イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

あまんちゅ!:第8話『秘めた思いのコト/まだまだ知らないコト』感想

閉ざされた自意識の城に明かり取りの窓を一つづつ作っていくアニメ、今週も引き続き二本立てでお送りします。
一人称の担い手を交代することでキャラを掘っていく形式は先週と同じでして、Aパートが二宮姉弟、Bパートがぴかりという分担で、学生ドラマの一コマをスケッチする感じでした。
『ガサツでパワフルな暴力女』という枠に押し込められがちな姉ちゃん先輩の乙女心、てこ主観だと中々見えてこない『ぴかり視点でのてこの評価』などなど、普段光の当たりにくい部分をしっかり掘り下げる作りでした。

Aパートは二宮姉弟メインの甘酸っぱいエピソードで、足癖の悪い姉ちゃんが実は繊細でピュアなハートの持ち主であり、ぬぼーっと姉の暴力を受け入れているように見える弟くんが、結構いろいろ考えて動いていると分かる話でした。
前回の先生の話もそうだけど、主観キャラクターを変えることでモノローグの語り部が変わり、心情をストレートに語る≒内面を直接掘り下げる対象が入れ替わるのは、人数多い話だと有効な手法だ。
てこ主観だとどうしても掘り下げきれない複雑な内面を確認することで、『このキャラはこういうことを考え、こういう価値観で動く』と理解できて、本筋に戻った時に描かれていない部分を想像する足場が生まれるからね。

姉ちゃん先輩の乙女ハートも可愛かったけど、文句言いつつ姉を心配し見守ってる弟くんの頼もしさも、非常に良かった。
姉ちゃんも赤面してチョロ蔵ポイントを貯めこむだけではなく、弟の心配をしてロッカーの整理をしちゃう姉っぷりとかも見せて、グッとキャラが好きになれるエピソードを畳み掛けてきた。
ぴかりもそうだけど、ともすれば単機能なモンスターになってしまうキャラを掘り下げる時『羞恥心』を巧く使って、『この子は感情のないモンスターではなく、恥じらいを知っている思春期の女の子なんだよ』と教える手法は、素直に胸に刺さってグッドやね。

姉ちゃんの暴力キャラは派手な味付けであり、結構なヤダ味を伴うネタだと思うんだけど、今回被害者たる弟くんの内面が描写されることで、コミュニケーション手段として受け入れられる素地が出来たのは、なかなか良かったと思う。
気にしすぎ繊細すぎと言われればそれまでなんだけど、いかにキャラ表現とはいえ暴力は受け入れられない可能性もある言語で、受け入れてくれる相手があって初めて、ネタとして機能するもの。
元気な姉のキャラをしっかり把握し愛する弟くんの考えがはっきり示されたことで、暴力性も含めて姉ちゃんを好きになれる回だったなあ。
どっちか片方ではなく、双方が双方をしっかり立てる、いい二宮姉弟回だったと思います。


Bパートは『まるごとブルマ! てこぴか身体測定!!』ッて感じのお話で、これまで基本てこ主観で語られたバディの関係性を、ぴかりから掘り下げていくエピソード。
こっちでもモノローグはよく効いていて、ぴかりがどんだけ高い値段でてこを評価しているかとか、あんだけ仲良しになってもまだまだ先がある関係性とか、別角度から光があたっていて素晴らしかった。
どーしてもてこ主観だとジメジメしてくるというか、自意識との面倒くさいアレコレが話に挟まるので、カラッとして人間力の高いてこから見た世界は、なんだか新鮮な風味でしたね。
もともと主観が変化することで客観的世界が変化していくという、心因的なロジックで動いている話なので、語り部たる主体が変われば当然お話のムードも変わるんだけどさ。
そこら辺を徹底的に演出できているのは、作品の理解度と実現度が高い証拠なんだろうなぁ。

Aパートと同じく、内面に潜っていくことで見えなかった部分が見えてきて、キャラや作品に感じてたしこりが溶けていく作りが、よく機能していました。
てこの友人依存症を『駄犬っぽい』とポジティブに捉えつつ、バディが傷つかない程度に距離を置いて自分でやらせる辺り、やっぱぴかりの人間力は高いなぁ。
あとぴかりはてこの外見や肉体が好きすぎて、ホント最高だと思います……心や感情を受け止めるのは当然なんだけど、見た目や形式も当然人間を構成する大事な要素で、そこに『好き』という気持ちをしっかり表してくれるのは、隙がなくて良い。
てこぴかの間にある高身長スレンダー×低身長グラマラスの対比も、徹底して、しかしさり気なく強調され続けてるもんなぁ……サイズ差、良いよね……。

話数も印象的な青春イベントもたっぷり積み上げて、関係性が固まってきたかなぁというこのタイミングで、バディの新しい特徴を見つける話が来るのは、なかなかいい構成だなとも思いました。
人と人の繋がりはどんどん変化していくものだし、そこに秘められているものも無尽蔵にあるわけで、『負けず嫌いだから、先取りして負ける』という新たな一面を見つけて、しかも前向きに捉え直すエピソードがここで入るのは、二人の関係がどんどん豊かになっていく未来への安心感が生まれて、凄く良い。
いろんな切り口がある人格同士が触れ合い、小さくて大事なことを見つけ、影響し合い、変化していく細やかさを感じ取れるのは、やっぱ青春の季節を舞台にしている話にとって、大事で必要なことだね。

エキセントリックな部分が強調されがちで、内面がいまいち見えてこなかったぴかりがモノローグを語る主体として描かれることで、人間的な匂いをしっかり手に入れたのも、非常に良かった。
彼女のぶっ飛び具合で話を引っ張っている部分があるので、話が中盤に差し掛からないと落ち着いた面を見せにくい、というのはあるからね。
しかしぶっ飛んでいるだけだとキャラに共感する手がかりがなかなか掴めないわけで、直接的にモノローグを使える今回の話は、彼女の価値観と思考を知る上で大事な一手。
もちろんこれまでもいろいろ手管を尽くして、『ただのモンスターじゃないよ』とは見せてきたわけだけど、しっかり主役を貰って自分の言葉で自分を語るエピソードが用意されていると、掘れる深さがダンチなわけで。
キャラに愛着も生まれストーリーの形もだいたい見えたタイミングで、そういうエピソードをメインキャラクター全てに用意した直近二話は、このお話の構成の巧さを知らしめる優れた手筋だったと思います。


というわけで、てこを取り巻く人々がどんな考えを持ち、どんな行動理念を持っているかがしっかり判るエピソード2つでした。
『面倒くさい黒髪女の、ダイビングで人生再出発!』という軸をしっかり作った上で、そこから少し離れてお話を展開させ、語り部を別のキャラに担当させて掘り下げるのは、タイミングとしても手法としてもよく出来ていると思います。
やっぱ『こいつ面白いけど、何考えているかわかんない』って状況より、『こいつ面白いし、結構いろいろ考えてるな』と思えたほうが、キャラも作品も好きになれるからな。
お話全体の足場をしっかり固める、技ありの中盤戦だったと思います。

しかしこのお話の軸はやっぱり黒髪ジメジメめんどくさ女なわけで、来週は主役に戻ってくる感じ。
ちょうど重度のぴかり依存症を知らしめたタイミングですが、一体どのような面倒くささと成長を見せてくれるのか。
サブ・キャラクターをしっかり掘り下げた今だからこそ、主人公の小さな一歩もより大きく見れそうで、非常に楽しみですね。