素顔を見せない相手を前に、どんな間合いで繋がるか。
冴えわたるライティングとレイアウトが、キャラとドラマを豊かに語る。
RINGING FATE 第9話を見る。
大変良かった。
物語としては地ならしの回で、あんま大きく事件が起きているわけではないのだが、だからこそ内面や関係性を構図と照明にたくし、結構複雑な距離感を見事に可視化する、技アリの回だった。
俺はこういうバキバキにキマった画面構成が好きなので、常時キャラとキャラの繋がりが意識され、顔が見えるか見えないか、影にいるか光に身を置くかで色んなメッセージが出てる今回、たっぷりと作品に浸ることが出来た。
き、気持ちええわホンマ…。
沢城ボイスの毒蛇シュウが色々引っ掻き回す回だが、彼女がどんだけ信用ならないか、ぽわぽわに見えて芯が強い要ちゃんの懸命さと、無明に流されハメられるエデンくんの対比に混じえて、上手く見せても来た。
仮面で顔を隠し、言辞を弄して便利に他人を使おうとしてるシュウの怪しさをたっぷり描いた後に、お互いの顔が見えないからこそ心を伝えれる精神空間で、サブローとの対話を試みる展開も良い。
シュウが纏った闇を隼風が払う形にすることで、「彼はいい人!」と直感した要ちゃんが間違ってなかったと、語らず示す展開でもあったな。
そういう助けが間に合わなくて、エデンくんは絡め取られで毒牙の餌食…と。
エデンくんの浮ついた感じはここまでも幾度か描かれたが、彩子相手には突破口になったその盲目な一途さが、歴戦の悪党には付け入る隙になっちゃった感じ。
自分の過去がわからないから不安になり、相棒が自分を殺す武器を鍛えてると思い込んで、怪しい新参者の手を取る。
軽挙妄動と諌めるには、エデンくんの状況とキャラクター性には「まぁそうなるか…」という納得もあり、次回の身内バトルがどう転がっていくのか、いい感じに気になる。
自分を見せない、語らないことで生まれる摩擦のヤバさは、例えば大熊師匠の危うい一途とか、サブローの自己開示へのためらいとかにも反射しとるね。
つーか青、マジ死んだんスカ…。




というわけで、色んな人の運命が絡み合う今回。
各キャラクターの立ち位置、そこに当たる光と各々の距離感は、それぞれの内面と心の距離を明白に語る。
冴えたライティングとレイアウトを映像言語に選び、色んなモノを描こうとする演出方針が、隣り合わないからこそ心を伝えられる精神空間での対話に繋がる運びは、凄くクレバーかつ美麗で良かった。
いわゆる”勝負回”じゃない、カウントを整える話数にこういう冴えが在るの、本当にスゴいなと思うね。
色んなモノが描かれているエピソードだが、エデンくんの弱さはその中核にある。
すべてを忘れ、明るく気楽に生きているように見える彼は独りでは陰の中に身を起き、まず逃げることを考えてしまう臆病者だ。
いなくなった要を探すという責務は、光の中に立つ彩子に言われて初めて意識できるものであり、彼女をテコにすることでしかエデンくんは、自分を人として正しい行いに進み出せない。
この無明は彼の本性…というよりも、殺されて当然な大罪すらも忘れきっている(かもしれない)、カンシステムの欠落が生み出す影なのだろう。
自分が何者であるか、当人は忘れても前世の因縁は刃を背負って追いすがり…あるいは忘却の奥刻まれた本性は、自分自身を逃がしてくれない。
「己に向き合う」という古典的なテーマを、ポップな冥府譚で描くこのお話し、唐突にローカルギャグとして三字経出てくるのも、まぁ納得である。
つーか現代中国、三字経が教養混じえたコスリとして成立する文化環境なんだね…。
さておき隼風の復讐から逃げ、手前勝手に影の中で怯え迷妄に振り回されるエデンくんに対し、要ちゃんはかなり明瞭に目の前の相手の善悪を判断し、拒むべきを拒む。
都合のいいことベラベラ並べ、興味を引きそうなショッキングを餌に使うシュウの言辞を跳ね返して、その手を跳ね除け影から身を遠ざける。
この助けに、隼風の乱入がいい仕事しているのが、なかなか面白い書き方だ。
敵か味方か定かならぬ復讐鬼が、何を望んで剣を握っているのか。
要ちゃんは命がけの戦いをした相手の顔をちゃんと見ようとするし、(ティムくんの歩み寄りもあって)隼風も要がシュウの闇に引っ張られないよう、不器用ながら手を伸ばす。
この関係がどこに転がっていくのか、未だ完全に定かではないけども、なんか悪いことは起きそうな感じがある。
この”感じ”を伝えるために、今回キャラがどこに立ちどう光が当たり(あるいは当たらず)、お互いの顔がちゃんと見えているか否かは、冴えた表現に削り出されているのだろう。
ここら辺の映像言語の選び方が、毎回美しく強い所が好きだぜ…。
要ちゃんが相手の声をちゃんと聞こうとするのに対し、エデンくんは暗い影の中からコソコソ伺うことしかしない。
この対人関係への臆病が、無明に踊らされて良いように利用されるきっかけにもなっているわけだが、そういう愚かしさは万人のものだと思う。
これをエデンくんが乗り越えて業を晴らすのか、はたまた踊らされて宿命に押しつぶされるかは、まだまだ先の読めないところだ。
ぷにぷにしたキャラデザに似合わず、相当シビアで過酷な運命に振り回され傷つく話だってのは、大熊師匠のエピソードでキッチリ示してるしなッ!
やっぱあのお話を初っ端にブチかましたの、正着以外の何物でもなかったな…。
病魔に縛られ自由に生きられなかった反動か、要ちゃんは自分を乗っ取ろうとする悪魔、八大罪人の独りを頭に被って、心からの対話を果たそうとする。
このコミュニケーションに開かれた姿勢は、主役っぽい前向きさがあって好きだ。
ぽわぽわ流されるばかりのおバカちゃんに見えて、納得できない勝利を跳ね除け己を貫いたり、その反動で記憶を失ったり、めっちゃ芯があるからな…。
今回サブローを頭に被ったのも、その一環だとよく分かるようになってきたのは、9話お話に付き合わせてもらった成果で、とてもありがたい。
やっぱこういう感じに、キャラや物語を読み解けてる手応えが返ってくると、作品好きになれて良い。




今回は要ちゃんとエデンくん、二人の記憶喪失者の運命を対照しながら描き、最後に対戦申込みで衝突させる構造だ。
顔を突き合わせ対話する相手もいないまま、自分の弱さに耐えかねてアーマーで自分を覆うエデンくんは、力でシュウをどうにかしようとして、それ以上の力でねじ伏せられ、奸智に飲み込まれてしまう。
外付けの暴力装置に頼る必要なく、他人を踏みにじれる強靭なエゴが具現化されて、「こんなチビならどうにか出来んだろ」と見た目でナメたエデンくんを、深い闇に引きずり込んでいく構図最高。
要ちゃんは冷酷であろうと努めているサブローが、張り巡らせた心の壁が相手を見えなくしても、届く声を頼りにその存在を感じ、自分の気持ちを伝えようとする。
その歩み寄りに向き合えないサブローは、自分と同じ顔をした超越者に本心を告げっれ、他人を利用するエゴイストであり続けられない”大ウソつき”な自分を思い知らされる。
見えていても視えていないもの、明かされていないけど聞こえるものが、そこには在る。
要ちゃんが想像より堅牢な魂してるので、チョロそうなエデンくんに的を変えるシュウの悪辣も大したもんだが、悪魔の誘いにチョロっと乗って、相手が用意したルールでカン握り込まれちゃうエデンくんも、まー大概では在る。
でも惚れた女にいい顔したいし、友達には裏切られたくないし、自分を開示したくもないエデンくんの浅薄、異様に人間臭くて憎みきれないんだよな…。
正しいか間違ってるかで言えば、間違いなく間違っているし、結果とんでもない状況にハメられてはいるんだが。
それでも冥府のシステムに記憶を奪われ、復讐鬼に命を狙われ、弱さを超えていく戦いにも挑まなかったのなら、まぁこうはなるよね…という。
エデンくん相手でもシュウは影の側に常に立ち続け、要ちゃんが抵抗した闇への引きずり込みに、甘く載せられていってしまう。
対してサブローはお互いが視えない暗い闇に身を起きつつも、だからこそ心が通じると受け止める相手を前にして、装った冷酷さの奥に微かに触れる。
ここで黒サブローが、白サブローの抱える弱さと迷いを指摘し、幽霊列車からの声が要ちゃんに届いていない構図はとてもおもしろかった。
サブローを被るという、相手を信頼すればこそ自分に引き寄せる行為を経ても、なんかスゲェ因縁と真実の奥にいるっぽい黒サブローの存在は認識できない。
そういう存在からの声が、無明の闇がどこから生まれているかを暴く。
闇に満ちた精神世界での可視/不可視の絡み合いは、二人のサブローと要ちゃんの距離感を改めて描いていて、とても面白かった。
隼風戦の暴走ファイトを見ていても、白サブローにどこか痛ましさを感じるわけだが、何も見えぬまま救いを求めてもがき、さらに罪を重ねていく様子は、極めて正統派のアングルで”亡者”ってのを書いてるように思う。
そこから抜け出すヒントが、お互いが見えない/見せない現状をスタート地点にして、バカみたいに率直に自分の気持ちをまず差し出してきた、要ちゃんの歩み寄りにあるのも、業を乗り越え徳を為す物語らしさがあって善い。
この無垢が、鋼の如き譲らぬ魂あってこそなのが好きよ。
要ちゃんは文通相手の記憶を語ることで、自分が何に突き動かされて前に進むかを、光の中に示した。
サブローはそれを拒み、アンフェアで一方的な利用関係を続けようとする。
しかしその強者の仕草は、彼が本来持っている何かを覆い隠し、遠ざけているようにも見える。
良いように利用されたとしても、まず自分から壁を外し心を見せることの意味を、強者であるはずのサブローは素直に受け止められない。
「弱いからこそ強い」という、要ちゃんが体現する不思議な矛盾を、どうすれば受け入れられるのか。
自分も相手も見えない濃い闇から、己を引っ張り出せるのか。
サブローの課題が可視化される回でもある。
要ちゃんが「弱いからこそ強い」のに対し、エデンくんは「弱いから弱い」
キャラだ。
相棒の心のうちに分け入って、なぜ自分を殺す剣を鍛えているのかしっかり聞く勇気もない。
調子の良い利益をチラつかせて、自分を利用する蛇の懐にも飛び込んでしまう。
次回の対決はそういう”弱さ”が衝突し、その地金を見せる回になりそうだが…それにしたって、キレイにハメられすぎだろッ!!
弱者故の余計な思考が、ジャンケン勝負の駆け引きにノイズを混ぜて見事に負けるの、ホント終わってて良かった。
お前はそういう負け方をするキャラであり、要ちゃんはああいう勝ち方をするキャラなのだ。
ここら辺の書き分けは、残酷で鮮烈ね。
自己開示のしなさではティムくんも似たりよったりで、敵であるはずの隼風には自分の事情を明かすのに、仲間にはまーったくなんも言わないムッツリで拒むの、あんま良くないなぁと思う。
しかしその頑なさ、素直になれなさは人間普遍の弱さでありしがらみであり、冥府に落ちても消えない業なのだろう。
思えばあんな強面な大熊師匠だって、素直な気持ちを娘に伝えられなかったからこそあんなになったわけで、相手を殴り飛ばす”強さ”よりもっと強くて、もっと難しい強さを、追い続けてる話なのだろう。
相手を物質的に負かす男性原理を強要される世界で、「負けたからこそ勝つ」という女性原理なルールを持ち込むキャラが主役…か。
というわけで、弱い強者である要ちゃんの生き方と、弱い弱者であるエデンくんの迷妄が、鮮烈に対比されるエピソードでした。
両方シュウがまとう闇の誘惑は受けつつ、片方はそれを拒んで光の方へ、もう一方はそれにまくりこまれて影の中へ、それぞれ進んでいって次回対決、と…。
一体どうなるんだマジで!(毎週思う感想)
隼風やティムくんの明暗もより濃くなってきて、記憶を奪われた亡者たちのすれ違いと対話は、どんどん鮮やかさを増していってます。
それを照らす物語の燈火として、”戦い”を選んでいる意味もまた、新たに描き出されていくのか。
次回も大変楽しみです!