アイドリッシュセブンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
一時の休息は終わり、天と地に分かれて虹が動き出す。『MEZZOとその他』に分断されたアイドリッシュセブンが、自分たちなりにあがいて、脱出への糸口を探していくお話。
リアルタイムで彼らを見守るような生な画角と、客観でキャラの内面を見せる絵の両立が良かった。
というわけで、残酷なアイドル格差を描きつつ、『素』のアイドルを見ることの快楽でクッションをかける、なかなか面白い作りの回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
冒頭、MEZZOがどういうつもりでソロ活動をしているか、彼らのアイナナ愛がどれくらいあるかを言葉にさせて、独走させないところに配慮を感じさせる。
『最後に一回、チャンスをくれ』と、かつて大和は言った。それをもぎ取れなかった結果、今の『2+5=7』な状況がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
箱で推してても、グッズはメジャーに行ったMEZZOのものしか出ない。接触の窓口が極端に限られる状況は、柔らかいムードの中で残酷に切り取られる。 pic.twitter.com/7UTWTgJW1Y
今回はおいて行かれた『5』、特にリーダーであり仕切り役でもある二階堂大和に焦点が当たる話であるが、ゆるふわな話の中に細やかな心理描写を入れる筆は健在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
乱雑に剥かれたじゃがいもを受け止められないMEZZOの危うさは、メジャーデビューしたから解消されるものでもない。
お辞儀はバラバラ、向いている方向も違う。タクシーの車内では、運転席のアクリル板が二人を隔てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
そういう危うい距離は、動き出してしまった『メジャー』のなかで取りこぼされる。今は、そっちを掘り下げるタイミングではない、ということだろう。 pic.twitter.com/7zuLuZb7Yw
無論、メジャーデビューしたから心が変わるわけではない。イレギュラーとして、あるいは珍獣のようにウェブカメラに映り込む二人は、いつもの壮五と環だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
あまりにも自由すぎる『素』の環が、冷蔵庫からプリン出してバクバク食べる映像は、ファンにとっては楽しいものだったろう。
しかし彼らを露出させるのはTVやCD販路といったメジャーメディアであって、手作りウェブ番組は『5』の庭だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
繋がっているけど離れていて、近いようでいて遠い。芸能界(あるいは現実)の厄介な線引が、立場と心をどう繋ぎ、引き離すかは、メインテーマではないが細やかに切り取られていた。
気持ちとは関係なく駆動する、アイドルの経済。そこに率先して取り込まれに行ったMEZZOと、近くて遠い波が二階堂大和を取り込んでいくことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
流されるか、自分から泳ぐか。今回はなかなか難しい展開を、ゆるふわ手作り番組を映しつつ掘り下げていく。
愛どりっしゅナイトのグダグダ感、顔の良い推しがド下らないことを延々やってるズルズル多幸感は、非常にアイドル番組っぽくてよかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
ドルヲタにとって、推しは息をしているだけで素晴らしい。予算も人員もないド素人番組でも、とにかく続けてファンサービスをすることが、『5』が消えない足場だ。
同時に飾らない『素』を見せることで親近感を出し、笑ってもらって心に食い込んでいくバラエティー路線に、アイナナがしっかり乗った、ということでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
神様とお友達、二つの極の間を自在に泳ぐのが今風のアイドル。そういう意味では、TRIGGERはおニャン子以前のスタイルを維持し続けてるのな。
アイデア出して汗かいて、必死にあがく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
メジャー急行で一気に先を行く『2』に追いつくべく、徒歩の『5』は頑張る。その過程を見せることで、彼らにファンが食いつき、巨大な『7』になっていく流れを納得させる。
アイドルフィクションは、基本スポ根だな、と思わされる流れだ。
第8話でTV越しに、失敗したアイナナを見ていた家族は、Web番組を見てアイナナを認知する。先行する『2』に、自分たちなりの手段で追いつく『5』のゲリラ戦は、ファンのリアクションを通じて戦果報告される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
ここらへんは第5話、あるいは第8話でも使われていた、クッションかけた説得力の作り方だ。
そういう状況の中で、二階堂大和の様々な顔が描かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
ここまでリーダーとして、年長者として、アイナナを支え引っ張ってきた聖人。しかし彼にも陰りがあり、譲れない一線があってアイナナにいる。
そういう人間としての表情を、その内実を語らないままに掘る回である。
ドミノ倒しのシーンはなかなか面白くて、べらべら喋るけどちまちま作業してるので停滞感が薄いし、並べ方でキャラの個性が出る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
第8話の失敗を経て、仲間にまじりつつ指示を出すスタイルに変化した一織(あと陸への毒舌あまえん簿っぷり)の空回りとかも、丁寧に切り取る。
一織が抑えきれず壊してしまうドミノを、アイナナのサーキットブレーカー・大和が止める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
だが彼も万能ではなく、その掌の裏でドミノは倒れていって、未完成の絵が広がる。それがこの話数一個で収まる暗喩なのか、はたまた『聖人』が抱え込む陰りが大きく伸びる時があるのか。 pic.twitter.com/lgUoeuzOM9
それは未来の話であるが、今回は『ドラマ』への強いこだわりが、その発信源を明らかにすることなく描かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
『5』であることの不満を、一織は覆い隠そうとするが、大和はあえて話題にする。それは否定してもしょうがない、ただの現実だからだ。きれいな嘘で覆い尽くすより、『素』を見せたほうが良い
そういうガス抜きの判断ができる大和だが、『ドラマ』出演が『7』に繋がると分かりつつ、強い拒絶を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
環のようにガキっぽく、自分の心を押し付けるのではない。『酒』と『恋』という大人の特権を、小ズルくぶん回してマネジのうるさい口を塞ごうとする。 pic.twitter.com/bsoZytlDSc
酒が心の潤滑油になりうることは、第9話、あるいはTRIGGER番外編でも描かれていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
しかし紡に押し付けたビール缶は、自分のオリジンを探ろうとする厄介な言葉を遮断し、『ドラマに出ない二階堂大和』を維持するための遮蔽物だ。
おどけた壁ドンもまた同じで、『恋(あるいは性)』を演じることで真実から距離を開ける技芸だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
『はい、冗~談』という言い回しからは、シャレと目の良さを活かしグループの不満を抜く大和のスタイルが、自分の中の闇に踏み込ませない防壁となっている状態が良く分かる。
その防壁の奥に、何があるか。それを具体的に見せるタイミングではないようだし、紡はいつものように、クリティカルな変化の媒介役を『アイドル』に譲る。出来たマネジだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
今回働いたりケアしたり、紡は頑張っていたのだが、成功は常に『アイドル』から出るんだよな。
この話は『アイドリッシュセブン』の話なので、彼らの成功を彼ら自身が掴むのはとても大事だ。だから紡は舞台には立たないし、大和の防壁をぶち破って舞台に立たせる役は、三月がやる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
おどけた態度の先にある闇へ、ストーリーを引っ張るまでが紡の仕事だ。特権化された『女』であり、部外者でもあり pic.twitter.com/vpNpClSFiB
路地裏から裏庭へ。大和の秘密に潜っていくストーリーを追うように、薄暗い展開が続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
『アイドル』に愛されない三月は、年長者のキツさを共有できる同志でもある。明るく振る舞うその奥に、何がたゆたっているかをよく知っている。お兄さんはつらいよ。
酒と恋…無理くり大人を演じることで作っていた防壁に、三月はスルッと滑り込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
『アイドル』を愛して、『アイドル』に届かなくて、でもだからこそ『アイドル』に歌舞を奉ずる、必死の祈り。何もかもよく見えてしまう大和には足らない、狭く熱狂的な視座。
三月はその賢さを見つめた上で、『お前の中にも、神様がいるだろ』と語りかける。熱くなり、本気で泣いて笑える『何か』が。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
それを見せてくれなくても、そこから溢れるものが本物だったから。アイナナの子供たちは大和(リーダー)を信頼し、その導き(リード)に従っているのだ、と。
闇の中、覚めた瞳を演じていた大和も、その言葉で生来の柔軟さを取り戻す。そう言ってくれる仲間のためにも、『7』の『1』な自分のためにも、遠ざかっていた『ドラマ』へ踏み込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
暗い闇からの出口はいつも、『7』でいることの中にある。遠い『家』の明かりが、混迷からの脱出口だ。 pic.twitter.com/vEuBj6mJlS
拒絶の源泉を明らかにしないまま、大和は『ドラマ』に出て、圧倒的なパフォーマンスを板に載せる。『7の中の1』が目立つことで、アイナナは名前が売れ、ファンを増やし、『2+5』から『7』になる道筋をつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
第8話の失敗からどう成り上がるか、うまく道筋をつける話だったと思います。
そこで止まらず、ともすれば進行機械になってしまう大和が隠しているものを、その本質を描かないまま踏み込む話も、しっかりやってました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
三月(と紡)のアシストを受けて、自分で決意して自分を変えられる。おどけた鎧で距離を造るのとは違う、『大人』の強さを見せるエピソードだったと思う。
地味にナギが『ファンのために笑い続ける』アイドルの本分を、ファー水とライブの映像を見ながら言語化してるシーンが良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
アイツはとにかく、エンターテイナーとしての『アイドル』を取りこぼさない男なのだろう。それは一織にも大和にも感覚出来ない、ナチュラルな感性だ。
ナギが見ている『ファンの笑顔に満ちた世界』は、MEZZOの露出によって、手作りWeb番組によって、大和のドラマによって拡散し、ファンを引き寄せていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
そういう『外』への波及だけではなく、至近距離で言葉と笑顔を受け取るアイナナもまた、ナギが隣りにいることで、自分を作り変えていく。
そういうエンターテイナーの宿命を、先を走るTRIGGERが背中でしっかり見せているのも良くて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
第4話で天がボロボロになりつつステージに上ったのは、今回ナギが見ていたものに背中を向けたくなかったからだ。あの時から『アイドル』たちは同じ風景を見始めた。
そこに真実たどり着くまでの道のりは、長くて険しい。自分の心の中にある壁、世界が無造作に押し付けてくる現実を乗り越えなければ、輝く夢はつかめない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
でも、仲間とファンがいれば、そこにはたどり着ける。その為の一歩として、大和が『ドラマ』に出るまでの歩みを追うエピソード、良かったです。
今回色々走り回ったおかげで、アイナナがドカンと売れる素地は結構整った。大和が札を隠したまま、葛藤を(一応)乗り越えてしまったのは…短期的には良し、長期的には悪し、なんだろうなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
つくづく、具体的な事情を切開しないと、キャラの根っこを切り崩せないアニメだと思う。
心理的外科手術には時間が掛かるし、ショックも大きい。『2+5』の現状を描写し、そこを乗り越えて『7』になる大きなドラマが走る中で、二階堂大和という『1』を掘り下げるのは、時期じゃないってことかな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
的確にスケッチされていた、『2』の危うさも気にかかる。すんげぇファンブル起こしそう。
切り離されてしまった『7』が、『2』として、『5』として必死に走ることで、より大きい『7』になる。合流地点をどこに置いて、一体何を起こすのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月25日
滑走路は丁寧に作った。あとはどう羽ばたくか。その飛翔を妨げる陰りが、また顔をだすのか。
次回、非常に楽しみですね。