イマワノキワ

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太陽よりも眩しい星:第4話『まぶた閉じてもそこに在る』感想ツイートまとめ

 涙の敗残より始まる、新たな関係構築!
 ”学校行事”の手触りがなんか凄い、太陽よりも眩しい星 第4話である。

 

 

 

 

 

 

画像は”太陽よりも眩しい星”第4話より引用


 つーわけで衝撃の告白の後も研修旅行は続く!
 友達になった子たちに気持ちを受け止めてもらったり、まぶた貫通して初恋の光が眩しすぎたり、命の危機を経て自分の気持ちに気づいたり、とりあえず「友達」って距離感で関係を安定させたり。
 ハタから見てりゃなんてことない日々に、こんなにギッチリ感情詰まってたっけ!? と思わされる、青臭く甘酸っぱい青春のスケッチだった。
 流れていく時間の中に、特別な振れ幅と密度があるよなぁ…すげーわ思春期。

 

 この過剰さは、自分の心一つを全く思いのままには出来ない、ピュアな制御不能感にも繋がっている。
 想い人の気持ちを確かめ、自分が追われる星ではないと認識してしまった以上、涙ながら諦めて距離を取るのが賢い。
 そう判断できるくらいには成熟しかけてて、でもその「答え」に従えないくらい後から後から、気持ちが溢れてくる。

 理性と情熱の間でウロウロ、危うく自分を見失いながらもずーっと光輝くんを目で追いかけ続けてしまう。
 そういう自分もまた自分で、んじゃあどういう距離感で向き合っていけば良いのか、必死に手探りしている季節。
 その熱気が、可愛らしい迷い道に眩しかった。

 


 先生のテキトーっぷりとか、監視の目を盗んでの恋バナとか、ダルいなりに生真面目にやる各種カリキュラムとか。
 研修旅行のディティールが丁寧に削り出されていることで、ここら辺の体温もまた独自のリアリティを得て、朔英ちゃんが身を置いている時間と空間がどんな空気に満ちているのか、自然と一緒に吸い込める作りになってたな、と思う。

 このお話は朔英ちゃんが認識しているものしか描かれない、極端に狭い一人称で描かれているんだけども、彼女自身周囲をよく見て、自分自身が何処にいるかを常に考えている子なので、世界への窓が空いてる。
 そっから入ってくる空気が、不思議な爽やかさと青臭さで心地良い。

 僕の学生時代とはぜんぜん違う(人狼とかやらんしなッ!)けど、でもあの季節特有の妙に緊密で、湿って暖かい時間がどういうものだったのか。
 当事者性を保ちつつ凄い冷静な視線で見抜き、物語に練り込める腕力が、色んなことを思い出させてくれて、なかなか凄いなぁと思う。
 こんな充実もしてなかったしピュアでもキラキラもしていなかったけど、でも確かにここに描かれている感覚と気持ちのどっかが、自分が既に終わらせた時代と響き合っていると、おもわず錯覚させられる。
 この広範な訴求力は、やっぱ思春期を描く最前線にどっしり腰を落とし、戦い続けてきたベテランだからこその味かと思う。

 

 この不思議な生っぽさが、入学直後の硬い空気感を抜け出し、研修旅行を通じて関係を構築しつつある少年少女のサークルを、解像度高く描きもする。
 今回朔英ちゃん達三人が、息を潜めて真夜中秘密を共有し、純情な想いの滴を一緒に流した時間の、奇妙な密度。
 そういうよくある…でも三人にとってはかけがえない時間を共有したことで、彼女たちは友だちになっていく。
 だからといってなんの問題もないわけではなく、翡翠ちゃんは感情暴走超特急過ぎて色んなモノ見落とすし、美織ちゃんはクールすぎてちょっと変だ。
 そういう凸凹な個性が噛み合って、三人だからこその釣り合いが生まれていくところ含めて、とても良かった。

 焦ることなくゆったりと、大人と子どもの間にいる存在がどういう空気を吸い、何処を歩いて何を生み出しているのか…すごく丁寧に追いかけてくれているところが、このお話の好きなポイントだ。
 ド派手な胸キュンイベントだけでスケジュールを埋めず、学校指定のジャージ着て行事を押し付けられ、それもまた悪くない生っぽい質感が、じんわり積み重なるからこそ生まれる実在感。
 それが朔英ちゃんの豊かな(時に豊か過ぎる)感受性と響き合うことで、鮮やかに色ついて特別になっていく。
 この特別と当たり前のバランスが、スーッと胸に落ちてきて気持ちのいい回だった。

 

 そういう手触りで削り出される、「あの夜」を経た上での朔英ちゃんと光輝くんの関係構築だが…難しいなオイッ!
 どんだけ抑え込もうとしても目で追いかけてしまう、自分の気持ちに嘘をつかず、とりあえず「友達」って間合いで安定した感じであるが、ホントのところはどうなんだいッ!? 

 話の着地点としても、漏れ出てる空気感としても、光輝くんが欲しい距離感は「友達」じゃねーだろ…って疑問を、彼の爽やかで優しい拒絶が裏切ってくる。
 判らん…考えるほどにッ!
 こういうミステリで物語を牽引する腕力もあるので、つくづく色んなエンジン積んで走ってる話だなぁと思う。

 この解らなさは、好きを燃料に恋というミステリに惹かれていってしまう朔英ちゃんと、僕らの立場をシンクロさせる材料にもなる。
 「神城…わっかんねぇ~~」と思うほどに、解らないけど共にいたいと太陽を追いかける月の少女の気持ちに、僕らの視線も近づき重なっていくのだ。
 爽やか万全な光輝くんの立ち回りに否は一切なく、しかしこっちの足場は切なく彼を思う朔英ちゃんにあるので、「罪な男よ…」ってなっちまうわけだが。
 でも事情は本心が見えないとそういうジャッジも下せなくて、「はよ剥き出しにならんかいッ!」という気持ちと、「そういうの、ホント難しいよね…ゆっくりやんな…」という気持ち、両方ある~~ッ!

 

 こういうゴチャついたもどかしさに翻弄されつつ、ひたすら誠実に自分の気持ちと光輝くんの存在に向き合い続け、胸の中湧き上がってしまったものに率直に生きようとしている、朔英ちゃんのニンの良さもよく伝わった。
 こういう子が積極性を持たず、しかし影に潜みきることもなく、誰にも気づかれぬまますごーく地道に「良いこと」してるの、世間って感じで好きだ。
 「こういう人がたくさんいて成り立ってる場所で、誰かが誰かを見てくれているありがたさを、背負うのがおめーじゃねぇのか光輝くんッ!」て感じだけども。
 ビカビカ太陽人間が自分の輝きの影、健気に瞬く月を見落としてる残酷はキツイんだよな…。

 と言いつつも、世の中が便利に消費してしまいそうな朔英ちゃんの良さを、光輝くんがしっかり見守り、手を差し伸べている様子もしっかり描かれていて。
 それが「友達」で収まる敬意なのかそれ以上の熱を宿しているのか、朔英ちゃんの一人称では見抜けない深みに、きっちり真実がハマりこんでいて…面白いッ!

 

 朔英ちゃんも年相応に、色々難しさのある視界で生きているわけで、そこでつまずいたり迷ったり、恋を燃料に色々探っていくことで、自分と世界を知ってもいく。
 そういう旅路を、解像度高く追体験させてくれるのが、このお話の一番好きなところかもしれん。
 子供たちを過剰に賢く、正しくしないゆえの滋味…というか。

 自分の思いをなかったことにしなかったことで、受けた傷と気づけた本当。
 高校で出会った友達との関係含めて、実りの多い研修旅行でした。
 やっぱこういう感じで一歩ずつ、朔英ちゃんが自分を見つけていく歩みを大事にしてくれてるところが、好きになれるお話だなと思います。

 

 かくして「友達」という距離感に一旦は収まった激情ですが、んな物わかりの良さで収まる熱量じゃねーだろッ!
 新たなる青春大暴走に期待を高めつつ、ピュアピュアな日々を優しく見守らせてくれそうで、次回もとても楽しみです!
 …朔英ちゃんの感受性と感情は標準越えてデカいのに、控えめポジションに収まりようがない自分を解ってないのオモロイね。