イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第116話『消えたマネージャー! 謎のサパンナ少女』感想

トリコロールが一つの神話を打ち立てても歩みを止めないVRアイドル伝説、今週はライオンの娘が襲来。
ノンシュガー最後の一人である太陽ペッパーちゃんが、その強烈なキャラを思う存分振り回す話でした。
人の話を聞かないどころか人間を食料としてしか認識できない、"グリーンインフェルノ"の現地民か"マルドゥック・ヴェロシティ"のカトル・カールみたいな人格してますが、まぁ多かれ少なかれアイドル=キチガイだからなこのアニメ。
ちりちゃんの人格豹変といい、歩み寄りの気配が見えないノンシュガーの出だしとして、いい具合に荒れた船出だったと思います。
あ、アバンの短い時間で『天才』を愛するひびきの不器用な心遣いをシオン&そふぃに手渡して、しかも当人たちがあんまピンときていない描写はいるの、プリパラらしい手際の良さで好きです。

つーわけで登場した太陽ペッパーちゃん、『野生児』とか『ナチュラル』という言葉で片付けるにはあまりに蛮性に満ち満ちていました。
『自分のルールを強く持っていて譲る気がない』というスタートポイントは、実は他のキャラもおんなじで、ここからアイドルグループとして相手の顔を見て半歩隙間を開け合うことで仲間になっていくのが、プリパラの基本だったりします。
それにしたって、言語喋って意思がある存在をノータイムで食いに行けるのは、過去最大級のディスコミュニケーションとしか言いようがない。

とは言うものの一切足場がないわけではなく、レオナに求愛ダンスを踊ったり、気に入った相手には唾つけたり、大神田校長が首根っこを押さえたり、対話のきっかけは色々用意されていました。
レオナを『雄ライオン』として認識していたのは、外見に惑わされず本質を見抜く眼力の発露なのか、はたまた単純に『"LEO"NA』だからか、イマイチ判別つかねぇな。
弟に粉かけられた瞬間、一気に防衛レベルが上がるドロシーの弱さと依存性が相変わらずで可愛かったです。

散々暴走させた挙句、作中最強の人間力を誇るグロちゃんにまとめて貰ってましたが、ディスコミュニケーションを埋める万能言語たる『アイドル』にペッパーちゃんが興味ない感じなのは、なかなか面白いと思います。
会話の難しいトンチキ生命体だったプリパラは、個性を武器に変えうる『アイドル』を一つの価値として認めることで『みんな』を成り立たせているわけだけど、ペッパーちゃん現状興味ないからな。
ちりちゃんの人格豹変といい、ノンシュガーはこれまでの前提をひっくり返して課題を作り、ゼロから乗り越えていくことで関係を作っていく話作りっぽいですね。

らぁらは今週も『みんなトモダチ、みんなアイドル』を必死に守り、話が通じないペッパーちゃんとコミュニケーションしようとしています。
『成長する主役』だった一期・二期においてこの方法は機能していたんだけども、『追いかけられる目標』を担当することも増えた三期では、別の角度からこの題目を掘り下げる必要があって、ノンシュガーの物語はらぁらのテーゼから少し離れたところで展開するってことなんでしょう。
トリコロールも『みんなトモダチ、みんなアイドル』へのアンチテーゼを真ん中に据えることで、逆に『トモダチ』の多角的なあり方を描き切っていたので、チリペッパーの今後にも強く期待したいところです。
……『褐色肌の野生児』つービジュアルには、女児向けとして正面から描くのは難しいがキャッチーな『不良なギャル』つーエッセンスを、合法的に取り込む意味合いもあるんだろうな。


ノンシュガーの残りの二人、真中のんと月川ちりのディスコミュニケーションも、相当力を入れて描かれていました。
セレブストーンによる人格豹変で、相手の上に立つことしか考えず譲るところのないちりちゃんは、人肉食しか頭にないペッパーちゃんと、実はそこまで違いがありません。
のんちゃん様も気が強い子なんで、ただただ押し付けてくるセレブちりちゃんと仲良くなる突破口がない……と思ったところで、現実世界でのラブリーちりちゃんと出会って次回! という繋ぎ方は、なかなか巧かったですね。

のんちゃんが自信家に見えてちゃんと情のある子だっていうのは、これまで見てきた視聴者は知っていることでして、あの痛ましい土下座を見てしまえば、自分から歩み寄らないわけがない。
のんちゃんから近くに来てくれることで、プリパラと外部に分裂してしまっているちりちゃんの内的融和も、『プリパラに行きたくない』という現状も、ノンシュガー結成という約束された未来も、グッと近づいてくるでしょう。
全然噛み合わない三人をちゃんと描いた上で、インパクトのある引きで解決の糸口を見せてくるのは、いい運び方ですね。

今回はのんちりのデコボコしたディスコミュニケーションが、しかしそう悪いものでもないとも描いてきました。
『喧嘩するほど仲がいい』といいますか、少なくとも二人はお互いの顔を見て言い合いしているし、『真中らぁらの影響力が強すぎる。新しい何かをやらなきゃいけない』という鋭い指摘も、その中でなされてるんですよね。
ウマが合わない相手でも、むしろだからこそ新しい『可能性』が生まれてくるってのも、プリパラがこれまで積極的に描いてきたテーマなわけで、二人がギャンギャン言い合いしているのはむしろ良いことなのでしょう。
そこら辺の『可能性』にメンターであるうさちゃが既に気づいているのは、エネルギーが溢れるあまり暴走するだろう話しを安定させる意味で、スゲー大事だと思う。

一切接点がなく己を譲る気がない三人が、マイナスの出会いからお互いを知っていって、ゼロから関係を作っていく。
らぁらが他人を慮る『良い子』だったこともあって、こういうチームの描き方は案外プリパラではどっしりと描けなかった気がします。
性格悪いチームでも、ドレパにはレオナ、トライアングルにはファルルという、一歩引いて潤滑剤になる『良い子』がいたからね。
チリペッパー結成の過程を追いかけることで、偉大なる真中らぁらの影から逃れられないのんちり、アイドルそれ自体に興味がないペッパーを描くことも出来、そうすることでプリパラそれ自体をもう一度語り直すことが出来る。
やっぱ三期のシリーズ構成は、徹底的にタクティカルだなぁと思います。
とりあえず、来週現実世界でどんくらいのんちりクるかだな……のんちゃん様のほうが一個下なの、マジヤバイよなのんちり……。


というわけで、ゼロどころかマイナスなノンシュガーの現状と可能性を手際よく描写し、太陽ペッパーの猛烈な個性を印象づける回でした。
このデコボコした三人がこれからどうやって『トモダチ』に、『アイドル』になっていくのか。
シンプルで力強い物語の器をしっかり見せてくれて、期待が高まるエピソードでした。

……とか言ってたら、『ジュリー、アイドルデビュー』というとんでもない爆弾が次回予告で投下された。
確かに神GPも順当に回ってきて、赤ん坊ジュルルで出来る話もだいたいやっちゃって、ノンシュガーくらいしか物語的エンジンが無いまったりした状況だったので、このサプライズは理にかなってます。
完全に『おーノンシュガーいい具合にスタート切ったじゃねぇの、お手並み拝見』と先行き見守るモードに入ったところで一発かまされたからなぁ……三期プリパラ、マジ緩まねぇ。

ジュリーとジュルル、そしてジュルルの『母』であるらぁらとジュリーをどう描くか。
このタイミングでジュルルが『大人』として言葉を発することの意味。
チームメイト含めたジュリーにとっての『アイドル』とはどんなものなのか。
折り返しを曲がってなお加速する三年目のプリパラ、来週は勝負の回ですよ。