3月のライオンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
それぞれの居場所、それぞれの戦い。日本将棋界の若手トップとしてしのぎを削るのも、痛む胃抱えながら京都でどんよりするのも、みんな繋がっとるんじゃ! 行こうと思えば新幹線とタクシーとダッシュで追いつけるんじゃ!! というエピソード。
ロマンス力高い回だったなぁ。
そんなわけで、零ちゃんは雑念抱え込んだままキッチリ勝ち、盤外戦で大事な女の子を守る戦いにも勝ちました、という回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
将棋一本槍でロボットめいた戦いしてたときより、女とダチを背負ったほうが強い。文法が完全に不良漫画だ…死んだ二海堂の魂を拳に乗せてッ!ってやつだコレ…。
さておき、色んなモチーフが行き来する回であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
川本家のカツ丼から大阪のコンビニに繋がる、食事のライン。かつて栄養失調になった少年は、自分の身養いを気にかけれるようになった。
その丁寧な生き様が、ギリギリのところで指運を拾う。激情に駆られた猛進ではなく、一歩引いた守備を選ばせる。
相変わらず、色彩・色調のコントロールによるムードの作り込みが良い。水彩の柔らかい色がだんだん激情とともに抜けていって、怒りに染まったモノトーンが尖る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
曖昧模糊な闇、その奥で光る眼をぶち壊そうと極限まで高まったところで、スッと色の付いた思い出がやってくる。確実に二海堂死んでる…。
零くんは凄くバカな子で、毎回間違いかけては引き戻り、あるいは間違うことで学ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
島田さんにベッコベコにされるまで顔が見れなかった少年は、今回は対局中に筒井さんの禿頭をちゃんと見る。曖昧な怪物ではなく、目鼻の付いた一棋士として、見て指す。
それは零くん個人の成長であるし、周囲の人々が支えてくれた変化でもある。色んな人が繋がって、前とは違う何かが生まれてきている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
そこら辺を時に激しく、時にしっとりと積み重ねてきた成果が、今回の新人戦にはよく出ていたと思う。尖った演出がしっかり、ドラマの中で生きてもいる。
零くん内部の継承は、その外側にある将棋そのものを支えてもいる。大阪棋院の床には、14代から17代までの名人の軸が掛かっている。受け継がれた称号、勝敗の波風を抜けた輝き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
それは老子第二十五章の『人法地、地法天、天法道、道法自然』を四幅に別けた言葉だ。
※訂正 大阪棋院→関西将棋会館
世の成り立ち、人間の歩む道を語る言葉は、距離を超えて東京棋院に掲げられている『平常心是道』にも通じる。道は自然に乗っ取り、常なる心が道を是す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
太古の言葉が現在の現在の闘技場に、静かに響いている。そういう継承の仕方もあるのだと、ちょっとおもしろかった。
※訂正 東京棋院→東京将棋会館
戦い切ることも将棋の道と、大阪の人は言う。零くんはそれでも全うに指しきれただろうと憤り、対面の外道を幻視する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
それが危うい。冷静ぶった仮面が禿げて、生来の闘志と殺意が剥き出しになった時、ふと友の言葉が指に宿る。自分を大事に、ありのままの相手を見る将棋に戻り、勝つ。
筒井さんの強面だけが描写される今回の新人戦は、零くんが道に迷い、道を見つける主観の戦いだ。それは新しく見つけた道であり、ずっと前から語られていた言葉でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
紀元前の哲人の言葉がじっと見守る中で、零くんはモノクロの世界からカラフルな人生へと、迷って帰還する。成長である。
大阪から京都へ。零くんの戦いからひなちゃんの戦いに場面が映る途中、フッと横溝さんが挟まるのが良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
彼もまた、零くんの迷い路をひっそり支えてくれている他人。彼が持っている兄者の胃薬も、零くんの大事な人を助ける奇縁になるだろう。パズルを組み合わせるように、過去と現在が繋がっていく。
勝ち/価値と別の勝ち/価値を繋ぎ合わせて、記憶と思い出を手繰り寄せて、零くんはひなちゃんのもとに辿り着く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
京都駅周辺の、現実感のない虹色の風景から、鴨川辺りの青と緑へ。やっぱここでも、色彩の変化は心を映して美麗だ。
地獄に仏、この世の果ての河原で無を見つめていたひなちゃんの眼が、零くんを見つけてスーッと色を取り戻していく描写が良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
それは零くんが対局の時、怒りで真っ白に染まってから自分を取り戻すまでの歩みと、そっくり重なっている。
自分個人の戦いだし、支えてくれる人あっての苦闘でもある。
零くんがちょっとヤバいくらいひなちゃんに肩入れするのは、時間を超えて過去の自分に手を差し伸べてもらったと思えたから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
彼女の闘志と正義に、戦いきれなかった過去の自分を重ねている彼は、ひなちゃんの孤独に追いついて、ちゃんと抱きしめて言葉をかけてあげた。それで、昔の自分にも追いついた
他人を通じて自分を助け、あるいは自分を通じて他人を助け、自力で這い上がり、他力で押し上げられて、なんとか息ができる岸に泳ぎ着く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
そんな不思議な編み物として人生を描く筆が、今回よく生きていたと思う。誰かが無条件に強いわけでもなく、間違っているわけでもなく。色んな色があるのだ。
最後の零くんのモノローグは体温と臭い、肌触りのことを語っている。それは今生きているからこそ感じられる、生命の脈動だ。18歳の桐山零にとって、生きるということは中学三年生の女の子の形をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
それを抱きしめることが、今の彼にとって生きるということなのだ。んー、ロマン主義だなぁ。
死にながら生き、他人を踏みつけにして勝ち残ってきた零くんは、ようやくそういうロマンスに辿り着けた。色のある世界に染まって、情のある人に染められて、過去の自分を追い越し生き直す地点にまでたどり着いた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
何かが終わるわけじゃないけど、妙に心地よい最果てを、今回の抱擁には感じる。
あそこで手をつなげたから、ひなちゃんのいじめが終わるわけじゃない。零くんの将棋が終わるわけでもない。戦いは続く。飯も食わねばならぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
それはさておき、水の中で溺れていた子供たちがようやく水辺に這い上がる瞬間がしっかり描かれていて、オッサンは安心した。良かった良かった、まだ良くねぇ
しかし鴨川が舞台になると、頭のおかしい京大生がカップル粉砕を叫びながらロケット花火を投げ込んできたり、阿呆の狸がトンチキな術を使って大騒ぎになりそうで、素直にロマンスが入ってこなかったのは秘密だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
森見先生は、僕の京都イメージにヒドいことをした。責任者はどこか。
さておき、ご飯と胃薬を携え、お姫様のケアをするべくモジャモジャの王子様がやってきた。ずっと間に合わなかった零くんは、今度はちゃんと間に合ったのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
その先にまた、白黒の怒りが待っている。色を抜く厳しい現実の波風が。そういうもんだよ、と宗谷名人なら言うだろう。
水のように形を変えながら、空のように色を変えながら、世界は進む。時に窒息しそうなほど重たく、時に身を引き千切られるほどに痛く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月10日
その厳しさに嘘をつかないから、僕はこのアニメ好きです。そこにたれてくる蜘蛛の糸の美しさも、痛みの中であがく人の輝きも。
来週が楽しみですね。