選挙と猫とF4と!
妙にタイムリーなネタ(猫はいつでも人類全体にタイムリー)が飛び交う、NPSG第4回である。
第9話”昨日に向って撃て!”が五十嵐海渾身の力作で大変良かったが、他の二つもキラリと光る面白さがあり、オムニバスの軽妙な心地よさをタップリと味わえた。
ただの画風パロかと思いきや、時空超越者の悲哀と決意、目まぐるしい世界改変のスクリューボールが、力強く胸に飛び込んでくるお話で、本当に良かったな…。
時空を超越する弾丸の不思議が、バリバリ書き換わる画風(そこにトレースされるアメコミの歴史)に重なって届くの、メチャクチャ強力な批評と愛を叩きつけられた気分だ…。




つーわけで今回もシャープな短編二つと、力の入った長編一つを小気味よくぶっ飛ばすNPSG。
第7話はビジネス童貞大統領をサクッとぶっ倒し、第8話はアバズレ&猫ちゃんという約束された勝利を、ヨースターピクチャーズがリリカルに描き切る。
パンティが死刑台に据えられた結果、ギークボーイが一生ワーワー騒ぎ、対立候補に祭り上げられたストッキングの可愛いところがタップリ味わえる話になっていたのは、とても面白かった。
デーモン姉妹がレギュラー入りし、出番の整理も大変だが、精妙にやっとるわ…。
いつものクイックな(クイックすぎる)悪魔退治に、うえのきみこらしい毒が程よく混じっていて、短編としての切れ味が第7話は良かったと思う。
あんまブリーフとストッキングが組んで暴れることもない印象なので、二人の絡みは新鮮だったな…。
あと落選時の”4人”、なんだかんだデーモン姉妹もちゃんと身内に投票してたのが解って好きだ。
第8話は猫とアバズレという、絶対勝てる題材をしっかり叙情的に描き切り、短いからこそ普段はお下劣に隠している詩情が、良く伝わるエピソードになった。
初手から猫にメロメロな連中も、ビッチ思考剥き出しながらどんどん絆されてくパンティも、メッチャ可愛かったな…。
猫幽霊の成仏にパンティの秘めたる純情が暴かれると、そこにそっと手を添える妹との絆も自然画面に浮かび上がってきて、ハイテンションにぶっ殺し合ってる時には見えにくい距離感がよく出ていた。
こういうモンがあるから、いつものオゲレツ大暴れも喉越しよく食べれてる感じはある。
あと最後に最悪墓標でしっかりイイハナシ風味を殴りつけ、”いつものパンスト”に引き戻して終わってくれたのは、誠実で良かった。
猫幽霊をあくまで猫として、動物であるがゆえの可愛さをしっかり描こうとアニメーションに気合を入れてくれたことも、別れの切なさ、愛で帰天させる特例の尊さを、より際立たせてくれたと思う。
ここでパンティのマジな表情を書いてたのが、第9話で効くのはオムニバス特有の面白さだな…。




というわけで銀河の果てより飛来した現実改変存在によって、ハンナ・バーベラ味に世界が書き換わる…で終わらない、画風代わりまくりの超アメコミ史メタフィクション、堂々の開幕である。
今回の事件は複数の世界線が入り交じる、結構複雑な運命改変SFなわけだが、そこら辺をメッチャ気合の入った表現と、惜しげもなく画風を使い潰す贅沢さで、説明ぶっ飛ばして”体験”させる作りが凄かった。
妙な呼吸で素朴な面白さを生んでた時代から、パワフルなアートで揺れ動く運命を表現していく時代へ。
作中すごいスピードで切り替わる画風は、アメコミ史を15分にギュギュッと圧縮し、素朴に笑えた物語は世界の命運を賭けたシリアスさへ加速していく。
モノリスから翔んでくる現実改変ビームは、作品世界を駆動させるリビドーを死滅させ、灰色の停滞に閉じ込めていく。
下世話でパワフルなパンストらしさを奪われ、不思議な呼吸で気持ちの良いズレを生むオールドスクールな画風に書き換えられた世界は、時代を強制的に遡らされて、キャラクターも”らしさ”を盗まれていく。
幾度も画風が切り替わり、そして取り戻される今回のエピソードは、なんでこのアニメが下品で最悪なセックス&バイオレンスに明け暮れているかを、あえて間接的に描くエピソードだと思う。
それが盗まれたら、世界は奇妙な形にねじれるのだ。
そういうパワーが溢れる時、世界が凄まじいアートの輝きで満たされる…てのも、見ててメッチャ気持ちいい色と形と線の乱舞から、素直に感じ取れる回だ。
ほーんと今回、あらゆる瞬間がキマりまくってて、しかもそれが凄く多彩な表現で次々押し寄せてくるので、映像体験として死ぬほど幸福だった。
こんなに色んなアートスタイルが押し寄せ、元気に駆動してエネルギーを放出しまくる体験、意味分かんないけどムチャクチャ元気が出て、シンプルに良かったな…。
同時にこのエネルギーの奔流は、世界改変のスケール感に説得力を出してもいる。
こんだけパワフルなら、そら運命も書き換わるだろ!
改変ビームを浴びたパンティは妙に理性的になり、世界を書き換える黒いドットに、結構真摯に戦いを挑んでいく。
この生真面目さへの改変は、ファンタスティック4とシルバーサーファーが背負ってる重たさを、画風改変といっしょに背負わされた…とも取れる。
同時にパンティの根本にあるリビドーが、それを否定する原理によって盗まれて、代わりにいかにもアメコミっぽいヒロイズムが移植された結果でもあろう。
ケツアゴで賢いパンティもカッコよくはあるが、その生真面目さがずっと続いたら、そらーパンティ&ストッキングではない。
でもそうなってしまう危うさが、世界を書き換える遊戯にはある。




ここら辺のねじれた因果を背負い、時空の果てでパンティ…だった存在は、ワーワー楽しくいがみ合うパンストらしさを過去に置き去りにして、永遠の戦いへと身を投じる。
四人の戦士が自分たち”らしさ”を取り戻し、いつもの斬撃で切り飛ばしても取り戻せなかった、世界を書き換えていく宿命との、終わりなき旅。
ベイウォッチャーと同じ画風に己を書き換えながら、遥か遠い過去の喧騒を愛しく思い出すパンティは、実は全然書き換えられていないと僕は感じた。
パンティは最悪クソビッチだからこそ、全然パンストらしくないシリアスな運命へとその身を投げたのだ。
あの愛しい馬鹿騒ぎを嘘にしないために、アメコミパンティは空の彼方へ消える。
物語の果てへと消えていく、世界を救った2つの星。
それを見上げるパンティの視線は、書き換えられ守られたいつものダテンシティにありながら、不思議に捻れた運命の先で、もう一人の自分が背負った悲しみを確かに見つめている。
このお話は「いつものダテンシティ」から切り離され、だからこそ「いつものダテンシティ」は騒々しい平穏、オゲレツなリビドーを保って続いていく。
それを愛おしく思ったからこそアメコミパンティはパンストらしい画風を捨て、いかにも後期アメコミチックな壮大な運命へと、己を投げたのだ。
それは…幽霊猫を愛しく撫でた、いつものパンティと同じ心なんだと思う。
TVの向こう側にあるショーとゲラゲラ笑っていたものが、自分たちの世界を書き換え、妹たちと一緒に殺す、これまたアメコミ的な過酷な運命。
ベイウォッチャーとともに時空の果てへと飛び立っていくもう一人のパンティは、そういうシリアスな重さを引き受ける地金が、ヒーローにならなかったパンティにも共通していることを示す。
繰り返す時の中で、愛しい日々を守ることが出来るのならば、自分の身を捨てて世界を守るために戦うシリアスさは、パンティにとってもこの話にとっても、けして嘘ではないと思う。
そういう部分があるから、このお下劣なお話を喉越しよく食べれてるのだ。
多元世界の外典として、”別のお話”になっていく(することで、パンスト本編を守る)アメコミパンティの悲しみに、ベイウォッチャーがしっかり寄り添ってくれてたのが好きだ。
書き換えられた現実の中で、TRIGGERナイズされたカトゥーン調のビッチ天使たちは、世界改変の戦いがあったことすら忘れて楽しく騒ぐ。
でも画風が変わってしまったパンティは、もうそこには戻れない。
戻ればパンティを中心に、またリビドー否定の世界律が世界を書き換えていくだろう。
少女は故郷を喪失し、だからこそ永遠を戦う。
そんな孤独な宇宙を、一緒に飛んでくれる男がいるってのは…俺には良いことだなと思えたのだ。
ここら辺の時空を超えた壮大なスケール感と、それ故に掻き立てられる強い感情のうねりは、TRIGGERがアメコミの画風と作風を取り込み、引用し改変しながら紡いできた数多の作品への、素敵なウィンクとも感じた。
アメコミパンティとベイウォッチャーがたどり着いた次元は、スケールも色合いも、それに支えらる感情の熱量も。すごく”グレンラガン”っぽいし”キルラキル”っぽいんだよな…。
こういう形で、創作集団が作り上げてきたもの、それに影響を与え書き換えてきたものが、面白さと愛しさのタピストリーを編み上げる体験が差し出されたのは嬉しいことだ。
あと単話完結を宿命付けれたオムニバスの欠片だとしても、アメコミ調に書き換えられた全てのパンティと、彼女たちが今回紡いだ物語は消えてなくなりなんかしないのだと、多元世界を活かす形でお話自体が強く告げてたのも、とても良かった。
それは全部”なかった話”になるけど、消すことが出来ない大事な全部の一部であり、アメコミパンティがパンスト否定するクソ運命に立ち向かってくれるからこそ、このあとのおバカな日常も保たれている。
そういう場所に、この異様に力が入った気の迷いを力強く持ち上げていったのは、自分が作り上げた物語にプライドと愛がある語り口で、すごく良いなと思った。
というわけで、「ま~たゴームズパロかよ~~」とナメてたら、壮大な運命のサーガでぶっ飛ばされる、素晴らしい力作でした。
凄い勢いの画風変換が、因果を守る宇宙の戦士へとならざるを得なかったもう一人のパンティの悲哀を力強く支えて、表現と物語がしっかり噛み合っていたのが、大変良かったです。
15分で色んなアート浴びれて、最高に気持ち良かったな…。
あとパンティがどんだけダテンシティの騒々しい日々を愛していたのか、書いて欲しかった部分をちゃんと届けてくれたのも良かったです。
アイツは猫も弔うし、世界のために己を捧げもする、最悪ビッチ天使なのだ。
オムニバスの醍醐味堪能して、次回も楽しみ!
・追記 失われたものを嘘にしないために
ベイウォッチャーも最初の周回で記憶を失い、銀色の異形にもかかわらず手当をしてくれた看護師との、平和な日常をたしかに形作っていた。
次元を超えた侵略に記憶を取り戻し、結局ベイウォッチャーは己の責務に帰還していくわけだが、その前に地面を叩き割るほどに苦悩し、それを振りちぎって飛び立つ様子が描かれている。
それは時を超える弾丸によって因果を書き換え、”いつものパンスト”を取り戻したパンティが、その因果を確定させるために自分を”いつものパンティ”には書き換えず、遠い過去になってしまった日々を嘘にしないために、戦い続ける道を選ぶのと重なっている。
ベイウォッチャーも捻じくれたSF設定を早口で喋り倒すだけのスピーカーではなく、人としてのぬくもりを愛すればこそ擲ち、永遠の戦いを選んだ心を持つ存在だからこそ、自分と同じ決断をした戦士の悲しみに、手を寄せて共に進む。
15分に圧縮されたスピーディーな展開ながら、この壮大でトンチキな物語の主演がどんな悲しみと決意でエンディングにたどり着いたのか、抜け目なく描写していたのは本当に良かった。
この共鳴する魂こそが、時空を飛び越える壮大なアメコミ的サーガの最も重要なポイントで、一番好きな部分なんだと、テーマに選んだものの心臓をガッチリ掴み取った手応えがあるエピソードだったのが、僕はとても好きだ。
そこにはアメコミの筆を借りて初めて描かれる、このエピソードだけの「俺はパンティ&ストッキングが好きだ」というラブレターが、確かに重なってもいるから。
そういう熱があればこそ、15年の時と権利の大嵐をくぐり抜けて、新たな物語が紡がれているのだろうし。