シュタインズゲート・ゼロを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
電子の魔術は、死者を蘇らせる。ここではないどこか、貴方ではない誰かと作り上げた愛おしき幻像に踊らされつつ、青年は天才と出会い直す。
交錯、偏向、反射。幾重にも歪められた記憶と認識の中で、その思い出だけが真実だとしたら。
というわけで、岡部くんのメンタルスクラップ&ビルド旅、第2回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
真帆AIで一回肩透かしを入れつつ、しっかり死んだはずの助手をデジタルに復活させ、岡部くんの限界マインドにさらなる揺さぶりをかける。なかなか極悪な運びに、薄暗い笑みも漏れるってもんよ。
ほんとキツそー。
ゼロは前作の複雑な物語を踏まえ、キャラクターたちがそれぞれ別の小島で離れて暮らしているような、もどかしさと切なさがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
幾度も世界を飛び越え、運命を掴む。主人公の特権は岡部くんを取り返しがつかないほど傷つけ、その記憶は岡部くんにしか共有されていない。
紅莉栖がラボメンになる前に、岡部自身の手で命を奪ってしまった世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
騒々しくも楽しかったラボでの日々も、積み上げた恋も、全ては岡部の中にしかない。
死のトラウマと同時に、特別な存在であることの孤独が、岡部くんを苛んでいる。言っても判ってくれんしな。
岡部くんが体験した、感情と因果が複雑に絡む物語。時間と因縁を行ったり来たり、絡めてほぐして編み上げた体験のタピストリーは、岡部くんの心の中にしかない。あまりにも超自然的なその体験は、外側に出せば即座に狂人扱いされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
世界は一つしかない。それが正気の世界を保つ足場だ。
岡部くんが玩弄(するつもりはなかったが、結果としてしてしまった)した因果は、牧瀬紅莉栖の殺害によって収束し、色々なものを諦めることで世界には正気が戻った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
しかし、複雑怪奇な青春物語は岡部くんの中に確かに存在していて、その存在と不在のギャップが、岡部くんを孤独に苦しめる。
なかなかに寄る辺ない状況で、そらメンタルやられるわって感じだが、離れ小島に生きていても、優しい人々からの手紙は届く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
天才・牧瀬紅莉栖の思い出を道糸に、ゼロのメインヒロイン(であろう)真帆と交流を深めるシーンは、孤独の描写が色濃いからこそ、なかなか良いものであった。
最初、真帆は記憶転写の技術を、紅莉栖から盗んだのではないかと、岡部くんを警戒している。それは紅莉栖への愛情の裏返しであり、誤解が解けた後はすっかり個人を偲ぶムードになって、涙も流す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
すぐさま心を許すのではなく、ちょっとガードを上げて大事なものを守っている描写が、なかなか良かった
真帆の見ている紅莉栖は、年下の大天才であり、ツンツンな自分にも優しくしてくれた親友である。それは岡部くんの知らない、別の島の牧瀬紅莉栖であるが、真実の一つでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
時間を飛び越える魔法がなくても、人はそれぞれ別の世界を持ち、孤立しつつ接続されている。
そんな『真帆の見た紅莉栖』を反映したアマデウスは、当然オカリンのことは知らない。出会いも交流も、全てはなかったことになってしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
それでも、牧瀬紅莉栖に似た存在は岡部くんにとって特別で、電子の檻の中で溌溂と生きる。けして飛び越えられない、0と1で組み上げられた小島。
そこに、失われてしまった過去があるのか、ないのか。電子的なミスコピーであることが判っていても、失われた過去と愛を一人抱え込んだ岡部くんは、『牧瀬紅莉栖』をそこに見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
でもそれは、やっぱり本物ではない。繰り返す反射、届かない手。ゼロは歪みとすれ違いの描写が多い。
年下の大天才に『アマデウス』と付け、自分のログインネームは『サリエリ』なあたり、真帆の紅莉栖への感情も相当に歪んでいそうではある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
今表に出ている愛惜はけして嘘ではないんだろうけども、相当コンプレックス抱えてそうだ。まぁしょうがねぇ、助手が天才過ぎた。
ここら辺の遠さと歪みを反映して、今回はキャラクターがなにかに投影されている絵が、結構多かった。コップ、あるいはカメラレンズ。歪んだ球体の表面に囚われたまま、人々は重なってすれ違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
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それでも孤独な人々は、思い出を縁に思いを投射し、なにか接点がないか必死に探る。その苦痛に満ちた悶えが、クローズアップの多用で巧く描かれていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
死から切り離された電脳空間で、アマデウスは生者の妄念とは遠い場所にいる。奇縁に衝突する前の無垢なる時間を、永遠に繰り返す電子の聖嬰児。
今後岡部くんは、何も知らないアマデウスに孤独な歪みを叩きつけていくだろうし、それが岡部くんにとって救いと呪いにもなるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
飲み込もうとしても、切り捨てた思いと世界は岡部くんの心に余る。その限界はここ二話、どっしりと重たく描かれているので、それが溢れるのも納得だ。
この世界が第三次世界大戦を予告されている以上、トンチキAIと傷追い人のSF生き直し旅だけやってるわけにも、いかないのだろうけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
まぁ岡部くんが少しでも生きやすいよう、巧く交流できると良いんじゃねぇかな…マトモに振る舞うオカリン、マジモテそうだけど欠片すら面白くなさそうだからな…。
真帆自身も、岡部くんとは良いファースト・コンタクトを果たしていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
同じ天才に惹きつけられた凡才として、心に秘めたものを共有する事になっていくだろう。
…まゆりもそうだが、ちょっとボタンがズレると凄いズブズブになりそうな気配あるな、ゼロの男女関係。
冒頭、真帆に向けられた嘲りに岡部くんは立ち上がって、ちょっとオカリンぽいトンチキな熱血を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
それは一瞬きりの輝きで、すぐさま陰鬱な気配に覆われてしまうのだが、『やっぱ岡部くんは熱くてバカな方が良いなぁ』と思わされた。
アマデウスや真帆と交流して、それを快復できるのだろうか?
思えば、岡部くんが『鳳凰院凶真』というキャラクターを背負ったのも、祖母の死に心を傷つけられたまゆりが、死の領域に飛び込まない予防的措置としてだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
僕らの好きな『元気なオカリン』は常に、苛まれ傷ついた『誰か』を守るために発言する。素は真面目で地味なのだ。
そんなまゆりは、別の世界では友情を気づいていた紅莉栖のことを忘れ、岡部のいる島とは遠く離れた場所で、彼を見守っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
アマデウスからの着信を『知らない人とのお話』として、行儀よく離れていく振る舞いに、なんともいえない悲しみがあった。そーだよなぁ、ラボメンじゃないもんなぁ。
ゼロでは『岡部-紅莉栖-アマデウス-真帆』というAIテクニカな感情ラインと、『岡部-まゆり-他ラボメン』というナードな感情ラインが並走している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
前作ではラボという『場』がその2つに橋をかけていたが、誰にも理解されない冒険を終え、橋は落ちてしまった。
その断絶に、事情もわからないまま孤独な闘いを挑んでいるまゆりは、しかしその無垢と無知ゆえに、岡部の傷に適切な治療を行えていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
岡部くんの心にはずっと、既に死んだ牧瀬紅莉栖が住んでいる。それはまゆりにもアマデウスにも真帆にも追い出せない、強力な支配だ。
電子的復活を遂げたアマデウス、共通の思い出で繋がる真帆。新たなキャラクターが新たな可能性を持ってくる話だったが、傷ついた岡部くんをひっそり見守り、色々手を差し伸べているまゆりも何か、手応えのある仕事ができるといいなぁと、彼女のファンとしては思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
絡み合った因縁と感情。そこを切り分けて未来に漕ぎ出していくリハビリの物語が見えるが、その一端を担うアマデウスに、AIらしからぬ身体性があるのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
『ひそひそ話をする』という、とても人間臭い動きをわざわざ絵にするところに、AI特有の冷たさを遠ざけたい意志を感じた。
アマデウスが厳密なAIに引っかかるかは疑わしいところでもあるが、牧瀬紅莉栖の記憶と人格を引き継いだアマデウスは、その魂の温もりも引き継いでいる…というところか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
お茶目で優しく、ちょっとわがまま。電子化されたヒロインは、生身時代の濁りが抜けて、すげー完成度の高いヒロインである。
無印発売が2009年、作中時間が2010年、ゼロのゲーム発売が2015年、アニメの放送が2018年。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
作品が置かれている複数の時間軸を飛び越えて、アマデウス的な技術がごくごく一般的になっているのは、ちょっとおもしろい。
『謎の超技術』ではなく『Vtuberっぽい』だもんな、アマデウスの今の印象。
なにしろシリーズタイトルが『科学アドベンチャーシリーズ』なので、仮想をあっという間に追い抜いていく技術の進歩とも、巧く付き合っていく必要はあるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
それは科学技術だけでなく、国際情勢とかも同じかな。約束された第三次世界大戦、どういう筋立てで起こすんだろうか。
そういうガワの話も気になりつつ、ゼロの根っこは孤立と交流であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月19日
真帆、アマデウス、まゆり、存在しない牧瀬紅莉栖。
岡部くんを取り巻く女たちは、だいたい舞台に上がった。離れ小島が点在しているような寂しい風景が、電子の奇跡が生み出した出会いでどう変わっていくか。来週も楽しみだ。