このはな綺譚を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
一年の全てを締めくくる大つごもり。新人ケモミミ仲居のドタバタ楽しい日々も穏やかに…と思ってたら、突然始まるファンタジックな時間旅行。
『最終話なのに此花亭関係ない話かいッ!』ってツッコんでたら、世界観を広げつつ綺麗に因果が繋げる、少し不思議な時間SFいい話。
というわけで、巡る四季を楽しみつつ進んできたこのアニメも最終回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
雪がしんしんと積もる除夜、女と女が寒空お互いの指を絡め温めつつの年越しでしっぽりズブズブ…と思ってたら、ファンタジックな渡時機がパカっと開いて、主役を遠くに連れ去っちゃった!
オイオイ、随分アクロバティックな展開だな
最後の最後で此花亭を離れていく展開は、しかし妙手だと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
これまで一箇所に足を止め、『場』があることの意味を丁寧に編んできた物語が、フッとそこを離れていく。離れているからこそ見えるもの、語れるものに足場を移す。その軽妙な歩法は、実はしっかり積み上げてきたらこそ成立する遠近法だ
今回は時間と因果も渡って、此花亭の起源に辿り着くお話でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
それは『場』の内側にいては見えてこない。ふと迷って、見知らぬ場所にたどり着き、そこで一時の安息を手に入れて始めて、離れた場所の愛おしさと意味が見えてくる。
客人を歓迎してきたこの物語が、最後に歓迎される側に回るわけだ。
亭主と客、歓迎の主体と客体。グルッと立場を入れ替えることで、これまで此花亭が受け入れ、答えを返してきた物語を、別角度から問い直すことが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
『あの場所には何があって、貴方は何を愛おしく思いますか』
話の最後に、こういう物語全体をまとめ上げるクエストを投げれるのは、やっぱ強い。
答えは作中で明言しているし、またそれを支えるだけの描写も分厚くあったわけで、ただしみじみと思い返し味わって頂きたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
受け入れて貰える場所のあること、己が己でいられるありがたみは、帰れないかもしれない場所に離れて初めて、真実胸に届くものなのかもしれない。
時間と因果の果てに追放される、どんでん返しの離別を描きつつも、今回の話は暖かい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
それはこれまでも描いてきた柚の根本的なニンの良さが生む、魂の輻射熱だ。あの子は相変わらず、素直に褒めて素直に喜ぶ。魂の色がきれいな子なのだろう。だから、どこでも好かれる。
ホームから切り離されたはずの社は、此花亭とは別の形で清潔で、明るく、暖かい。衣装は違えど、やっぱりケモミミは気立てがよく、柚の面倒をよく見てくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
そういう場所が、メインステージ以外にもあるんだよと示すことで、世界が狭く閉ざされるのを防ぐことが出来る。
今回柚が経験した旅は、実は彼女がもてなした客の歩み、そのものでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
不思議な出来事に出会い、条理を超越した場所に行き着き、異質な状況でも損なわれない真実の情に暖められる。場所も装いも別物だからこそ、境界線上の景色はいちばん大事なものを教えてくれる。
見知らぬ狐たちの問いかけは、『何故此花亭なのか』『何故柚なのか』という、物語の根本を洗い直していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
思えば此花亭を訪れた客達も、あの旅館で歓待され、不思議な景色に戸惑いつつ、自分と向かい合い答えを見つけていた。そういう異化作用が、境界線上の景色にはあるのだろう。
普段とは違うけど、どこか寛げる場所。怜悧な内観と、穏やかな温もりが同居する曖昧な『場』が投げかけてくる問いを、今回柚は主体として体験する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
ずっと迷い人に寄り添い、手を差し伸べもてなしてきた彼女が、自分が所属する『場』の力を体験する。今回の逆しまな造りは、そういう作用を持っていた
これまでの客人がそうであったように、一瞬の旅を経て柚はかけがえのないものに出会い、日常に帰還する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
旅人にとっては心洗われる非日常が、柚たちにとっては日常の業務だ。そしてそこに秘められた輝きを、彼女達は幾度も見つけ直し、忘れない。
そういう日常と非日常の境界線上に、このアニメが立っていることを、今回の小旅行は確認させてくれたような気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
柚個人の小さな(そして大事な)旅であると同時に、作品全体のスケールを確認する総論にもなっているのは、非常に良い最終回だなぁ。巧い構成だ。
ただ偶然行き交っただけでは、今回のお話からにじみ出る分厚い感慨は生まれないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
稲荷明神の不思議な魔法で時を越え、因果を乗り越え、発端と結末、入口と出口が繋がる奇譚になっているのが、素晴らしい奥行きを与えていた。不思議で綺麗な話だったなぁ。
卵が先か、鶏が先か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
柚があの場所に行き交ったことで此花亭が生まれ、此花亭が在ることで柚は『場』の素晴らしさを強く刻まれた。
因果はループをなしているが、どちらが欠けても、暖かな日常は生まれ得なかった。理屈を詰めるより、そこにたゆたう曖昧で美しい感情を愛でたい所だ。
とにかく緒方恵美の芸達者に助けられたエピソードで、巫女と女将、少女と大人の鮮烈な演じ分けが、因果が巡っても繋がっている不思議さを見事に際立たせていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
長い時間の中で忘れていても、偶然行き交い縁で繋がって、人はそこに在る。連続体としての存在の不思議さ・尊さを、巧く演じていた。
因果と言えば、神殿という見慣れぬ『場』で柚が仮宿を見つけるのに、『読み書き』が役に立つ描写が凄く良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
それは八百比丘尼の手ほどきで刻まれた、柚の歴史そのものだ。偶然出会って、大事に育てられて、柚は『読み書きできる柚』になった。それが、見知らぬ場所で武器になる。繋がっている。
一瞬の旅人として、柚が過去に蒔いた思いの種子。それは忘却に埋もれ、起源を忘れ去られたけども、女将の中で芽吹いて此花亭になる。そうして生まれた『場』が、また柚を受け止め育んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
人と人、場と場が持っている連続性を、奇妙で綺麗に描くいいエピソードだと思いました。
しかし、過去に飛んでも持ち前のピュアさで女をズブズブにしていく辺り、ホント柚はナチュラルボーン女殺しだなぁ…その素直さがヒトもカミも引き付け、オカルティックな事象に行き交い、縁を繋げていくっていう特質も、これまで幾度も描かれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
ここで飛べない辺り、やっぱ皐『持って』ねぇわな。
今回は此花亭の大晦日で、柚の大時間旅行を挟み込む形。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
飛んだり跳ねたりのアドベンチャーを落ち着かせる日常描写は、全体的にしっとりしててよかった。
最後にカップリングをキッチリ確認してくる辺り、怠けないアニメだ。ホント綿菓子のチョロ蔵力がすげー。
SD多めで可愛く元気に進めたり、冒頭の蕎麦ズルズル啜り祭が妙に可笑しかったり。綺麗なだけではなく、ペーソスのある笑いを要所にきっちり入れ込んで来たのも、嬉しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
存外、『抜く』シーンの造りが上品で強いんだよな。笑わすシーンでちゃんと笑えるのは、やっぱとっても良い。
あ、櫻ちゃんがいつもの大あばれ天童ではなく、なんかしっとりした表情で桐さんと密着戦してたのは『ハッハ、仲良くていいな』って気持ちと『Noタッチで行けよソコは!』という気持ちが同時に湧いてきて、困ったもんです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
櫻ちゃんはあの女殺ズブズブ時空に行かず、永遠に暴れまわってて欲しいのね…
ラストに柚をズブズブ号泣担当にすることで、黒髪限界女が一生ズブズブにされてた過去がフーっと和らいで、フラットな力関係だったように思えるのは凄い魔法ですね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
いや思い返すと、柚も結構皐の胸の中で泣いてんだけどさ…思い思われってことにしとくか!!
ちょっと変奏だけど、最後に物語を締め全体を確認する上で、また柚が歩いてきたもてなしの道を『客』として体験する意味でも、非常に良いエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
SF的道具立てをしっかりドラマに絡めて、必然性を持って使いこなすのは本当に強いなぁ。いい最終回だった。
というわけで、このはな綺譚のアニメも終わりました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
とても良いアニメでしたね。
キャラクターの繊細な感情を四季の風景に乗せ、ロマンティックに描画する業前が、とにかく冴えているアニメでした。重くて、湿っていて、熱い。限界重力旅館は最高だ…。
狐を主役に据え、この世とあの世の境界に舞台を据える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
女と女の感情を引き立てるおまけ程度かと思っていたファンタジックな設定も、奇譚をもり立てる見事な道具立てとして使いこなしていました。
異界、境界、客、カミ。民族的な要素が意外なところから殴ってきて、オカルトマニアとしては嬉しい限り
柚の一年間を四季の移ろいと一緒に活写し、その中で訪れる客の事情、それを受け取る旅館の思いを、瑞々しく描く。それが混じり合った時生まれる輝きを、情景に乗せてしっかり届ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
美術がただ美麗なだけでなく、物語を支える土台として機能していたのもとても良かったです。
劇伴も強く主張しすぎるでもなく、存在が消えるでもなく、綺麗で不思議な世界を静かに支えてくれて、とても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
あとSDの使い方が非常に巧かったですね。ただの省力ではなく、独自の可愛げと存在感があるアイキャッチとして、良いテンポを作ってくれてました。
キレイめ百合色なお姉ちゃんの巨大感情だけで押し切ると思いきや、ブサイクなブタとかオッサンとかワケワカンない神様とか、色んなキャラが目立ってたのも良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
美醜や性別で役割を選別せず、多様なキャラに多様な物語を背負わせて、一話でちゃんと心地よいお割まで導いていたのは、心地よかった
お話のトーンも、基本ふわっと柔らかめでありつつ、冷静に生き死にの無情、薄暗い感情を切り取ってヒョイと出してくる、メリハリの効いた作りでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
やっぱ11話Bパートで、主役サイドにいるお菊の幸福にキッチリカウンターを当て、『救われない話』をやったのが良かった。バランス感覚…。
そういうスパイスがしっかり効くのも、土台が分厚いからこそ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
曖昧な場所にある曖昧な幸福を、手を抜かず色んな角度から際立たせ、『このはな綺譚はここが強い!』という首長を、太く作ってました。
キャラも美術も設定も、逃げ場ではなくもう一つの足場としてのファンタジーを、強く肯定して進むのね
日常モノに要求される『なんとなく幸福な空気』というのは、『なんとなく』では生まれんのだなぁと思わされる、いいアニメでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
意志を持って幸福を作り、決意を込めてファンタジーを描く。そのためには、女と女の感情も、不可思議な奇譚も両方使い倒す。そういうパワーが緩やかな絵面の奥にあった
キャラクターも皆好きになれる奴らばかりで、見ていて楽しかったです。女たちの限界感情がどこで炸裂するか、決定的な瞬間を見てみたくもあるが、それは漫画のクライマックスでやることよな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
選んだテーマとジャンル、設定とキャラクターに嘘のない、非常にいいアニメでした。ありがとうございました