イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

あまんちゅ!:第3話『わくわくと幸せのコツのコト』感想

黒髪めんどくさ女を青春力と伊豆の光で殴り倒すアニメ、今週は桜小路とお勉強。
今週もくっそ面倒くさい黒髪まつげバチバチ女がうじうじモノローグを繰り返すので、先生と友達がタッグを組んで、光の側に連れ出す展開でした。
アニメ特有の演出が上手く咬み合って、てこの面倒くささを強調しているので、そこから引っ張りあげてくれる人たちのありがたみ、世界の美しさもよく見えるっつー話でしたね。
お気楽青春道化師に見えるぴかりの内面が言葉で語られて、『あの子も青春を前に震えているのだな』というのが分かったのも良かったですね。

『臆病なてこの手をぴかりが引いて、輝きの中に連れ出す』っていう基本構図は今週も健在で、とにかくてこは面倒くさかった。
ぴかりが好きなら好きでそれでOKなのに、『私は寂しくなんてない。ぼっちでもダイジョブ』みたいな強がり言うところとか、そのくせ依存心強くて自分からは言い出さないくせに身体接触オールオッケーなところとか、嫉妬心が強いから『ぴかり』呼びに過剰に反応したりとか、マジめんどくせぇクソアマ過ぎて最高だった。
元々こういう面倒くさい青春のモヤモヤと取っ組み合いする話なんだけど、今回はクローズアップの絵とモノローグが多かったからか、てこの戸惑いや恐れがより身近に感じられた印象。
アニメのデザインは『てこ』の語源である眉毛の薄さを強調するべく、目に寄った絵が多いので、てこのまつげバチバチスーパー美少女っぷりもよく分かるわね。

てこが感じている戸惑いは新たな出会いの喜びと常に背中合わせでして、モヤモヤに共感できるってことは、その解消にカタルシスを感じられるってことでもあります。
てこの面倒くさい内面に視聴者を共感させられるか否かってのが勝負どころなわけで、モノローグ多用して一人称的に描き続けているのは、テーマと表現が噛みあった良い見せ方なんでしょうね。
基本的にてこはネガいんだけど、暗い地金の中に発見の喜びを毎回入れて、『どうせ私なんて……でもここ熱海では違うかも! ぴかりは私の運命のバディであり夢の低身長グラマラス距離感近い系元気っ子美少女かも!! 最高かも!!!』という弾む気持ちを維持しているのは、話が前向きになっていいやね。


んで、今週のAパートは『桜並木』という『新しい出会い』をじっくり描いたお話でした。
単純に『素敵な場所を見た』という形ではなく、ぴかりの戯けた態度に隠れた気遣いや怯えにも『気づく』、気持ちに溢れた展開に仕上がっていたのは、とても良かったです。
何しろギャグ顔のインパクトが強すぎるし、常時笛がピーピーうるさいので、モノローグで内面が語られないぴかりは傷つく心がないと思いがちなわけですが、今回そういう道具立てが彼女の自我を守る一種の武器だと語られたことで、ぴかりの内面に少し踏み込めた気がします。
くっそ面倒くさいコミュ症女であるてこと同じくらい、ぴかりもまたコミュニケーションに問題を抱えていて、ぴーぴーうるさい笛もまたその一環。(なので、原作が進んで人格が成長するとだんだん減ってくる)
一見無敵のポジティブ大臣のようにみえるぴかりも、ネガティブ担当であるてこと同じように、『出会い』に恐れや戸惑いを感じていて、わざわざそれを乗り越えててこに話しかけ、明るく振る舞い、『おばあちゃんの言葉』や『桜並木』といった、自分の大切な宝物を差し出してくれているわけです。
今回の話しはてこが『桜並木』に『出会う』と同時に、ぴかりは外見通りなんにも考えず善いことをするのではなく、痛みや震えを当然感じているんだけど、強がって頑張ってそれを乗り越えて、わざわざ手を伸ばしてくれているのだという真実に『出会う』話でもあるわけですな。

それは人間に出来る行いの中でもいっとう尊いものの一つであり、一人称的主人公であるてこがぴかりの振る舞いにしっかり気づいて、ありがたく思ってくれることは、視聴者にとってもありがたいことなわけです。
僕はフィクションの中でも真心を無下にして欲しくないタイプなので、下を向きっぱなしのてこがしっかり顔を上げて、てこが差し出してくれた真心の価値をちゃんと認めてくれるのは、見てて気持ちいいバランスですよね。
完全コミュ症に見えるてこも前向きな部分を持っていて、ポジティブ大臣に思えるぴかりにも繊細な部分があるという、一方的にならない描き方が出来ているわけだ。
お互いかけた部分があるからこそ、それを補い合う交換運動も発生するわけで、平等な友情がより良い未来を引き寄せていくストーリーに風を入れる意味でも、ぴかりが結構普通の子だって見せるシーンがあったのは良かった。

後ま~単純に、まつげバッチバチの美少女たちが近い距離感でキャイキャイする姿を見ていると、俺の心がふっくらいい気持ちになるってのも、当然ある。
世の中の百合少女たちが常に突破しようと試み、毎回失敗している『相手のパーソナルエリアに踏み込む』という難儀を、"縮地"で一気にぶっこ抜くぴかりさんは、ホンマ百合の天才だと思います。
アニメにおいて物理的距離は常に心理的距離なので、『ぴかりがてこの間合いに踏み込む』シーンが多いのは、二人の関係とその先にあるドラマをうまく絵で表現できていて、とても良いですね。

このアニメ目線と指先の表現がうまいんで、身体が接触することで心が接触する時の間合いや衝撃を、上手く映像に乗せれています。
そうすると、キャラクターが感じた出会いのインパクトが、見ている側の感覚にダイレクトに繋がってくる。
ガール・ミーツ・ガールを題材にしている以上、その手触りってすごく大事だと思うし、そこが上手く行っていることで、てこが果たす『出会い』を自分のものとして受け入れられるっていう、表現のポジティブ・フィードバックができていると思う。
『百合は百合である故に百合であるべきだ』という、ジャンル内に閉塞した思考停止のトートロジーで描写を仕上げるのではなく、『この子たちは綺麗な季節で出会い、視線に熱と重量があるから特別な関係なんだ。瞳の奥の気持ちを、眼で伝え合うんだ』という気持ちから出発した表現になってんのは、やっぱ良いね。
あと相変わらずウェストからヒップにかけての曲線に命かけ過ぎだね……制服の魔力かと思ったけど、先生の腰回りも凄まじいアール・ヌーヴォーっぷりだったので、熱海の魔力だと思う。


『ぴかり』という可能性に出会ったAパートに続いては、『ダイビング』という可能性に出会うBパート。
水圧にまつわる難しいお話が長く続きましたが、フランクなだけではない先生の魅力がよく出ていて、とても良かったです。
ぴかりだけがてこの世界を切り開いていく構図にすると、二人の関係で閉じちゃう危険性があるんだけど、教師かつダイビング・インストラクターという立場に頼れる大人を置くことで、別の出口がしっかり存在しているのがグッドね。

真斗先生はヒントを出しつつ生徒に考えさせるタイプの指導者で、今まさに世界と『出会い』つつあるてこの自主性を強化するって意味では、まさに卒啄同時のベストマッチなのでしょう。
『出来ない』『わからない』で自分をこり固めてしまいがちなてこに、いろんな課題を与え、自分で考えさせつつ見捨てない態度を取る人がいるってのは、手を引っ張ってくれるぴかりとは別の意味で、得難い『出会い』なんだと思う。
ここら辺もモノや出来事とだけではなく、必ず人との『出会い』に繋げる演出ラインを外れない、一貫性のある作りよね。

てこは『ダイビング』に初めて出会い、一歩一歩手順を踏んでそれを知っていく。
それはてこというキャラクターの歩みであると同時に、視聴者に向けられた説明でもあります。
ほとんどの視聴者にとってダイビングは『名前は知ってるけど、具体的にどんなものなのかはわからない』だろうから、その危険性と安全な対応を真面目にやったのは、モティーフへのリスペクトが感じられて僕は好みです。
一見お硬い水圧の話が、安全と健康に直結している講座の内容自体も、ダイビングがどういうものか知る(『ダイビングと出会う』)のに似合いのテーマだったと思うし。
高校一年生であるてこ&ぴかりにとっては、『学習と実践が直結する体験』に『出会う』瞬間でもあったのかな、今回は。

人との『出会い』のドラマだけではなく、モノそれ自体のインパクトもちゃんと描いてるのは、『出会い』の衝撃がズドンと伝わってきていいことだと思います。
今回は座学だったけど、水の気持ちよさや桜の色合い、視線をあげたら広がる空の青さなどなど、五感に訴えかける綺麗な絵を巧く使って、キャラクターの『出会い』を視聴者に寄せる努力をちゃんとやってる。
『ダイビング』って題材自体が強く皮膚感覚的な快楽が大事なので、女の子たちの関係性と同じく、皮膚感覚的なものをしっかりきれいに切り取れてるのが、強さにつながっている感じですね。
手順を疎かにしないアニメなので少し先にはなるでしょうが、てこが輝く海に『出会った』瞬間がどれだけ気持ち良く描かれるのか、今から楽しみです。


と言うわけで、今週も色んな『出会い』に満ちた輝く世界の魔法でした。
人格的強者であるぴかりや先生に手を惹かれつつ、三歩進んで二歩下がる面倒くさい成長ロードを着実に歩いている姿には、成長物語としての楽しさもあります。
『いつだってお前しか世界にはいないんだ』と孤独に突き放すでもなく、よりかかりすぎて共依存になるでもなく、『世界と出会うためには、自分が気づかなければいけない』というバランスの良い位置に結論をおいているのも、このお話らしいところよな。

その上で、女の子が女の子と出会う運命の特別さを、これ以上ないほどの濃度でみっしり描いてくれることにマジ感謝しかねぇ。
原作でもそうだったけど、マジ近い・熱い・危ないの三拍子揃ってますよね、てことぴかりの百合フルコンタクト……アニメで加速しまくってて、ありえないくらいありがたいっすわ。
茅野さんの面倒くさい声も相まって、青春の出会いの中にもてこが秘めてる人格的湿り気、しっかり出てるしなぁ……素晴らしい。

そんなアニメあまんちゅ!、来週は二宮姉弟という新たな『出会い』の話になりそうです。
クラスメイトとも先生とも違う『先輩』との出会いが、二人に何をもたらすのか。
愛ちゃん先輩もまた、熱海の魔力を腰と尻に受けた、選ばれしボディライン戦士なのか。
来週も非常に楽しみです。