キャロル&チューズデイを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
エゼキエルに続き、逮捕されるスキップ。歌を封じる政治の長い手は、少女たちに決起を促す。
火星全域を静かに巻き込むうねりに、アンジェラは取り残される。孤独と死の国から立ち上がるためには、どうしても足らないものがある。
状況は、静かに潜航していた。
つー感じの、クライマックス前のタメ回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
対岸の火事が政治屋の放火であまりに大きくなり、色んな人が黙ってられなくなる中、キャロチューもプロテストソングを作るぞ! と決めるお話である。
同時にアンジーが、そういう活きたうねりに身を浸せないお話でもある。コインの表と裏、か…。
アンジーの孤独にケイティがギリギリ間に合ったのは救いだが、彼女は境界線を乗り越えることは出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
アンジーはママと同じ死の床に横たわり、動けないまま言葉をなくす。
死人は歌わない。もう、死人のためにしか歌えないのだ。
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岸を乗り越えられない寂しさはキャロチューも同じで、”Mother”合唱への参加に、アンジーは応えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
ベッドの外側にあるものは、もう歌う理由にはならない。かつて楽しかった歌も、私を幸せにはしなかった。
アンジーの暗闇は深い。
そらそうだ。ママが死んだんだから。
母をめぐるサークルはもう一つ(あるいは二つ)あって、スペンサーとチューズデイは母であり”あの人”でもあるヴァレリーの今後について語り合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
観葉植物が引く、一つの境界線。政治の季節に、どういうアプローチをしていくのか。
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今回は隣り合ってはいるけど、内側に入れない微妙な距離感が様々な場所でうずく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
キッチンから兄弟の会話を見守るキャロル。ベッドサイドからアンジーを気遣うキャロチュー。
皆、決定的なところには踏み込めない。特別な”誰か”にはなれない。
だが、それが全て無力なのだろうか。無意味なのだろうか
絶対的な意思決定権を、境界線の外側に尊重すること。踏み込んで略奪しないこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
スキップが地面に押し倒されて、不当に逮捕される今回(それはエゼキエルの虜囚と繋がっているし、”Mother”作成は彼が先んじた歩みを、キャロルが追う道でもある)は、線の外側であえて留まる節制の意味が描かれる。
内部告発者として、自分と”母”の破滅をかけて動くスペンサー。あくまでアーティストとして、自分の職分に従ったプロテストに留まるチューズデイ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
二人の間の境界線は、しっかり引かれている。しかし目線は通っていて、妹のアドバイス(あるいは祈り)を受けて、兄は己の歩み方を決める。
ここでキャロルが、スペンサーの政治的身振りをすべて決めてしまったらどうだろう?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
アンジーを自分の代用品として、在り方を支配していたダリアのように?
あるいは、政策意思決定者の決断を我欲一本で捻じ曲げていく、選挙屋ジュリーのように?
線の外側に留まることは、寂しく優しい決断だ。
もう黙っていられない。キャロチューのときの声を受けて、当事者たちが顔を出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
一滴の水がより集まり、意志の大海を為すように。ひとしずくの波紋が、それを揺らすように。
火星全域を巻き込む、ミュージカル・ムーブメント。
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それは主人公の側から出た提案だから、脇役たちは線の向こう側で協力を約束しつつ、その心臓部…作詞作曲には立ち入らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
それを成し遂げうるから主役なのであり、その重責を二人で分かち合えるからキャロチューである。ホント、恵まれてるね…(アンジーモンペ勢特有の”蛇”の眼)
息子と娘が、自分を刺す刃を各々のやり方で研ぐ中、ヴァレリーは選挙屋の顔を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
自分の政策…というには、信念も悪意もないキャッチコピーを後押しした、都合の良すぎるテロル。それを仕込んだのは、お前じゃないのか。
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担がれるまま、政治屋に墜ちる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
そんな道を拒絶する最後の矜持は母にもあって、気づかず息子と同じ答えに近づいている。一線を踏み越えれば、栄光と虚無が待ち構える選挙屋の足場を前に、ヴァレリーは立ち尽くす。
そんな悩める政治家の顔を、ジュリーは見下す。
『選挙に勝つ』という結果が民意の繁栄ではなく、権力装置を握るための許可証発効にしかならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
内実よりも結果を求めるポピュリズムと、その道具たるAI。ジュリーは既に、魂の底まで境界線の向こうにいる。
”母”は帰ってこれるのか。物語は続く。
一方、キャロチューの”父”とも言うべきガスは、一足先に境界線の向こうに旅立った悪友を見舞う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
意地も張ったけど、輝く若造に夢を見て、自分を取り戻そうとあがく気持ちは同じだった。
ガスがダリアのことを好きでいてくれて、俺は嬉しかった
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どんだけ同じ思いを抱いても、ガスは後追いで死にはしない。そこまで強い共鳴でもなく、でも死者の声を無視できるほど冷たくもなく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
多分、お前も見たがると思う黄金の景色を、現実にするために。ガスは自分の子供達のために、生者の国を一歩ずつ歩き直す。ダリアには、もう歩けない国を。
皆が歩いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
敗者達は堂々”LOSERS”と名乗って、しぶとく生き延び歌い続けている。俺も、彼らの曲は聞きたい。
波紋は広がって、大きな波になっていく。その途中には、当然衝突だってある。
お兄ちゃんとカイルのクエスト、マジ面白いな…
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妹たちが”Mother”にまつわる幸福な共鳴をする中、お兄ちゃんは報道者と強くぶつかり合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
母に、最後のチャンスを。自分の目で真実を見て、自分で決める機会を与えたい。
”息子”の情を最後の最後で出してきたスペンサーを、カイルは見下す。所詮、甘えたお坊ちゃんだったか。
激高するスペンサーに、カイルは己も孤児であった過去を語る。”母”なるものに絶望し、だからこそ信じてみたい矛盾の中で、カイルはスペンサーの決断を尊重しているように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
暴露したければ、勝手に事を進めれば良いのだ。相手を刺すだけの道具は揃っている。社会正義を為すスクープは目の前にある
しかしそこで、カイルは自分を信じて境界を超えてきた同志の”甘さ”を見つめる。そこに”母”を愛憎する自分を見つける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
そこで立ち止まれる所が、メディアを濫用して我欲を通さない報道者としての節度であり、矜持なのだろう。
誰のために、報道はあるのか。制度が生まれ出る場所を忘れずにいること。
そこを見落とせば、ポピュリズムにおける民主的手続き、大統領選挙における政策と同じ場所に落ちていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
ここまで多彩に描かれた、善にも悪にもなりうるAI。道具的存在をどう色づけていくかは、使う側の倫理をそのまま反射する。
だから、カイルは待つ。正義と同居する”母”への情を。ラストチャンスを
死人にチャンスはない。死人のために歌っていたものに、次の歌もない。アンジーは歌うべき唇を塞ぎ、ポップスターの孤独を言葉にしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
子供時代のアンジーが可愛いほど、今の悲惨が胸を突く。そら、ケイティも泣くわ。俺も泣く。
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どれだけ不自然でも、空しい虚栄であっても、誰かに愛されたかった。愛されていると錯覚したかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
そんなアンジーの強がりは、ママの死で破綻する。一番身近で、一番私を傷つけた愛が去った今、歌う理由はない。
その理由になるだろうキャロチューの曲が”Mother”なのは、必然過ぎて残酷でもある。
タオは”父”を刺すべくフル駆動させていたAIに、冷たく別れを告げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
もう、帰らない。
その事実を偽らず、自分の手足だった道具的存在に死を与えることが、彼なりの誠実なのだと思う。
さようなら、機械的な僕ら。
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タオがアンジーを放置してまで編み上げた、社会と論理の毒。それがシュバルツをどう刺すかは次回判るんだろうけども、機械的に冷たくあり続けた生き方を、彼は一足早く走りきった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
走りきったからこそ、過去を捨て変わることもできる。境界線を超えることも出来る。
逆にいえば、走りきらずに超えることは出来ないのだと思う。タオは脇目もふらず、自分の”父”なる場所…ヘッジファンドと政策玩弄、AIで人間の在り方を解析・操作する在り方に決着を付けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
それが終わって、ようやく裸眼で”Help me”を見る。
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遠く離れた場所で、お互いを見つめる恋人たち。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
アンジー&タオの肖像が、クリスタル&スキップと重なるEDは静かなロマンティックがあって、とても良い。
絶望の淵に沈みかけて、なお届くものはまだあるのか。境界線を超える特権を、恋人は持ちうるのか。
政治 VS 歌以外にも、決着をつける領域はある
タオは何を携えて、孤独に沈むアンジーに向き合うのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
ママは死んだ。歌は栄誉と孤独を連れてきた。全ては遅いのだろうか?
答えは来週、すぐさまにでも溢れ出すだろう。この瞬間を…俺はずっと待ってて…長い半年だった…。
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『相当な理由投げなきゃ許さねぇぞ、冷血メガネ野郎!!』って感じだが、まぁ間に合ってよかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
タオが来るまで境界線も超えれず、その向こう側で見守り実務をこなしてきたケイティはマジで偉い。話はロマンスの特権をぶん回すだろうが、その静かな献身にも報いてやってほしいなぁ…。
勝負の瞬間が、火星移民記念日なのは面白いなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
ナチュラルに人間が住んでたわけじゃない火星は、全ての存在が移民として始まった。しかし歴史が積み重なって、不満のはけ口として今、地球からの移民は踏み潰されようとしている。
母なる存在を思い出させるだろう”Mother”は、同時に母なる日にまつわる歌になるはずだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
皆、あの青い星から生まれてきたはずなのに、今は憎悪の視線で見下して、境界線を引いている。
その外側で見守る視線と、踏み込んで手を伸ばす勇気は、多分同居できる。そう信じるから、歌を作る。
歌一本で政治を転がすのではなく、カイルとスペンサーのメディア爆弾をちゃんと用意して、実務の方向から殴りつける準備を進めているのも周到だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
そこに”子”としての情が、金髪の美青年コンビにちゃんとある所も。アンジー、タオ、キャロル、アメル…みんな孤児なんだなぁ。
”Mother”は自分が孤独でないことを思い出させる曲になるはずだ。それを思い出さないと、ジュリーが時代の雰囲気から抽出した差別をひっくり返せない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
それは完全な水煙ではなく、不確かながら存在する火種を寄せ集めて生まれた火だ。霧散させるにしても、適切な感動は必要になる。
約束された”運命の七分間”へ、静かに進んでいく二人。その外側で、愛と孤独に溺れるアンジー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月26日
長かった物語にも終りが見えてきて、様々な”母”との断層を鮮明化するお話でした。そこには境界線がある。それを超えるか、信じて待つか。多分、両方が正しい。
次回も楽しみですね。