機綺に『でも僕は君が好きなんだよ!』と叫べた時点で、正樹の物語は勝利で終わっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
なので、後はブギーポップがやる。
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自分が演じていた非日常と向き合った時、正樹は”それ”の異様さに圧倒される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
カラテ無双が結構あったVSイマジネーターであるが、正樹や凪の戦い方と、ブギーポップの”処理”は根源的に異なっている。何しろ、相手を見もしていない。https://t.co/ewb6jYWVEG
常人が的と向き合う時に必要な、視線と悪意の交錯。自動的なブギーポップはそこから自由に、舞うように”敵”を処理していく。活殺自在の境地のままに、まさに自動的に。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
正樹はそういう風にはなれない自分を見定めることで、深い闇とようやく対峙する。
何しろ織機綺は最初からそこにいたのだから、ハッピーエンドにたどり着くたくためには彼女の居場所を見据える必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
さんざん浮かれて踊り回り、空回りを続けた歩みは、そういう場所にたどり着くためにあったのだろう。彼は本当に大事なものを見つけて、しっかり掴んだのだ。
彼が愛するカミールは、逆に光と自由を見つける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
風に煽られて落ちるかもしれない危うさと裏腹な、風通しの良い自由。割れた高い窓は、もう彼女を死には誘わない。
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すべてが終わり尽くした遊園地で、末真和子は立ちすくみ、イマジネーターに踊らされた道化は日常に帰り、少年は恋人の膝枕で空を見上げる。全ては、曖昧な紫のグラデーションの中だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
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何しろ曖昧な亡霊の、描かれてすらいない戦いの残滓のお話なのだから、全ては曖昧だ。突破に夢をかけたイマジネーターも、四月の雪のように空に解けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
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ひどく不自由で曖昧な空を見上げながら、正樹は何を夢見るのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
恋人を膝の上に載せながら、カミールはどんな幸福を抱きしめるのだろう。
決定的に間違えきって、でも落ちることも出来なかった仁兄さんは、これからどうするのだろう。
全ては視聴者の想像に任されつつ、後の物語にまた続いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
そっちは原作の領分として、ストーリーとしてはスッキリしない終わりながら、アクションありロマンスあり、”笑わない”よりやっぱり解りやすいエピソードであった。
その鮮明さを活かししつつ、根源的な曖昧さを大事に進めてくれて良かった
正樹とカミールの成功するロマンスと、仁兄さんと琴絵ちゃんの失敗するロマンス。そもそもロマンスを掴めないスプーキーEの苛立ちと、圧倒的な正解を掴みつつも異能の闇には触れられない末真。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
実は色んなモチーフが重なり合いながら、並列複層的に語られてるのだということも、アニメになって見えた
先の白々しい道化師っぷり、中心にいるようで部外者な仁兄さんの寂しさも、上手く生かしてくれたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
純情青年たちの無様な誠実さが、何一つ決着せず始まりすらしない物語に、確かな爽やかさを与えてくれていた。
アクションシーンも多めで、特に第8話の切れ味は鋭かったな。
イマジネーターの残響によって、引き起こされた事件。心を書き換え塗りつぶす異能を扱いつつ、結局は心の有り様、好きなものに素直に向き合える強さを問う地道な”芯”を大事に、ブギーっぽく進めてくれてよかったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月23日
次は”夜明け”が一気に四話放送。どう向き合うか悩ましいけども、楽しみですね。