イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

グノーシア:第17話『バグ』感想ツイートまとめ

 出口亡きデッドループの果てに、対峙するべきは自分自身。
 銀の鍵の奴隷が人間の限界領域を這いずり回る、グノーシア第17話である。

 

 ここまで仲間を疑い吊るす宇宙人狼に対し、それを満たせば未来が開け仲間の真実も解っていく、ポジティブなゲームだった銀の鍵。
 世界ごと自分の可能性を殺すデッドループによって、人知を超えた好奇心に弄ばれるヤバさが滲み出してくる回である。
 「おい”手段”じゃねーだろ!」という、ユーリくんのエキストリーム自害乱打なども経つつ、これまで想いを繋いだヒロインたちが地獄に仏のありがたみ、頼れるセツを逆に導いていく成長と、忘れていた二人の始原なんかを、一気に駆け抜けた。

 これまでは人狼やったりヒロイン攻略したり、区切りがつくまで結構な時間を使っていたお話だけど、今回はもースナック感覚で人が死んだり世界が死んだり大忙し!
 この早めのBMPが独自のテンポを生んで、今までとは違う異常事態…だからこそ新しい真実が顕になり、銀の鍵が未来を切り開いてくれる安心感も強くなる。
 銀の鍵による進捗管理とループ構造は、揺るがぬはずの作品の基本だったわけで、ここに触るといよいよ、物語も終盤戦なんだな、という感じがある。
 まぁループ抜けてグノーシアを廃して…で、ゲーム構造自体を突破していくのがフィナーレになるってのは、最初から示唆されていたわけだが。

 

 永遠に繰り返す足踏みの先、誰も疑わず殺さず死なず人生が続いていく、当たり前の降伏を目指す旅も終わりに近づいてきた。
 そうなると、ユーリの白紙の記憶が見落としているポイントに物語が帰還していくのは、凄く面白いなと思う。
 ユーリが自分のことすらわからないド素人だからこそ、複雑怪奇な宇宙人狼のルールとか、見知らぬ隣人を深く知っていく面白さとか、作品の魅力が豊かに届いたわけだが。
 「人間とはなにか」を凄く奇妙な…だからこそ適切に削り出せる、SF的な手法でもって描いていくこのお話にとって、自分がどこから来て何をしたのか分からないことは、重大な欠落だ。

 二重三重四重の意味で「自分を殺す」ほどの絶望すらも、仲間たちの絆、これまでの旅路で鍛えられた逞しさで乗り越えていけれると、バグ・デッドルーブを越えて示した今、ループはセツを助けるために傷を追った自分の言葉を聞き、すべてが始まったゼロ地点へと飛び込んでいく。
 その話運びは、どれだけエキセントリックなゲームに興じていても結局、自分自身を知ることが旅の出口を見つける鍵だと語る。
 ここに至るまでにはもちろん、疑ったり吊るしたり殺したりの最悪をたっぷり味わい、そんな中でも消えない個々人の人間性、そこに明滅するきらめきを、実感を込めて見届ける必要があった。

 

 「自分自身に出会う」という、ありふれた惹句に特別な輝きをもたせる意味で、世界事自分を殺してしまうドッペルゲンガーと、銀の鍵が生み出すループ構造はとても良かったと思う。
 ユーリは満足げな自死で世界の方を救おうとするが、そんな事は別に解決策にはならず、SQちゃんにお寿司食べさせてもらって事情を打ち明け、セツに頼ろうとしてむしろ頼られ、いけ好かないロジックマシーンに頼ることで突破口を見出す。
 死や停滞といった、一見超越的で強く思えるものはこの絶望を超える鍵にはならず、むしろフツーに飯食ってフツーにダチに頼り頼られな生こそが、絶望的異常事態を越えていく力になるのだ。

 このドッシリ足がついた語り口は、”グノーシア”という作品が始まったときから、ずっと続いているものだと思う。
 クルーを疑い吊るして殺す宇宙人狼も、銀の鍵によるループも、あくまで舞台装置…というには魅力的すぎるし、それを描く筆は極めて真摯で雄弁だけど。
 人間の常識を大きく越えた特別な事象を扱いつつ、何も覚えていないユーリはその異常さに囚われ傷つけられ、それでも旅を続けることで、凄く普遍的な人間の条件を見つけていく。
 あるいはその発見を特別に感じるために、ループを繰り返す長い旅路と、全てを疑う悪魔のゲームが用意されてる…とも言えるか。
 黒いキャンバスに置いたほうが、ありふれた白は映えるのだろう。

 

 「俺が死にゃなんとかなんだろ!」という、最悪のメサイアコンプレックスに押し流されて、感電プレス機ナイフに真空、色んな死に方試すユーリの限界は、一人じゃ乗り越えられない。
 そこに手を差し伸べてくれる仲間たちとの絆は、自分を運命の奴隷にする銀の鍵が、幾度も繰り返す多彩な”本当”をユーリに許してくれたからこそ、生まれてきたものだ。

 そういう自分の外側にある強さが、自分自身を客観視し忘れていた真実にたどり着くことで、より補強されていく。
 これを内面的な対話ではなく、具体的な現象として描ける所に、SF的想像力の面白さがあるなぁと、改めて思わされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像は”グノーシア”第17話より引用

 というわけで隈モリモリ目血走りまくりの、超限界☆ユーリくんが今回のスタートである。(エキストリーム自害RUSHは、可哀想だからキャプらない)
 今回の試練は使える時間が短く、どんっどん解決手段が極端になっていく過激さが独自の食感だが、自分ひとりが死ぬで終わらず世界巻き込んで終わるバグのヤバさが、それを下支えしている印象がある。

 自分は有害な偽物で、落とし前を取るためにカッコよく死んでも何も終わらず、延々と有効な手立ての見えない檻に閉じ込められている。
 「そーらー狂うわな」と思うし、狂って死んでまだまだ続くのが、銀の鍵に縛られた者の過酷さだ。

 

 この激ヤバ精神状態に、最初に手を差し伸べてくれるのがSQちゃんで、クマ取り除いて前を向き直す燃料になるのがお寿司なの、チャーミングで良かった。
 俺はこの話の食事描写、三角巾付けたジナの可愛さとか含めてすごく好きなんだけど、どんだけ絶望し異常なループに囚われていても、腹が減り飯を食ってしまう人間の根っこを、ここで確かめた感じがあった。
 SQちゃん自身も自分が嘘っぱちの空っぽだと認識しつつ、ネイルに凝り時に恋をし、生きるに値するちっぽけな真実を見つけて、他人に手渡しながら前に進んでいる。
 そしてそんな在り方を見つけたのは、いつかのユーリ自身ではなかったのか。

 これまでの旅路で積み重ねた関係は、不思議な乱反射をしながら繰り返し、あるいは変奏されていく。
 ずーっと頼れる先輩としてユーリの魂を支えてくれたセツは、今回は悩めるループ初心者で、そんなセツを前にユーリは経験者の頼もしさを取り戻し、不安を取り除ける助言を手渡す。
 今そういうユーリにたち戻れるのは、かつてセツが何も解んねぇ自分に、同じように強さと優しさを施してくれたからだ。
 そういう恩義に報いれる自分を、自己完結した自死の繰り返しから引っ張り出すことで、ユーリはこの周回で為すべきことを見つけ…るのは、まぁ悪魔的論理機械の仕事ではある。

 

 序盤は即死確定の面白人間、敵に回れば恐ろしく味方であれば頼もしく、ずーっと性格最悪の皮肉屋。
 ラキオという存在は、この作品が照らそうとしている人間の複雑さ、そこに宿る面白さを強く背負っていると思う。
 ラキオのことが新しく理解る度に、間違いなく惹かれるだけの引力が確かにあって、それはコッチに都合のいい心地よさが生み出すものではない。
 アイツはずーっと厄介な捻くれ者で、それでも抜群の頭脳を持っていて、敵陣営になるとそれが最悪の障害にもなる。
 色んな顔を見せてくれるけど、それはラキオという統一性…人間性のいち側面でしかない。

 その全部が面白かったと、今なら間違いなく言えるこのタイミングで、ラキオは銀の鍵を巡るゲームがどのようなものであったのか、作品の構造(少なくともその一部)を総括する問を、適切に投げかけてくる。
 これにユーリが「最悪だけど、悪くなかった」と、16話付き合った僕らの実感と重なる答えをしっかり伝えてくれることで、作品全体が自分自身を見つめる視点と、僕らが”グノーシア”を味わう感覚が、ピタッと重なるわけだ。
 デッドループ脱出に必死になりながらも、こういう俯瞰的な自作批評をしっかり、キャラの実感とドラマのうねりに込めて描けるのは、まー賢く強いお話だと思うわけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

画像は”グノーシア”第17話より引用

 かくして意地悪妖精に助けられ、今自分が為すべきことを見つけたユーリは、物陰で白紙になってた己自身の決断と向き合う。
 ここで知るべきなのが「ユーリは命がけで、セツを助けた」なの、マジでいいなぁと思う。
 それは今回前半、ユーリが自分を殺すことで事態を打破しようとしていた、ある種の自己満足と対比をなす。

 死ぬより生きて、一人で終わるより誰かのために体を張って、未来を切り開いていく。
 そんな前向きな答えは、忘れていた自分自身の決断にこそあったのだ。
 そうやって過去だったはずのものが、未来への架け橋になることが人生には結構ある。

 

 自分自身の声を直接聞き届ける、異様な事態こそがそういう、人間が生きることの普遍的な答えを削り出すナイフになるのは、SF…あるいはファンタジーというジャンルの強みであり、美質でもあろう。
 銀の鍵や宇宙人狼という、刺激が強く魅力的なギミックをその表層で終わらせず、奥の奥までしゃぶり尽くして凄くフツーな事を描く姿勢は、この作品の一番いいところだと感じている。
 最悪な宇宙人狼も、疑うことを止めずそれでも信じ続ける、矛盾した真実を作品の真ん中に置く、一種の錨として機能しとるもんなぁ…。
 そういう姿勢があったから、ユーリはこのデッドループを抜け出す鍵を手に入れられたのだ。

 もちろんあまりにヤバすぎる状況なので、ただの人間でしかないユーリは自分を見失い間違うんだけど、仲間がそれを補ってくれる。
 そういう縁を真摯に紡いできた歩みが、ここまでの16話ずーっと連なってきて、物語はすべての始まりへと帰還していく。
 良いじゃない……大変良い感じの終盤突入よ……。

 

 夕里子が差し出した真実の果て、バグでしかない己をそれでも未来に進める道に踏み出した主人公が、イカれた旅の出発点に何を見出すのか。
 そろっそろ本格的に、セツをヒロインにして話をまとめてくる気配を感じておりますが…さてどうなるか。
 どうなっても面白ぇってことは、ここまでの話数でガッチリ証明済みだ。
 アニメ”グノーシア”、次回も楽しみッ!