青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない 第4話を見る。
広川卯月の当惑と奮起を見届けて、すぐさま出会った思春期症候群をプレゼントするミニスカサンタ。
年相応に変化しつつも穏やかな咲太の日常を描きつつ、謎のランドセル少女を目撃したり、#夢見る が自己成就予言の色彩を帯びてきたり、キリシマトウコが不気味な増殖を遂げていたり、新たな不可思議の気配がヒタヒタ忍び寄ってきていた。
前回広川さんが見せた「バイバイ!」があまりに綺麗だったので、それを引き起こしたサンタの置き土産に警戒も高まるが、具体的に何が引き起こされているかは、さっぱり見えない。
ここを探っていくのが、大学生編の背骨…か?
社会現象化している覆面シンガーにしても、未来を予知するハッシュタグにしても、咲太が意図して遠ざけているSNSの空気に顔もなく拡散し、異様な力を得てしまっているモノが、大学生編の主題になるのかな…という予感がある。
それはかつて花楓を殺しかけ、梓川家をバラバラに砕いた毒ガスの出どころだが、高校生時代に重要なのはそうして傷つけられた人たちがどう生き延び、どう生き直すかという、きわめて身体性の強いサバイバルだった。
今咲太を遠巻きに渦巻いている空気のうねりは、そういう切迫した窒息力を持たず、無視できてしまえる程度に透明で、だからこそ侵食性が高い感じだ。
あるのが当然だからこそその存在に気づかれない、インフラとしての透明なソーシャル。
大学生になった咲太の変化は、今回国見くんと双葉との落ち着いた会食にも滲んでいたけど、適正距離を取って遠巻きに、世間を騒がせている(ということになっている)モノに斜めから向き合う姿勢は、SNSを描く筆としてより同時代的かな、とも思う。
携帯電話という空気の窓を、意図して遠ざけている変人が相手取るには、結構厄介な戦場だよな…。
麻衣さんに連絡つけるにしても、わざわざ公衆電話にいかなきゃいけないわけで、しかし透明なソーシャルに飲み込まれず眼の前の人間を見る男こそ、そういうモノと戦うのは適切かもしれない。




さておき物語はややゆったりと進み、ひどく力の抜けた宣戦布告をぶっ込んできたミニスカサンタ=霧島透子の謎を、穏やかに追う。
同級生三人組が大学生と社会人、立場を変えて静かに会食するシーンは、久々に国見くんと会えて嬉しかった。
ここの親密な雰囲気が、全然馴染めない合コンの空気感を際立たせていて、咲太の変わってない偏屈が見えたのは面白い。
運命の出会いはとっくに済ませていて、一生を共にするだけの覚悟も恩義もタップリ積み重なっている相手がいりゃ、そらー大学生の合コンなんぞ居心地悪かろう…。
将来設計のないボンクラの一人に見えて、咲太は大学に満ちた弛緩した空気とは隔絶して、自分の現在地と目的地を、結構しっかり見据えている。
前回統計科学部を選んだ理由を言い当てた広川さんは、そういうシャイボーイの真実を見抜いていたのだろう。
だからミニスカサンタも視えるし、不定形で透明なSNS産の空気に身を浸すフツーから、身を遠ざけても自分が在る。
そんな咲太のアイデンティティを確立した思春期症候群との戦いを、一千万人に撒き散らしたミニスカサンタに、しっかり「それ、止めてくれませんか?」と言えるのだ。
そしてそんな咲太だからこそ、思春期症候群を引き寄せる特異点として、このシリーズの中心に立ち続けるのかもしれない。
トレンドの波とかした不特定多数の呟きによって。未来のカタチを決めてしまう #夢見る は、半歩間違えれば結構な凶器にもなりうる。
それを人助けの道具に使いたいのが、おそらくここからのエピソードのメインヒロインになるだろう赤木郁実…なのだろうか?
赤ずきんちゃんがカボチャのランタンに殺される未来を、身を持って回避した正義感は、かつて色んな女の子たちに体を張ったおせっかいを手渡してきた咲太とも、通じる部分がある。
思春期症候群の濫用を気にかけ、クールな態度の奥に熱血を秘めた我らが主役は、こういう存在を見過ごせないだろう。
横浜ハロウィンに一瞬垣間見えた、ランドセルガールの幻影/存在を考えても、青春症候群は未だ元気だ。
それが霧島透子の意図によるものなのか、時空と因果を書き換えるその作用によるものなのか、まだまだ判然とはしない。
しかしある意味、大学生編のテストケースとして示された広川さんの物語を思い返すと、その異能が生み出す厄介事は結構切実に、誰かの人生をかき乱す。
災い転じて福となし、広川さんは素敵な「バイバイ!」を告げられたけども、梓川家がどんだけズタズタになったかを思えば、咲太が警戒し調査するのも納得ではある。
眠る時に見るあやふやな幻と、眼を開けて視る叶えたい未来。
二重の意味を重ね合わせながら、透明なSNSに増殖していく #夢見る と、お人好しのナイチンゲールがどう関わってくるのか。
事件の端緒を描く今回ではまだまだ見えてこないけど、この不鮮明な遠さが大学生編でのスタンダードな距離感であり、やや遠いうねりに身を乗り出して、咲太は事件に関わっていくのかな、と感じた。
それは思春期のど真ん中でモミクチャにされていた当事者から、それを乗り越えて揺らがぬものを手に入れてしまった青年へ、咲太が成長した反映なのかもしれない。
霧島透子ブームも #夢見る トレンドも、その背景にある異能も、
今の咲太にはちょっと遠い。
それはあり得たかもしれない別の世界を旅し、もう一人の自分を形にし、あるいはいまある自分を消し去る思春期症候群が、「可能性の発露」という側面を持っているからこその遠さなのだろう。
それは希望に満ちた光にも絶望の影にも開かれていて、大事な人が死んでしまったり、自分がいなくなってしまう可能性をかつて、咲太は幾度も旅した。
それを乗り越えて、関わった人たちがみな幸せになれる未来を掴み取ったことで、アリ得たかもしれない可能性は剪定され、梓川咲太という存在はどんどん揺らがなくなっていく。
何が大事で、何を知りたくて、何を求めるのか。
思春期症候群と取っ組み合う中で、傷だらけになりながらどんどん解っていったのだ。
あるいは中学時代に降って湧いた最悪以来、必死にそういう波風と戦った結果、同級生が浸ってる透明な空気を遠ざけて、変人扱いされても気にしない揺らがなさを手に入れてる…とも言えるか。
今の咲太は同年代の子ども達がぶつかる試練を、一足先に飛び越えて、善くも悪くもなれる可能性をなぎ倒し終わっている。
崩壊した家族関係を修復し、消えかけた恋人の手を引っ張り、ずっとこらえていた涙をその胸の中流した。
そういう経験は、咲太を大人にする。
それが大人であることのある種の寂しさを、微笑みながら諦めさせるほどに強靭なのかどうかを、大学生編の冒険は改めて問いただす…のだろうか?
少なくとも前回、広川さんをあの「バイバイ!」に引っ張ってこれた咲太の歩みは、高校生時代の強さと優しさを全く失ってはいなかった。
むしろ大学生のブタ野郎は、あの頃よりもっとハードボイルドな感じがしたわけだが、そんな余裕が優しいナイチンゲールの不可思議に、どう寄り添っていくのか。
思春期症候群を呼び寄せる、大学生探偵の事件は続く。
色々不穏な気配は漂いつつ、麻衣さんとのイチャイチャに無敵な安定感を感じれもしました。
何かを乗り越えたあとにも広がる物語の中、咲太は誰と触れ合い、何を乗り越え、見つけていくのか。
次回も楽しみです。