刻刻を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
静止した世界で、加速する殺意と愛。人を殺せる人間、人を殺せない人間、人を殺したことで壊れていってしまう人間。胸を貫く悪魔の刃は、時に人を救う奇跡にすら届く。
ヒリついた生き死にと、奇妙な共感と笑いが共存する、作品の視点を凝集したようなエピソード。
というわけで、かなり状況が動く第6話である。翼兄ちゃんはメガバイオレンスの末にカルト信者をぶっ殺して(?)生き残り、しかしそれでヒビが入ってカヌリニになりかかる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
ここまで『敵を倒す武器』だった樹里の異能が、そんな兄を異常世界から『救出する杖』となる。
家族が異界に食われかけた実感が、間島の脅迫/交渉/嘆願を受け止める足場となり、疑似殺人喜劇が始まる。殺せない間島は、家族と再開することも出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
冴えない表情の奥に、特大の殺意を隠したオヤジの異物感。再び樹里の異能が誰かを助け、誰かを殺す。
静止した世界の異常性、カルトとヤクザの波状攻撃でぐっと引っ張ったこの作品は、今回一つの大きな転換点を迎えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
それは作品全体を取り巻いている異常なヴァイオレンスに、ちゃんと異常だ、と宣言したことだ。
樹里の台詞が直接的に言っているが、それを間接的な暗喩と演出が後押ししている。
冒頭、メガネを外した翼の暴力がまず良い。かけていた時は情けない無精髭だったものが、息の荒い暴力のなかでワイルドさの象徴に見えてカッコいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
でも、それを『カッコイイ』と喜んでしまう感覚は、やっぱり危ういのだ。他ならぬ翼が、その異常性に揺るがされて、自分を見失ってしまう。
Tシャツで顔をくるまれた信者は、対話不可能な顔のない他者であり、正当防衛で殺してもいい相手…のはずだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
しかし家族を守るために奮った暴力は翼にショックを与え、彼はとどめを刺すこともなくまーくんを探しに外に出る。時間からはじき出された包丁が、すね毛の伸びた足に当たって無視される。
翼と包丁、あるいは間島と千枚通し。調理器具を、人を殺すために使えるか、使えないか。人間本来の使用目的とは、家族を守ることにあるのか、敵を殺すことにあるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
そこら辺を問うエピソードの中で、日常的なアイテムが異貌をむき出しにしてくるのが面白い。
翼は自分の目的であるまーくんが見つからなくて、カヌリニへと変化していく。生きることを諦めたのは、やっぱり殺人がショックだったからだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
樹里が言うとおりそれが普通の感性で、しかしそういう普通から外れちゃった人も、世間には山盛りいる。実の親父とか。
カヌリニ化しつつある翼を前に、樹里が最短距離を真っ直ぐ進むのが好きだ。あの子の気質は常にそういうところにあって、それが過去の悲劇を生み、現在の戦いに役立ちもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
異能の行使をためらう樹里の背中を押したのが、間島が生存している事実だってのは、因果を感じさせて良い。
ここまで異能ヤクザをぶっ倒すためのパワーだった樹里の異能は、今回翼をカヌリニ化からすくい、間島の悲劇を再演しないための切り札になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
完全静止した異常な世界に、ようやく『戦って殺す』以外のロジックが持ち込まれる今回は、結構大きな転換点だと思う。それを主役が持っていることが大事だ。
間髪おかずに襲い来る、間島の脅迫。それに樹里が応じることが出来たのは、翼がカヌリニに変ずる体験を経て、かつての間島に近い立場に追い込まれたからこそだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
生き死にの意味がわからない子供時代が終わって、その手で殺しも活かしも出来る存在となり、身内が死にかけるキツさも学んだ。
そういう当たり前の成長から、間島はずっと切り離されてしまっていて、それがカルトとのチャンネルを開かせもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
普通じゃ解決できない異常な事態に、普通の世界に潜む異常さへと接触することで対応する。間島の選択は、異常さを封じた佑河家の影にある。
自分が獲得できなかった、幸福な家庭。それを目の当たりにし、雨の中対話のチャンネルを閉じた間島。同じ極限に追い込まれて、ようやく樹里は彼女と話すことが出来るようになった、とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
愛ゆえに道が歪んだ間島は、当然人殺しを演じることが出来ない。それだと、家族にも会えない。
事前に佐河の殺人実験を見せていたこと、ダーク属性のカルトとヤクザが簡単に『人を殺すことへの躊躇い』を投げ捨ててしまえている姿を描いたことが、今回の間島の逡巡を、非常に巧く際立たせている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
それが普通だったはずなのに、ダメ家族と異能ヤクザのバトルが面白すぎて、ウッカリ忘れてた。
ジジイが間島のカバー役としてずっとそばにいるところとかも、彼の後悔と優しさを感じて好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
家族(特にオヤジ)との関係を巧く作れなかったジジイだが、だからこそ異能を殺すのではなく、守るために使いたいという思い、自分の責務を果たしきれなかった悔いが、強くあるのだろう。
対してオヤジのほうは辻谷美声で超ろくでもないことを垂れ流しにし、作中最大級のサイコパスっぽさをフル回転させていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
一瞬で本気の殺意に到達できるナチュラルなヤバさを、一切自覚してないところがマジですげぇ。翼のTシャツCQCは確実に、オヤジの血が覚醒した結果だと思う。
とはいうものの、その殺意が間島の家族を呼び寄せ、彼らを成仏させあるいは救助させるキッカケにもなるのだから、なかなかに難しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
超直情型の樹里が間島とまどろっこしい対話をし、相手の事情を読もうとしているのに対し、オヤジは状況を全部決めつけ自閉しようとしてるのが、面白い対比だ。
VSカヌリニ戦はアクションの興奮と、『倒す手段』の先に異能を持っていく質的変化が巧く混ざっった、良い見せ場だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
翼を世界から追い出し、カヌリニへの変質を止めた樹里の腕は、間島の家族を止める盾にもなる。娘を娘と気づかないまま、異界のルールに飲み込まれて殺してしまう蛮行は回避された
異形を人間の形に戻す、あるいは命を救う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
この異常な世界で手に入れた、あるいは日常の中に埋め込まれていた異常な力は、そういう風に使うことも出来る。
普通、人間は包丁で人間を刺さない。でも、道具は簡単にそういう目的でも使うことが出来る。
ツールをどう使うかは、人のあり方次第なのだ。
そういう岐路を、色々ドタバタありつつ乗り越えて、間島が父母を真っ当に弔うことが出来た、あるいは兄を救出できたこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
暴力と異能が世界を埋め尽くしているからこそ、そういう人間の当たり前を大事にする展開がありがたいし、末期の水を与えるときのように、カヌリニの埃を拭う間島の人間性が光る
あそこは間島がダークヤクザとは決定的に違う存在であり、道を間違えてしまった当たり前の人間、あるいは家族のために闘う樹里の影なのだと納得させる大事な場面なので、表情・仕草ともに丁寧にやっていて良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
あそこは物理的な汚れではなく、異常な世界を拭って死人の尊厳を取り戻す仕草なのだ
ギャーギャーやかましいオヤジを抑えつつ、樹里とジジイが体を張った結果、間島は失った家族を取り戻し、止まっていた時間を動かせた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
樹里の手は、翼や間島の兄だけでなく、道を間違えかけていた間島自身もちゃんと救えたのだ。
それはつまり、樹里もまた道を間違えなかった、ということだ。
イカす異能やギガヴァイオレンスの興奮でちゃんと楽しませつつ、話を背負う主役に、凄くオーソドックスな命の選択を突きつけること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
そこに重さを持たせるために、その選択を一度間違えてしまったシャドウをしっかり配置すること。
そういう部分に手抜かりがないアニメだと証明してくる回だった。
翼が去ってしまったので、まーたんの相手は吉野声のドチンピラがギャーギャー騒ぎつつやってくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
お菓子は差し出してくれるし、いい人じゃないが極悪人でもない。樹里や間島と同じく、善悪の狭間で揺らぐ、ごくごく普通の人間なのだと判る、良い描写だった。
これで間島を巡るクエストはかなりの満額回答で折り返し、話が別の曲面に入りそうである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
お互いの人間性を確認し、暴力ではなく言葉と行いによって対話した結果、『人間は人を殺せない』という当たり前の結論を、なんとか掴み取ることが出来た形だ。
そういう当たり前が、全然当たり前じゃない状況を頭を捻って思いつき、絵にして叩きつけ、その興奮で飲み込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
エンターテインメントのパワーを推進力にすることで、当たり前だから忘れがちな真実を噛み砕き、飲み込みやすくする手助けにもなる。
娯楽作としてすごくまっとうで、強いことをやってる。
ヤクザとカルトとダメ家族の血まみれドタバタが面白いからこそ、今回樹里と間島とジジイとオヤジがたどり着いた地平は、なんかしみじみとした熱気を込めて素直に食えるし、その先の景色が楽しみにもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
サイコパスの資質をギラつかせるオヤジが、今後どういう暴走するかがこええ。
あといい人オーラ出し始めた迫さんが死なないかとか、静かに潜行する佐河がどういう一撃を入れてくるか、とか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月12日
大きなテーマを分厚く楽しみつつ、予測の付かない展開でドキドキもさせてくれるあたり、非常にサービスが良い。来週も楽しみである。