メイドインアビスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
地獄に仏、悪魔の産道逆下りに訪れた小休止。樹の絡み合った子宮の中で子供たちは語らい、清められ、身の養いを口にする。だが当然、世界が優しいだけのはずもないのだ、というお話。
本題に入る前の序奏的エピソードだが、色彩によるムードコントロールが完璧で楽しめた。
というわけで、三層を目前にして運命に呼ばれ、子供たちが足を止める回である。球状のシーカーキャンプはアビスの邪気を打ち払う暖かなホーム…ではなく、異様な雰囲気をまとった不動卿オーゼンの領域、また別の形の異界である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
そこには安全と温もりがあるが、危険と真実もまた横たわっている。
オーゼンは例えばハボさんのように、その大きな体で安心を与え、危険から守ってくれる『大人』ではない。子供の粗相を『臭い』『汚い』とあげつらい、子供をほっぽらかして物思いに耽る、不親切な存在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
だがここはもはや街ではないので、そういうのが普通なのだ。当たりがキツイのがアビス流だ。
真実を隠したまま子どもたちを保護したオーゼン、その異質な存在感を反映して、最初の対面は青みがかった不気味な世界で行われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
心を守ってくれる暖かな場所は、屋根があるだけでは成立しない。訪問者(あるいは貰われっこ)であるリコとレグは、樹でできたオーゼンの子宮においては異物なのだ。
しかし観測所がホーム足り得る資質を持っていて、オーゼンが試練者であると同時に保護者でもある事実を反映するように、シーカーキャンプは段々と暖色に色づいていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
マルルクという同年代の子供と語り合い、温かい食事を食べ、大人に遠ざけられる原因になる汚れを洗い流せる場所。
元々リコのアビス探索公が、失われた母親をたどる冥府下りであり、険しい産道を逆さに辿る旅だ。そこには冷たい死の女王と優しき慈母…母の2つの顔が常に存在している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
心踊らされる驚異の光景と、容赦なくハラワタを狙ってくる怪物たち。アビスは容赦なく子供を試し、新しい経験を与え成長させる。
今回立ち寄ったシーカーキャンプはいわば『子宮の中の子宮』であり、リコはそこから出る決意をマルルクに語る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
オーゼンの庇護を受け、身を焼く日光から守られているマルルクは不動卿の継嗣である。その庇護は彼を守る鎧であり、外部へと出さない檻でもある。一瞬立ち寄ったリコはそれに縛られない。
地上がそうであったように、リコにとってあらゆる安住の地(候補)は仮宿でしかなく、アビスの申し子は本物の子宮に帰還しようとする。母が眠る場所、呼び声の源泉を目指し、温かい食事ときれいな服を拒絶して、リコは闇の奥へと吸い寄せられていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
これは不屈の意志であり、強烈な呪いでもあろう。
オーゼンの試練が実際どのようなものか、それは来週明らかになる。しかし今週見ているだけで、オーゼンがリコに何かを与え、あるいは奪おうとしていることは判る。アビスがそうであるように、巨大な存在は常に子供を試し、成長させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
初対面のシーンの過剰なサイズ差、強調される無力感。
マルルクとの微笑ましい接触を見ていると、謎めいたオーゼンの人間性…こう言って良ければ母性の幽香を感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
ああいう子供に育てられるのなら、何らかの光を秘めて真実を隠し、闇の中でチラついているのだろうという予感、あるいは期待。真実が暴露される前に、しっかり期待を煽るのは大事だ。
アビスに入ってから、子供同士の気の置けない日々が遠ざかっていたので、マルルクとの交流はとてもありがたかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
やっぱ屈託なく子供が笑っているのは良いもんだ。それを確認することで、それを許してくれないアビスの脅威、そこに飛び込まざるをえない宿命も強調されよう。エグい対比だ。
嘔吐にしても失禁にしても、リコが生理的の反応をこのアニメは執拗に捉える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
試練と庇護、秘密と真実の間で揺さぶられ、体液を垂れ流しながら前に進んでいく子供として、ゲロもションベンも垂れる人間として、主役を描きたいのだろうと思う。ファンタジックな世界に、当たり前の体温。これも対比か。
ようやく足を止めた宿木は、気の置けない青い世界。そんな場所でも心安らぎ温もりがあり、それは深い闇と薄暗い秘密と隣合わせである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
アビスから一旦離れることで、アビスを支配している背中合わせの二律背反が良く見える、そういう回だったと思う。じっくりやっても美術で見れるのはとにかく強い。
オーゼンはリコが前に進むモチベーションを、厳しい形で試しているようにみえる。止まろうと思えば安住/停滞できるホームを用意し、あるいは手紙の真実を否定し、『それでも前に進むのか?』と、ニタニタ気持ちの悪い笑みを浮かべながら問うてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
随分不気味だが、それも母の一つの顔であろう。
母胎回帰願望。歯の生えた子宮としてのアビス。美しき墓地から誘う母の死骸。樹の子宮の中で微睡む、光に背を向けた母子。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
作品全体で執拗にリフレインする『母なる暗黒』を考えると、この作品はエルロイに近いのかなぁ、などと思う。分離不安を埋めるための強迫観念に、リコは支配されている。
ゲロも吐かず、ションベンもしないレグ。帰るべき母を持たないレグは、何故産道を逆走していくのか。それもまた、オーゼンの行動、闇の中で出会った異形と同じく、未だ明らかならざる秘密だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月12日
闇を手探りで掘り返していれば、必ず真実が牙を剥く。その衝撃がどんな形をしているか、非常に楽しみだ。