シュタインズ・ゲート ゼロを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
縮む距離、共有される秘密、差し出される手。同じ喪失を抱えたモノの間に生まれたシンパシーは、銃弾によって破壊される。
過去を諦め今を生きる決断にたどり着いた人々への、手向けの花。真相も未来も見えないままの、半端なノーマルエンド。しかし…
そんな感じの、そろそろクール終りが見えるシュタゲゼロである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
敵の姿も、より良い未来を掴み取る決意も、現段階では見えてこない。しかしそこに辿り着けそうな気配と、たどり着くための困難な旅路を匂わせ、キャラクター単位の隔意と真心は丁寧に積み重ね、一つの答えをちゃんと出す。
まだまだ続くのに、不思議な充実感もある。見事な味付けで真ん中の折返しを曲がっていて、強く心に残った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
この満足感はやっぱ、岡部くんと真帆たんの心が離れたところから近づく運動が、丁寧に書かれていること、それがある種のゴールに辿り着いた成果だと思う。やっぱ感情が大事なのよドラマは。
岡部くんと真帆たんがお互い伏せ札を隠し、しかし"牧瀬紅莉栖の不在"という一点で強く繋がっていることを、これまでの物語は丁寧に描いてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
岡部くんがタイムマシンの話を、真帆が自分のコンプレックスを告白する今回は、そういう隠蔽が剥がれ、お互いが真実を共有するエピソードである。
本心を見せたからと言って、何かが進展するわけではない。陰謀の真実が暴かれるわけでもないし、世界線を超えて運命が書き換わるわけでもない。手に入るのは、小さな小さな自己満足だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
しかしそれは、小さいからこそ非常に大事で。相手を思いやり、優しく日々を過ごすことは、シュタゲでは重要だ。
前作序盤でみっしり描かれる、ラボの日常。邪悪な陰謀と過酷な運命が激しくドラマを回す前に、そこを土台と定めたのは、そこに強い価値を認めるからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
顔の見える個人と笑い合い、受けた傷を癒せる。大きな陰謀と超常の理を描くからこそ、シュタゲはダルい日常を大事にする。
今回岡部くんが、ラッキースケベで赤面したり、泣いてる真帆たんに優しく出来たりしたのは、そういう場所にようやくオカリンが帰還しつつある事実の描写だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
紅莉栖が死んでぶっ壊れた心が、他ならぬ真帆含む他者によってケアされたからこそ、優しい岡部くんがちょっと戻ってきた。
真実ラボの日常を取り戻すためには、第三次世界大戦を生き延び、運命を書き換える未来を掴み取らなければいけない。紅莉栖もまゆりも死なない世界線へたどり着かなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
それはとても難しい。ゼロの範囲内だとたどり着けないエンディングである。
しかし最善にたどり着けないとしても、小さなケアを繰り返しながらベターを掴むことは出来るはずだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
そういう小さな癒やしが積み重なって、ボロボロにぶっ壊れた岡部くんと真帆は、少しだけ前向きに生き延びることが出来る。そんな相互作用が、ゼロの核にはあるのだろう。
真帆たんのヒロイン力が天井知らずで、すごい勢いで尊さを積み重ねてタワー作っておった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
死者への弔意という綺麗な感情から始まって、その奥にあるエゴまみれのコンプレックスを見つめて…って所まできたから、最終的にはさらにその奥にあるアガペにたどり着くんだろうなぁ…。
人間色々ある。愛しているからこそ嫉妬し、認めればこそ乗り越えたい。そういう複雑さを全部まとめて人間なのであり、エゴい告白を受け止める岡部くんは、比屋定真帆という人間全体を受け止めに行ったのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
これはつまり、真帆も自分の全体を預けるつもりになった、ということだ。
ここら辺の関係性変化は横で大きく切り取る構図の変化に、強く現れている。物理距離は常に心理距離であり、対話やアクションを通じて変化していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
冒頭、ダルの秘密基地ではまだお互い伏せ札がある。心の距離は遠く、間に障壁がある。
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"牧瀬紅莉栖の不在"という、二人を強く結びつけつつも、だからこそのっぴきならない問題をダルは共有していない。なので、三人でいる時は『間に立っ』たりもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
ダルを仲介者にして、二人は遺品と過去を巡って対立し、対話していく。
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アキバ路地裏で展開するスーパーアクションを経て、対立のコアであったPCは破壊される。それでも、真帆の手には砕けた破片が残り、赤い血を流させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
岡部くんも真帆も、赤い人間の証明を溢れさせる。それを見落とせないことが、二人をつないでいる。襲撃者が仮面で"顔"を隠しているのとは好対照だ。
タイムマシンの秘密を公開し、『過去を改変してはならない』という立場を明らかにした岡部くんは、真帆へと歩み寄っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
冷静な正しさが窮地を救うことにもなるのだが、決定的なのは真帆の傷を見過ごせない優しさ、手を伸ばしてくれる思いやりだ
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ここから寝室での語り合い(真帆サイドからの公開と歩み寄り)を経て、二人の距離は更に縮む。秘めていたものが消え去り、心が繋がった証明として、境界線を超えて二人は手を伸ばす。グッドエンドである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
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しかし対外的な状況は何も変わらない。むしろ悪意は、仮面を付けて己を偽り続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
空港でのレスキネン教授が、今回生まれたオカマホ連合から遠い場所に配置されているのは非常に示唆的だ。ぜってぇなんかあるよ…。
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"傷ついた右手"を巡る意味深な描写といい、顔の見えない脅威といい、紅莉栖の遺産を巡る謀略は、元気にとぐろを巻いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
岡部くんと真帆の個人的感情がいいところに落ち着いても、巨大な世界には関係がない。こういう冷たさもまた、シュタゲを貫通する大きなルールであろう。
それに対抗するためには、同じ冷淡さではなく、傷つき血を流す人間の心が武器となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
経済的にも心理的にもオカリンを助ける、フェイリスとの近い間合い。回想の中で己のエゴと向き合う、真帆の孤独。今回は特に、心理主義レイアウトが冴える。
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オカリンに愛されればこそ、オカリンから遠ざけられるまゆりの寂しさとか、"副業"でカッコいいトコロ見せるダルとか。メイン緊張感あって濃厚ながら、横もよく見たエピソードだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
かがりがCMに見入っていた描写、どういう伏線なんだろうか…。
こうして"まだ何も終わっていない"ことを、セリフとは裏腹に絵で見せることで、シリーズ全体がまだ折り返したばかりだということが、肌で判ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
作品の進捗を視聴者と共有し、物語の時計と見る側の時計をアジャストする丁寧な努力は、物語へのシンクロを高めてくれるわけだ。
いいサスペンスは疑問と答えが明瞭で、作品が見せたいものと視聴者が受け取るものの間にズレが少ない。(サスペンスに限らないかも知れないが)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
キャラの血管を流れる感情を熱く重たく描きつつ、こういう物語の輪郭も明瞭に描いているのは、非常にクレバーな進行だ。
最後のモノローグから判るように、岡部くん自身は"終わった"と感じている。真帆との感情共有も、陰謀への対応も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
しかし神の視座を持つ視聴者は"終わっていない"ことを知っている。今後はそこのギャップを埋めて、"終わってない"ことを岡部くんが思い知る展開が来るのだろう…まーたドン曇りだよ。
しかし見せかけのものをぶっ壊し、その奥にあるしんじつを共有することで人間の感情が、物語全体がより善いポジションに落ち着くのは、今回の真帆とオカリンを見ていても判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
離れて、近づいて、暴いて、挫折して、癒やして、繋がる。行ったり来たりの繰り返し、上がり下がりの波こそがドラマなのだ
そういう意味で、満足感と不安感が同居する今回の"一旦の終わり"は、非常に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
ここまで岡部くんがゲロはいて苦しんできた道、真帆の悩ましさを嘘にはせず、待ち構える困難も暗示し。折返しというタイミングで、過去と未来と現在を見据えた、力強いエピソードが来た。
過去の描写を嘘にしない、という意味では、シュタゲを超えてきたゼロオカリンと、ゼロからの新参である真帆の対比も面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
沢山の犠牲の果てにβを選んだオカリンは、"過去を改変してはならない"という揺るがない意志がある。軽い気持ちで弄ったら地獄絵図、学ばないほうがおかしい。
それは"正解"なんだが、答えだけあってもテーマは律動しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
『本当に、それをしちゃいけないの?』『力は使ってこそじゃないの?』という疑問で揺さぶられることで、『ダメだ!』という真実(を背負う主人公)は強くなる。
なので、過去を持たない真帆が、かつてのオカリンの立場に立つわけだ。
ここでもう一回オカリンが、『やっぱ過去に戻って運命変えたほうが良くねぇかなぁ…』とか悩み始めたらマジダイナシだし、でもそのジレンマは大事でもあって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
魅力的な新キャラに、主役が超えたポイントを担当してもらうことで、新鮮な味わいでテーマを語り直す。巧妙な物語操作である。
紅莉栖の遺品を血が出るほど握りしめた真帆は、やっぱり紅莉栖を諦めきれない。過去を変える傲慢から距離をとっても、溢れる愛おしさと痛ましさは捨てられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
そのジレンマを解決していくのが、今後の真帆の物語かな。アマデウスはサリエリを、どう思っていたかを知る物語。
その秘密は銃弾でぶっ壊されちゃったパンドラの箱の中にあり、壊れたはずの箱をもう一度手にする奇跡が、シュタインズ・ゲート能力にはあるっていうのも、SF設定をドラマに活かした巧い作りだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
世界線が変われば、あの時出来なかった選択肢が出てくる。
『PCの中身を見る Y/N?』って感じだ。
しかしまぁそれは先の話で、今はたどり着いた偽りの平穏…が唐突な世界線移動でぶっ壊されるのを、震えつつ待ちたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
ロシアは中鉢カードを握ってるんで、アメリカより一歩先にいるんだな。だからPCぶっ壊す行動も取れると。陰謀組織の行動理念も、ちょっとずつオープンになってきてるなぁ。
不穏な凶兆が随所に埋め込まれてはいるが、それを乗り越えるための最強の武器…血の通った人間の優しさと強さも丁寧に描写される回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月21日
みっちり描写されたオカマホの関係性が、今後の地獄にどう映えるのか。楽しみでもあり、恐ろしくもある。どっちにしても、次回がとっても楽しみです。