LAZARUS 第9話を見る。
前回クリスの過去とともに廃油田を焼いた炎が、終末までの残り時間とヌルい空気を焼き尽くす…と思ってたら、リーランドのオリジンがすげーさらっと明かされ、公聴会はなんとなくお咎め保留となり、軍の切れ者が超凄腕の暗殺者をテストするべく、特殊部隊が殺戮のシュレッダーにかけられた。
幽霊の如き代理人と、最高のアクションで描かれる双竜大暴れは相当に「やりたかったんだろうなぁ…」が伝わる仕上がりであったが、世界の命運背負ってる割に切迫感が足りない雰囲気は相変わらずで、キャラの過去の焼き方があんま上手くないのも相変わらず。
事前のコスりが足らないから、そんなにショックでもねぇんだよなぁ、内通発覚…。
仕上がったアクションやら独自の未来予測やら、そこに宿る独自の雰囲気と匂いやら。
LAZARUSチームの感情やドラマを、足を止めて深く掘り下げるより書きたいものがこのアニメには沢山あって、そのスタイリッシュな力強さは本当に凄いのだが。
自分はどうしてもゴリッと硬い物語の手触りをアニメに求めがちなので、例えば今回明かされたリーランドとアダムの繋がりだとか、その背景にある彼の家庭事情だとかは、話数をまたいでネタを組み立てた上で、もうちょいしっかり味わいたかった。
ここら辺はエレイナのカルト出身要素とか、クリスの工作員要素とかも同じで、総じて物語開始時伏せられていた過去という札のめくり方が、あんまりグッと来ない感じと似ている。
今後物語がクライマックスに近づくに連れ、残ったダグやアクセルの過去も、これを明かせば状況が動く大きな鬼札として描かれていくのだろうけど、彼らの物語を締めくくるにふさわしい爆発力がそこの暴露に宿るのか、なんとも不安である。
そこは(それこそ自分たちの過去作がその一部となって作り上げた)「この話なら、まぁそういう感じ」という文脈に依拠した省略で飲み干すところなのかもしれないが、自分としてはそういう過去をこそ巧妙に匂わせ、驚くべき真相にたどり着かされ、一個一個の描写に納得して、キャラとドラマを心の深いところに収めたかった。
まぁ多分これはピントのズレた無い物ねだりであり、書きたいのは銃乱射事件の中でも悠然と歩くHQであり、メトロノームの中近未来兵士の一団をナイフだけで華麗に殺し切る双竜の姿なんだと思う。
そういうスケッチの一部として、作品の中核にあるスキナーの薬害黙示録もあるのだとしたら、それを通じて書きたいもの(というか描けるもの、届くもの)は現実のオピオイド禍の、どっか芯食ってない焼き写し以上になるのだろうか?
戯画化され、歪められればこそその力を増す、フィクションとしての訴求性…それを生み出し、語られるものに見るものが肩入れするためのドラマの強さは、どこに宿るのだろうか?
今回描かれた公聴会の軽さと、リーランドというキャラクターを構成する要素の扱い…それを犠牲にして冴えわたるポッとでの最強殺し屋の描写を見ていると、スタイルを超えた/その真芯を支える固く重たい何かがこの話に確かにあると、僕が納得するのは難しいかもな、と思った。
最高のBGMと作画に支えられ、見ているこちらの悦楽中枢をガンガン刺激する最高のアニメーションは、確かに気持ちが良い。
でもそのMV的快楽を超えたものを食べたいから、僕は1クールの連作深夜アニメという形式を好み、シーンと話数が積み上がればこそ結晶化していく、作品独自の何かを求めて画面に食い入る。
それをべったり重たく、生真面目に語りすぎないことがこの作品(つまりは渡辺信一郎)のスタイルなのかもしれないが、それにしたって今回リーランドに投げかけられたサラッと感は、軽やかに過ぎた。
もうちょいベタ足で泥臭く、主役たちの過去や現在、その重なり合いから見えてくる譲れない信条やどうにもならない痛みを、感じ取れる場面が多くあって欲しかった。
しかしリーランドとアダムの過去は語られてしまい、つまりは時の針を巻き戻して深く細かくやるチャンスは薄れ、クライマックスは加速していく。
人を殺さぬアクセルのパルクールと、血みどろに可憐な双竜の衝突が、次回は想像できる最高を超えて暴れるだろう。
それは嬉しい。
とても嬉しい。
だがそういう華麗なアニメーション花火をドカンと打ち上げるだけでなく、そうやって炸裂した凄さを物語の主軸にしっかり絡め、一見相反するような地道で泥臭い(そこにも魅力がある作品だったのは、過去の描写から見て取れる)歩みと共鳴させて、その意味をさらに高めて欲しかった。
炸裂する未来へのイマジネーション、踊り狂う最高峰のスタイリッシュ。
作品の魅力である部分が、逆に物語全体としての完成度(と僕が感じるもの)を減じかねない矛盾が、良く出たエピソードだったと思う。
その最高に素敵なパーツで、一体どんな壮大を編むのか。
僕は、それをこそ見届けたかった。




というわけで物語は、次回最高のアクションをアクセルと演じることになる強敵の底上げに結構尺を使いつつ、秩序サイドからのツッコミをクライマックス前に主役に投げかけておく公聴会が真ん中に座る。
車中でのアクセルとダグの会話とか、最高に煤けてて良かった。
第6話ラストで決定的に居場所を喪ったエレイナを、仲間として優しく抱きとめたクリスが今回はエレイナにケアされ、過去を焼き尽くした後も変えるべき場所があると実感する場面とかも好きだ。
そういう味が、しっかり出る話なんだがなぁ…。
今までノリで見過ごされていたように思えた色んなヤバ行為を、問題にする正気がまだ国家にはあったらしく、この期に及んでの足引っ張り村(国家規模)がLAZARUSを吊し上げにかかる。
この「やってる場合かよ…」感は、人類全滅が間近に迫ってんのに妙にノンキな人々の描写と合わせて結構好きなんだが、いかにも最後の大暴れをする前に社会からのツッコミを受けて、場を平らにしておこうという意図が透ける公聴会は、サスペンスの作りが甘くてあまりハラハラ出来なかった。
リーランドの抱えたものが一度も表に出ないまま、それに導かれての裏切りとさらなる裏切りが一気にサックリ展開し、なんか綺麗に終わった風にまとまった。
ホント今回の公聴会の顛末は、「美味しい素材ですよ!」と作品自体がぶら下げたネタを、美味しく調理できる腕がありながらざっくり粗雑にぶん投げる(と僕は感じる)この作品の大鉈を、改めて感じる作りだった。
もうちょい過去回に意味深な描写を入れ込むとか、リーランドを主軸にしたミステリなりサスペンスなりをどっかに置いておくとか、下ごしらえに手間かけてくれれば、もっと強く炸裂する火種だったと思うけど、ロボット人間の印象すら正直薄いアダムの評価反転も含めて、しょんぼり予定調和に打ち上がった感じを拭えない。
ポッとでの殺し屋のキャラ立ててる暇あったらさぁ~もうちょい主役の陰影彫り込んでくれない~!?
…とか思うんだが、今回ぶっ放されたHQと双竜の”凄み”は本当に素晴らしくて、次回アクセルと命がけの存在証明合戦するのは楽しみでしょうがない。
やっぱどんだけ話運びと注力点に違和感があっても、アクションや音楽や見せ方に圧倒的な冴えがあるのは否定できなくて、ドラマを背負っていないからこそ最高のワンポイントリリーフ、クライマックスの発火役が担当できるこういうキャラは、凄まじい存在感を放つ。
猥雑な街角が乱射魔によって阿鼻叫喚の地獄に変わり、そいつも銃で終わらせられる”This is America”な風景を、意にも介さず気づかれもせず、空疎に歩く亡霊の立ち姿、あまりにも凄すぎる…。
そんな”凄み”を漂わせるHQだけが現世に呼び出せる、殺戮の権化。
ヘリでの軽口聴いた途端「あ、死ぬな…」と理解る米軍特殊部隊の皆さんにはご愁傷さまだが、軽やかな音楽とともに圧倒的な凄惨を暴れさせ、血みどろの美術を廃団地に生み出す双竜のアートは、大変素晴らしかった。
この快楽に匹敵するのは第1話のアクセル脱走シーンだろうけど、あの時徹底的に殺しを避けて軽やかに飛んでた彼と、今回殺しに殺し尽くす双竜の血みどろが、その圧倒的な仕上がりをもってしっかり釣り合い、対比をなしているのが面白い。
まぁ前回描かれたように、アクセルも殺す時は殺すんだけどさ。
認識不能なの殺し屋のトリックは、まぁ仲介役と同一人物って感じなんだと思うが、こんだけ”凄み”を出して主役と対等以上の強敵と示せたら、ぶつかり合うアクションの中でチームやアクセルの根源が、しっかりあぶり出されるのも可能かもしれない。
足を止めてどっしり過去を描く筆致は、エレイナやリーランドで全くうまく行ってない感じなので、持ち前の作画力を活かして衝突の中にキャラの地金を削り出していくスタイルのほうが、より自分的には納得出来るかなぁ…という期待がある。
実際、ハードなアクションの中でエレイナの傷を掘り下げた前回は、かなり良かったし。
リーランドというキャラの陰影を掘り下げるチャンスを足蹴にしてまで、たっぷり尺をもらって”凄み”出してきた双竜との決戦は、このアニメの中でも相当力が入った回になると思う。
そういう場所で己がどんな存在なのか示しきれないのなら、やりたいことは解る気がするし部分部分では圧倒的だが、トータル鮮明に伝わりきらないボヤケた味わいは、作品の最後まで長く尾を引くだろう。
こんだけボロクソに言ってるけど、俺はLAZARUSの全部が、そういうフヤけたお話しだったとは思いたくない。
なので作品の総力で叩きのめすような力強さで、次回俺をモミクチャにして欲しい。
このアニメ見始めてから…というか渡辺信一郎と出会ってからずーっと、メチャクチャになりたいんだよ俺は。