イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

12歳。:第3話『Wデート』感想

ヘリオガバルスは薔薇で政敵を窒息死させたが、『12歳。』はキュンキュンでお前らを殺す!!系アニメーション、今週は早速のWデート。
イベント消化速度が深夜アニメの三倍くらいの速さであり、『カップル成立をニ連チャンでぶっこんだ後即デート』という目白押し感は、スパロボ序盤でガンダム出てきた後のマジンガーみたいな濃厚さである。
ピュアピュアでキラキラな心の動きを大事にしつつも、各カップルの違いであるとか、そこから見えるキャラクターの性格だとか、Wデートという状況を活かした見せ方もしっかりしていて、相変わらず巧さと強さが両立してるアニメだ。

このアニメにおける『初めて出会う恋イベントにめっちゃ胸キュン』描写は、グルメアニメにおける食事、格闘アニメにおける殴り合い、肌色アニメにおける肌色みたいなもんで、ジャンルがジャンルとして成立する大事な華であります。
フィクションは作り物なので、見せ場をしっかり目立たせ、視聴者の心に滑りこむ演出で飾らないといけないわけですが、このアニメが選んだ方法論は真っ向勝負のパワー押し。
スローモーション、ムーディーな音楽、画面を埋め尽くすポワポワとキラキラ、異次元に吹っ飛ぶリアル背景と代わりにせり出してくる情景。
少女漫画とそれを元にした少女アニメーションが培ったベーシックな演出を、徹底的かつ過剰に押しこむことで、キャラクターが感じている胸キュンを画面に再現しようとするわけです。

覚めた目で見るとオールドスクールに過ぎる感じもあるけど、全体的な芝居付けが素直、かつキャラクターに好感が抱けるよう話を組み立てているので、手垢がついた感じより先に、演出が本来持ってるパワーが素直に発揮されてる感覚のほうが強いですね。
やっぱなー、イケメンに『来いよッ!』されたら、分かりやすく背景が抽象的になって、スロモーション始まって欲しいもんなぁ……。
でも、檜山念願のシングルデートが達成された時の山下達郎っぽいBGMと、噴水のメタファーは少しクドかったかな……。
『男女の恋が限界を突破すると、噴水が吹き上がる』という演出はプリリズRL第26話を思い出しますが、赤尾さんも坪田さんもプリリズで脚本書いてたなぁ、そういえば。

今回見せられた胸キュンポイントを回想してみると、『自分がして欲しいことを、言葉にしていないのに分かってもらえる』『おなじ感覚を共有する』辺りが大事だというのが判ります。
ここら辺は男女恋愛を超えて、人間が人格的な喜びを感じる大事なポイントだと思うので、そういうフラットな喜びの上に恋愛という特殊な関係を乗っけてるのは、このアニメの良い所だ。
花日ちゃんが12歳にしては幼い感じなのも、この後歳を重ねていくと色々ややこしい手管とエゴイズムが絡みついてくる恋愛を、あくまでピュアに描ききるためでもあるのだろうなぁ。

……まぁその割には、『デートの感情は男が出すもの』っていう類型が、サラッと挟み込まれてんけどな。
ここら辺のパブリック・イメージを素直に出しているのは、あんまり先鋭的な関係を描くと受け入れられないからか、はたまた所謂『男女の恋愛』の固定的イメージを解体する気がないからなのか。
そこら辺が判別するのも、そしてこのアニメの性差意識がどういう文脈にあるのか分かるのも、まだまだ話数必要な感じだ。


今回はWデートということで、『超人ボーイ高尾くんが、幼い花火ちゃんを完璧にエスコートする精神年齢年の差カップル』と、『時々ギクシャク、でもやっぱ好きなの!系肩の高さがおんなじな結衣&桧山』という対比が、非常に分かりやすかったです。
とにかく高尾くんがすべての局面をコントロールしきっていて、あまりの人格的高みに高所恐怖症発症するところだった……。
ウサギのぬいぐるみがなくなってパニクる女の子を相手に、初デートであそこまで適切な対応を取れる彼は、闇の傭兵だったとか、日常を守るべく戦う運命の戦士だったとか、そういう裏設定あるんですかね。
でもま、あそこでギャーギャー泣き続かれてもうっぜーだけだし、『12歳。のピュアラブをモニタ越しに観察させて頂く、ある種の野生動物ドキュメンタリー』という楽しみがある以上、高尾のコントロール力はありがたいわな。

そんな『恋愛合気道ブラックベルト』高尾に守られて、思う存分甘酸っぱいすれ違いを堪能するのが、結衣&桧山の凸凹カップル。
花日&高尾が『花日が人間らしい失敗をして、高尾が完璧に受け流す』というパターンを持っているのに対し、こっちはお互い平等に失敗したり補ったり、バランス良く恋愛しております。
なんだかんだ桧山もイケメン力高くて、致命的な失敗はしないキャラクターなので、ハラハラしつつ安心して共感できる、良い立ち位置よね。
高尾サイドだけだと『男>女』という力関係が露骨すぎるので、こっちで『男=女』という関係を描いているのも、いい塩梅だ。

W主人公それぞれの肖像を描いた第1話、第2話に比べると、2つのカップルが同時に物語に収まる今回は、お互いの違いと相互作用がよく見える回だったと思います。
高尾は花日だけではなく桧山にも強い影響力を持つ、最強のコントローラーだなーとか、花火ちゃんの幼い真っ直ぐさが、思いの外状況動かしてるなーとか、しっかりしていそうな結衣ちゃんも、案外桧山の独占欲に気づかねーなーとか。
やっぱ状況に放り込むことでキャラクターの顔ははっきりと見えてくるわけで、Wデーおというイベントを利して色んな組み合わせを生み出し、キャラがどういうリアクションするのか引っ張り出せる今回のお話しは、よく出来ていた。
デートの最初では男同士でつるんでいた彼氏Sが、お話し終わる頃には彼女の横に立ってる対比とか、心の変化がよく見えて良い演出だったなぁ。

『スーパーイケメンに完璧にフォローアップされたい』という欲求を高尾で、『不器用だけど私を思ってくれるボーイと、平等に恋したい』という欲求を桧山で叶えていくという、欲張りキングな両面戦闘も、しっかり機能していました。
ピュアピュアで道徳的なテーマ性をしっかり捉えつつ、おしゃれやいろんな形の恋も貪欲に盛り込んで勝ちに行くスタイルは、強くていいと思いますね。
『キャラクターを増やすことで色んな恋の形を取り込み、恋愛テーマパークを作る』つう意味では、ハーレム型ラノベと似た構造なんだなこれ。


デートが始まってからのコントローラーは高尾でしたが、始まるまでは耳年増のお団子ヘアー・まりんちゃんが状況を整えてくれました。
所謂説明キャラなんですけども、ただ喋りたがりというわけではなく、友達の幸福を喜びそれを手助けしたいというまごころが行動の根底にあるので、すげー好きになれるキャラです。
まりんちゃんは物語の調整役として優秀で、今後問題が発生した時の相談役にもなると思うので、なかなか自分の物語は語れないかなぁ。
お話を進行させる仕事に頑張るだけではなく、個人的にはちょいちょい一人物としてのお話も入れ込んでくれると嬉しいけど、さてどーなのかな、と。

そんなわけで、相変わらず『お前らをトキメキで殺す!!』というオーラ満載なWデートでした。
そして来週は高尾にカッキー声のオラオラ系ライバル登場……スパロボで言うとガンダムの後にマジンガー出てきて、グレートマジンガー登場する感じだ……。
高尾の完璧っぷりが少し非人間的領域に突っ込んできたところで、嫉妬や焦りといった人間的側面が出そうなマッチアップ相手を即座に用意する辺り、隙のない構成だといえます。
素敵な少年少女たちの恋がどうなるのか、そして恋から彼女たちは何を学ぶのか。
先が楽しみな展開で、やっぱおもしれぇなこのアニメ。