イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

神撃のバハムート VIRGIN SOUL:第1話『Red Dragon』感想

2014年のアニメ業界を札束でぶん殴った、超正統ファンタジーアニメが堂々の帰還! 前作の10年後を舞台に、ピンク髪のちょろゴン新主人公と懐かしい面々が織り成す新しい冒険が、今始まる!
てぇわけで、待ちに待っていた神バハアニメの第二期、その第1話です。
前作のクオリティに脳みそ殴られたファンとしてはハードルガン上げだったんですが、空中三回転ぐらいの余裕の飛び越しを見せる圧倒的な作画、音響、飛び散る破片と土煙! あと馬!
ヴィジュアル面だけではなく、10年の月日で変化した世界をどっしりと見せ、腐敗した人間帝国の中で生きる前作キャラクター、何やら嵐の予感を背負った可愛いドラゴンと、物語的にもまっすぐに速い球を投げてくれそうな予感。
まさに『俺達の神バハが帰ってきた……』という塩梅で、大満足の第一話でした。

つーわけでサイゲームズの税金対策、正しく投入された資金が正しく圧倒的なクオリティを生み出したファンタジーアニメのお化け、その二期であります。
やっぱ目につくのは圧倒的な作画力でして、動きまくり壊しまくりなアクション、人間味溢れる細やかな芝居、異世界の空気を教えてくれる背景やプロップデザインと、画面の端から端までハイクオリティ。
ド派手な見せ場と同じくらい、ファンタジー世界の日常描写も気を抜かずやってくれるのがホント最高で、ライター代わりの変なイキモノとか、印刷機代わりの変なイキモノとか、細かいところで『息吹』を感じられるのがとても嬉しいです。

バハの作画力は『ファンタジー活劇』というジャンルと巧く噛み合っている印象で、作り上げた異世界を超真っ向勝負、高コストの演出力でまるごと叩きつけて、有無を言わさず壮大なワールドに引き込んでしまう腕力があります。
頭の隅から足の先っぽまで、悪魔が宙を舞い、ゴーレムが石畳の街を破壊するファンタジー世界に飛び込める贅沢な快楽に、ズッポリハマれる。
こういう経験はリッチな映像作品じゃないとなかなか出来ないわけで、みんなやりたいけどお金がなくてなかなか出来ないパワー勝負を、堂々と仕掛けて勝ちに行ってるそのスタンスが、僕はとても好きです。

見てるとこう、色んなシーンで『うわーッ!』ってなるのが、良いのね。
隅々まで書き込まれた町並みを見ても、興奮の坩堝とかした闘技場を見ても、もちろん覆面悪魔の疾走やドラゴンの大立ち回りといった見せ場を見ても、『ここは俺の知っている場所とは違うんだな!』っていうトリップの喜びがある。
これは一切ごまかしのない、超リッチな作画力で殴りつけ続けるからこそ生まれる陶酔感で、たっぷり味わった後『はー、コレだよコレ、コレを待ってた……』と満足することが出来ました。

あと音ですよね、やっぱ。
オーケストレーションが豪華さをブーストするBGMも良いですが、アクションシーンに伴う重たい衝撃音とか、細かい生活音とか、絵と噛み合う音の楽しみが本当に凄い。
静止画ではなく動画であり、映像作品である楽しさを耳からも摂取できて、大満足ですね。


世界がきっちり仕上がっていても、そこでキャラクターとアクションとドラマが踊り回り、物語がスウィングしなければ楽しさは生まれません。
二期でも神バハ、そこら辺はぬかりなくて、まずアクションが良い。
ニーナが弾き飛ばされて空中を舞うときの、『空を回転している当人視点』の回る背景とか、本当にスペクタクルだった。

他にも覆面悪魔さんのヴィジランテ・アクションとか、3D都市戦闘の演出とかも素晴らしい。
壁を蹴って空を舞う瞬間だけでなく、蹴りつけた壁が怪力でぶっ壊れるところとかもしっかり描写して、彼が超常のパワーを持った油断ならぬ男だということを、しっかり見せてくれるわけです。
ここらへんのさりげないパワー演出は、ニーナがガテン仕事やってる時にも冴えていて、後の展開の伏線にもなっていました。
瞬間的な映像の快楽をマキシマムに仕上げつつ、それがちゃんとキャラ表現、世界観の表現になっているところがグッドだと思います。

キャラクターに関しては、一期の物語を見守らせていただいたファンとしましては、まず懐かしい面々が暴れるのがとにかく嬉しかった。
相変わらず生真面目で苦労性なカイザル、酒まみれの酔いどれゴッドなバッカス、一期の二枚目半から反逆の解放者へと華麗に転身したアザゼルさん
覆面悪魔の正体にだんだんカイザルが迫っていく様子とか、10年前の因縁が再び絡み合う運命の瞬間って感じで、非常にワクワクしましたね。

世界観的にも大きく変化していて、バハムート事変の影響で神と悪魔が弱体化する中、カリスマ国王に率いられた人間が大きく勢力を伸ばしている感じ。
冒頭のファンタジック・ストームトルーパーを見ていても、奴隷売買や闘技場の様子を見ていても、なかなか悪徳に満ちた国家体制のようです。
そういう世界ではカイザルのような真っ直ぐな男は生きにくそうで、色んな軋轢と矛盾の中で悩んでいる様子も、ひっそり描かれていました。
ファンタジー世界において機械文明っぽい暗黒騎士団を率いてる国家は、ヤバさを鍋で煮込んだような存在に決まっているので、そのうちカイザルが帝国と決別する展開も来るのでしょう。

そういう世界で抑圧されている悪魔たちを開放するべく、外套と短剣に頼って戦っているアザゼルさん
夜の街を疾走し、望まぬ死を迎えたオークに尊厳を取り戻す姿からは、一期で馬車に轢かれるネタキャラだったアザゼルさんを想像できません。
一期で悪魔組織はほぼ壊滅してるっぽいので、アザゼルさんは孤軍奮闘なのかしら。
覆面のダークヒーローとして完璧な立ち回りとアクションだったので、今後も時折ネタを混ぜつつ、悪の反逆者としてカッコよく決めて欲しいところです。


そして新主人公のニーナちゃん。
快活で元気いっぱいの人間フォームを明るく見せつつ、恋心が頂点に達するとドラゴントランスフォームしちゃう厄介な体質で、存在感をアピールしていました。
首の長さを遠心力の宿った動きでアピールしたり、目があんま可愛くなかったり、正しく『異形の赤龍』として動いていたのは、彼女が背負った運命の大きさと厄介さを感じさせ、今後が楽しみになった。

ニーナはとんでもなく惚れっぽい上に、ときめきがエスカレートすると破壊を撒き散らす、厄介な体質。
『素敵な恋』ってやつを楽しむには色々障害が多いわけですが、ここら辺は前作のヒロイン・アーミラとちょっと重なるところかな。
あの子も人造生物の幼さと苛烈な運命に挟み込まれて、ファバロへの愛を確かめた時は死ぬときという……本当に……お辛い……。
せっかく二期になったんで、あの可愛くて可哀想なアーミラちゃんにも幸せな結末を与えてほしいもんですが、そこら辺に突っ込むのかなぁ……ファバが復活してからだろうな、やるとしても。
アーミラが好きすぎて話がズレましたが、悲恋のラブロマンスとしても神バハはとても面白かったので、ニーナの厄介な恋路がどう転がるかも、今後の軸の一つなんでしょうね。

ニーナは自分の秘密を知らないっぽかったですが、田舎の家族とはどういう関係なのかなぁ。
一期を思い返してみても、親子関係には結構踏み込むシリーズだと思うので、ドアゴン娘が人間の皮を被っている状況に、親子の愛が絡んでそうではある。
幸いニーナはお母さんのためにモリモリ働く良い子なので、あんまお辛いことにはならないと思いますが……アーミラ!(純朴な子供がクソ大人の筋書きで滅茶苦茶にされる世知辛さに耐えられない、アーミラ病患者特有の発作)
あんまヒドいことはせんで欲しいもんです。

ニーナの言葉によれば、悪魔や天使を踏みつけにして得た繁栄は王都に限られ、地方にもあまねく善政を敷く……とは行っていないようです。
悪の皇帝としてやってほしいムーブを全て制覇してくれてる17世様に期待がかかりますが、今回は主役回りを一気に話に巻き込むことに重点していて、彼の描写は薄めでした。
どういう考えで悪行皇帝してるのかとか、躍進の源はどんなダークパワーなのかとか、色々気になるところでして、これも今後の描写が楽しみであります。


というわけで、欲しいところに想像以上の豪速球が投げ込まれた、良い第一話でした。
懐かしい面々の10年後の姿を楽しみつつ、新主人公が運命に巻き込まれていく過程、変容してしまった世界の有様なんかもたっぷり味わえて、切れ味鋭い導入だったと思います。
やっぱこのなー、圧倒的クオリティの王道ファンタジーでぶん殴られる酩酊感、神バハアニメ独特の快楽だと思います。

そしてなんと、二期は2クール。
このクオリティで息切れしないか余計な心配してしまいますが、おそらく走りきってくれると思います。
長尺になった物語の中でどんな運命が回転し、世界とキャラクターがどう変化していくのか。
オリジナル作品特有のワクワク感がドンドコ増してきて、来週が待ちきれません。
そういう期待感を加速する第1話の仕事をしっかり果たし、非常によく仕上がっていたと思います。