波よ聞いてくれ を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
鼓田ミナレの”喋り”は電波に乗って、世界に届いた。
動き出す運命、迫りくる解雇に背中を押されながら彼女は、パーソナリティーへの道を(嫌々)進む。
その歩みに、擦り切れた希望を乗せるもの。対抗心を燃やす女。ネト付いた視線を向けるダメ人間。
札幌が胎動するッ!
そんな感じの、北海道ダメ人間絵巻第二話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
ハイテンションでハイテンポな喋りと展開、シニカルで知的な雰囲気をそのままに、何かが動き出しそうな期待感がジワジワと膨らむエピソードであった。
まぁその期待ってのは、ドス汚れた大惨事への期待感でもあるのだが。どーせダイナシ系だよッ!
『あー…大体こんな感じ、かなぁ…』という挨拶を第一話で済ますと、色んな部分に目が行くようになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
このアニメ、基本派手なことは起きない。
いや、出てくる連中はどいつもこいつもロクでなしかクレイジーかロクでなしでクレイジーだけど。
死人が出たり、宇宙人やロボットは出ない。道具は地味だ
ハイセンスなダイアログが強みだから、基本一生喋っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
非常に動きのない絵面になりそうな所で、かなり凝ったカメラワークとレイアウトを駆使して、画面を『動かさずに動かす』ことで退屈を退け、会話の面白さを聞かせる素地を作ってる感じだ。
奇妙で洒脱な絵面が惜しげもなく投入されることで、独特のテンポも生まれるし、センスの良いヌケ感も出る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
どれだけ面白くても喋り一本では間が持たない所を、色々工夫しカロリーも入れて、喋りを引き立てるように画面を作る。
そこ、相当頑張ってるアニメだなと思った。クオリティの使い方が良い。
物語は悪いおじさんたちが、ビール片手に悪巧みの評価をする所から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
怒涛に押し流されているように見えて、周到に計画された偶然。激情のまま駆け抜けること含めて、狙い通りのほくそ笑み。
しかし欲しいのは、銭金や名声ではない。
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通好みのコハダのように、スルリと気持ちよく喉に落ちてく企みごと。面白いと思える仕事を、手元に引き寄せるための遊び。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
お髭のおじさんたちは、そういうことに若造…って言い切れる年でもねぇ25歳を巻き込もうとしている。悪い奴らだ…。
勢いのまま飛び出したミナレは、マスメディアがどんな力を持っているか、ブログのコメント欄と動画サイトで知る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
ラジオという少し古臭いメディアから発して、携帯電話とPCで広がっていく認知。預かり知らぬ所で、彼女の喋りはバズっていく。
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時代遅れと言われようが、”ラジオ”にはそういうパワーがまだある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
しかしそれは、ミナレの天性を増幅させるmediaでしかない。あくまで、彼女に光るものがあるからこそ、人は彼女の声と喋りを聞きたいと思うのだ。
麻籐もその素質を見抜いて、遊んでみたくなったわけだ。
電話越しの大号泣を無視して、麻藤は喫煙室で計画を練る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
ここはカメラが小気味よく切り替わって、斜に構えたオジサンの日常を上手く見せてくれる。そこに食い込むパーソナリティも、ただの善人じゃあない。
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滑りの良い声質、鍛え上げられた上品。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
まどかに代表される”正解”の価値を認めつつ、それとは正反対の異物に、駆けてみたくなる気持ち。
ギャーギャー騒ぎながら突っ走る時代を、少し置き去りにした屈折人間たちの、煙まみれの人生講座。
ここの煤けた気配は、なかなか良い。大原さやかが流石に上手い
独裁者めいた押し付けとイラガっぽさが、不快ではない気持ちよさ。圧力のある言葉の、”次”を待ってしまう期待感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
かつて麻藤を”ラジオ”に惹きつけたのと同じものが、ミナレにある。だから、ちょっと遊びたくなる。
それはライバルの嫉心を煽る、危険な火遊びだ
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強引でやり手で腹黒な麻藤が、自分の原点にもう一度立ち返って、”遊び”たくなる純粋さを持っていること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
少年めいた危険な純朴が、まどかの視線を鋭く磨くヤバさを秘めていること。
ここらへんを、スピーディーなカメラワークで退屈させず見せてくれて、非常に良かった。
電波の国の悪漢達は、気まずさなど一切気にもかけずカレー屋に乗り込んでくる。店長のツッコミシーンが、さすがサンライズと言うべき良いアクションで仕上がってて、非常に面白い。アホな所に作画力使うなぁ…。(褒め言葉)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
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”ボイジャー”の料理がちゃんと美味しそうに見えるのも、作画力の良い使い方で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
メシは一番身近な共感材料だからこそ、作品の生っぽさを伝えるいい素材になる。
細かい札幌ローカルネタの差し込み方といい、クオリティを上げて実在感を出す努力が随所に見えるのは良いことだと思う。
そういう生っぽい質感をしっかり磨いたと思えば、トンチキ極まるイマジナリーなシーンで笑いを作ったりもして。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
設定面での飛び道具を極力封じた上で、破天荒な人格と魅せ方のメリハリで飽きさせず楽しませるのは、パワーある地味さでいい。
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”ボイジャー”だから土星のリング探査したり、”ガガーリン”から衣鉢を継いだり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
マジで宇宙ネタとカレー屋絡める理由解んないけど、面白いからしょうがない。
エプロンの文言も『地球は青かった』『神はいなかった』だからな…
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こういう細かいクスグリの横幅が広く、溢れる教養をドブに捨ててる感じが、会話の面白さと洒脱なセンスを生んでいるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
話の本筋とはあんま関係ない脱線が、妙な勢いと潤いを生んで、作品世界の解像度を上げていく。トンチキ世界が勢いよく回る様子を見てるだけで、なんか面白い。
ミナレを取り巻く状況は、立ち止まることなく転がり続ける。ミナレも妙な熱気に押し出されるように、ラジオブースへと惹きつけられていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
マトモな部分もあるけど、根本的にトンチキでヤバい。だからこそ面白い。ミナレの独り相撲だけでも、かなり場が持つ
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狂った状況に巻き込まれているように見えて、狂気劇場の主役に相応しい妄想力。トンチキな発想力を備えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
異常な枚数で動くアバンチュール妄想とか、『このアマ…かなりいい性格してやがるな…』と納得させるのに十分な材料である。
巻き込まれるべくして、クレイジーに巻き込まれてんだよなぁ…
そんな素材の面白さを、麻藤は上手く乗っけて板に乗せる。結構素直に、自分の原点とミナレを選んだ理由を語っているのだが、押し流されてるだけ(と思ってる)の25歳には、なかなか通じない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
ここら辺の、洒落だか本気だか判りきらない空気も良い味わいだ。
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語り口の変化から、麻藤の確信を見抜き、自分が流されていく先を見据える鋭さがミナレにはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
しかしその知性が、転がっていく運命を止めたり、加速する笑劇場から下ろす助けにはならない。
麻藤の”遊び”と、ミナレの天性は不思議な噛み合い方をして、結局彼女は喋る。そういう風に、出来上がってる
『とりあえず喋れ』っていう無茶振りに、自分からネタを引っ張れる発想力もある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
流されつつも妙なオリジナリティを発揮してしまう、ある意味損な気質。
それをカレー屋台で浪費するのが、果たして世界にとって損失なのか、怪物を閉じ込めていく健全な判断なのか。
とにかく解き放たれた”波”は色んな輩を惹きつけ、ヤバさはどんどん加速していく。つーか誰だお前ら…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
”ガガーリン”の看板を出す裏に隠された、在庫処分の世知辛さ。師匠と店長の妄想は、所詮ミナレの夢でしか無い。
しかし現実には、夢より面白いものもある。
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それを見つけて膨らませ、口先から真剣勝負、”波”に乗せていくのがラジオパーソナリティーである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
ミナレにはその”才”がある。
独特の声質、頭のキレ、目の付け所と話の膨らませどころ、負けん気と瞬発力。
それがいつ、宇宙に羽ばたくか。その瞬間を、麻藤がどう待ち構えているか。
そんな事を描く、北の人生スケッチであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
吐き出された”波”に引き寄せられて、どんどんロクでもないダメ人間どもが集まってくるよ~!
ノンストップでゴロゴロ転がる物語と、止まることを知らない会話のキレ。教養とセンスをボーボー燃やして、作品は第三宇宙速度まで突っ走れるか。
それは夏祭りを乗り越えてみないと、なかなか分からないところである。まぁカレー屋の姉ちゃんやらせておくには、もったいない人材ではあるわな!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
一筋縄ではいかないプロデューサーが、結構本気で”遊ぼう”としてる様子が見えて、ミナレの旅路ももっと面白く、ロクでもなくなりそうですね!!
まぁ押し流される側は、タマッたもんじゃないかも知れないが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月11日
でもそんな風に流される中で、クソ男に騙されたり仕事がうまく行かなかったりな人生の道標を、掴めるかも知れない。
そんな遅咲きの転職ジュブナイルとしても楽しめる、贅沢なアニメ。次回も楽しみだ。