イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

黄昏アウトフォーカス:第2話『俺にしなよ』感想ツイートまとめ

 黄昏アウトフォーカス 第2話を見る。

 カメラ越しに恋心を自覚してしまった真央くんに、無自覚無邪気に触れる寿くん。
 『もう決着(ケリ)付いてんだろそのイチャイチャッ!』と思わず叫ぶ、こっちの思惑を追いかけるように、最悪彼氏に顔面殴られた想い人に告白敢行! …って思ったら、そっからすごい勢いでこじれ出す第2話である。
 12話で三組の恋物語を走り切る関係か、フツーの話だったらもうちょい生煮えでグツグツ煮込みそうなところが一気に踏み込まれて、しかし思いが衝突したところからクルンと身を翻して、なかなか面白いところに話が転がってきた。
 動き出した映画撮影を人質に取る形で、本音を保留にしている真央くんのズルさが良い。

 

 描かれざる一年間でコトコト煮込まれた感情を下地に、それが男同士の恋愛へと相転移していく瞬間へ、一気に踏み込むこのお話。
 先生との関係がズルズル長い時間をかけて腐って行ったように、二人の間にある思いは一年かけて幸せを作っていったわけだが、しかしそれが真実の形を得ようとする瞬間、当事者たちはスルンとすれ違って、お互いを翻弄する。
 ピンボケを表現に変えるOutfocusをタイトルに入れている意味が、だんだん分かってくる第2話と言える。
 お互いなにが本当で、一番大事にしたいのか。
 見えているはずのものが見えなくなる、だからこそ想像したくなる、甘くて苦くて辛くて幸せな時間。
 そこが作品の焦点なのだなと、メチャクチャ濃厚に内心を綴るモノローグの多用、触れ合いつつもすれ違う体温と視線の強調から感じる回だった。

 前半は真央くん、後半は寿くん。
 視点担当人物を切り替えつつ、それぞれの欲望と幸福が饒舌に画面を埋めていくわけだが、その過剰がOutfocusを生み出す源泉だったりもする。
 考えすぎ感じすぎて、頭に溢れかえったものに邪魔されて、本当に大事なものをシンプルに切り取れない。
 そういうナイーブで身勝手で、純粋な時代に二人はいて、一年ルームメイトとして互いを尊重し、大事にした日々を裏切るように、気持ちも態度も揺らいでいく。

 モノローグが語りうるのは常に自分の内心だけであり、相手がどう思うかを乗っけることは出来ないモノで、今回のエピソードは埋め尽くされている。
 眼の前の相手が何を感じて、どうなりたいのか。
 それを真摯に考える献身は、恋心を自覚する前の友達時代は確かにあったのに、今は見えなくなってしまっている。
 誠実だからこそカメラの前で交わした約束が、甘い楔になって心を縛り、本当に行き着くべき場所へ二人を連れて行く邪魔をする。
 愛に素直に真っ直ぐ引っ張れば、簡単にほどけてしまいそうな絡み方をした感情が、肥大化した自意識に邪魔されてなかなか、地金を見せてくれない。

 

 『いやその距離感は…もうお互い”好き”じゃん…』と思えるゼロ距離接触が乱発され、見ているこっちにもラブラブっぷりが明白な、二人の距離。
 家族に居場所がなく、最悪な初恋に翻弄され、自分が自分でいられる居場所をずっと探してきた青年が、ふと立ち返ってみたらそここそが居場所だった、たった一つの部屋。
 そこに帰ってきて、妙にスカッとする恋の破綻を告げたら、ずっと求めてきたハッピーエンドが降って湧いて、ヒラリと身をかわしてスカされる。
 ゲイである自分を拒絶されることを、かなり恐れている寿くんにとって、真央くん一連の立ち回りはかなり残酷だ。

 ファッションのように気楽に、取り替えられるフツーの恋とは少し違った間合いで、寿くんは恋に依存している。
 寂しさを大人の人質に取られ、じわじわと腐っていく関係をそれでも断ち切れない日々には、誰かに心から愛して欲しいと願う、極めて純粋な不良少年の心が滲む。
 先生との関係はそんな気持ちを腐らせる毒だったわけだが、それを投げ捨てても生きていけるのだと思えるくらい、寿くんは真央くんと共に在ることに…彼が恋人になってくれなくても、救いを見出していた。
 自分からその関係を壊す踏み込みをしておいて、寸前心が見えない遠くに逃げて、追いかけても逃げ続ける育児のなさは、寿くんを深く傷つけている。

 この痛みが真央くんにOutfocusされているのか、視点を寿くんに切り替え彼のモノローグで埋める物語は明らかにしない。
 そのすれ違うと解らなさが、追いかけたくなる恋の引力を生み出すことも、少年たちのナイーブな感覚を接写するカメラが、良く伝えてくる。

 

 強烈なクローズアップで少年たちの思春期に切り込むこのお話に、程よい風通しを与えるのが映画製作だと思う。
 集団で力を合わせ、たった三十分に青春の全部を賭け、良いものを追い求めリテイクを繰り返す。
 その真摯な行為が、私的な感情の絡み合いと並走し、リンクし、どこか突き放した手応えを作品に宿す。

 お前らの気持ちとは関係なく、映画は作る。
 あるいはお前らの気持ちが行き着くべき場所へ行かなきゃ、映画は完成しない。
 突き放した客観と湿った主観、両極を行ったり来たりしながら、子どもらなり本気で挑む映画製作は、主演俳優とカメラマンを制作現場にまくりこみ、あるいは遠ざけながら進んでいく。
 市川監督を筆頭に、必死こいて30分の作品を形にするべく頑張っている連中の本気が描かれるほどに、恋に翻弄されて役にFocus出来ない寿くんや、映画撮影を人質に自分の気持ちを伝える誠実から逃げている真央くんに、歯がゆさを感じる。
 多くの人が関わり、本気じゃなきゃ成立しない部活動が、二人が私的領域に沈み込むのを塞ぐ楔の仕事をしとる感じだな。

 

 映画撮影は多くの人が関わる公的活動であると同時に、創作者それぞれの魂を焼き付ける、私的表現でもある。
 『みんなが困るから、やらなきゃいけないから』という、義務を逆手に握った冷たい理屈ではなく、眼の前の芝居に、あるいはカメラワークに全霊を注ぎ、自分だけに作れる真実をフィルムに込めることで、映画は完成していく…はずだ。
 そのためには、二人はお互いの思いに適切にピントを合わせ、相手の顔…そこに反射する自分の願望を見つめて、向き合う必要があるだろう。
 より善い映画を作りうる、より善い表現者であるためには、恋から逃げず愛を弄ばず、真実自分たちらしい自分でいなければいけない。

 しかし今の二人…特に真央くんは、そういう存在たり得ていないように思える。
 寄る辺ない己の焦点を合わせてくれる、唯一の存在として真央くんを見つけた寿くんもまた、真央くんが誠実で正しくあってくれなければ、フラフラと揺らいでしまう。
 その連動を恋というのならば、なかなかに残酷で危ういもので…だからこそ甘い。
 お互い個別に切り離されているはずなのに、どうしても眼の前の写像に魂が揺さぶられて、ピッタリと重なり合ってくれない。
 そういう特別さが、かなり早い段階からグツグツ煮立って転がって、一筋縄ではいかない複雑さで踊る様子は、見ていてなかなか楽しい。
 そして切ない。

 

 権力を確認する遊戯のように、寿くんに『別れないで…』を言わせていた最悪教師は、真央くんの悪しき鏡だ。
 身体と一緒に心もぶん殴った、なってはいけない最悪の大人。
 そういう存在に怒りを覚えているのに、自分の気持ちに臆病に揺らぐことで、真央くんの自己像はそっち側へと近づいていってしまう。
 そうすれば寿くんは自分の輪郭を捕まえられない、孤独で腐った場所へと逆戻りしてしまうだろう。
 積み重なる思いと年月を、腐らせるか輝かせるかは少年たちの愛と勇気にかかっているわけだが、このまま逃げ続ければ時間は少年たちを裏切り、睦み合った日々はお互いを傷つける嘘になってしまう。
 そういう未来は、純粋でチャーミングな少年たちには似合わない。
 自分の胸の中にある真実にFocusを合わせて、それを真っ直ぐ伝えることを恐れない、真の勇気と愛を持った存在で、彼らにはいて欲しい。

 そういう甘っちょろいピュアさを、スレたはずの僕の中から引っ張り出す力があるお話で、大変いい感じだ。
 やっぱ映画撮影に勤しむ少年達の群像が、爽やかに熱を持って描かれていることで、迷いつつ裏切ってはいけない大切なものが、作中しっかりした輪郭を得ている感じがある。
 それを真っ先に捕まえなければいけないカメラマンが、いちばん大事なものをピンボケさせている現状が、今後どう転がっていくのか。
 私的な感情のうねりと、皆で挑む創作活動の薫風が混じり合う場所に、どんな青春が結像されていくのか。
 程よいバランスで湿り気と熱、爽やかな風が混ざり合っていて、来週も大変楽しみです。