イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アクティヴレイド -機動強襲第八係-:第3話『アリーナからの挑戦』感想

第1話で高速道路でのチェイス、第2話では学園で大立ち回りと来て、第3話の舞台はアイドルのステージ!
やりたい放題し放題、とにかく楽しい方向にガンガン舵を切っていくパワードスーツ警察アニメは、ワリと脚本の趣味丸出しなエピソードとなりました。
ドタバタとしたコメディをやりつつも、ゲーム感覚で犯罪を操るロゴスの不気味さや、それにうっすら気づいている室員の優秀さもちゃんと描写している辺り、やっぱしっかりしたところはしっかりしたアニメだ。

しっかりしていない所はやりたい放題だがなッ!
ドルヲタが最新ウィルウェア着込んでコンサートに潜り込む出だしから始まり、アイドルに説教されて素直に帰りそうになる所とか、キレの有る遠隔操作でピンチになった主役を助けるべくステージで頑張るあさみちゃんとか、ドルへの愛でキモく頑張るドルヲタとか、全体的にIQ低かった。
滑り落ちていくように頭の弱い展開になっていき、ドタバタした展開を小気味良く見せる手腕はやっぱり夕方アニメ的で、なんだか懐かしく楽しめる。
3Dモデルの媚びまくったモーションとかは、マジ最先端だけどね。
ここら辺の混ざり具合が実にいい塩梅で、『懐かしい』と『古臭い』の境界線は作り込みとセンスで生まれんだなぁと納得したり。

頭の弱い攻防戦の中で、事件の裏にいるミュトスの存在をダイハチに知らせたり、その長い腕が警察サーバーにまで及んでいたり、敵さんのサイズをキャラクターにも視聴者にも、しっかり見せているのは良いですね。
グダグダなコメディに引っ張られて、こういうところもグダグダになっちゃうと、『犯罪と戦っている警察』っていう軸足が崩れてお話全体が転んでしまうわけですが、敵さんのカットイン挟みつつ、ゲーム感覚で犯罪を弄ぶ敵の顔をちゃんと見せたのはしっかりしてる。
私服にゲームパッドという、視覚的アイコンでミュトスの犯罪への態度がわかりやすくなっている所とか、視覚芸術であるアニメの利点を活かした見せ方だと思います。
ミュトスくんは敵役としての仕事や狙いは見えてきたけど、かなり高難易度の変態っぷりを魅せつけた妹イメクラ(性的行為一切なし)とか、いつもウロウロしてる妹とか、パーソナルな部分は逆に謎が深まったなぁ。
如何にもな悪役してるより、半歩ズレた描写が沢山あったほうが面白いのでOKですが。

メディアを活用したダイハチ包囲網の形成とか、存在自体が秘匿されていたステージ用ウィルウェアを計画に組み込む所とか、エージェントが複数いる所とか、ミュトスの描写は良い感じに強そうです。
単純な暴力ではなく、社会機構を悪用し巧く立ちまわる小ズルさでもって、ゲームとして犯罪を演出している余裕っ面が、一種の貫禄に繋がるというか。
悪は正義にぶっ倒されるのが世の習いですが、同時に悪が大きくないと正義が頑張る姿も生えないわけで、この段階でミュトスが手強そうに感じられるのは、凄く良いと思います。


頭の弱い展開の中でもキャラを見せるのがこのアニメでして、今回クローズアップされたのは
青担当こと瀬名颯一郎くん。
クールに見えて感情的で、クレバーに見えてどこか立ち回りが泥臭い彼ですが、いまいちダイハチにはカッチリはまっていないというか、自分の居場所を見つけきれていない感じがします。
大阪への栄転も『とりあえず』という感じで先送りになっていたし、猛さんとのバディも心からのものではない感じだし、ここら辺は今後もう一回掘るポイントなのかな?
噛み合わない様子を描きつつも、それを乗りこなして仕事はカッチリやろうとする(とコメディ時空が発生して、トンチキな厄介事に巻き込まれる)様子をしっかり描くのは、癖の強い職場モノとして良い描写だと思います。

颯一郎とは逆にどんどん居場所を手に入れているのが、高性能ポンコツエリート未成年あさみちゃん。
飲み会で黒崎さんに気に入られてる所とか、ダイハチ総出でアイドルに仕立てあげられてる所とか、海千山千の猛者たちに可愛がられている感じが良く出ていて、なかなか面白い立場だと思います。
あさみちゃんを可愛く描くことにかなりリソースを使っているし、狙い通り可愛げが生まれてだんだんこの子が好きになっても来ているので、彼女がダイハチに馴染んでいる描写を細かく入れてくれるのは、見ていて楽しいです。
あさみちゃんが異分子としてダイハチに切り込んでいくことで、例えば大雑把なんだけどストレートで繊細な黒崎さんの感性とか、真顔で面白い指示を出す船坂さんとか、ダイハチのメンバーの表情も見えてくるのは巧さがあるところです。
異質なシンマイだからこそ、そこへの対応の仕方でキャラクターごとの個性が見えてくるってのは、良く出来た劇作ですね。

SF関係の描写をサラッとやりつつも、考証を感じさせるコアさもあるのはこのアニメの良い所でして、『音を武器にする敵に逆位相で対抗する』っていう定番を踏みつつ、むしろそれを可能にするダイハチバックアップスタッフの即応性を強調してたのは、凄く良かったです。
データさえ取れれば対抗策は即座に準備できるってのは、第1話の土木用ウィルウェアとの殺陣でも強調されてたところですね。
前線以外のメンバーにも細かく見せ場を用意し、突っ立ってるだけにしないよう有機的に殺陣を組むセンスはやっぱ好きだなぁ。

他にも有人より外部操作のほうが切れ味鋭くなるウィルウェアの動きとか、制圧過程をミュトスに知られている不自然さをサラッと見せるやりとりとか、エクソスケルトン特有の『装着車が過剰な力に振り回されるので、乗ってるだけで怪我をする』という現象を入れこんだりとか、SF要素・アクション要素をドラマになじませ、両方を際だたせるようお話を仕上げているのが良かったです。
最初はキモい犯罪者でしか無かったドルヲタくんが、男の娘アイドルへの愛で根性出して抵抗するところとかは、ウィルウェアが『外部操作可能な外骨格』だからこそ出来るドラマなわけだし……キモいけどさ。
やっぱ単純なカッコよさや可愛さ、考えられた設定ってのは胸躍る大事な燃料なんですけど、それで高まった温度で何を動かすかってのはなかなかに悩ましい訳で、ちゃんとドラマと噛みあわせて物語全体を前進させるよう使いこなしてるのは、見ていて安心できるポイントですね。


というわけで、ダイハチを追い込む罠の大きさと、ただ狩られるだけではない癖の強さが見えてきた第3話でした。
そういうマジメな劇作の狙いを、お馬鹿で楽しいコメディの内側にしっかりまくり込んで、両方楽しめるように仕上げる手腕の見事さは、まさにエンターテインメントって感じがします。
主人公サイドであるダイハチの面々も、敵役であるロゴスも顔が見えてきて、お話が転がる土台ができてました。
さてはて、今後どう回していくのか。
とても楽しみですね。