イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

あまんちゅ!:第2話『光といけないコト』感想

伊豆半島で女の子が運命と出会うアニメの歌ったり踊ったりしない方、今週は登校風景と楽しいプール。
Aパートはぴかりと先生の自由人コンビが仲良くなるパートであり、Bパートは不自由な東京モンが短髪ちびっ子元気っ子に思う存分グイグイ来られて、あっという間にテリトリーを明け渡すお話でした。
Aパートのゆるっとした空気も好きだけど、『出来ない』てこに『出来る』ぴかりがガンガンぶつかって、心の垣根がなくなっていくドラマが強くあって、Bパートは非常に濃厚だったな。

この話、基本的にはてこの成長物語でして、うじうじグダグダと過去を振り返り今を楽しまない青春オバケが、底抜けに明るい美少女に手を引っ張られて外に飛び出していくってのが基本構図です。
そのためには牽引役のぴかりがどういう子なのか見せないといけないってわけで、先生との絆作りも兼ねて彼女の日常を切り取ったのがAパートって感じか。
ちと脳天気にすぎるけども、目の前の出来事を最大限楽しみ、自分で素敵なことを探しもするぴかりのアクティブさは、良く表現できていたんではなかろうか。

こうしてぴかりにカメラが密着すると、彼女が常に上と前を向いて世界を広くとらえようとしているのに対してこは自分から下を向いて世界を狭くしている違いがよく分かる。
この世界では素敵なものは空からいきなり降ってくるわけではなく、日常の中に埋まっている素敵を自分から発掘する積極性が大事なわけで、二人の姿勢がそのまま『出来る』『出来ない』に直結しているのが、良く分かる。
なんてことない登校風景ですら楽しんでしまえる積極性がぴかりの武器であり、それに引っ張られる形でてこの灰色学園生活が輝き出すという構図が、Aパートを挟むことで分かりやすくなってました。

ぴかりがお外を元気に跳ねまわるのに対し、てこは相変わらず携帯電話の狭いディスプレイを覗き込んで、陰鬱にご登校。
登校準備にあまりに生気がないので、過剰なエネルギーが跳ねまわってるぴかり&先生サイドの合間にカット・インされる度、暗さが悪目立ちするレベルだった。
しかしそんな世界も熱海の元気怪獣に侵食され、いやがおうにも変えられていってしまう(というか、もう変わりつつある)わけで、彼女の閉じた世界である携帯電話に空飛ぶぴかりが飛び込んできたのはわかり易い表現だった。

そんな二人を見守り導くのが真斗先生で、大人なんだけど青春まっただ中、生徒と同じm線に立ちつつ周囲は見ている、いい具合の立ち位置がよく見えました。
積極性は自発性とも繋がるわけで、生徒のやりたいようにやらせておいて、迷ったら相談に乗り、必要なら助言する距離感は、若さの特権を最大限発揮させる良いやりかた。
人生を楽しむのを学生二人の特権にせずに、肩肘張らず自分も参加する辺り、先生も積極性という強みをしっかり持っているキャラクターなのだな。


んでBパートは黒髪ロングの根暗シティ系美少女が、伊豆名産の元気モンスターにグイグイ引っ張られるさまを、延々描いていました。
やっぱなー、闇の黒髪ロングが光の金髪ショートに手を引っ張られる姿には、その身長差含めて非常にベーシックな強さがある。
てこはウジウジ下ばっか睨んでいるように見えて、その実素敵なものには素直に驚く感性は持っているので、世界最大の素敵であるぴかりへのリアクションも素直なものよね。
『あの子のことを考えると、モノトーンな世界がカラフルになるの』っていう初恋描写、"四月は君の嘘"で俺見たよウン。
強引に手を取ってプールサイドまで引っ張っていく『手』の演技は、このアニメで二人がどういう関係にあるのか、巧く暗示していた気がします。

成長物語は『出来る』奴が『出来ない』やつを引っ張るもの(逆だとただの堕落の話になっちゃう)でして、下むいてるてこをぴかりが引っ張りあげるっていう構図は、てこが成長して自分に自信をつけるまで変わりがありません。
でも二人の関係は一方的ではなくて、大木双葉にとって小日向光との出会いが運命だったように、てこにとってもぴかりと出会えたことは一種の奇跡であり、お互い影響を与え合う関係なわけです。
そこら辺の平等性が今回もしっかり描かれていて、てこだけではなくぴかりも楽しそうだったのは、非常に良かったですね。

運命を切り開いていく出会いを明るく輝かしく描く一方で、新しい挑戦をためらう暗い気持ちもしっかり切り取っているのは、明暗はっきりしていてなかなか良かったと思います。
視聴者の大半も『出来る』やつに憧れつつ『出来ない』暗さの真っ最中にいるわけで、ぴかりの明るさだけ描かれても、話に共感はできない。
てこの暗くて後ろ向きな姿勢を、モノローグ込みでずっしり重たく描いておくことで、上手いとこ『なんか自分に似たところがあるな』と思える存在を生み出すのに成功しているのは、非常にグッド。
ぴかりを強引なキャラにしておくことで、臆病さが高まりすぎて物語が停滞しそうになったら、グイグイ手を引っ張って進めることもできるしね。
主役二人のアンサンブルがしっかり出来てて、話に安定感があるんだな。

このお話のメインモティーフであるダイビングも、ぴかりが出会う新しい光の象徴であり、それを媒介にしてまた新しい世界に出会っていく舞台でもあります。
出会いの衝撃を大事にするんならいきなり海に飛び込ませりゃ良いんだけど、水の冷たさとかダイバーライセンスの塩梅とか、そこら辺はリアル重点な感じよね。
しかしそこがプールでも『ぴかりと飛び込む水は特別なのだ』と判る絵にちゃんとなっていたのは、非常に良い。
黒髪が水に流れるところの表現とか、濃い目のフェティシズムを感じましたね……あとAパートでブーツ履いてるシーン。


というわけで、ゆったりとお話の基本形を確認する第2話となりました。
キラッキラに輝く風景とか、超ド直球に心情を語るモノローグとか、中毒起こしそうなくらい濃厚な感情表現とか、真っ直ぐであることから逃げないアニメなのだね。
ギャグ顔表現とかキメどころの見せ方とか、やや過剰に感じる部分もあるけれども、語る部分と語らない部分を上手くバランス取って、作中の感動に視聴者が最大限共感できる運びに慣れてくると、さらにいい感じかと思います。
出会いの輝きを大事にしつつ、出会いがすでに変化でもあって、ちょっとずつでも世界は変わっているのだと見せたのは、非常に良かったですね。

暴走特急ぴかりに手を引っ張られててこが先に進んでいく構図も、クリアに確認できました。
今後根暗な彼女が何を見つけて、どこに進んでいくのか。
わりとゆったりペースで進んでいますが、さてはてどこまで見せてくれるんでしょうね。