少女終末旅行を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
出会って別れて、また明日。カナザワからデジカメを受け取った少女たちは、誘蛾灯のように輝く光へと近づいていく。街を埋め尽くす石像。遺影や遺言のごとく積み重なる記憶。静止した救済の祈り。
静かなふたりぼっちを取り戻しつつ、終わった世界に満ちる余韻を追うエピソード
静止した綺麗な残骸の中を、少女たちが旅行する。そういうお話として捉えてきたこのアニメだが、先週カナザワという異物が登場し、今週彼が残した(そしてユーとチトが生物である以上必ず生まれる)波紋が奥行きを持って展開しているのを見て、ちょっと角度を変えて見てもいいアニメなんだな、と思った
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
時間には奥行きがある。遠い過去があって、近い過去がって、現在を通じて、未来へ向かっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
空間にも奥行きがある。スタートからゴールへと進んでいく過程で、写真を撮ったり死にかけたり、暗闇に迷ったり神を思ったり、飯を食ったりする。
静止している場所には、その奥行きがない。
今回の話は、カナザワと別れた後暗闇で見た光に引き寄せられ、じっくりと近づいていくお話だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
カナザワと協力してエレベーターを上がった『近い過去』がなければその光は見えなかったし、その道中は神像やらバロックな阿弥陀堂やら、『遠い過去』の残骸で満ちている。チトはそれを読む。
読んだ所で、それが何らかの意味を成すわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
古代人は何故、死後の世界を現世に引き寄せ、滅びの後が輝いていることを望んだのか。それを作り上げた人は、どこへ消えてしまったのか。
知恵者といえど蟷螂の斧、チトの文字と歴史の知識は真実を発掘しない。奥行きの最奥には到達しない。
あまりに広大な、人間世界の残骸。開拓し、建造し、祈念した成れの果ての廃墟を、たった二人で歩く少女たちのちっぽけさが、奥行きの中で強調される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
例えば人類史の真実に到達できるなら。あるいは、空間のどん詰まり、ゴールに行き着けるなら。最後の人類たちはちっぽけな存在を止めれるのか。
時間的/空間的奥行きの中で、どうしても死に接近していく人間のちっぽけさ。それは死を想った古代人だけではなく、現在進行形でウロウロしている少女たちにも忍び寄る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
デジカメの莫大な奥行きを、少女たちは埋めきる前に終わる。食料は確実に、現実的に減っていく。
デジカメの機能を解析して、新しい知恵を蓄えて、文字が見えないユーにも『何か』を残す希望みたいのが捏造されて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
だがそれが切り取るのは、やっぱり遺影である。ふたりの旅路は、巨大な疑似天国を永遠の現在に閉じ込めた古代人のように、未来の誰かへの祈りとしてデジカメに封じられる。
そういう小難しい虚無主義を前にしても、ユーはそれに囚われないし、チーちゃんは強がった表情のままユーの側に寄ることで、虚無に食われる恐怖を回避していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
生きている以上、ガラスの中の蓮のように静止することは出来ない。死に向かって、無限の奥行きを彷徨い、飯を食うしかないのだ。
ユーが文盲であること、過去から未来へと蓄積された文脈を読解できないことが、このあまりにも広大な奥行きの中では救いでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
目の前三センチの世界の中で、ただただ生きて食って銃を構える。そういうことをしなくて良くなるまでは、チーちゃんと一緒に奥行きを埋めていく。
そこに意味はない。現在しかない動物は幸福と不幸を考えない。しかしユーは動物ではないので、少しは抽象を考えることが出来るし、戯れ事のようにそれをチーちゃんと共有も出来るし、食事を分け合うことも可能だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
少女たちの終末旅行が、一人きりでないこと。片方が読み方法は読まないこと。その意味
そこにたどり着けば『何か』があると想って詰め寄った光は、誰もいない空虚だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
現在の糧になる食事は無し、大きな未来の指針になるような巨大な知識もなし。ただ、そこには暗闇と明かりがあって、二人が対峙してる現在と同じ空疎と、それに抵抗する意志…と言うにはか弱い祈りがあった。
もう、古代の人の真意を知ることは出来ない。切れてしまった時間の線の中で、ふわりと迷い込んだ二人は古代人と同じように死を思い、孤独を思い、死の先を思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
その一瞬の混線が救いなのか考えるのは、終末の只中にいない視聴者の特権だ。当人たちは、飯と無駄話で忙しいのだ。
少女たちの小市民な語り、あるいは日々の食事に汲々とし、二人でいることの幸福を確かめる体温を、このアニメは丁寧に書く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
同時に彼女らが死の只中にいること、歴史と意味から孤立していることも丁寧に切り取る。
作中人物がいる『奥行き』と似ていて違った距離感が、メタ領域にも配置されている。
その冷静な視線が、少女終末旅行を楽しむと同時に、それが終わる日への期待と恐れを意地悪く盛り上げ、お話の面白さを作っているのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
空疎と実感、歴史と空間を歩く今回の静かなお話は、非常にこのアニメらしい展開だったと、僕は感じた。寂しくて、静かで、靭やかな。
自衛する動物であるユーは、暗闇の中で銃を構える。もしかしたら、愛するチーちゃんも傷つけてしまうかも知れない、危ういプロメテウスの火。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
光りに包まれ、蓮の葉と食べれない鯉を閉じ込めた浄土が開陳されたとき、ユーが銃を取りこぼすのはあまりにも分かりやすい示唆だ。
暴力の原罪も、死は拭う
彼女らの終わりが、そういう身勝手な夢に満ちた綺麗なものになるのか、空腹と孤独に蝕まれた現実的なものになるのか、はたまた命をつないで未来と前方へと進んでいくものになるのか、さっぱり分からない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
一つ言えるのは、『奥行き』はまだ広がっていて、彼女たちの旅行は続き、僕らはそれを見るのだ
そこは静止した浄土ではない。銃を構え、飯を食い、文字を読む営みが、一歩ずつ歩みを進めていくリアルライフだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
過去の祈りに一瞬触れて、それを置き去りにしながら少女たちは進む。タフで愚かな旅だ。
ふたりぼっちの寂しさを、表に出したら壊れてしまうから。黙って歩み寄る撮影のシーンが好き。
今回の旅路も歩みの中で置き去りにされて、ユーとチトの『奥行き』を作るのだろう。人生を立体視し、リアルタイムで回転させるための経験になるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
それが大きなものに到達できなくても。二人でいる暖かさは嘘ではないし、無価値でもない。そう思えるような旅路が続いて欲しいと、強く願う。
追記 それでも『それでも』と言い続けろ
終末旅行追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
フレームの中に永遠を閉じ込める写真と、硝子の浄土を封じ込めた寺院の関連性に一人うなずきつつ、EDの"More One Night"を聞く度しんみりする。
『もう一夜進む』あるいは『もう終わんない』と叫び続ける少女たちは、しかしそれを反証する終末に包囲され切っている
獣のように現在を生き続けるユーにしても、そんな彼女に強がりつつ依存するチーちゃんにしても、生きている限り人生は続く。『もう終わんない』と、言葉にせずとも生物はその存在だけで歌い続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
だがそれはいつでも死に接続されているし、終わらない物語も人生もない。終末旅行は終わるのだ。
それを前提にした上で、愚かな生存への叫びと終わりきっている世界の衝突がどういう潮目を生むのか、あるいはそれは巨大なシステムの中で対立せず、一つの系を為しているのかを、じっくり追っているアニメだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
終末にふたりぼっちを放り込んで観察するような、残酷な視座がある。
そして同時に、ちっぽけに藻掻き続ける彼女らの『終わり/終わんない』の一挙手一投足、言葉と歩み一つ一つに、確かな愛情を刻み込んでいることも、静かな緊張感を維持している画面作りからハッキリと感じることが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
残忍な神の愛着。仮想された終末旅行に、終わらない塵世を託す身勝手さ。
そういう対比をうまく歌にしていて、良いEDだと思う。動画から撮影までやりきったつくみず先生は凄いなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
『終わるまでは終わらない』という二人の宣言から、この曲は始まる。その通りだ。外野がどんだけ『終わっている』と言おうが、あの二人は"More One Night"を求め続ける。
そこに生まれる軋み…こう言ってよければ『奥行き』もまた、なんか良いなと、このアニメがすっかり好きになっている僕は思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
食料もくれない神様の同情なんて、ユーはまっぴらゴメンなんだろうけども。できれば美味しいご飯を見つけれればいいなと、無力な視聴者は祈りながら見ております。