メガロボクスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
男たちの運命は、涙雨の中で動き出す。上と下、特権階級とどん底に分断された格差社会の中で、強化された身体が唸りを上げる。
八百長を共用され牙を抜かれた狂犬と、忠誠を拳に宿した白狼が、四角いジャングルで出会う。拳と拳、魂と魂。闘犬達の共鳴が、嵐を呼ぶ。
そんなわけで、アイカツフレンズに引き続いて『出会っちまう』系の第一話である。あっちはアイドル、こっちはボクサー。テーマは違えど、それが運命の出会いには間違いない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
主人公・ジャンクドックの鬱屈と純情、ボクシングへの言葉にならない思いがしっかり画面に塗り込められ、期待が高まる第一話
いいところの沢山ある出だしだったが、まず声と見た目がいい。底辺の暮らし、八百長の傷。ジャンクドッグの目は濁っているが、
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
しかしその奥に青い空を求める純粋さがある。細谷さんの声もココロの子宮にビリビリくる仕上がりで、ザラツイた男の熱気で鼓膜が揺さぶられる。
地下リングの狭さ、暗さ。落書きまみれの壁。世界に漂う塵と埃。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
未認可地区の美術が非常に凝っているのだが、それがただ巧いのではなく、ジャンクドッグを取り巻く鬱屈をちゃんと反映し、ドラマのジャンプボードになっているのがいい。
泥臭くて、汚くて、でもパワーがある。
メガロボクスの高みへ登っていくだろう物語が、始動する場所。血と欲望にまみれたボクサーの子宮として、ある種の『匂い』がちゃんとあるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
あの泥まみれの場所に漂う、形のないエネルギー。ゴミ以下の負け犬だからこそ溜め込んだ、圧倒的なパワーの予感。そういうものが、美術にある。
これと対比するように、認可地区の美術はクリアでスマートだ。ユーリがガウンを脱いで機械化身体を見せたときの、ギアの美麗さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
パッと見ただけで『あ、これは勝ち組の持ち物だ』と判る洗練と、ジャンクドッグのギアの無骨さの対比。言葉少なく、物語と世界を見せるパワーが美術設定にある。
それだけだと雰囲気アニメになってしまうわけだが、ジャンクドッグの憂鬱を丁寧に丁寧に追いかけつつ、『何か』を求めて弾き返されるドラマの歩みが、凝り性な世界設定をしっかり受け止めていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
あの息苦しさ、汗臭さから、ジャンクドッグは出たがっている。だが、出口が見えない。
イヤホンという首輪。作りかけのドームと、どこにもいけない行き止まり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
象徴の使い方も非常に巧みで、ジャンクドッグが追い込まれている現状と、『メガロボクス』だけがそこに風穴を開ける予感が、巧妙に作り出されていた。身体的でソリッドなのに、ところどころ詩的。大好きな味付けだ。
そしてライバル・ユーリの佇まいもいい。何にでも噛み付く、いらだちに支配された黒いジャンクドッグに対し、スマートで清潔な印象を与える白。前傾姿勢な前掛かりと、背筋を伸ばしたディフェンシブな姿勢。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
あの出会いのシーンを見るだけで、二人が正反対で、だからこそぶつかり合う宿命を感じる。
雨の中、男二人が出会う。ギアの助けも借りず、むき出しの自分をさらけ出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
その瞬間、雨粒は止まって世界の真実が見える。拳と拳、魂と魂、男と男。ここで出会うことが運命であったと、全てが終わった後に気づくような、濁流のような邂逅。
最高である。
あのシーンに雨が降ってるのが、僕は凄い好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
何かを求めて、でもどこにも行けなくて。夢の果てを求めてドームに来たけど、それはまだ作り出せていない。金持ちの女を避けてすっ転んで、行き止まりにぶつかる。
それでも哭けないジャンクドッグの代わりに、空が泣いているのだ。
ゴミみたいな状況でも、ジャンクドッグは泣かない。涙を見せて何かが動くような世界は、とっくの昔に殴り倒されてしまったのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
しかし、ジャンクドッグの心は泣き続けている。その事実に唯一気づくのがユーリであり、そういう男に出会ったジャンクドッグもまた、共鳴を始める。狼は狼を知るのだ。
アイドル候補なら一緒にステージに立つところだが、この物語は拳闘の話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
女の首輪を外し、ユーリは地下に潜った。チャンプがそんなことをする必要はないのに、あのとき感じた共鳴を信じて、拳で男を抱擁するために、同じ土俵に上がる。
猛烈なラブ・コールである。
言葉少なく、しかしこってりと時間を使って描かれる、男と男の邂逅。拳しか世界に己を突き立てる術を持たない無骨漢達の、魂の会話はもう始まっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
しかしそれは、あくまでジャブ。肉に拳を埋め、骨を拳で砕かれる対話本番直前で、今回の物語は終わる。たまらない。まちきれない。
とにかく女っ気のない、汗と血と欲の匂いプンプンのアニメである。サイドキック、あるいはメンターも軒並み男であり、オッサンとニーチャンのドブ臭い会話で画面の八割が埋まっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
素晴らしい。今後も子の調子で行ってほしい。そうしたほうが、世界唯一の女であるゆき子さんも目立つだろ。
丹下段平役の南部贋作(名前が最高にいい)が、薄汚さと誠実さを同居してて素晴ら氏位。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
”あしたのジョー”を原案としているが、ジャンクドッグは既にボクシングに出会っており、己を表現する唯一のメディアとして、綺麗な思いを抱いている。
しかしそれを押さえつけ、八百長を共用されている。
ジャンクドッグの一番側にいる南部が、ジャンクドッグの抑圧に加担している構図だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
この重し、誰も理解者がいないどころか、一番理解者になれそうなやつが頭を抑えてくる苛立ちが、ユーリと出会って見えた地平線を、色濃く見せる。
斎藤志郎の演技が非常に良く、現状を諦めジャンクドッグをそれに突き合わせつつ、最後の一線をまだ残している感じがよく出ていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
世界の閉塞感を突き抜け、地平線の先を見たい。ジャンクドッグの夢は、次週ユーリとのバウトで広がっていくだろう。そこに、贋作の夢も乗っかって欲しいところだ。
夢を諦めきれないジャンクドッグの青さは、『ボクシング』という身体競技に乗っかっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
シューズの軋み、肉を叩く音。音響含めたボクシングの表現には身体性があり、痛そうだった。だからこそ、そこに全てを賭けるジャンクドッグの危うさ、純粋さもよく届く。
ギアによる補強も含めて、『何か』がありそうな気配が、このアニメのボクシング描写からはちゃんと漂っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
メインテーマというのは、そうでなきゃいけない。世界全てを変えてしまいそうな、力強い鼓動。特別な『何か』に辿り着けそうな実感。そういう説得力は、『絵』で出すしかない。
打撃力は強化するのに、防御力アシストしてる感じがないギアのデザインが、ヤバさと裏腹なメガロボクスの可能性を、ギュンと叩きつけてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
経済格差がモロに反映されるギアは、『階級』の暗喩でもあろう。サイバーパンクな世界観を巧く背負わせた、面白いアレンジだと思う。
ゼロからボクシングに出会うのではなく、既にボクシングを職業にしている…しかも八百長で汚している所から始まってるわけだけど、ちゃんとその本質が肌でわかる演出になっているのが、作品に入り込む足場として良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
ジャンクドッグの鬱屈した純情を捧げるに相応しい競技に、ちゃんと見える。
ジャンクの純情は、アブハチのおっさんの言葉で心が動かされ、『自分を信じる自分を、信じてみたい』という決断に繋がるところでも見て取れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
人を信じすぎたから、虻蜂取らずに終わる。そういうお人好しの言葉とギアを背負って、少年はリングに立つ。その先に、新しい地平線がある。
良い。すご~く良い。ど真ん中から勝負を書けてくる、ベタ足の男の物語だ。その周辺には同じく屈折した同志と、運命的に出会ったライバルと、クソみたいな世界がある。それら全てを、拳が突破していくのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
そういう物語の予感が全速力で鼓動する、良いスタートだった。
”AKIRA”とか”コブラ”とか、ジョー以外の『古き良き男の物語』に目配せをしつつ、あくまで『メガロボクス』を、ジャンクドッグとユーリの物語をやるんだ! という気概に満ちてもいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
ノスタルジーと新進の気概、リブートに必要な両輪をしっかり駆動させている印象だ。
古風を擬した撮影や色彩、絵のタッチも作品にあっているし、それをちゃんと最新鋭の切れ味で研ぎ直してもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
テールランプの残光がゆらりと漂う演出は、懐かしくもあり新鮮でもあり、とても良かった。運命が踊り始めている感じが、あのシーンからした。
とにかく男と男が出会い、ボクシングで決着を付けることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
そういう物語の骨、それが支える世界の汗と血と涙を、ど真ん中にぶち込んでくる第一話でした。
痛みと肉感、夢と無力。相反するエネルギーが作品世界の中でボルテージを上げて、バチバチ火花を上げている感覚が、期待を高める。
八百長用イヤホンという首輪を外し、ジャンクドッグは明日に拳を突き出す。それはユーリという、強くて美しい男の姿をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月5日
運命のライバル同士がぶつかる第一戦、どう書くか。ギアという追加要素の活かし方も含めて、非常に楽しみです。
こりゃ、いいアニメだ。皆も見よう!