BEASTARS 第二期を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
何事もなく更けていく、学年の師走。
その裏では、獣達が己のエゴと誇りに牙を研いでいた。
捕食こそが真実の友情だと、己の魂を染めるリズ。
餌食の運命に震えつつ、最後の矜持を芝居に乗せるピナ。
憎悪よりも熱い決意を、拳と牙に乗せるレゴシ。
今想いが火花を散らすッ!
そんな感じの肉弾青春絵巻、最終決戦の日付が決まる第22話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
群像を切り取る筆の横幅はそのままに、リズとレゴシ、二人の肉食に強くクローズアップした仕上がりとなった。
シャワー室での肉と肉、魂と魂のぶつかり合いが大迫力で、暴力に興奮しつつ物悲しい。
リズは血の興奮に未知を過ち、テムを食った。それが過ちだと心の何処かで解っているから、飯は味がしないし悪夢も見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
それでも、それこそが真実の友情だと思わなければもう生きてはいけない。そんな歪みから、彼自身は抜け出せない。このままでは犠牲を増やし、虚無に食われる。
レゴシも血に視界を奪われつつ、それでも目の前の獣が凶相の奥何かを告げようとしていることを、鋭敏な耳で聞いてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
貪り、優位に立つ。
望まずとも生来与えられたパワーを収めなければ、人としては生きられない獣達の宿命。
その暴発は、彼にも覚えがある。淫夢とかね!
ピナくんの勝手な行動で始まった闘いはレゴシ自身の譲れぬ闘争へと深化し、羆と狼は決戦を年の終わりに定める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
喰うか、喰われるか。
それ以上の答えを見つけられるか、さっぱり分からないまま期限だけが決まる。
未だ迷いの只中なれど、しかし逃げるという選択はない。
それにすがらなければ全てが壊れる、蜜色の妄想。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
それを許せば全てが崩れる、血臭の暴虐。
肉食と草食、その関係の真実を求めて、少年たちは晦日の決闘へと進んでいく。
その背中に背負うものは、愛する女の涙、ええかっこしいに伸びた尻尾、いけ好かない色男の決意の咆哮。
錯綜する運命に、さてルイはどう絡むのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
イブキさんが凄まじく不穏なフラグを立てる中、全てが炸裂する期日は決してしまった。
クライマックスに向けて、拳と牙による対話が激しく画面を埋め尽くす予告として、素晴らしい仕上がりでした。
暴力の中に理性的な表現が沢山あるの、凄く興奮する…。
つーわけで、クマさん得意のトマトカレーからお話はスタート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
もうリズの本性…と言っていいか分からんけども、笑顔の奥にあるものを知ってしまっている側としては、楽しいクマ科の団らんが怖くてしょうがねぇ。
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リズにも日常はあり、それはテムを食っても壊れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
壊れてしまえば、あの夜起きたことが”異常”だったと証明してしまうのならば、全てを隠して乗り越えてみせる。
そういう狂気が、リズの犯行を覆い隠している。
そこにはエゴと同時に、罪を認められない弱さと愚かさ、それだけ美しかった日々が匂う
しかし思い込みの奥で罪悪と真実はうずき、掌はかつての穢れを忘れてくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
レゴシが突き立てる断罪の言葉は、その実リズの内側からも湧いている。
彼は現実を歪める狂気に、染まり切りたくても染まれない普通の少年、普通の子供、普通の殺人者である。
彼が自分と世界に言い聞かせるように、捕食こそが真実の理解ならば、より多くの人と繋がるためにもっと殺していただろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
トマトだって、美味しい味がしているに違いない。
だが身体は食事と安眠を拒み、心はアンバランスに軋む。
もう、優しい熊さんではいられない。元々そうじゃない。
肉食獣最強の身体を、望んで得たわけじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
可能ならば弱く優しくありたくても、それを許してくれない爪牙こそが自分であり、それを鞘に収めるのは自分を偽ることだ。
自分に素直に、偽らずに。
そんなキャッチコピーを真に受けた結果が、血みどろの惨劇である。
一方レゴシは、欲のもう一つの顔…柔らかな女の肉体を夢見、間近に感じ、すっげー勢いで萎える。は、ハルちゃんアンタ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
『もう一生インポだろその立ち回り…』と思わされるし、実際ブンブン振ってた尻尾もあっという間に黙るけども。
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ルイ先輩LOVEなのはレゴシも同じで、恋と繋がりつつも何処か違う、凄く切実な生死に関わるハルちゃんの思いを、レゴシはしっかり解ってやる。偉い男だ…時々キモいけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
大型用の大股抜かしと、小型用のチマチマした段差。隣り合いつつ同じにはならない舞台装置を背負って、レゴシは女の肩を抱く。
リズが捕食欲求の暴走を正当化しつつ怯えているように、レゴシも己の中の性欲、蹂躙欲求に素直にはなりきれていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
それは結構良いことで、建前を失ったセックスは大概ただの暴力に落ちる。コミュニケーションを求めて相手を壊すのは、何も羆の牙だけじゃない。
皆、危うさを抱える。
だからこそどう利し、どう認めるかが大事なのだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
レゴシは青空を背負ってド真っ直ぐ、ハルちゃんの肉体、己のアガペとエロスに向き合う決意を固める。
その良い子ちゃんな態度に軽くイラッとも来るが、しかしそこがレゴシのいいところである。キモいが。
レゴシが青臭い純情を空に響かせる裏で、生粋のプレイボーイは気もそぞろ、想定できる最悪をぶっ込んで関係を壊す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
リズ関係のストレスがなければ、上手く乗りこなせるところなんだろうが…まぁ無理だよな!
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犠牲として、美しく死ぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
この世界に生まれ落ちた装飾が必ず考えるだろう、相応しい死に様。
耽美なピナくんは頭では、美しき死が自分にふさわしいアクセサリーだと思っている。
だが汚れた密室で後ろから迫った”死”は、そんな観念を思い切り殴りつける。
食われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
圧倒的な体格差、指先に感じる牙の尖り、吐息の暖かさ、固唾のぬめり。
そのリアリティに腰を抜かしながら、ピノくんは脅してきたリズへの怒りより先に、『可愛いところもある』自分を褒める。生粋なナルシストめ…かわいいな。
彼のプレイボーイっぷりは刹那主義と自己愛の混ざった観念が生んでると思うのだけど、リズに食われかかることで彼は恐怖を、それを生み出す生存本能を実感した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
『どうせ死ぬよ』とうそぶいていても、それが間近に迫ると己を裏切る。
そういう自分もいると、震えながら喜び、認める。
そうしてから、腹の底から湧き上がるプライドを叩きつける。背中を丸め、自分を偽るクマ公にはけして出来ない、華のある宣戦布告。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
食われる側にも、餌食なりの矜持がある。
懸命に生きようとあがくからこそ、燃える美しさがある。
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ピナくんの役者としての凄みを、梶くんが渾身の演技で見事に届けてくれたが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
光と闇の間、震える犠牲と吠える勇者の間に顔を起き、草食獣は堂々と光に顔を向ける。
死に赴くものの怒り。リズが脳裏からかき消そうと、必死にあがいている断末魔の表情。
それを、ピナくんは突きつける。
暴力ではけして勝てない種の壁を、ピナくんは役者としての凄み、恐怖に正面から対峙し光を向く覚悟で超えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
最悪のプレイボーイを印象づけておいて、このカッコ良さで終わるのスゲー上手いな、と思う。好きになっちゃうヤバいヤバい…(もう手遅れ)
迫真の演技の意味を知っている、たった一人の部員。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
リズは餌食の反撃に手も足も出ず、拳を握るしかない。
それはやっぱり、心の何処かで自分の中の真実ではなく、当たり前の事実を認識していて、しかしそれを認められない多重な鎖に、彼が閉じ込められているからだと思う。
閉ざされているからこそ、開放を、共感を、共有を求めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
その思いは多分レゴシ達と同じで、しかしありのままの自分は惨劇を連れてきた。
間違えきった青春の結末は、リズ一人では悲劇にしか終わらない。流れた血の重さを考えれば、簡単に許すことも出来ない。
暴力的な衝突でしか、開かない扉もある
そしてそういう生き様のプロは、覚悟を懐に忍ばせて太く生き抜こうとしていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
イブキが仲間に預けた”もしも”が、実現する時。
それはイブキとルイの関係が、リズとテムが辿ったのと同じ道に落ちる時だ。
それを、銃弾で止める責務と覚悟。
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喰う側にも矜持と希望があり、それが甘っちょろい夢で守りきれないことも、大人はよく解っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
ルイと出会い、生まれたものがあまりに美しいからこそ、獣の本能程度で穢したくない。
俺の命で贖えるなら、その輝きを血で守る。
あまりに凶暴で、切ない純愛である。惚れたら、命がけよ…。
そして子供も、譲れない覚悟を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
ナメた脅しぶっ込んできたクソ熊に、手紙で一発ぶちかます。
ピナくんの勝手な挑戦状がリズの総身に怒りを宿し、決闘が始まる。
望まず始まった闘いだが、そこでぶつかり合う魂が闘争を、レゴシに引き付けていく。
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レゴシはリズの生態、苦しみをよくわかっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
リズは凶獣の眼を、レゴシの前でだけ開放できる。
覆いのない獣と獣、殴り合いというコミュニケーション。
草食に差し出したら、キビの手を引きちぎったときのように、テムを捕食したときのように、悲劇にしかならない血みどろの対話。
それが、肉食と肉食なら出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
例え”真実の関係”を巡って正反対の主張を譲れないとしても、ここにおいてリズは自由だ。
ここでしか自由に為れないことに、人喰い羆の悲しさがあるのかもしれない。
それでも、レゴシは蜜色の偽りを投げ捨てて、リズに正対する。
牙も爪も使わないレゴシの闘術は、あまりに恵まれたリズの肉体には叶わない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
生まれつき強い…強すぎる肉体にブレーキをかけず、振り回される凶爪。
痛みをごまかす蜂蜜は打ち捨てられ、第二ラウンドはお互い裸、傷を見せ合う。
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血に赤く染まる視界は、テムを食った時のリズの再演だ。レゴシだって、ハルちゃん相手に同じ立場になったかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
でもならなかった…なれなかった男と、なるしかなかった…なってしまった男の対峙。
血に眼を塞がれつつも、レゴシは鏡に映る自分を、リズの思いを見ようとする。
それは生っちょろい対話ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
本気で相手をぶちのめす、殺して黙らせる気概に満ちた、獣達の牙鳴りがシャワー室に満ちる。
そして本気だからこそ、暴かれていくものがある。
自傷の痛み、血の意味。憎悪の果て。
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レゴシはゴウヒンさんの行いを見て、喰う者の業と悲しみ、それに向き合う誠と強さを知った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
食われるものの無念を背負い、リズの頭を満たした蜜色の妄想を蹴り飛ばすように、”抵抗する肉”として蹴りを叩き込む。
テムが出来なかったこと…多分、したかったことを背負う代闘士(チャンピオン)。
そんな彼に、リズは牙が連れてくるものを語る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
憎悪と断絶。
それだけが、僕たち肉食獣が手に入れられるものなんだ。
もうリズは、それを心の何処かで理解している。あの時得られたものが、笑顔などではなかったことを覚えている。
だが止まれない。
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おばちゃんの乱入で、リズはいったん”優しい熊さん”の顔を取り戻す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
誰彼構わず食い殺す怪物に、なりたくないしなるわけにも行かない自分に、必死にしがみついている。
もし食欲と破壊願望に身を任せてしまえば、テムとの日々を壊したのも、自分の中の獣だったことになる。だから、獣は平穏を演じる
でもそれが、僕らの救いではないとレゴシは感じ、信じるからこそ、背中を向けた直後に殴り合い、一年前の自分が選ばなかった道へ進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
年と年の間、大晦日の決闘。
それは控えめな子供だったレゴシが、自分と世界に満ちる矛盾と輝きに向き合った、時間が出した答え。
アイツは殴りつけないと止まらない。変われない。戻れない。認められない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
拳に乗った哀しみと矛盾を、師匠譲りの落ち着きで認めながら、レゴシは強くなる秘策を求める。
瞳を封じていた血が、おそらくゴウヒンさんの手で治療されているのが印象的だ。
血は獣を狂わす。自分の血でも、獲物の血でも同じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
リズはズタズタになった心から、はちみつ色の血が流れ続けている。それに狂って…狂ったふりを続けて、日常を演じつつ凄まじく軋んでいる。
レゴシにも同じ獣が住んでいるが、しかし血は止まる。誰かが止めてくれる。
そんな”誰か”がいるのがレゴシでありルイであり、いないのがリズなんだろうな、と思っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
絆を求めていたのは同じでも、運命は残酷に与え、また奪う。
ひび割れた鏡の中写っているのは、食い殺すお前か、守る俺か。
その区別なんて、思いの外薄いのかもしれない。
それでも、鏡の向こう側には落ちないとレゴシは踏ん張る。闘わなければいけない理由も、背負った思いも、血みどろの約束も、全て心のなかにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月11日
さて、そんな少年が孤独なる暴帝と闘う秘策とはなにか。
クライマックスが明瞭になり、興奮と悲しみがより強く薫る回でした。次回も楽しみ。