イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アクティヴレイド -機動強襲室第八係-:第4話『旋回空域』感想

世知辛いルールと縄張りの間を泳ぎながら、なんとかお巡りさんのお仕事を完遂しようとするクセモノ軍団のお話、今回はちょっとシリアスなハイジャックモノ
ウィルウェア使いの細かいことにうるさい方こと瀬名颯一郎をメインに据えて、目的不明の遠隔旅客機乗っ取り事件にダイハチが介入していくお話でした。
とにかく黒崎さんとずーっとイチャイチャする話で、3話まで主役を貼っていたあさみちゃんを脇にのけて、男バディをじっくり書く話になりました。
同時にダイハチをヒタヒタと包囲する陰謀の長い腕もたくさん描かれていて、第4話という話数に相応しい堅牢な話だったと思います。

これまでのアクティヴレイドはあさみちゃんの可愛げのある意識高い系ポンコツ力を全面に押し出し、新人目線で話が進んでいったわけですが、今回はそんな新人を受け入れる側のウィルウェア使い二人をメインにしたお話でした。
特にせせっこましい激情家・瀬名颯一郎くんにまつわる描写が非常に多く、防大から警察に移った珍しい経歴の持ち主だとか、爆弾解体をはじめとするテクニカルな技術の持ち主だとか、堅物すぎるきらいはあるけど腕前と正義感を秘めた優秀な警察官だとか、色々判るお話でした。
失敗すれば大惨事なミッションを隠蔽する上層部にあさみちゃんが激怒してたのもそうなんですが、ダイハチはスレた部分を強調されつつもちゃんと正義の味方で、ヒーロなんだというのがブレないのはやっぱ良いですね。

颯一郎くんにカメラを寄せることで、その相棒である黒崎さんとの仲良く喧嘩する間柄もクリアに見えてきて、悪態つきつつもお互いの死角を補いあう、見事なバディ力を発揮していました。
今回の事件、颯一郎だけだと時間がかかりすぎてアウトだし、黒崎さんだけだと細かいトラップに引っかかってダメだったと思うので、『時間制限のある爆弾』が『飛行中のジャンボジェット』という異常な場所に設置されている座組は、巧いこと考えられてんだな。
黒崎さんが総一朗くんの翼になるアクション・シーンはバディ力高まる良い見せ場だったわけですが、あれも独断専行のきらいがある黒崎さんのキャラ性を活かし、自衛隊の輸送機ではなく独力での飛行を選ぶ理由をうまく作ったからこそ、生まれるシーンだし。
視聴者に見せたいものをお話しの中に運んでくる上での、レールづくりがすごく自然でパワフルなアニメよね……ここら辺はベテラン荒川脚本の妙味か。


実は今回の事件、視聴者が感じたほどは気持ちよくオチていなくて、ロゴスの正体と狙いは政府サイド誰も掴んでいないし、ダイハチに都合の悪いように仕組まれている陰謀のドミノには、作中誰も有効打を打てないでいる。
前回ラストの批判的な報道といい、今回の酔いどれ国会議員といい、社会的なパワーを持っている存在がダイハチに好意を持っていない描写が地道に挟まれているんですけど、それは巧く笑いのオブラートに包まれて目立たないようにされています。
毒を巧く隠しつつ、少年から飴をもらってからのラストのやり取りが非常に爽やか、かつキャラクターの核を的確に捉えた気持ちのいいものなので、エピソード自体はすごく気持ちよく身追われる所、本当に良いなぁと思います。

しかし確かにダイハチはロゴスの陰謀に絡め取られつつあって、それを薄々感づいているクセモノたちも、ダイハチという愚連隊の動きにくさが邪魔をして謎に踏み込めないでいる。
ここで『陰謀それ自体の気配に気づいていない』というアーパーな描写をしないのは、このアニメが『ド新人あさみちゃんがやり込められつつ、クセモノに認められていく』というお仕事モノの構造を持っている以上、すごく大事な所でしょう。
同時に完璧に対処して悪の組織の陰謀が叩き潰されてしまっては、後半来るであろう大ピンチ(とそこからの大逆転)が巧く演出できないわけで、ロゴスの情報操作能力とスパイ網は、『手出しできないのも無理も無いかな』というくらいに巧く調整されています。
今回名前が出てきた『バード』なるロゴス構成員も急に出ていたわけではなく、ダイハチの情報がロゴスに漏れている描写は前々から細かく挿入されていて、それが今回一つの名前を手に入れた形になっています。
こういう感じで、爽快な部分を真ん中に据えつつも、後のストレスとカタルシスに説得力を与えるべく、要所要所に伏線を仕込んでおくスタイルは、非常に巧みだといえます。
活躍のためのピンチの準備、ピンチを乗り越える説得力としての有能さの描写。
このアニメやっぱ、一見対立しているようでいて、実はお互いを補いあう物語の要素を、凄くバランスよく扱うお話ですよね。

お話がまだ転がりだしたばかりのこの話数では、爽快なヒーローアクションとしての側面をまず感じてもらうことが主目的であり、ウィルウェアのインチキ能力を魅力的に見せる空中給油シーンだとか、ど根性の飛行機背負って着地シーンだとか、設定を活かした見せ場(もしくは見せ場を作るための設定)を楽しく見せる構成がちゃんとメインにあります。
人命救助者、ヒーローとしてのダイハチはやっぱり僕達視聴者がイノイチに見たいものであり、国会議員へのクレバーで皮肉のきいた対応、少年の無垢なお礼に自分らしさを保ったまま応答する姿がちゃんとあることは、彼らがどんな組織で、お話しの根本がなんなのか分かりやすく伝えてくれる。
ヒーロー・フィクションとして何をするべきか、その基本的な部分をしっかり抑え、今後の展開を見据えるだけではなく、1エピソードを見てとにかく楽しかったという気持ちになってもらうためのサービス精神。
それは凄く立派なことだし、このアニメを見ていて感じる楽しさの根本にあるものだと思います。


お話を展開する上で重要な諸要素をさらりと、しかし巧妙に操作し、一つのエピソードに必要な爽快感と満足感、シリーズ全体の中で必要な緊張感と予感を両立させる、まるで熟練の手妻のようなお話でした。
その上であくまでキャラクターの魅力を視聴者に見せる楽しさを忘れずに、『颯一郎と黒崎さんのバディを、もっと見ていたい』と思わせる歯切れのよいやり取り、パワフルなアクションを多数盛り込むサービス力に、本当に感服します。
楽しい、巧い、鋭い、熱い。
一つの話の中で、色んなタイプの褒め言葉が思わず浮かんでくる、優れたアニメーションだと思います。
アクティヴレイド、益々見逃せませんね。