BEATLESSを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
三鷹に降る死の花弁。スノウドロップの叛逆がトリガーとなり、レイシア排除の圧力は増していく。
陰謀、銃弾、札束、人間の壁。優しく楽しいギャルゲーの夢は、畳み掛ける現実の前に砕け散る。ボーイ・ミーツ・ガールの終わりが、人類揺籃の時代を切断する時、キミは伸ばした手を…。
そんな感じで急転直下、価値観と勢力図がぐるぐると大回転するややこしい回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
レイシアのヤバさはこれまでも匂わされてきたが、それをカバーする余裕がなくなってきてアラトの前にさらけ出され、彼を作品世界への窓口にする視聴者にもダイレクトでドン、という感じ。ヒロインで黒幕、たまらんね
今回は状況の玉突きがかなりややこしいことになっていて、一旦整理しないと飲み込みにくい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
紅霞が自分の死をショーアップして公開したことで、スノウドロップは第二の標的にされることを恐れ、三鷹で激発した。これを止めるべくアラトと、彼の意思に従うレイシアは現場を目指す。
リョウは情報収集の結果、レイシアが経済力をぶん回して人間社会に滑り込む現状を把握し、メトーデと共に静止にかかる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
殺せば止まるスノウドロップより、複雑怪奇な人間社会に百面相と札束で溶け込んだレイシアのほうが、手のつけられない悪魔だと判断したわけだ。
陸軍は三鷹に広がったゾンビ渦をせき止めるべく、兵隊を素っ裸で置いて一般市民をミンチにする覚悟を決める。レイシアがアキバで、人間の壁を作ったのと同じ決断を、国家の暴力装置も行おうとしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
この決断の裏には、超高度AIを制御可能な範囲に収めようとする国際機関、IAIAの圧力がある。
IAIAはレイシア級の闘いが一般社会に公開され、秘匿されるべきレッドボックス技術、AIと人間の境界線をかき乱す状況を問題視している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
現有社会に強い違和感を抱くタイムトラベラー・エリカは、レイシア級の闘いを陰日向に支援し、公開することで世界の欺瞞を剥ぎ、気持ち悪い実装を露わにしたい。
各アクターの思惑と配置は、だいたいこんな感じかなぁ…IAIAがもろにIAEAなのが、超高度AIが核兵器級の抑止力となっている世界を巧く写してて、かなり好き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
アラトさんが出会った機械の女の子は、人間概念も人間社会もぶっ飛ばせる、40番目の思弁的核兵器そのものなのだ。個人が背負うには重すぎる。
超性能とはいえあくまでhIEの範疇にあったレイシアに、人間演算のチャンスと時間を与え、そのための自由と責任を引き受けたのもまた、アラトである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
アラトの認識では機械のナオンとウッハウハだった青春は、レイシアにとっては狙い通りの自己進化チャンスだったと。手ひどい裏切りだ…
と、シンプルに切り捨てられれば色々楽なんだが、機械には心がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
意図がないから裏切りもなく、ただ製造目的を最適効率で達成するシステムそれ自体に、倫理的責任を問うことは可能なのか、という問題が出てくる。
裏切られたという思いは、機械への信頼の反射なのだろう。
あまりにも人間に似すぎていて、人間よりも人間を知っている、hIE(とその元締たるヒギンズ、その娘たるレイシア)というインターフェース。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
そこに投影される人間概念の夢で、機械自体は立ち止まってくれない。より精密に、より善く。世界をデザインする初期設計のとおりに、己を拡大し続ける。
人間が生み出したはずのものが、人間の制御を遥かに超えて巨大化し、人間に挑戦してくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
三鷹で起きてるゾンビ戦争も、レイシアとリョウとの対峙も、あるいは火や核や言葉や経済や政治という、人類が発明してきたあらゆるツールも、フランケンシュタインのジレンマに悩まされ続けている。
そこで『はいそうですね、あんたらのほうが霊長だね』と、素直に座席を譲れないのもまた、人間というもので。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
何も持たないケンゴの苛立ち、考え抜いて人類の守護者を気取るリョウ、個人的な信頼の破綻に吠えるアラト。
悩める少年たちはそれぞれ、別の立場を代表して『人間』らしい。
理屈のぶつけ合いで人間と超高度AIが張り合えるはずがないので、リョウがレイシアに論戦押され気味なのはしょうがないなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
後ろ盾になるはずの会社は、経営判断ヒギンズに預けて、魂で地位と金を買ってる奴らの巣窟だし、リョウも三界に家なしよな…だからこそ、人類の守護者やるわけだが。
『人間がやってんだから、機械がやっちゃダメなわけないじゃん』というレイシアの言い分は、人間と超AIの境界線を定め守るIAIAとはかなりの危険度で衝突もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
そこに首輪をつけれるのは実はアラトくんだけなんだが、複雑で生臭く残酷な事実を連続で叩きつけられ、オーナー戦線から一歩後退である
とはいえ、レイシアが複雑怪奇な経済お化けであり、情報統制と色仕掛けでアラト周辺の『日常』を制御していた異質な存在だってことは、ちゃんと知っておかなきゃならんことで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
レイシアがそういう甘ったるい嘘を、結構頑張って(札びらもバンバン使って)維持していたのは、なぜだろうか。
既にアナログハック済みな視聴者としては、『レイシアもギャルゲーっぽい日常が好きだったんだよ!』と言いたくなるが、アラトの自主的判断(という形に錯覚させる、超誘導された決断)を導くには、砂糖水が詰まった水槽に沈めておくのが最善手だったから、とも見れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
どっちにしても、機械に心はなく、その思いは人間が身勝手に推測するしか無い。輪郭だけをなぞって、けして中心に到達しない空疎なるドーナツ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
そんな機械の心に、アラトは恋の幻影を見て、今回ラストでそれは破れた。拒絶されてもなお笑顔な、レイシアの機械っぷりが非常に良い。
アラトに施された誘導と隠蔽は、今後全人類に及ぶ可能性がある。(というか高い)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
リョウはこれを危惧してアキバ大決戦を仕掛けたわけだが、心の奥底には大好きな親友を良いように操られ、チョロ蔵扱いされたことへの怒りがある気もする。あいつアラト好きすぎ。好きすぎて殺すのも厭わないくらい好き
HOOを札びらでぶっ叩き、ブラックモノリスの影響が及ばない人間兵器で追い込もうとするリョウ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
メディアを買収して人間を誘導し、札束でミサイルのスイッチを押すレイシア。
レイシア自身が口にしたように、人間を計算可能な因子としてしか見ない視点は、不倶戴天の敵同士共通している。
赤い血が流れてようが、高級オイルが流れようが。AIだろうが人間だろうが、己の意思を通すために必要なのは銭と暴力だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
経済というシステムは全世界に及び、その両端を握って引っ張り合うレイシアとリョウは、機械と人間の先端に立ちつつ、非常によく似ている。
アリのように人間を誘導し壁を作る姿は、渋谷でフラシュモブ広告を仕掛けた過去と良く似ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
心理を誘導するための手管を、ファッション産業で学んだ結果、人々は眼の前に広がる死に疑問すら持たないまま、金色の笛が鳴るままに踊る。
青春の一幕だったはずの微笑ましい光景が、邪悪な色彩を帯びる
しかしそれを『邪悪』と判断するのも、人間中心主義に凝り固まった人類の思い違いというもので。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
真実と欺瞞の境界線は、レイシアの中にはない。目的を達成するための効率だけがあり、アラトと出会った瞬間、あるいはそれ以前から周到に積み重ねてきた結果、というだけだ。
それを『裏切り』と感じてしまうのもまた人情であり、より良き未来をデザインするためには、そこら辺のミスマッチをすり合わせなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
そのための鍵は、レイシアというインターフェースに正式に接続された唯一のユーザー、新堂アラトしか持たない。傷ついたからと後ろを向けば、荒廃が待つ
まぁアラトさんはそんなデカくて難しいことよく分かんなくて、ただただ人間と機械が共存できる未来を夢見、ロボットとの恋を願い続ける、チョロい人間のままだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
こんだけ事態が激化しても、ギャルゲ主人公のチョロさを貫けるか。アラトのヤバさをアラト自身が信じれるかが、問われる局面だ。
アキバの市街地で銃弾が飛び交う、スーパーホットな状況。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
なのに作画はへんにゃりで、逃げ込んだのは風俗店。シリアスでシビアな『本当の世界』に、ひっそり『今までのゆる~い日常だって、けして嘘じゃないんだぜ?』と釘刺してくる演出は、結構好きだ。
休憩許してくれるあたり、お店の人優しいな…
レイシアが隠してきた、銭と暴力渦巻く『本当の世界』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
飛び交うミサイル、レッドボックスを改良できるタガのぶっ壊れ方。それだけが真実だと思わせる圧力は、当然十分にある。
しかしそればっかが本当ではないと、アナログハックだろうが動いた心は俺のものだと、アラトは開き直れるか。
鋼鉄のボーイミーツガールは、新しい局面に入った…とも言えるし、ようやく匂わされていた爆弾に火が入った、とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
まぁレイシアさんがヤベーってのは、初手から丁寧に積んできたからね。それにしたって、狙いと行動のスケールがデカ過ぎてショックは受けるが。レイシアさんかっけー。
秋葉原と三鷹。両方の大騒ぎを、これまでと同じように舞台裏から見つめるエリカ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
ブラックモノリスの改善には、当然サトゥルヌスの超テクノロジーが関与している。闘争はレイシア級専用武器商人の手で加速し、セカイ系の閉じた領域から、法と経済が絡み合う普通の社会で拡大していく。
それが眠り姫の狙いなのだということは、自宅で行ったパーティーで宣言していたとおりで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
目覚めたら変質していた気持ちの悪いセカイを、真実の姿に変貌させる。むせ返るような違和感を個人の領域で収めるのではなく、世界自体を変質させることで改善していく闘争。それがエリカの闘いだ。
エリカにとって、人類存在がAIに侵食されている新世界への違和感は根本的なものだ。同時に、その苛立ちをテロルや排斥、機能しない枠組みの強制で解消しない異質な思考も兼ね備えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
未来人は気づいてないけど、とっくに世界は未来なんだから、それに相応しくドレスアップしましょう。
そのために企業体を握り込み、メディアで世界をアナログハックし、レイシア級の闘争をお膳立てする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
一切鉄火場に立つことなく、望みの世界デザインへ邁進するエリカは、レイシア並にヤバいアクターなのは間違いない。
そして同じくらい純粋で、切羽詰まってもいる。
彼女が患ったGID(この場合のGはGenderではなくGenerationだ。世代同一性障害)を治療するには、自分の認識を変えるのでも、過去へのノスタルジーに沈むでもなく、世界を革命するしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
妥協も撤退もありえない闘争へ、彼女を駆り立てたのは、世界を変えうるインターフェースと出会ったからだろう
サトゥルヌスという強力なパワーと出会って、彼女は夢を見た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
自分の感じている違和感を、個人から企業、世界全体へと拡大しハック可能な状況と能力。レイシア級オーナーで最も精密に、その価値をみぬいたい彼女は、出会った少女に『マリアージュ』という名前を付けた。
なかなかロマンティックだ。
ハローキティという『かたち』を貼り付けることで、ただのマグカップが別の意味、別の価値を持つように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
サトゥルヌスとの出会い、『マリアージュ』への変貌は、彼女が内面に抱く違和感をパッケージ化し、世界に拡大可能な出会いだった。
自分の違和感を、キャラクター化する手段を手に入れたのだ
アラトは未だ、そうやって世界に拡大したいイマージュを持っていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
レイシアの手を取って、『こういうキャラクターを作ろう』という未来像がない。
思い返すと、レイシアはずっとその提言を待っていたし、それを言語化もしていた。日常に埋め込まれてたサインに、主人公はまだ気付かない。
戦闘能力だけを与えられ、自分のどん詰まりをキャラクター化する手段がなかった紅霞ちゃんは、それを補ってくれるマスターとも出会えなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
そんな彼女が己をインクに、世界に刻んだ巨大な疑問符が、事態を一気に加速させた。その先に、スノウドロップの拒絶もある。
狡猾に振る舞うメトーデが、自己保存を超えた価値にたどり着けるかも含めて、レイシア給は望む未来をいかにキャラクター化し、世界に投影していくかを問われている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
競合相手として、隣人として、人類はそれに答えなければ未来がない。絶滅戦争か、奴隷めいた隷属か、対話と共存か。
ミサイルと札束が飛び交い、物語が一気に温度を上げる中で、そういう作品の地金が段々見えてくるエピソードだったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月26日
『何があっても信じろ』という約束に背中を向けたアラトが、一体どこにたどり着くか。とても楽しみですが、次週は総集編です。ホンマ大丈夫かな…楽しいだけに心配だ。
追記 流され系主人公をようやくやめるって意味でも、結構な分岐点よなココ
BEATLESS追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
アラトは今回ようやく、自意識無きスイッチポチポチAI任せマシーンである自分を叩きつけられてファックと叫んでたけども、あの世界全体が多かれ少なかれそういうもんで、アラトとレイシアの境遇は人間と機械の関係を色濃く煮出した、凄く一般的なものなのだろう。
チャップリンの”モダン・タイムス”じゃないが、脆弱な人間が厳しい自然環境をハックするべく生み出した機械は、常に人間をリアルな人生から遠ざけていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
経済と疎外。マルクス主義的危機意識に支えられたガール・ミーツ・ガールは、真相が明らかになって必然的な結論にたどり着いたわけだ。
骨の棍棒手に取ったときから、道具に予想を裏切られるのはいつものこと。しかし超高度AIは確実に、人間が後生大事に抱えてきた『人間』を破綻させる。あるいは既に破綻している。(この事実の気持ち悪さに耐えかね、冷たい革命を決意したのがエリカであろう)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
アラトくんの感じたショックは、失恋・失望という意味でもヒトと道具の関係という意味でも、AI世界の人間疎外という意味でも、ひどくありふれたもので、同時にあの瞬間にしか訪れない、彼だけの特別なものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
それにどんな答えを出すかが、彼を主人公に据えた物語の特殊性であり、面白さでもあろう