イマワノキワ

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サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと:第9話『明かせぬ秘密』感想ツイートまとめ

 秘密の責務を果たし、小さな冒険に満ちた日常に戻っても、そこにあなたはいない。
 15歳の少女が喪失の先へと進み出す、サイレント・ウィッチ第9話である。
 大変良かった。

 

 

 

 

 

 

 

画像は”サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと”第9話より引用

 というわけで、ケイシーがぶっ込んだ王子暗殺未遂の始末をつけ、その後の日常を描くエピソードである。
 苦手な政治的駆け引きに挑んで、必死に友達の延命を図るモニカとか、実は”沈黙の魔女”ガチ勢だった第二王子とか、誰かが消えても続いていく日常とか、そこに軋む秘密の痛みとか。
 大きな事件の後始末を丁寧にやってて、この作品らしい堅実な手触りの回だった。

 

 冷徹エキセントリック人間に見えてた”結界の魔術師”が思いの外情に流されてたり、第二王子派と敵対する第一王子派の複雑な内情が垣間見えたり、モニカ以外の解像度もグッと上がる回だったけども。
 やっぱケイシーと過ごした小さな冒険の日々が凄く鮮烈に描かれていたからこそ、彼の恩情に助けられて残酷すぎる結末は避けつつ、確かな喪失が長い影を伸ばす”冒険”の続きが、凄く切なく感じられた。

 怪物的な魔法の才をもちつつ、ただの15歳の女子でもあるモニカがこの学園で出会ったモノが、彼女もその一部として組み込まれている派閥抗争、腐敗した貴族主義の矛盾によって砕かれ、それでもケイシーを失ったまま当たり前に日常が過ぎていく様子…あるいはモニカ必死の懇願でそういう時間を掴み取った先の景色は、優しさと哀しみをたたえて妙に静かだ。

 そこに波風を立てる自分の正体を、誰にも明かせぬまま”沈黙の魔女”は学園で生き続ける。
 もとより異常な才によって国家に引き上げられた特級エージェントなわけで、そういう悲壮は稼業の内なんだが、平和な学園の裏側で渦をまいていた陰謀と、たしかに地続きだった愛しき日々の共存が上手く描かれていることで、15歳の女の子に背負わせるにはあまりに重たい使命の輪郭が、改めて鮮明に縁取られた感じがあった。

 

 この密偵としての切なさは、作品はじまった時から「いつかは掘り下げて欲しいなぁ…でも難しいかもなぁ…」と思っていたポイントなので、シリル先輩の誠実さに触れて限界に達して、涙ながら崩れ落ちてしまうラストは大変良かった。
 自分の感情と上手く付き合うことも出来ない、歪な発育に身を置く以外生き延びる道がなかった、能力と使命と人格のバランスが取れていないモニカ。
 その軋みが、ケイシーとの別れの直後よりももっと深く、彼女が消えたあとも続いていく日々、己の正体を明かせないがゆえの申し訳無さに炸裂するのが、コクのある描写だったと思う。

 

 決意を込めて断罪した親友が、なぜ学園から消えたのか。
 それすら告げられない、モニカの重い使命。
 難しい政治情勢を背景に起きつつ、その渦中からちょっと遠い場所にいる”沈黙の魔女”個人の感情に、しっかりフォーカスを当てる描写でとても良かった。

 こういう気持ち一つで動かせない複雑な機構が、彼女の氏名の背景にはあるし、コミュ障な彼女から思わず溢れ出した強い思いが、死の運命からテロリストを救いもした。
 感情一つで毒殺ぶっこみ、領地ごと地獄に落ちてった三流悪役令嬢の末路を見ているだけに、そこら辺七賢人どうしの交渉でガッチリ隠蔽できてしまう、モニカの異質性もより鮮明なわけだが…。
 …今回の任務を引き受けず、適切な情緒教育を受けるチャンスがなかった場合、モニカがどうなってたかはちょっと怖いな…。

 

 話が進むにつれ、モニカは異常な魔力とヤバいコミュ障を抱えた珍妙マスコットから、15歳が向き合うべき当たり前の”冒険”に、友達との絆を命綱にして挑むフツーの少女へと、その姿を変えてきている。
 段々とキャラクターの血が通った生身が見えてくる感触が、物語が進み僕らを飲み込んでいく快楽とリンクしながら転がっていく面白さが、作品の背筋を伸ばしている感覚が嬉しくもある。
 そういう体温ある手応えは、ケイシーを筆頭に”学校”が舞台だからこそ出会えた友達と触れ合い、支え合いながらちょっとずつ、最強の魔女が人間として当たり前の…だからこそ大事な強さを学び取っていく歩みと、歩を同じくしている。

 こういうジュブナイルとしての手応えを感じ取った後だからこそ、あの美しい夕景を一緒に見てくれた友達がいなくても、そういう日々が過ぎ去ってしまう寂しさとか、別れを経てなお友が教えてくれた輝きを掴もうとする勇姿とかが、胸の深いところに刺さる。
 竜の軍勢を薙ぎ払い、手の込んだ結界を突破する魔法の才能があっても…あったからこそ、モニカに足りていないもの。
 それが確かにこの”学校”によって与えられ、七賢人としての密命、貴族社会の延長ゆえの残酷が、それを奪っていく切なさが、改めて色濃いエピソードだった。
 やっぱケイシーとの離別ではなく、その後の日々をしっかり描いて幕を引いたのが、良く効いてると思う。

 

 上手く生きられない子どもとして、本来気に病む必要がない痛みを感じ、地べたに這いつくばってしまうモニカの痛ましさ。
 これが護衛対照であり、友を奪った政治的複雑さの中心にいる第二王子とも共通していることも、だんだんと見えてきた。
 今の王子は複雑怪奇な政治事情を飲み込む、良く出来た傀儡といった印象だが、幼年期はモニカに似た純粋さと脆さを抱えていた。
 彼がオドオドしたマスコットを見る視線が、かつての自分を懐かしく思う慈悲なのか、また別の事情があるのかは判らんけども、まー似た者同士共鳴するものがあるわけだ。
 そういう表の顔でのシンパシーに加えて、抱えた秘密が憧れを呼ぶ!

 急に強火の”沈黙の魔女”ヲタっぷりがぶっ放され、この要素がどう生きてくるのか、なかなか楽しみであるが…なーんでケルベック領の龍災害に、フード被って居合わせてたんだろうねぇ…。
 自身が所属するクロックフォード派は、貴族と中央第一主義な匂いがプンプンしてて、龍災害に悩まされてる辺境のことはガン無視決め込んでるご様子。
 だからこそケイシーもテロに走ったわけだが、第二王子個人としては国を揺るがす災害、それに踏みにじられる個人の尊厳に、ちゃんと目をやってる…つう事なんだろうか?
 ここら辺、今後モニカとの交流が深まる中で見えてきそうではある。

 

 今回明らかになったように、モニカが抱えた使命は貴族社会の政治と切り離せないものであり、つまりは第二王子の傀儡としての立場、個人としての人格と強い関連を持つ。
 一学生として出会いと別れを通じ、人間に大事なものを学び取るジュブナイルと並走して、否応なく国家と貴族社会の構造…そこに秘められた歪みと向き合う必要も、今後より強くなっていくだろう。

 その結節点として、護衛対象であり気高い先輩でもある王子とどう関わっていくかは、色んな意味で大事である。
 なので今回、”沈黙の魔女”にデケー感情持ってる事が解ったのは、面白い材料だなぁと思う。

 

 ケイシーとの対峙を経て、モニカが自分が向き合うべきもの…その重たさと己の脆さを自覚して、今後の学園生活と使命はどうなっていくのか。
 そういう未来を思いつつ、最年少の七賢人が何に涙し、何に立ち向かっているかを、丁寧に描くエピソードでした。

 やっぱモニカという一人間が、どういう気持で世界や自分と向き合っているのか、リッチな作画力を活かして丁寧に削り出しているのが、作品の強さになってると感じるね。
 焦ることのないじっくりとした話運びがあってこそ、こういう細やかな作風も維持できるわけですが、さて残りの話数で何を描くのか。
 早くも”二期”への期待を高めつつ、次回も楽しみ!