Fate/EXTRA LastEncoreを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
鏡写しの あなたと私
空は銀色 曇った光
果たされることない 約束を
抱えて夢が 化けて出る
1000年前の呪縛、1000年前の希望。少女の涙は海となり、世界を煉獄へと変わる。洗礼されることのなかった聖幼児達よ、今宵死棘の祝福を受けよ。願わくば救済たらんことを
というわけで、映像前衛誌・Last Encoreといった風情の、更に因果と時系列がグッチャグチャになり、ロジックよりもポエジーを貪欲に食らうエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
現実に起こったことではなく、心理の襞の食感を掘り尽くしていく運びは、最高にわかりにくくて、最悪に伝わりやすい。
ありすが可哀想だ。
フィーリングの話は後に回すとして、三層で起こったことを整理してみよう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
1000年前、『お兄ちゃん』はアリスと日々を過ごし、殺さない解決を願った。既に死んでいる少女の、動きようのない夢。それでも、あまりに痛ましくて、助けたいと願った。
思いはアリスに届いて、アリスはサレンダーした。
焼け焦げ、切り刻まれた少女が、何も良いことなかった前世で夢見た無垢なる願い。笑い、走り回り、ご本を読んでかくれんぼ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
『お兄ちゃん』はその幻影を、どうしても壊せなかった。その優しさはアリスに届いて、世にも珍しい『殺さない勝利』が実現する。
しかしそれは、1000年続く呪いの始まりだ。
ブッダに勝利できなかった『お兄ちゃん』(とすると、第1話アバンの女性との繋がりが難しいけども)は、約束通り戻ってくることはなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
煩悩を否定する新しい世界のルールは、アリスの妄執も変質させていったのだろう。夢のかけらを食いつぶしながら、じわじわじわじわ、アリスの世界は狂っていく
本来成れるはずのない、手足の揃った可愛い子供の夢は、どんどん形を変えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
首を長くして待っていたら、本当に首が伸びてしまって(”ふしぎの国のアリス”より引用)、お兄ちゃん恋しの涙は海になる。(これもまたアリスの引用)
誰にも見られない亡霊は、人食いの怪物として受肉する。
以来、求める願いも擦り切れつつ、アリスは怪物的フロアマスターとして、第三層を支配した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
動き回るアリスは、彼女のサーヴァントそのもの。アリスはありす、ありすはアリス。その宝具は世界全体に拡大し、永遠に静止し、過去を菜園し続ける永遠の少女楽園がフロアそのものとなった。
人を食い散らかしつつ、ありすの歪な楽園は千年を過ごす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
存在するはずのないイレギュラーが、『お兄ちゃん』と同じ顔(ただし令呪は違う)を携えてやってきて、幾度も殺戮の劇を踊る。
過去しかない世界と、過去がない男。実感のわかない影絵のように演じられる、少年と少女の魂の交流。
自分には憎しみしかない。ハクノはデッドフェイスのどん詰まりを嫌がらせのように聞かされた後に、自分に唯一ある真実を告げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
結局憎悪の男は、殺すことでフロアを抜ける。『お兄ちゃん』が果たした非戦の勝利は、同じく亡霊であるハクノには達成不可能だ。切り、貫き、死の因果を押し付け、去る。
涙を流しながら砕かれ(それが生前の地獄の再演であるところに、ありすの悲愴がある)、最後に残った瞳で、ありすは天に登る階段を見上げる。(hollowの硝子の階段を、作者本人が再演していると言える)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
あのときは、『行かないで』としか言えなかった。別れを寿ぐなんて大人の行動、子供は取れない。
自分が誰かも、ここがどこかも判らない。生きていくため、消えないために世界も人間も食いつぶして、1000年を彷徨ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
そんな永遠のアンコールでも、二度目の離別でありすは、別れが哀しいことではないと知る。『いってらっしゃい』と、あの時言えなかった言葉を紡いで、少女は死ぬ。
憎しみだけを焼き付けられたと、己を切り捨てるハクノはしかし、それでも希望を持って天へ上がっていきたいと、今回言った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
それが、ネロと共に彷徨った結果の変化なのか、自分に似た誰かが選び取った、『殺さない』という夢に影響されてのことか。どん詰まりのデッドフェイスに、変化が生まれたのか
時系列と因果をグチャグチャにかき混ぜた本編から、読み解くのは難しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
ただ、ハクノは憎しみ以外の決意を言葉にして、戦いに勝利して更に上がった。どうにも救いようがない、殺された後に蘇ってまた殺され、苦しんで寂しくて狂って換わってしまった少女を、もう一回殺す。
そうすることで、1000年前の願い/呪いをリピートし続ける、狂ったレコード盤はようやく止まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
狂った夢、一瞬の愛をワケも分からず追い求めた、幼いシジフォスはようやく開放される。
その死が救いか、幾億回目の劫殺であったかは、誰にもわからない。
兎にも角にも。少女は死んで、少年は登った。
まぁ、そういう話なんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
ありすが可哀想だ。
焼き尽くされて腑分けされ、実験動物扱いのまま死んで、月に亡霊を吸い上げられて。
誰にも気づかれないまま泣いて泣いて、ようやく自分を見つけてくれた『お兄ちゃん』には置いていかれ、約束は果たされないまま待ち続けて。
帰ってこない愛しさと、出口のない永遠に閉じ込められて、身も心も醜く変貌して。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
『お兄ちゃん』に似た、そして自分によく似た亡者の姿も認識できないまま、人食いの怪物として殺されて、一瞬だけ美しい夢を見て、その生命を閉じる。
キツい。徹底的にキツい。野中藍の名演が余計にしんどい。
ダンは満足のゆく死から引きずり出され、単機能の亡霊として過去を忘れ果てて、緑の森の中で殺し続けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
シンジは世界が閉じる前の殺人を忘れられず、永遠に続く都に人類の輝きを止めようとした。
ありすはちょうど、その中間点に縫い留められていたように、僕は思う。
亡霊の自分を見つけてくれた人、一緒に遊んでくれたお兄ちゃん。世の中地獄だけじゃなく幸せな終りもあるのだと、教えてくれた人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
その一瞬のふれあいが、ありすを煉獄に縫い止め、生き続ける理由になる。しかし永遠を生きる魂は変質と停滞を避け得ず、彼女は亡霊でも人間でもない怪物になった。
歪んでも、狂っても。悲しい物語を冒頭に巻き戻す子供らしさは生きていて、あの人との約束だけは覚えていて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
マスターたちがありすをようやく見つけても、それはもう人食いの怪物でしかない。人食いの怪物になったから、人の目に触れるようになったのだとしたら。
それはあまりにも残酷だ。
マスターたちが見れなかった、ありすの過去、思い、人間の証明。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
その全てを持っていない(と自己認識する)ハクノだけが、彼女が当たり前に少女で、自分に似た存在がそれを受け止めた事実に対面する。
過去との反射の中で、彼だけがありすを再度見つけて、名前を呼ぶ。その呼び声は、怪物には届かんが
奇跡はもう一度起きないかと、ハクノはネロに問う。それはあったと、ネロは返す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
ネロがかつて、天に登ったマスター(それが『お兄ちゃん』なのか、第1話アバンの『お姉ちゃん』なのかは不明)を見知っていて、深い仲だったことがようやく明言された。
過去を追い求めるアンコール。誰もがアリスだ。
アリスの能力分析を借りて、リプレイとループとアンコールの違いがベラベラと喋られる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
それは第三層攻略に限定された話ではなく、いかに追憶と呪いを断ち切って上がっていくかという、この物語全体に関わる問いかけなのだろう。かなーりフワッとして分かりにくいが。
ハクノは過去に蓄積された形のない憎悪を、無限にリプレイするレコードだ。『デッドフェイスとはそういうモノ、どこにも出口はない』と凛はいう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
しかしそんな存在が、哀れにすぎる少女に奇跡を、無明の闇の中で希望だけは抱いていたいと、願うものだろうか。
アリスが間違いなく人食いの怪物であると同時に、当たり前の幸福を願ったただの少女であったように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
仏性に静止された世界が生み出したエラーたるデッドフェイスもまた、その性分を乗り越え、なにか別のものである可能性(というか確信)を、今回の物語は見せたと思う。
『お兄ちゃん』の柔らかい優しさを、ハクノは持ち合わせていない。冷たく、乾燥した無表情(Dead Faceとは本来そういう意味だ)が、彼のデフォルトだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
しかし、過去の勝利者とハクノがどのような関係で繋がるにせよ、『お兄ちゃん』の過去とありすの真実を、ハクノは見た。見て、己を動かした。
怪物に成り果てて、赤い槍で貫かれ、炎の剣で首を切り落とされた女の子の生き様に、せめて意味があるなら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
あの時言えなかった『言ってらっしゃい』を肯定できたことに加えて、動くはずのない死面に別の顔を付け加えたことも、数えて良いのかも知れない。
いや良くない、全く良くないのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
金色の天蓋に頭を抑えられ、1000年を停滞している末世の檻では、そのくらいしか望みうるものがないのだ。
ただの女の子が、クッキーを食べてかくれんぼをして、ご本を読んでもらうような幸福は、もう人類に残されていないのだ。
ともすればシンジも、あの空白の都市にそういう当たり前の幸せを残したくて、市長をやっていたのかも知れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
もう形骸でしかないけれど、かつて誰かが夢見た綺麗な綺麗な残骸を、飾り立てて守りたい。子供たちの願いは、その末路が堕ちた生者でも、狂った亡霊でも似通っていく。
そういう切なる地獄を背負って、ハクノは天を目指す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
優しさはない。哀悼もない。あるのは憎しみだけだ。
そう自虐しつつ、敗者達の願い、100年分の歪みと愛は、死してなお蘇る死人に変化をもたらしていると、僕には見えた。
それは、とても大事なことだろう。
ハクノが空っぽの怪物、過去を略奪された自動機械である事実…『人間』ではないことが、怪物になった『ありす』が夢見る少女でいられた過去を見つけるための、共感の足場になっているとしたら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
ハクノが自虐する空っぽさは、地獄の中の一瞬の救いとして、機能していたことになる。
もうそういう形でしか、救済を掴み取ることが出来ないくらい、さかしまの七天は狂ってしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
それが覚者(とその契約者)が押し付けた『完全な世界』の末路だとしたら、再び闘いを挑むべく、理由もわからず天に登る旅路は、『人間』を取り戻すための戦いの記録になる。
ありすの死骸も、そんな人類最後の悪あがきに、刻まれるのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
刻まれてほしいもんだ、と思う。
『お兄ちゃん』が成し遂げた優しい奇跡を掴めなかったとしても、怪物であるがゆえに見えたものを忘れずに、敗者達の夢と呪いをちゃんと背負って、階段を上がっていって欲しい。
ありすが幾度も死んで、幾度も夢に見たものを、無駄にはしないで欲しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
そういう願いが強くなる、なかなかに狂ったエピソードだった。
マザーグースとアリスの引用に、時系列と因果の撹乱、カットと饒舌の合わせ技がイヌカレー特製のクレイジー・キャンバスにぶちまけられる。読めない。難しい。
しかしそこに刻まれた、生きてて何も良いことなかったし、蘇って一瞬手に入れたと思った幸福は遠くに逃げるし、それが帰還することを信じて待ってたら世界は崩壊しちゃうし、それに巻き込まれて怪物になっちゃった女の子の願いと哀切は、非常に力強く描かれていたと思う。佐伯監督、さすがだ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
輪郭も形もない、感情の絵の具を乱雑に塗りたくったようなこのエピソードを、ハクノとネロがしっかり刻んで、前に進んでいって欲しいと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
ホントなー、ダメなんだよ…ガキがバツバツ切断されていって、それでも最後に残ったかけらが一瞬だけ見た夢が、瞬いて消えちゃう話とかさホント。
僕の個人的なツボはさておき、脳を撹拌されるような異常な視聴体験としても、凄く普遍的で痛い話としても、非常に好みであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
控えめに言って劇薬、わけのわからない不親切さがほとばしるエピソードだ。しかし、ぶっちゃけLEで一番惹きつけられた。アリスが可哀想だと、強く思った。
forget me not blue。勿忘草の花言葉はその名前と、『真実の愛』だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月12日
ハクノは『お兄ちゃん』と違って、『真実の愛』で奇跡を起こせない。だからせめて、『私を忘れないで』というアリスの遺言だけは、大事にして欲しい。
そんな僕の願いを、物語は背負ってくれるか。予断を許さず第四層。楽しみですね