イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

魔法つかいプリキュア!:第1話『出会いはミラクルでマジカル! 魔法のプリキュア誕生!』感想


一つの伝説が終わり、あらたなる物語の幕が開く。
女児アニ史上、つうかヒーロー・フィクション史に燦然と輝く大傑作の衣鉢を継ぐのは、魔法に見出された二人の少女の物語。
桜舞い散る春の町で出会った二人がどこに行くのか、今後に期待が高まる第1話だったと思います。

初見の感想としてはかなりコンパクトというか、あえてテーマを小さく身近に、キャラクターも想定している視聴者層に寄せてきた印象を受けました。
常にくまのぬいぐるみを抱き、フリフリでガーリィな服装に身を包んだみらいは言うまでもなく、自分の失敗を常に言い訳しているリコも、13歳という年齢設定に比べて幼い感じです。
ここら辺は、テーマも精神性もカッチリ固め、丁寧にやりきった前作とは、違う部分を掘り下げていくということなんでしょうか。
スローモーションやクローズアップを印象的に使って、『今、この瞬間が運命なんだ!』という

そんなサイズで描かれるのは徹底して『今』『ここ』でして、異世界の説明も、キャラクターの行動の背景にある過去も説明をさておいて、まずは春を徹底的に描く。
高く開けた空、一面の桜吹雪、巨大で明るい月。
魚眼を要所要所で巧く使いつつ、開放感のある絵を上手く作っていて、少女たちが運命の出会いを果たす第1話のストーリーラインを乗っける、良い土台になっていたと思います。
僕達の現実と地続きな感じなんだけど、汚れた感じが一切なくて、良い意味で夢の様な浮遊感がある桜の描き方は、プリキュア第1話らしい『春感』がみっしり詰まっていて、とても好きですね。

今回はとにかく女の子二人を描くことに注力していて、幼く夢見がちだけど積極的なみらいと、ちょっとツンツンしてて根は優しいポンコツ・リコをゆっくりと描いていました。
久々に『ふたり』で始まるプリキュア、タイプが似通っているとお話を転がす余地が無いわけですが、ポワポワしてて積極的、グイグイ間合いを詰めてくるみらいと、そっけない態度で距離を作ろうとするリコは、対照的で面白そうなコンビ。
タイプの違う『ふたり』が出会い、反発し、分かり合う物語というのはベーシックかつ力強いものなので、今後色んなイベントで楽しませてくれると良いなぁ。

今回は出会いの話なので、初対面の距離感というのをリコが出し、それをみらいが乗り越えることでドラマが展開します。
つまりリコはみらいの優しさに軽い拒絶を見せないといけないわけで、ちょっと不利な立場。
しかし彼女が持っている心根の優しさや、好意を素直に受け止められない照れくささなんかは非常に丁寧に描かれていて、主人公が好きになれる第1話だったと思います。
むせ返るようなポンコツ力もたっぷり描写されていて、みらいがおそらく天才肌であることも考えて、今後美味しいポジションを担当してくれそうです……オメー第2話で退学かよ……まこぴー以来の逸材だな……。

みらいの方は嫌味のない元気な主人公というか、お話の根本になる『魔法』に強くモチベーションを持ち、距離の詰め方が巧い女の子でした。
ひねくれた部分は腐れポンコツが担当すると思うので、君は真っ直ぐお話のエンジンになってくれ。
情け無用の人間力でグイグイ来る感じは勢いを感じてとても良いので、魔法学校でどしどし友人を作ったりすると良いのでは。

いい子すぎると別の嫌味が出たり、お話に厚みが出なかったり、キャラが清廉潔白すぎて好きになれなかったりするので、巧く人間味を出して欲しいキャラでもある。
そういう意味では、お腹がすいたリコにドーナツをあげるシーンは、基本的ながら好きな場面だった……人間、お腹が空くのは良くないのだ。
衣装デザインや常時携帯しているモフルンからは、設定年齢よりも幼い感じを受けるので、作中でそこを突っ込んでくれると面白いが、それは今後次第かな。


今回はプリキュアの設定や敵組織の内情、魔法世界の実情なんかを全て蹴っ飛ばし、女の子二人が運命の出会いを果たすまでに注力していました。
なので、ここらへんに関してはな~んとも言えん。
今ん所の描写を見るだに、前作のような凝ったドラマ構造はあんま埋め込まれておらず、シンプルな敵組織として運営するのかなぁ、といった感じ。
『ベーシックでシンプルな女児アニ』ってのは、敵組織にかぎらず作品全体に感じる印象ですね。

今後現実世界と魔法世界、二つの世界を行き来する感じで話が進むんでしょうが、来週は魔法世界が舞台になるので、色々説明もあるでしょう。
『カードでピピっと! 一発世界移動』なビジュアルは、インパクトが有ってよかったです。
あのシーンもガラス天井を大きく切り取って、開放感が強く出る絵にしていたなぁ……アバンの月夜、二人で飛ぶ桜の空と、『広くて障害物のない世界』が今回のキービジュアルなんだろうな。

EDに関しては高まった技術力をあえて丸くし、セルアニメーションに寄せた表現でぐいっと動かしていて、また一歩階段を登った印象。
80Sディスコと、それに影響された各種アイドルの要素をうまく活かし、キュートで元気に、少し妖しい雰囲気も交えつつ、素敵なダンスになってました。
曲入りの鏡の表現がマジすげぇって感じだ。
EDの二人は濃厚な友情(隠語)を感じさせる仕草でしたが、あの領域に入っちゃうと関係が閉じて発酵しだすので、しばらくはぎゃいぎゃいいがみ合ったりしつつ進んで欲しいところだ。


というわけで、あえてシンプルに、ストレートに漕ぎだした感じの、プリキュア新シリーズでした。
長い一年シリーズの出だしということで、色々見えない部分もありますが、『女の子と女の子が出会う運命』は結構鮮烈に描けていた気がします。
テーマやキャラクターがもつ光だけではなく、影の部分も時々取り上げつつ、陰影と深みのあるシリーズになってくれると、僕好みで良いと思います。
後あれだ、どしどしと仲良くしてくれると嬉しい。万事なかよく。