アサルトリリィ BOUQUET 第9話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
ヒュージから造られたヒト、ヒトを守るリリィ。
捕獲命令に追い立てられる結梨を守り、梨璃は学園の外へと逃げ出す。
学友たちの決死の奮闘で、その天秤はヒトへと傾く。
再びやすらぎを手に入れたと、微笑む暇もなく。
迫りくる最強の敵が、贄を求めて吠え猛る
というわけで、放送からかなり時間が開いてしまったが、アサルトリリィ第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
かなり速いテンポで出会い-日常-闘争の三拍子を繰り返す物語の、三度目の三拍目。
当然戦いになるし、それは犠牲を伴う。その事自体は、ある程度時間を置いて飲み込めている…つもりだ。
今後この作品を最終話まで見るにあたって、どうやっても気にかかるのは結梨ちゃんが死んだことそれ自体ではなく、それを絵の具に使ってどんな絵を描くか、である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
結梨ちゃんが学院の生徒として、ヒトを守るリリィとして、結梨たちの仲間として、強く行き続けたかった願い。
これはよく書けていて、僕も好きになった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
そんな生への意思を押し流すのが、人類がどん詰まりまで追い込まれているこの世界であって、生きたいと願う彼女がそれでも死ななければならない展開自体は、あり得ることだと思う。
その上で、死地の書き方が駆け足過ぎたかな、という感じはある。
結梨ちゃんが命を捧げなければいけない窮地として、江ノ島ヒュージの脅威を十分示せていない感じがして、結果結梨ちゃんが”勝手に”死んだ感じがしてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
その死が梨璃の幼年期を終わらせ、夢結様と同じ立ち位置…二段ベットの上から見える世界に彼女を立たす仕事は、よく判る…つもりだ。
しかし造られた存在でもかけがえのない出会いに導かれ、人の人たる支えを手に入れ、笑顔の中で幸せに生きようとした命は、そのためだけに作品に生み出され、”勝手に”死んでいくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
少女を戦闘兵器と使い潰す、趣味の悪い世界を舞台に選べばこそ、それが要求する死には、慎重な扱いが欲しい。
それを残りの三話、果たしうるのかどうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
そこへの信頼がやや揺らいで、どう自分の気持ちを記したものか分からなくもなった。
今も正直、どう書いたものか悩んではいるが、象徴や心象を扱う手付きの繊細さ、死に満ちた世界でも必死に生きようとする少女たちの息吹は、未だにこの作品元気である。
そこに足場を置きつつ、結梨ちゃんの死をどう扱っていくのか、今後見ていきたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
そのためにはまず、彼女がどう生きようとし、死んでいったかを見なければならない。
大変に辛い。しかし語らずにいるのも、結梨ちゃんへの薄情と思うので感想を書く。
それぐらいしか、僕に手向けられる花束は無い。
物語は二本の刃から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
人を傷つけることなく、髪の毛を整え、親愛を伝えてくれる鋏。
それとは別に、魔的な力を秘め兵器としての存在価値を示すチャーム。
その両方が、結梨と梨璃の持ちうる刃だ。
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梨璃と出会い、彼女を守るべき対象と受け入れたことで、梨璃は自分が鋏だけを持って、笑い合いながら髪を切れる存在ではないことを思い知らされていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
前回少し大人びたルームメイトが睨みつけていた、二段ベッドの上の視界を手に入れていく。
それは多分、主人公に必要な成長なのだろう。
それでも、このひどく短いアバンがずっと続いて、ずっと二人で笑いあえたら良かったなと、今は思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
それを許してくれない世界で、それを守るためにリリィは戦い、国に支援され、管理もされているわけだが。
それでも、ただ武器を握るだけの兵器ではなく、鋏を通じて笑いあえる少女でいて欲しい。
そんな願いは現実をよく知るリリィも、彼女たちを守る理事長代行も同じだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
しかしどうにも動かない現実を前に、秩序の執行者として為さねばならないことを、二人に付きつける。
ヒト為らざるのなら、楽園の庇護は遠い。
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梨璃は母獅子のような勇壮さで、梨璃を背中に庇い思いを吠える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
眼の前の命が自分の手を握り、共に日々を笑い過ごせた素朴な事実を、自分の足場に選ぶ。
それは多分、ヒトとしてとても正しい。しかしこうも追い詰められてしまった世界では、多分極めて贅沢な夢でもある。
それが砕かれる理不尽に梨璃は涙し、結梨はそれを慰める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
立ち位置的には”子”である結梨の方が、”母”たる梨璃よりも現実的で、感情を上手く乗りこなせている感じは面白く…寂しい。
親に守られ、帰る場所がある。
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ヒトの当たり前に結梨を”返してあげたい”と、無邪気に庇護した少女の世界と、人造リリィは最初から違う場所に立たされていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
威迫の形で、梨璃はその真実を否応なく思い知らされていく。それでも世界を敵に回して、自分のために壁になってくれる存在が、確かにいることも。
夢結様が言葉と共に託した目眩ましを使い、二人は学園の外へ逃げていく。持っていくのは鋏ではなく、チャームである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
リリィの証。ヒトを害するものを、討ち果たすための刃。
しかしこれから追いかけてくるのは同じヒト、同じリリィである。それを相手に、梨璃は刃を振るえるのか。
それを問いただす暇もなく、状況は加速を付けて転がりだす。学院からではなく、国家から出された捕獲指令に伴い、動き出す軍と人々。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
一柳隊は鶴紗の過去もあり、GEHENA絡みの追撃指令を拒絶する。あくまで、逃げた二人の仲間として。
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体制に反逆して友を守るか、使命に準じて怪物を狩るか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
その選択権がレギオン単位、個人単位でまだ確保されているところに、ギリギリの猶予が感じられる。
これを確保できるように、理事長代行の世代が必死こいて闘ってきたことは、後に明らかになる。
”せめて、人間らしく”…か。
追撃戦で問われているのは結梨の人間定義であり、その一端を握るグランギニョル社長に、楓は真摯な思いを届ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
人たるリリィを、己の娘を、兵器として扱いたくなかったから手を染めた計画。自分を守るために、愛した人たちが犠牲となる極限
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それが人の定めなのだと、運命を呪いたくないと楓は言う。自分の生まれてきた場所を誇り、リリィとして戦い続けられる生き様を、どうか守って欲しいと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
ここで梨璃の”り”の字も出さない所が、楓・J・ヌーベルという人の高潔であり、強さだと思う。
今父に問いたいのは、あくまで人間定義なのだ。
父が見る夜景はひどく綺麗で、僕はパウル・クレーの”黄金の魚”を思い出した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
美しい闇に浮かび上がる、美しい黄金。それが何を吸い上げて輝いているのか、多分楓は知っていて、しかしそれに膝を屈したくない。
戦い、恋をし、生き抜く存在として、人間の証明を打ち立てたい。
(”黄金の魚”には谷川俊太郎が付けた詩があって、それが僕には、リリィ達にまつわる残酷と重なって聞こえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
”いのちはいのちをいけにえとして
ひかりかがやく
しあわせはふしあわせをやしないとして
はなひらく
どんなよろこびのふかいうみにも
ひとつぶのなみだが
とけていないということはない”)
そんなプライドを扉の向こうに隠して、楓は恋する道化のような仕草で堂々、レギオンのもとに帰ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
父との通話は答えを出すためではなく、思いを伝えるため。自分がどこに進んでいくかは、愛しい人に出逢ったときに多分、もう決まっていたのだ。
華麗で、鮮烈な女である。好きだなぁ…。
仲間が道を定める裏で、少女たちは寄る辺ない闇に彷徨っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
打ち捨てられた廃墟に身を隠すしか無い、哀しい状況にここでも、梨璃が涙し結梨が慰める。守る立場にあるはずの少女は、世の残酷に対しひどく脆い。
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しかしその弱さを抱えたまま生き残ってしまうのは梨璃であって、彼女は光に照らされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
どこか透徹した視線で自分の存在を、過酷な運命を見つめている梨璃には、待ち受ける氏と同じ色の影が伸びている。
生き延びてしまうものの、無惨で無様ですらある寂しさが、画面に滲む。
この状況を作り出した男たちは顔を手に入れ、ヒトとヒュージの境界線を明瞭にしようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
その頑なな姿勢には、女子供に生存を預けなければいけない無力感が、おぞましくも寂しく染み出している気がする。
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この状況でも国家はなんとか形を保ち、人々はニチジョ雨を謳歌する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
それはリリィも例外ではなく、少女たちはコンビニで甘味を楽しみながら、自分たちが追うものの定義、刃を振るう意味を考え続けている。
その問いかけを止めた時、人はヒトであることを止めてしまうのかもしれない。
梨璃を狩るべきヒュージと頑なに定義したがる大人の男たち(非リリィ的存在)は、世界の主役からはじき出された旧人類だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
敵と同根の力を身に宿し、脅威に立ち向かえるという実感を振り回せるリリィたちと違い、彼らは長く無力感に苛まれ、人間であり続ける余力を削られてきたのだと思う。
まぁ『頭の固いお上』という、ステレオタイプな描写でもあるのだろうけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
しかしヒトである贅沢が、ヒトをはみ出したリリィ周辺にしか、もはや無いかもしれない残酷が、官邸の大人たちとコンビニの子供達の対比には、ちょっと香って面白かった。
柔軟な人間定義は、極限状況では贅沢品なのだ。
それでも、人の人たる所以を諦めず、人間定義を自分たちの側に引き寄せるために、百由様は必死にあがく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
捕獲指令を覆させる決定が、グランギニョルからのDNAデータ…楓の言葉が父を動かし、提供された白旗から出るのは大変良かった。
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あの時誇り高く人であることを、父を誇れる娘であることを楓が諦めなかったことが、結梨が人である事を諦めたくない人々の刃となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
百由様が引っ張り出してくる条約も、どんだけ人類生存がキツかろうが、守るべき一線はあると信じた人が、過去に作ったものだ。
そういう”前例”をなんとか引き継ごうと、理事長代行は学び舎を作り、実験動物扱いのリリィたちを保護してきたのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
マギにより変容していく世界に翻弄されつつも、ヒトが何をもって人足りうるのか考えるのを止めず、守り続けたい。
その志は、学院の生徒に強く引き継がれている。
いかにもマッド・サイエンティストに思える百由様が、学園の外で横行する非道に眉をしかめ、梨璃を人間に引き止めようと走り回ってるのが僕は好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
多分彼女はマギ工学の先端から、ヒトがどう変化しつつあるか、一番理解してる存在なのだけど。
その根っこには、存外古臭いヒューマニティがあるね。
夜が明け、かけがえない仲間がヒトとしての結梨を護ってくれたことをまだ知らないまま、二人は廃墟で時を待つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
自分が自分でいることを、呪わずにすむ幸福。
二段ベッドの下からそれを疑わず微睡んでいた少女は、”娘”を抱きしめ残酷を学ぶ。
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自分が何を望み、どうあろうと願っても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
ヒトデナシと定義され、獣のように狩りたてられる宿命に、結梨はいる。
梨璃が当たり前に享受してきた人間定義の外側から、窓越しに光に憧れる存在が、確かに世界にはいるのだ。
そんな少女の寂しさに、差し出せるものはなにか。
梨璃は必死に、想いを探る。
ここでの梨璃は、徹底的に”待つ”存在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
お姉さまが差し出してくれた目眩ましで、言われるまま時を稼ぐ。
百由様が結梨の人間定義に裏付けを与え、理事長代行が政治を乗りこなし、仲間が善い報せを届けてくれるのを、ただただ待つ子供。
それで許されていた時代が、残酷に終わろうとしている。
それでも、叩きつけられた人造生命の寂しさを抱きしめた必死さ、自分が居場所になるという誓いには、血潮の熱さが宿っていて、嘘がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
その純粋が彼女の強さであり、様々な人の救いであり…だからこそ、これからの喪失が身を切るほどに突き刺さるのだろう。
結梨の人間定義を”ヒト”と定め、”お家”たる学院に帰ろうとしたその時、空を裂く閃光。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
凶悪なヒュージの襲来が、自分の居場所を壊す未来に抗するべく、結梨は”リリィらしく”刃を握り、一人海を疾走る。
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その速度に結梨はついていけず、幼さの象徴とも取れるクローバーの髪飾りを砕かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
ぶっちゃけここからの流れはもう一話使って、結梨ちゃんが死ななきゃいけないほどの強い脅威として、江ノ島ヒュージを書いてくれたほうが助かった…かなぁ。
それこそ、初撃で学院半壊させるとかね。
ここで幼く短い自分の手が届かなかった無力感、胸に突き刺さる後悔を梨璃に刻んで、”姉”と同じ立ち位置に持っていきたい運びは判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
だが、やはり結梨ちゃんが死ぬには襲撃は唐突で、脅威は十分ではないと、僕には感じられた。
死ぬに十分な説得力なんて、どこにもないけどさ…。
しかし見ている側としては、物語の都合で”勝手”に死ぬのではなく、生きたいと願いつつもそれを断ち切られる、断ち切られてもなお戦うのだと納得はしたい。結梨ちゃんのこと、俺好きだし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
ここの旋回は、彼女の死を飲み込むには少し、僕にはやはり急だった。
かくして少女は光に消え、血の色の浜辺には刃だけが流れ着く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
鋏を握って、微笑みながら髪を整えていた朝は、もう帰ってこない。
死の青と生の赤。
微笑みながら消えるものと、無様に生き長らえるものの対比。
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そして物語は、最後の三拍子へと進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
その終わりまで見なければどうにも言えないが、兎にも角にも、こうして死んでいった結梨ちゃんが死ぬためだけに物語に産み落とされた存在だと受け取らぬよう、今後の物語を紡いで欲しい。
繊細な表現力、折り重なる乙女たちの詩情。
僕は凄く好きだ。
しかしそれを全て押し流す危険性が、僕にとっての結梨ちゃんにはあって。そう思わせてもらえるだけ、ちゃんと書いてくれた、ってことなんだけどさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
だからその生だけでなく、その死、死の先に続いている生について、良い書き方、まとめ方をしてほしいな、と思う。
残り三話、何が描かれるにしても僕の注目は、そこに集まってしまうだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月17日
それには、彼女を愛し守れなかった梨璃が、どう二段ベットの向こう側の世界へ踏み出していくかを、しっかり描かねばならない。
さて、何が見れるのか。次回も楽しみですね。