デカダンスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
滅びし地球に用意された、歯車たちの遊戯場。
鋼鉄要塞デカダンスの真実を知らぬまま、戦士に憧れるナツメに可能性を見たカブラギは、彼女を鍛え上げていく。
幾層にも重なった嘘の上に、構築されていく師弟関係。地下からの襲撃は、それをどう揺るがすのか…。
そんな感じの、多層構造ポストヒューマンアクションスポ根、第三話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
第一話で見せてきた、ワイルドな活力に溢れた世界。そrを思いっきり殴りつけるメタ構造の衝撃が少し抜けて、ナツメとカブラギとパイプの凸凹人生が、軋みながら動き始める話数…と言えるか。
力強くイグニッションを踏み込んだ第二話まででは、説明しきれなかった世界観の余白。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
そこを上手く埋めて、視聴者(というか僕)が気になってたポイントをしっかり補足してくれる回でもあった。
個人的にはこの話、”正統性”が大事になりそうなので、事実関係の確認は重要なのだ。
お話はナツメの物語を、カブラギがクレジットで窃視する所から始まる。当事者は一切知らないまま、チップは原生生物の生き死にを観察し、報告し販売する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
デカダンスの中にいるタンカー、全員こうやって人生をコンテンツ化されてんのか…荒野の”トゥルーマン・ショー”だな…。
©DECA-DENCE PROJECT pic.twitter.com/BqgBeOy3OW
デフォルメされたサイボーグにとって、ナツメの生き死には記録でしかなく、ゲームのNPCが勝手に生きたり死んだりしてるだけなのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
しかしそこで流れた血、生きようとする息吹、失われた腕は全部”本物”で、取り返しは付かない。『壊れたらゼロからリセット』とはいかないのだ。
真実を知らされないまま、憂さ晴らしの娯楽施設に囲われた人間。それを蕩尽しながら、システムの歯車として自由を奪われているサイボーグ達。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
真実と現実は交わらず、ギアとタンカーはそれぞれのリアリティをすれ違わせたまま、用意された怪物と闘い続けるゲームを活きる。
システム(に組み込まれたサイボーグ達)がどれだけ仮想化しようとも、ナツメは生きているし死にかける。傷も受ければ飯も喰う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
人間サイドのリアリティから、カブラギは常に遠い存在として描かれる。…ナツメが、この世界の霊長たるサイボーグのリアリティから遠い存在なのかもしれないけど。
世界をテーマパーク化するシステムからは、バグとみなされるナツメの息吹。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
そこに再起動の兆しを感じたカブラギは、ナツメに闘うすべを教える。
敵の弱点、世界を覆う不思議な力。
戦士の武器(ギア)は、サイボーグの視界に人間を少しだけ近づける。
©DECA-DENCE PROJECT pic.twitter.com/VNnN2GFRGe
ナツメにとっては厳しい試練は、カブラギにとってはとっくに終えたチュートリアルでしかなく、その真実は当然、人間には見えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
原色で描かれるゲーム的想像力に、埃っぽい現実味が既に塗り替えられてしまっていることを、吐き気をこらえて飛ぶのに慣れるナツメは知らない。
敵を倒してエネルギーを回収して、より効率的に敵を倒す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
ガドルとの闘いは(からくりが分かってしまえば寧ろ必然的に)ゲームっぽくて、生死にまつわる理不尽が匂わない。
システムに管理された、清潔な生死。そこから沸き上がる興奮を、唯一の憂さ晴らしにするサイボーグ。
ナツメはそんな上部構造を意識することも出来ないまま、人間にはハードすぎる空中浮遊戦闘を、どうにか自分のものにしようとあがく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
システムの用意したアバターが、ガドル狩り用にチューンナップされてるのかは分かんないけども。
ギアが平然とこなすものを、タンカーは必死こいて乗りこなす。
ショートカットもチートもない地道な努力を、”人間臭い”と言っていいかどうか分からないけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
ナツメはとても身体的な存在として、じっくりと戦士のルールに慣れていく。
間違え、戸惑い、馴染んでいく。それはカブラギにはない、アナログな歩みである。
あるいは”ゲーム”を始めた時には、そういうアナログな情熱があったかもしれない。それが失われかけていたから、マイキーの必死さ、ナツメの可能性に心を動かされもするのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
挑戦し、己を燃やす喜び。それは人間にもサイボーグにもあって…決定的に混ざり合わない。
どんだけ師匠面したところで、サイボーグとシステムが世界の真実を覆い隠し、人間の生き死にをゲーム化し、生の実感を窃盗している事実は動かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
とはいえ、取り戻すべき『人間らしい生活』とやらも。地球が死んでいる今、どこにあるかも判らない。
自滅の果てに、システムに飼われる絶滅危惧種。
人間が置かれている状況を知らないまま、必死に挑み必死に学ぶナツメに、沢山の嘘を抱えながら可能性を見出すカブラギ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
彼らが演じる荒野のスポ根は、見た目ほど素直に爽やかではない気がする。信頼や世界認識の根幹をゆるがす事実を、サイボーグが一方的に隠してるからな…。
そんな断絶があったとしても、ナツメにとっては傷だらけの特訓も、親友から投げかけられるじっとりとした差別も、動かしようのない現実である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
ハンディキャップド・パーソンを主役にした以上、まぁそこは踏み込まにゃならんだろうよ。
©DECA-DENCE PROJECT pic.twitter.com/GULToBqzXB
タンカーはテーマパークを維持するための裏方として、戦場には踏み込まず背中を丸めて生きる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
ギアは現地民には共感など覚えず、デジタル化されたスコアと生死の興奮に身を投げて、憂さを晴らす。
そういうデカダンス世界の”当たり前”から、ナツメもカブラギも外れているのだろう。
自分達の生き死にが賭かっているんだから、自分達が闘う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
マイノリティながら、タンカー戦士は確かに存在する。二話で葬式やってたのはこっち側だったわけね…完全に誤読しておったわ。
…クソサイボーグ共、何考えてあんなこと言ったの!?
良き父良き母として、守るべきものを守るために生きたり死んだりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
そういうプライドすら、ゲームの一風景でしかない”現実”がぼんやりと周囲を覆いつつ、ナツメは心も体も擦り傷を増やしながら、戦いに慣れていく。
彼女にとってがドルは、父を殺し、自分の左手を奪った怪物…大きな理不尽だ。
それに押しつぶされ、裏方程度がタンカーに相応しいとあきらめたくないから、彼女はゲーゲー吐き戻しながらチュートリアルを駆け抜けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
しかしその切実さは、ほとんどのサイボーグには届かない。ゲームの付属物が、勝手に熱血して、勝手に死地に向かっているだけだ。
おそらくは彼自身も”バグ”であろうカブラギは、そんなナツメの熱量に共鳴する、例外的なサイボーグだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
思えばサイボーグも、歯車として使い潰されつつも、唯一絶対の自己実現を求めゲームをやっていた。
飯を食い、一歩ずつ強くなるナツメの想い。そこと重なるものはある…
©DECA-DENCE PROJECT pic.twitter.com/gHa4WRkKDc
はずなんだが、彼らが他人の人生に土足で踏み込んで、テーマパークとして消費している現状は、なかなか動かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
まぁこれが動くってことは抑圧真実が暴かれて、デカダンス世界が根っこからひっくり返るってことだろうしな…荒野の自己実現を超えたデカい話、どうまとめるんだろうね?
まとまりきれない”個”として暴走した挙げ句、地球ごと死にかけた人類。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
完全な企業統制を成し遂げることで、サイボーグは霊長の地位を手に入れた。デカダンス世界で人間が生きてるのも、システム様がドームで守ってくれるおかげ。
この世界のステアリングは、機械が握っているのだ
©DECA-DENCE PROJECT pic.twitter.com/7VrnvShCje
完全無欠のコンピューター様が世界の有り様を定める前段階に、もう一、二個ツイストが仕込んでそうではあるので、断定的なことは言えないけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
システム側からすれば、自滅した人間をテーマパークの彩りとして有効活用して、生き延びさせてあげてるだけ有情…とも言える…かぁ? 難しいな…。
個が個であるがゆえのケイオスを抑えられなかったから、人類は滅んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
その愚かさを学んで生まれた、全ての意志主体がシステムの歯車でしかない秩序。そこからはみ出すものは”バグ”として、脳みそをこじ開けられスクラップにされる世界。
そこに、抑圧と叛逆を感じる奴らは必ずいる。
そんなパンクスの意志が、茶番劇でしかない荒野の生存闘争と化学反応した時、何が生まれるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
個人的にはそこが楽しみだったりする。
そしてそんな化学反応の一端が、カブラギによるサイバーアームのチューニングであろう。
©DECA-DENCE PROJECT pic.twitter.com/nWgYcwwMwB
サイボーグとして躯体に乗り込み、この現実に降り立っているカブラギにとって、身体は自在に改変できるものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
生身の左手を奪われたことはハンディキャップではなく、アドバンテージに変えうる。
そこにはある意味ゲーマー的な身体性の軽視があり、自然が定めた限界を超える可変性の意志がある。
体が傷つき、血を流す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
今回幾度も描かれるナツメ(≒人類)の特徴を尖らした先に、再生しない左腕がある。
彼女が正しく認識しているように、それを補う義手は障壁ではなく相棒であるべきで、文字通り自分の片腕として信頼し、尊敬されるべき”生身”だ。
同時にそれは人工的な強化を受け入れるツールでもあって、カブラギのサイボーグ的認識と技術は、そういう可能性を開放していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
生身と機械、個と共同体の中間点にあるサイボーグとして、二人に共通点は多い。
人間定義を書き換え、限界を超えろッ!結構サイバーパンクやね、このアニメ。
仮に”カブラギ”の腕がぶっちぎれ、アバターがぶっ潰されたとしても、彼の”本体”は死なない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
サイボーグの死は、燃料補給を断ち切った先、あるいはシステムによるスクラップ処理にこそあるからだ。
だから、ナツメの痛みも喜びも、多分カブラギにはわからない。ゲームは現実の血を流さないのだ。
しかしゲーム的な現実にも人間は生きてて、現実的なゲームに唯一の自己実現を求めているとお互いが知れば、そこに交流は生まれるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
ナツメがサイボーグとして一つレベルアップするこの描写は、そういう化学反応の一歩目として、なかなか面白かった。ダナ・ハラウェイっぽい。
師匠は私の可能性を広げ、胸を焼く衝動を判ってくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
カブラギへの信頼が(一方的に)高まる中、危険なアクシデント(あるいは用意されたイベント)は加速していく。
地中より攻め入るガドルの軍勢、揺れるタンカーのリアリティ。巻き込まれたパイプくんと、片手の戦士見習い。
©DECA-DENCE PROJECT pic.twitter.com/vqlxmdVHGE
思えば六年前、なんか必死に生きようとしてるパイプを拾ったときから、彼の”家”のために身銭を切ったときから、カブラギさんはこの嘘っぱちの世界に親近感を覚え、突破口を見出していたのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
サイボーグも、人間も、怪物も、全てはシステムが用意した遊技盤の上。
しかしそこで傷つく身体があり、満たされる心が躍動するのであれば、生きる意味はある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
あるのだと証明するために、何をすればいいのか。
それは、まださっぱり分からない。ナツメが立派な戦士になったとしても、それはあくまで檻の中の絶滅危惧種が、バグった身じろぎしただけなんだよな…。
しかし後に大きなものに叛逆するにしても、今確かに目の前にある共感と奮戦がその足場として大事なのは、間違いないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月23日
カブラギ師匠が鍛え上げ、改造した戦士の実力。ナツメの初陣が一体何を見せるのか、次回なかなか楽しみです。
一話の戦闘とは、全く違った印象になるんだろーなー…。