3月のライオンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
リアルも充実気合十分ライバルとの因縁満載!! 勝ちフラグだと思いましたか残念!! 敗北からの迷走と成長フラグでしたー!!!! っていう回。
積み上げてきたフラグが高い分恥も強く、見えない支えのありがたみもよく見える。主役を転がしつつ周囲も描写していく塩梅。
やっぱ3月のライオンという話は、零くんの繊細で身勝手な魂に極力クローズアップするカメラと、それを客観的に描写していく引いたカメラ、両方で構成されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
主人公の内面を描写する時、アニメで太いモチーフとして活用されているのが『水』であり、今回はとにかく『水』の話であった。
雪という『冷たく変化した水』に彩られて家族を略奪され、追い込まれながら息継ぎをしてなんとか生き延びてきた零くんにとって、世界は窒息寸前の生きづらさに満ちている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
水音は雑音であり、喉を潰す『水』が望んでもいないのに送り込まれる。冷たい水の中で、溺死寸前の少年がそこにはいる。
今回も派手にゴボゴボ言っているのだが、その窒息感から零くんを(一時的に)引っ張り上げるのが島田の息遣いであり、ペットボトルに閉じ込められた『水』の一滴でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
己の肺腑を満たして息/生きを奪ってくる『水』は同時に、摂取しなければ死んでしまうものであり、九死に一生を得る糧でもある
扱い方次第で凶器にも栄養にもなる『水』は、零くんを取り巻く人生のよしなしごとそのものであって、月島界隈の水路が舞台を取り巻いているように、色んな表情で常にそこにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
水に殺されるか、活かされるかは水自身が決めるのではなく、それを飲む人が決めることなのだ。
川本姉妹との触れ合いで『水』の飲み方を少しは覚えた零くんだが、根本的に生き方が巧くないってのは今回の『脱水症状』からも良く見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
己を追い込み、恥じらい、苦しみ逃げ場所を見つけられないまま、あまりにまっすぐに溺れ続ける危うさは、彼から『水』を遠ざけもする。
しかし零くん自身が『水』を飲めないとしても、『カップラーメン』という『暖かくなった水』を最適のタイミングで出してくれる人がいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
お前は頑張っている、生きている価値も意味も当然ある、立派だ。
そう言ってくれる先生がいた事は、零くんが命をつなぐ上で、とても大事だったのだと思う。
零くん自身がチャンネルを閉じて、『水』との付き合い方が見えない、溺死寸前の状況であっても、そこから『水』を出す穴を強引にぶち開けてくれる島田がいるし、それを願ってくれる二海堂がいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
気付いていないだけで、適切に『水』を与えてくれる仲間は、たくさんいるのだ。
無論、零くんの肥大化し先鋭化した面倒くさい自我こそがこの話の核であり、それをぶっ壊される今回の経験は、非常に痛くて辛い。治るのに時間がかかる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
原作に比べてじっくりと精神的溺死を描き、真夜中の恥ダッシュをクローズで切り取るアニメの演出は、なかなか容赦なく零くんの内面を抉る。
でもそうやって迷って、苦しんで、『水』を過剰に飲んだり吐いたり、飲めなくて苦しんだ先には、雪やお湯に変化し、様相や役割や印象を変える新しい『水』の形が待っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
それは零くんが手に入れるべき見識であり、島田が言うように『こればっかりは、本人がやるしかない』ことがらなのだ。
とまれ、零くんは渇きと溺れ、今回両方を同時に手に入れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
放って置かれれば死んでしまうが、零くん自身にもそこから別の道に歩いていく生存本能があり、見守ってくれる水先案内人達がいる。
水に満ちた物語は、水そのものがそうであるように流れていくし、それが注ぎ込む先は容赦なく優しい。
オフィーリアを運ぶ水、三途の川、もしくはスティクス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
死の匂いを漂わせつつ、同時に命をつなぐ糧でもある『水』の諸相も、死から始まり死に引き寄せられ続ける物語のメイン・モチーフとしては、的確なチョイスだろう。
それを拾ったアニメの演出哲学は、かなりクリティカルなのではと今回思った。
人間が一番最初に出会う水は、母の腹の中にある羊水である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
溺死寸前で顔を上げ、光に満ちた世界になんとか帰ってきた零くんの、痛みに満ちた新生がどのようなものになっていくか。
今後アニメが切り取るものにしっかり付き合いたくなる、良い演出だったと思う。
主人公たる零くんが背負う物語が『水』で満ちるのはある意味当然として、同じように姿を変え人を癒やし傷つける『火』のモチーフを、作中最高齢のジジイが背負っているのは非常に面白いところだ。(アニメではさわんねぇけどこの話)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
象徴論の移相を見るのも結構面白いなぁ、3月のライオン。
モチーフ読解っぽい流れから外れて感想書くと、島田役のミキシンがさすがのベテランという感じで、かすれ声の中に艶と真摯さを乗せ、いい具合に島田を表現してくれていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
ただの『いい大人』ではなく、棋士であり戦士であることが島田の魅力だと思うので、あの芝居は良いし、好きだなぁ。
ライオン書き忘れ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
対局場に飾られている『平常心是道』の軸は、例えば第10話で平常心をあらゆる局面で崩した安井さんに残酷な真実を告げていたり、いい仕事をしている。
今回も島田の咳払いと一緒にフレームインして、将棋と人生の真実を無言で告げる良い使い方だった。『忍無辱』も同じかな。
月の描き方が、暖かなホームである六月町と同じシャガール調出会ったことから判るように、今回の敗北は痛く苦しい溺死体験ではなく、『忍べば辱め無し』の『忍』を零くんに教える、一つの温もりであり導きなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月22日
今回はモチーフと暗喩が豊かで、凄く面白い見せ方だったなぁ。アニメ化甲斐がある