知名度、実力、話題性。
どれにも欠けてるヒヨッコアイドルが、リリースバトルで勝つためのスタートポイントに立つ!
神集う島根から始まるアイドル神話、UniteUp! 二期第4話である。
一期だとクラい部分が見えにくかった万里くんが故郷に立ち戻り、PROTOSTARの現在地を確認しつつ新たな一歩を踏み出すエピソードで、大変良かったです。
自分たちの力不足を思い知らされて凹み、しかし立ち止まることなく新たに挑んでみて、シコシコ地道に頑張っていく。
ゼロから始まったばかりのヒヨッコだからこその、泥の匂いがする頑張りが芳しくて、スゲービッと来た。
やっぱこういう、ちょい苦くてクラい味わいのエピソードが強いわ、このアニメ…。
遠景の冴えを効かせて、どっか冷静さを残した客観でもってドラマとエモーションを描画していくUnite Up!らしい画作りは、今回も健在。
冒頭、EVAN時代を懐かしむファンの断末魔を心に突き刺して、思い悩む万里くんが背負う”十字架”の構図とか、マジビリビリ来るもんな…。
キャラクターを包囲する冷たさや居心地の悪さを、俯瞰で描く構図はそのまま、それを乗り越えて掴み取った暖かな実感や、燃え盛る夢の色、それを共にする仲間のありがたみを切り取ってくる。
ここをクローズアップで描かないのが、このアニメ独自の味わいだと思う。
話としてはローカル色の濃い安来の地方創生に、リリースバトルに挑むにしても武器が足りてない主役の現在地、その一員であるコンプレックスモリモリ少年の飛翔を、混ぜ合わせて仕上げてきた。
僕はPROTOSTARの真っ直ぐ濁りがない感じが大好きなので、明良くんの赤い熱血が凹んだ空気を弾き飛ばして、仮面の奥に素顔を隠してひたすら地道にクライアントのために奔走する姿が、大変眩しかった。
今回のエピソード、顔出してダイレクトなバズを掴むんじゃなく、仮面の英雄としてひたすら地道に、子どもやジジババ含めて様々な人との繋がりを、自分の手と足で掴み取ってく手応えが良かった。
安来という土地の匂いと、展開されるドラマの雰囲気がしっかり噛み合っていて、”いま・ここ”でやる意味のあるエピソードだったなぁ、と思う。
勿論万里くんが故郷に戻り、心に引っかかっていたトラウマを乗り越えて新たな戦いに挑む物語としての仕上がりも、大変良かった。
百万人の顔のないファンに向き合う偶像ではなく、血が通って声が聞こえる100人と直接手を繋ぐ体験って、このサイズ感のPROTO STARでしか、説得力込めて描けないと感じてて。
そこにドンピシャ、今後リリースバトルを戦っていく足場を固め、当事者である万里くんが”強く”なる理由をしっかり刻み込んだのは、物語全体としてもいい感じ。
ガサツで苦手だと思ってた幼馴染が、すっかり社会人仕草を身に着けた大人になっていたのは、万里くん自身が可愛さに自惚れていた過去、それを叩き潰され顔が無くなった傷から、既に遠く離れている事実の反射でもある。
相手がすっかり変わっていたように、自分も自分なりの努力や歴史を積み重ね、頼れる仲間も得て、もはや幼く弱い自分ではなくなっている。
だけどそれをもう一度、しっかり確かめさせてくれるようなチャンスがないと、なかなか自分自身の成長は確かめられない。
故郷に戻り原点を確かめるのは、そこからの変化を確かめどこへ行きたいか、未来を見定めるためにこそ必要なのだ。
この未来志向の原点回帰が、万里くん個人ではなくPROTO STAR自身にも伸びてる感じが、横幅広くて良かった。
赤い熱血エンジンとして仲間を前に引っ張っていく明良くんもいいが、辛辣に見えて好意を率直に表に出し、考えた上で誠実な回り道を選ぶ千紘くんの魅力が、今回眩しかったな…。
あのオカッパボーイ、屈折しているようでいて純情素直な所がチャーミングで、何かと腰が引けがちな万里くんを引っ張る今回、そういう良さが前面に出てた。
三人で支え合うからこそ強い、PROTO STARの基本形を改めて確かめられた感じだ。
どローカルな地味仕事に腐らず、目の前のファンやクライアントのために誠心誠意、今できるありったけを絞り出す。
実力も知名度もない若造が唯一突き出せる”本気”を、顔が見えないヒーロー仕事に勤しむ中で掴み取っていく手触りも、大変良かった。
やっぱこういう、地道で泥臭い仕事に真っ直ぐ向き合う若造の姿は超真っ直ぐ心を打ち抜くわけで、3ユニットでこういう真っ向勝負が一番似合うのは、やはりPROTO STARだ。
スタート地点である安来では空席が目立ったが、こっからの地方行脚でどんだけファンを呼び込み、自分たちを売っていくのか…リリースバトルを楽しむ軸が、一本ぶっとく立った感じもある。
同時に少ないながらも最前埋めてくれるお姉さん達もいてくれてて、「キミら…”この人”だぞ。今、ここでちっぽけな君らの輝き大事にしてくれる人なんだぞッ!」という気持ちになった。
アイドルとしてのPROTO STARを求めてくれる人も、かつてEVANを愛してくれた人も確かにそこにいて、それに報いられる自分たちであるためには、自分の全力を誠実に絞り尽くすしかない。
仕事の大小、客の入りに一喜一憂するのではなく、あらゆるステージをしっかりやっていく事が未来に繋がるという、地味で大事なルールが見えてきたのもいい感じだ。
あのお姉さん達に、どデカい晴れ舞台見せてやんなきゃなぁ…。
そういうアイドルの雛が高く飛べるよう、やりたいこと、やるべきことを暖かく見守り手を差し伸べる、家族やマネージャーのありがたみが濃い話でもあった。
今回のエピソードかなり晴美さんにクローズアップした内容で、PROTOSTARがどう売れていくのか、下支えするスタッフの顔がしっかり見れたのは素晴らしい。
こういう人がいてくれるからこそ、少年たちの熱意が自由に羽ばたき、結果を連れてくるわけだ。
アーティストの意思を尊重し輝かせる、裏方なりの誠実さをちゃんと書いたことで、作品全体の清涼感が上がった感じもするしね。
湿り気強い描線と爽やかな手触りを同居させてるのは、作品独自の強みだと思います。
ローカルヒーローネタなのでもうちょい明良くんが出張ってきて、クロスファイアと混じえたネタ擦ってくんのかなとも思ってたけど、そこを抑えて万里くん主軸で押し込んでたのも、エピソードの主眼がはっきりしてて良かったです。
二期第1話で明良くんのヒロイズムはしっかり描いたんで、「カメラが回ってない場所でヒーロー講座やって、請け負った仕事へのリスペクトをどう形にするか、仲間を助けたんだろうなぁ…」みたいな想像が広がるの、自分の中に良い距離感で作品と付き合えてる実感があった。
…俺、結構”Unite Up!”好きなのかもなぁ…。
そう感じられるのはありがたく、幸せなことだ。
本筋とは全然関係ないんだが、先週までメッチャ後ろ向きでネチョネチョした感情を垂れ流していた楓雅が、”LEGITのアダルト担当”に戻っていて爆笑する…と同時に安心した。
実はけっこう危ういバランスで保たれてるユニット内部の三角形で、自分の占めるべき位置に迷って立ち止まって、元の位置に戻ることをアイツは選べたのだ。
それって”やらされてる”のではなく”やってる”ってことで、「俺は年下の天才に引っ張られてるだけだし…なんも貢献できてないし…」とメソついてたやつが、プライドを保って必要な、大事な仮面を付け直した結果なのだ。
そういうの、やっぱ俺は好きだよ。
というわけでド新人ユニットが自分たちの”今”を知るべく、原点へ戻って未来への地図を描くエピソードでした。
島根ローカルな土の香りをいい具合に活かしつつ、EVAN時代の名残を未来に保っていく決意で終わるの、万里くんというキャラにしっかり向き合った個別回で、大変良かった。
ここをしっかりやった結果、彼が身を置くPROTOSTARの現在地と未来も鮮明になって、今後のリリースバトルを見届ける足場が固まりました。
夢がすぐ叶うわけじゃなくても、確かに星はそこに在る。
そういう描き方は、まだ見つかりきってない彼らでしか描けないわけで、とても素晴らしかったです。
次回も楽しみ!