ちょっとお高いコースで出会った新たなお姉さんが、遥の新たな一面を削り出していく、空色ユーティリティ第8話である。
このアニメの良いところがたくさん出る回で、大変良かった。
「クソボケVRで稼いだ泡銭、”ゴルフ”の新たな一面を体験するのに使おうぜ!」という彩花のナイスな提案から始まり、キャディーという職業がどんだけゴルフを豊かにするのか、それに導かれた新たな挑戦がどれだけ眩しいか、しっかり描く回だった。
ずーっと美波のお姉さんやってた遥さんが、年相応に抱えた傷を預けられる存在の登場で、ようやくその影を全面に出してくる回でもある。
遥が規格外の実力故に色々抱え込んでる気配は既に示されていたが、そんな遥の献身で美波がちょっと頼もしくなってきたので、そういう影を照らすにはいいタイミングだったと思う。
ノンキを演じて気軽に楽しく、ゴルフ初心者がゴルフを好きになってくれるよう健気に頑張ってくれてたあの子は、見た目通りの無敵な天使ではもちろん無い。
自分なりの悩みも痛みも抱えた上で、おバカな末っ子相手にそういうモン見せず、一緒にコースを回り練習付き合ってくれていたのだ。
そういう優しい意地に報いる話が、素敵なNEWお姉さんと共にやってきたのは良かった。
彩花にとってもキャディーという適性を見出され、その職業が成し遂げられる可能性を実地で見れて、21歳らしい出会いと展望が、豊かに花開く回だった。
今まで美波→遥→彩花と、3歳の年輪差を活かして大人びたありがたみ、幼い純粋さを欠いてきた物語が、プロを諦め親となり、それでもゴルフと関わる喜びに帰還した苦労人の存在感で大きく包まれ直し、まだまだ少女でしか無いお姉さんチームの隠れた顔に、しっかりライトがあたった。
それは”ゴルフ”の新たな可能性を照らすものでもあって、競技を良く知ればこそのアドバイスとか、悪くない安定感よりワクワクする挑戦に飛び込む楽しさとか、色んな展望が開けた。
賞金なければ飛び込めない「ちょっとお高いコース」のスペシャルさが、しっかり描かれ演出されているのも良かったが、そういう特別な場所で出会える体験全部を、めぐみさんというキャラにまとめて食べやすくお出ししてきたのは、素晴らしかったと思う。
三人だとお姉さんチームに美波が甘え、その溌剌に年上が癒やされる
という構図に落ち着いてしまいがちなのだが、新たな場所で新たな”姉”と向き合うことで、その構図が崩れて新たな顔が見えた。
その何かを乗り越えた感じは、三人で楽しく進んできたからこその飛躍で、三人にとって(そしてこのお話にとって)の”ゴルフ”の意味が、より深まる回だったと感じた。
プロを諦めキャディーという立場になっても、ゴルフは素晴らしいスポーツであり続ける。
競技に汲々とせず、生涯スポーツとしてのゴルフの顔を大事に削り出し続けているこのお話にとって、めぐみさんのゴルフ道がここで書けたのは凄い良いことだったと思う。
大人なゴルフにまとまりかけていた遥に、忘れ物を取り戻させた今回のプレイが、彼女を競技の最前線に復帰させていくかはまだ解らない。
でもそうなっても…そしてそうでなくても、キャディーという存在がいたから見つけられた”特別”には、大きな意味があるだろう。
年齢や立場を超えて、色んな繋がり方や向き合い方が出来る多彩な面白さを、”ゴルフ”に込めて描けてる。
そういう作品の強みが、色濃く出てて素晴らしい回だったと思います。




というわけで遥からにじみ出るオーラが暗いッ!
かつて教えを請うた憧れの人がゴルフの本道からドロップ・アウトし、自分も真っ直ぐひたむきには走れなくなっている現状は、末っ子の前では快活を取り繕ってる彼女にとっても、結構重たいのだと思う。
美波は「今日の遥さん、様子が違いません?」と言ってたけど、多分こっちが地金で、そういう鬱屈をお前の前では出さないよう、かなり頑張ってくれてたんだと思う…。
こういう「大人の目立たぬ偉さ」にフォーカスしてるの、かなり好きなんだよなこのアニメ…。
カラスや鹿やカエルと仲良くやりあう、ネイチャースポーツとしてのゴルフの顔なんかもコミカルに描きつつ、物語はキャディーという存在がいればこそ新たな局面へ飛び込んでいく皆を、明るく楽しく…少しの影を混じえて描く。
ともすれば”ゴルフの端女”扱いされてしまいがちなキャディーという職業が、どんだけコースと競技に精通し、プレイヤーだけじゃ見えず手も届かない場所へ連れて行ってくれる存在なのかを、気持ちよく描く回なのは良かった。
その凄みが一応基礎は出来てきた美波が、新しい自分を見つける説得力を支えているのが、実はゆるスポ根としても仕上がりが良いアニメの描き方だなと思う。
ここまで八話見てみた通り、美波は大変浅はかで目の前三センチしか見えてねー(だから可愛い)おバカだ。
ソシャゲ感覚で簡単に浮かれ、自分に出来ることとやりたいことの差が解らぬまま、騒がしく飛び込んで上手く行かなくて、ちょっと凹んでとびきりの元気で、また突っ走っていく。
”姉”たちも癒やされまくりなその善さを、守りつつ伸ばしてあげるアドバイスをめぐみさんがしっかりやっていて、大変良かった。
遥たちは美波にゾッコン脳を焼かれているので、「立ち止まって着実に行こう!」なんて、足止めそうで難易度高い助言は中々出せないんだよなぁ…。
今日がはじめましてなめぐみさんだからこそ、手渡せた変化だと思う。
美波は超がつくほどのミーハーなので、「かっこいい!」と思えたら何でも挑戦するし、そこで失敗しても立ち止まらず突っ走れる馬力もある。
めぐみさんはそういう気質を見切って、大人びたグッドで終わらず全力のナイスを目指したくなるような言葉選びで、着実なプレイングの面白さを伝えてくれていた。
この一段高い視野と誘導は、今まで美波の無謀を隣り合って支えてきたお姉さんチームにはちょっと無いもので、さらなる”姉”が顔出したからこその一歩だなぁと思う。
息子との新たなゴルフを心から楽しんでいるめぐみさんの余裕は、年経ることの意味と価値を大事にしている年齢差アニメの、一番いいところブン回ってたね…。
こういうお姉さんに支えられて、遥も今まで出さなかった影を滲ませ描写が重たいわけだが。
美波相手にしてるときは何も考えない風を装って…あるいはそういう純粋さをこの時だけは取り戻して、ワハハと笑いながら”ゴルフ”してた遥が、実は相当苦しんで自分なりのプレイを探っている姿が、ようやく見れて良かった。
トップに上がっていくもの特有の、華やかな引力を置き去りに大人びた賢さに溺れてるから、めぐみさんは置きに行くプレイに”グッド”しか言わない。
しかし最後には、人も自分も魅了する華やぎを取り戻したプレイに”ナイス”が出る。
果敢な挑戦が孕むリスクを、なんも解んないまま突っ走れる幼い時代は、既に終わってる。
それはお互い知った上で、それでも人生の艱難辛苦を乗り越え飲み干した上で、未だ”ゴルフ”が好きだといえる境地に、めぐみさんは一足先にたどり着いている。
だから苦境に迷う”妹”が自分で一歩を踏み出せるよう、古馴染み故の煽りも混ぜてしっかりキャディーし、壁を超えさせられた。
そこには遥が美波に向けるような、かつての自分に向ける郷愁と優しさ、失ってしまったものを慈しむ視線が、立場を変えて変奏されていたと思う。
遥が美波の無垢なおバカを心から愛しているように、めぐみさんから見れば遥の苦悩はとてもチャーミングで、向き合って背負い為すべき価値のある荷物なのだ。
プロを諦めためぐみさんは、挑むことの怖さと難しさを良く知っている。
じゃあ夢が終わった後の今は煤けた敗残かっていうと、そんな事はないと胸を張っていく。
キャディーになっても、親になっても、”ゴルフ”はいつでも最高だ。
そういえる先輩が、遥たちの道の先にいるのは、やっぱ凄い良いことだと思う。
美波を眩しく引っ張ってるように思える遥も、時に”姉”に支えられ導いてもらえなきゃ影から抜け出せない、まだまだ悩める17歳だってことを描き直したこと含め。
遥が美波に流し込んでる愛ゆえの全肯定と、苦言混じり煽りまじり、めぐみさんが手渡す愛の味わいがちょっと違うのが、また良いんだよな…。
というわけで第三の”姉”襲来、年齢差アニメの面目躍如な、キャディーさんのお仕事回でした。
”お高いコース”の特別感と合わせて、テーマに選んだスポーツの多彩な魅力をしっかり伝えようとしている、誠実な姿勢が活きたエピソードだったと思います。
三爺のトボケたゴルフ道もあわせて、どんな人でもどんな立場でも”ゴルフ”は良いものなんだと、選び取ったテーマを笑いを交えて称揚し続ける姿勢、俺は凄く好きだ。
陰影を削り出す担当が遥になったことで、美波天性のおバカがいつも以上に元気に、チャーミングに暴れていたのも良かったな…。
もう美波のやること為すこと、ニコニコ笑いながら「バカだな~」と思える愛着が作品にあるので、空色ユーティリティ…”無敵”だと思います。
大学卒業を控えた彩花の進路が、良きロールモデルを得て定まったのも良かった。
次回も楽しみッ!