宝石の国を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
雪が溶け、春が来る。眠りから目覚めた兄弟たちの温もりは、戦士へと変わり果てたフォスフォフィライトの魂を溶かしていく。だが、魂に刻まれた傷は癒やされることなく拡大し、決定的に変わり果てた情景が、彼を支配する。
冷厳とした殺意と、朗らかな心地よさが同居するプリマヴァラ
というわけで、覚悟していたとおりにフォスは戦闘マシーンへと変わり果て、その変化を宝石人たちはあっという間に突き崩す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
冬の終わり、先生と二人きりの凍てついた雰囲気から、雪解けのごとくこわばりが溶けていく流れが心地よくもあり、残虐でもある。雪の戦士は砕けても、世界は平和だ。
アンタークチサイトが略奪され、フォスは決定的に変わった。無用であることへの苛立ちが、己と世界への怒りへと変わり、柔弱な過去を焼き尽くす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
アメシストの破壊を前に腰砕けになっていた末っ子は、心を凍らせて立派な戦士になった。
おめでとう めでたくもなし 初日の出 榴木
モノトーンに冷え切った景色は、フォスの凍てついた心(氷の宝石だったアンタークチサイトと、流氷から継承したもの)、それを溶かしきれない金剛先生を鮮明に写し取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
親一人子一人、親密さに満ちても良い世界は二人の後悔と呪縛に満ちて、みっしりと重たい。アンタークチサイトの可愛げはもう遠い
かつて彼が存命だった時、金剛先生との間に漂っていたアモラルな親密さ。ボロボロになった袈裟(それは金剛先生が傍観者であることを止め、戦士の責務を背負った証明)を修復する一連のシーンには、それとは違う気まずいエロスが漂っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
張り詰めたいとのような背徳。暗示される父子相姦の再演。
シンシャの孤独にしても、アンタークチサイトの略奪にしても、フォスフォフィライトの変貌にしても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
『善いお父さん』である金剛先生は変化していく宝石人を前に無力で、彼らの孤独を解決する決定打を打てない。それが『力ある孤独』故なのかは、まだわからない所だが。
素肌を見せたところでフォスの心の一番奥には踏み込めない無力さと、それでも無防備な身体を預ける優しさが両立していて、あの着替えは好きなシーンだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
無用だったフォスが、戦士としてだけではなく、人間として服を取り繕える能力を手に入れたのだと、見せる意味でも。
それはあくまで取り繕いでしかなく、レッドベリルのように人間存在の根本に服飾を置く『正しい』在り方ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
金剛先生のちぎれた袈裟を縫うのは、砕かれたアンタークチサイトの代わりだ。永遠に手に入らないものを心に突き刺して行われる、代償行為。憧れていた戦闘も、今のフォスには作業だ。
フォスの心が溶けない氷に覆われ、冬から出ないことは、彼だけが冬服を脱がないことからも判る。彼は春が来ても…氷が溶けてしまっても、アンタークチサイトの喪に服しているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
それを溶かしてしまえば、皆と同じように日常に帰還してしまえるから。特別な喪失と特別な変化を忘れないために。
シンシャが夜にあり続けるように、フォスは冬にあり続ける。奪われて、傷ついて、でもなんとか忘れて前を向く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
例えばイエローダイヤモンドがなんとか取り繕っているような生き方を、今の彼は選択できない。情に縛られる不自由さは、宝石人らしからぬ人間性だ。愛着と煩悩が人間性ならば、だが。
あらゆる宝石たちが、みな月人的人間性に思い悩んでいる。しかし大半のものは物分りよく夏服に着替えて、奪われたものを忘れる。忘れたふりを続けて、身体の何処かを砕きながら、永遠に続く学園生活を演じ続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
そういう意味で、フォスは最も素直に宝石人的なのかもしれない。嘘をつけないのだ。
髪を短くしたのもまた、喪の儀礼であり出家の様相だ。尼削ぎに整えた後ろ髪は、冬の戦士に同化する行為であり、また自発的な呪いだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
忘れたふりさえできれば、健全な戦士(例えばボルツのような)になれるのに。フォスはそういうことは出来ない。心と同じく体を砕きながら、略奪の痛みを反芻し続ける
そんなフォスのやけっぱちは、しかし日常にあっという間に侵食される。冬眠から目覚めた宝石たちの、半脱ぎのエロスが目に眩しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
変化に戸惑い、喪失を哀しみつつも、宝石人たちは圧倒的に健全に、楽しいことに目を向ける。変化した末っ子で、無邪気に遊ぶ。遊んでいるふりをする。
後ろを振り返っても、何にもならない。奪われる哀しみより、新たな芽吹きを喜ぼう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
そのピカピカした春の明るさが、心に優しくもあり、胡散臭くもある。ずっと悲しみに沈んでいられるのなら、惑わずに住むのに。春を迎えた世界とその子供たちは、フォスを法って置いてはくれない。
ルチルがフォスの足をおしろいで覆うのは、つまりフォスを冬から取り戻す儀礼だ。人間を装い、哀しみに呪われた怪物ではないふりをする。それが本当に心を溶かして、亡霊からフォスを開放するからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
逆に言えば、金剛先生と二人きりの世界では、そういうリハビリは行えなかった、ということでもある
完全に凍りついた心境から、緩やかな日差しに溶かされて、ちょっとフォスらしさを覗かせる。黒沢ともよの怪物めいた演技力が存分に暴れることで、フォスの奥にまだ芽吹いている緑の心境が、よく見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
そういうフォスらしさを確認したくて、兄たちはわざとらしく、精一杯本気ではしゃいだのだろう。
いやまぁ、四割くらいはただただ楽しいから遊んでるだけだと思うけども。ああいう無邪気さはやっぱ良いもんで、見ているととても心が暖かくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
無用な末っ子のフォスがそのど真ん中にいたはずなのに、今は一番遠い。アンタークチサイトの略奪が奪ったものの大きさが、よく見える。
失ったものもあれば、獲得したものもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
3Dモデルの描画力を最大限活かした、変幻自在の戦いが、フォスの戦士としての能力を明らかにしてくれる。ただ火力があるのではなく、攻防機動一体となって戦えるユーティリティ性が、うねる黄金と一緒によく伝わってきた。アクションほんと良いな。
アメシストが感心する変化に、ボルツは怒っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
強くなることの辛さを確認し、同意していた彼は、フォスの異形の戦いに何を見つけたのだろうか。奪われずとも真実強い本当の強者は、心のひび割れを合金で補って戦うフォスに、何を見ているのだろう。
とても気になるところだ。
思えばフォスの緒戦でも、ボルツは怒っていた。そして無力さへの同情では、フォスが本当に欲しい烈火の憤怒を叩きつけてくれた。今回の怒りもまた、激しく厳しく、フォスすら気づいていない真実を焼くのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
フォスの浅はかさは彼の根っこなんで、油断できないボルツはそこが気に食わんのかもな。
黄金の武器を手に入れ、凍てついた戦士の心を手に入れた代わりに、フォスはシンシャを忘れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
『君の居場所を作ってあげる』という特別な約束を置き去りにして、冬の戦士の遺志をインクルードした。大事なものを2つも抱えていられるほど、人間器用ではないのかもしれない。それにしたって残酷な。
アンタークチサイトの略奪が、フォスにとって決定的だったように。無邪気だったフォスが突き刺した約束が、シンシャにとっては決定的に重い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
ずーっと変わらず、社会から切り離されたまま孤独にさすらうシンシャ。永遠に足踏みし続ける彼にとって、フォスの約束もまた永遠だ。宝石的不変がそこにある
美しきサイボーグであり、海の王や氷の戦士の思いを引き継ぐフォスは、どんどん変わっていく。悪いものも良いものも情け容赦なく置き去りにして、生物のようにおぞましく、美しく変貌していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
美しい孤独に立ち止まるシンシャと、世界と運命に引き裂かれ変化するフォスの距離は、どんどん離れる。
いつかフォスの進化が窮極し、変化が行き着くときまで行った時(それは骨と肉と魂が合一し、彼がより月人的に、あるいは海の種族的に、それらを統合した人間的に完成し、七宝となる瞬間だろうが)、シンシャとの距離、あの時果たした運命の約束との距離は、どこまで離れていってしまうのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
それを夢想すると、とても怖くて、綺麗だなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
先に進むもの、停滞するもの。それは正反対ながら両方が真実の在り方で、どちらかが欠けても描ききれない。
変わってしまったことすら忘れてしまうフォスのほうが、孤独の闇に置いてけぼりにされ続けるシンシャよりも、気は楽だろうな。
今後物語の潮汐力は、もっとフォスとシンシャをバラバラにしていくだろう。不変と変化の中間点にある宝石人の、2つの有様を象徴する彼らの断絶は、フォスがその心を砕かれ、体を新たにするごとに深まっていくだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
そういう予感が、今回の春の景色にはあった。宿命的に残酷で、運命的に美麗だ。
フォスが真っ先に剥き出しにした、不変の宿命と揺らぐ心のミスマッチ。それは他の宝石人や混合先生も抱え込んでいる軋みで、種族全体を揺るがすほどに危ういものなのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
幼稚園のように賑やかな冬眠明けを見つつ、そういう予感もする。みんな変わっていくのに、変わらないふりをしすぎだ。
でも人や命のように、限られた生死を明滅させて変化していくことは、鉱物には許されていない贅沢だ。どれだけ願っても、ニンゲンとは異なる性質が彼らには内包(インクルージョン)されていて、それが魂と存在を呪縛する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
人が肉の業に支配されているように、宝石は不死のカルマに苛まれる。
それは月人との日常的戦闘作業とは別に/同時並列的に存在する、宝石人の戦いだ。過去からの呪縛も、身体からの束縛も、静かに宝石人を蝕む。フォスの変化と不変は、ただその初音だということなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
今後、他の宝石たちもおしろいを落として、剥き出しの輝きを叩きつけてくると、悲しくも面白い。
それを導くためにも、フォスはこれからもっと辛い目に合う。砕かれ、繋ぎ合わされ、失い、変化する。それでも変わりきれない魂の緑が、百万の情愛と混ざり合う。春に芽吹く花のように、呪いが繚乱する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
そんな妄想を掻き立てる、見事な春の始まりだった。さあ、さらなる残酷を見せろ。覚悟は出来た。
というのも嘘ではないが、春になっても咲きゃしないフォスの無邪気な緑が、元気に無邪気な他の宝石人の合間でチカチカ残光して、とても寂しいのも本当なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月2日
失われていることを実感させるためには、それがへばりついている様子を見せればいい。欠損の美に関する意識が高すぎるアニメであるな。