バビロンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月21日
新域を巡る悪徳、その奥に隠された革新の意図。正義の牙城すら飲み込んだ巨大な陰謀に、正崎は無力を噛みしめる。
空疎な神輿として飾られたはずの、若きカリスマ。齋開化は掴み取った玉座から、人類に新たな法を布く。
死を寿ぐ、人類の新時代。
変革の狼煙に、ほら、蛇が嘲笑う。
というわけで序章終了! 想定を遥かに超えるスケールでぶん回る巨大なタナトジア! 奇想と悪徳が大暴れ、バビロン第三話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月21日
こちらの想定にハマっていた部分もあり、更に乗り越えて不気味な部分もあり、いやはや、すっかりやられてしまった。き、気持ちいい…。
今回は二、三個スウィングが仕掛けられているのだが、1つ目は”表”の新域構想者、そのスケールである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月21日
いかにも汚職政治家っぽかった野丸先生は、日本の枠を外し時代に追いつかんと企む、清廉なる野心の男であった。
新域全体を実験場にして、時代遅れの国家行政を加速させる。す、スケールがデカい…
加速する時代に追いつけない、国家というアンシャン・レジーム。その枠をぶっ壊すために、党派を超えて選挙システムをハックし、想定通りの結果を出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月21日
社会秩序それ自体を握り込んだ、盛大な社会実験。正義の天秤は、果たしてどこにあるのか。
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自身も旧弊の変革を望む正義の人は、アドアステアの天秤が睨む状況で、自分なりの正義を叩きつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月21日
死人は死人。託された思いが、俺を突き動かす。
そのシンプルな意志は、しかしスルリとかわされる。既存システムに足場を起きつつ、その刷新を目指す勢力にとって、自死者は想定外の死体だったのだ。
新域を実験場に、国家システムの刷新を目指す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月21日
そんな『普通の改革』すら超えた、不気味な胎動。大物政治家も検察部長も、バビロンの正体を把握していない。
一体誰が、文緒を殺したのか。
その一点において、革新を目指す巨悪と正崎のちっぽけな正義は、均衡点を見つけうる。
己の無力を噛み締めつつ、正崎はただただ目の前の死を追うことにする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月21日
空疎なお飾りとして域長にのし上がった、若きカリスマ。その巨像を青く反射しながら、正義の在り処に悩み続ける。文緒の遺志も、今は真っ直ぐ見れない。
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ここである種の空疎として描かれている、メディア越しに絵が変える齋の”遠さ”が、最終局面で一気に変貌するのがなかなか上手いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月21日
野丸先生越しに、正崎が把握する齋は掴みどころがなく、余りに清潔だ。モニタの中の映像のように、生臭い生活感を漂わせない。
正崎は茶番劇を回想しながら、掌に残った実感を思い出す。至近距離で見てもなお、余りに正しく、破綻のない存在。つるりとしたその表情に、何を願っているのか掴みきれない、新域の王。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月21日
置鮎龍太郎の白々しい清潔さが、バッチリハマっている。
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その掌はスルリと常識をすり抜けて、新域構想者たちの思惑から、齋は逃げ出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
その隣りにいるはずの、美しきバビロン。出会う旅全く別人の印象を与える、死に誘うファム・ファタール。
曲世愛。
愛で世を捻じ曲げる存在。それが”彼女”だ。
©野﨑まど・講談社/ツインエンジン pic.twitter.com/5vFNqrvzrt
”正崎善”という男と、”曲世愛”という女。正と曲、善と愛が対峙していく運命を感じさせる、面白い名前だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
エロスの権化のように振る舞う彼女は、死にさそうタナトスの女王でもある。
逃げ水のようにとらえどころなく、正しさが掴みきれない女の影に、正崎は翻弄され続ける。
検事、刑事、事件記者。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
個人の優れた資質と、正しい意志をかき集めた連合は、加速する状況に圧倒的に置いてけぼりにされていく。
愛の所在も掴めないまま、次なるターゲットは既に屋上の死地。モニタ越しに展開する、自死なる危険な遊戯。
©野﨑まど・講談社/ツインエンジン pic.twitter.com/Fevjz00o4i
血の色というには薄ぼやけていて、宵闇というには明るすぎる。奇妙なライティングで齋が切り出す、余りに清潔な死。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
モニター越し、全人類がそれに魅了される。顔の見えない群衆が、携帯電話越し、あるいは街頭モニタ越しに聞き惚れる、人類の新たなる火。死を弄ぶ、自由と革新。
ハーメルンの笛吹には踊らされないと、赤い非常灯を回して”現場”に駆けつける正崎たち。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
その眼前で展開される、恍惚に塗れた自発的な死。傀儡だったはずの男は、国家再生など些事とあざ笑って、人類革新のための価値観を差し出す。
善なる死よ、今こそ来たれ。
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旧時代の正しさにしがみつく正崎は、いつでも後手に回る。文緒には死なれ、巨悪の後塵を拝し、齋の改革には手が届かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
あまりに先鋭的過ぎる、齋の”新域”。労働基準だの薬事法だの、現場レベルの改革を一気にすっ飛ばした人類革新は、堅物検事の頭上を遥かに超え、地面に激突する。
なかなか強烈な宣戦布告となったが、”正=善”という固定観念を齋は実際外しうる。だから、恍惚の表情で三十人は落ちた。因幡も文緒も死んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
そうさせる、百万の顔を持つ女。人間の根本を揺るがしうる、囁きの主。
曲世愛は、確かにそこにいたのか?
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それすらあやふやなまま、新時代の幕開けは告げられた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
正と善そのものに挑戦しうる、死を玩弄する新域の時代。
正崎検事と仲間たちの進む道は、なかなかに険しそうだ。
傀儡の玉座を活用し、立ち向かうべきは自己保存の前提。齋が叩きつけた変化が、どういう変化を及ぼしていくのか。
なかなかに怖く、蠱惑的なヒキとなった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
焦点は愛が自死に誘うメカニズム…自己保存と”生=善”という前提条件を外して、死を前提にした新しい価値観を飲ませるロジックかなぁ、と思う。
洗脳とか暗示とか、自意識を塗り替える手管なら、まだ旧弊な人間尊厳は維持される。それは曲げられただけだ。
しかし一点の曇りなく、社会と人類定義にどっかり根っこをおろした観念を外して、自発的に”死”を選ばせる説得力が愛と齋にあると…これは怖い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
死を前提として選び取ることで、社会がどう変わっていくのかという、ソーシャル・フィクション的な興味深さもある。
どちらにせよ現状、齋と愛は最前線を走っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
時代遅れのシステムをアップデートするべく、新域を実験場に定めた既存権力も、ただただ純粋素朴な”善”を奉じる戦士も、全く追いつけていない。
なぜ、齋は死を蒔くのか。
謎めいた愛の真実は、どこにあるのか。
ミステリはスルリと、掌から抜ける。
そこに追いついていくのが、新章の課題…なのかなぁ?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
正崎さんがあやふやな天秤の前で、『事件が終わったら』と保留にした”正義”の意味。
それはもう、清濁併せ呑む革新の巨悪を叩けば保証される類のものではなくなってしまった。
死を前提とする、新たな価値観を前に何が”正義”なのか。
再定義している余裕もなく、状況は更に転がっていきそうだ。スピード感あるな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
曖昧であまりに斬新な人類変革を、”曲世愛”という魅力的なキャラクターに集約しているのも、ドラマが喰いやすくていい。
とにかく、ヤバくてエロい女を追うのだ!
しかし彼女に追いつけば、バビロンから投げられた問いに答えうるかというと、なかなか難しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
おぞましいと拒絶しつつ、奇妙に引き寄せられてしまう、齋の差し出す新時代。古臭い正義にしがみつく主人公は、これに対し有効なカウンターを提示しうるのか?
これが物語の、大きな柱かなぁ。
ともかく、恍惚の三十人は良い挑戦状だった。齋の内面はサーッパリわからんまま、とにかくヤベェとはよく判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月22日
これを受けて社会や権力がどう対応して、死の革新者がどう答えるか。そんな大きな物語と、正崎さんの事件がどう絡んでいくか。
気になるポイントが沢山で、次回が非常に楽しみですね。