Free!-Dive to the Future-を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
過去と未来に引き裂かれながら、青年たちは水の夢を見る。あの時手放してしまった約束を追いかけ、遥は郁弥を探し求める。
思い起こされる黄金の夏、過ぎ去った過去の残滓。すれ違う心と、遠ざけられる視線の果てに、一体何が名残るというのか。
そんな感じの、男と男の激重感情スケッチである。明暗と視線を強調しつつ、遥と郁也が何に囚われ、どこに向かっているかをじっくり描くエピソードだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
横幅広くシリーズ全体を書いた第一話に対し、二人の主軸にクローズアップした仕上がりだったとも言える。フィルムの質感が、しっとりと重たい。
ところどころ寄り道もあるが、今回のお話は遥と郁弥のお話である。二人のこじれた感情がどこに行くかが、三期全体の羅針盤となるわけで、主題にグイッと切り込むエピソードと言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
まぁ遥には一期・二期の物語的蓄積(と成長)があるので、真実拗らせているのは郁弥側になるのだが。
郁弥はピカピカの信頼を裏切られた過去に、復讐するかのように個人メドレーを泳ぐ。別々の個性が繋がり、より良い結果を出すリレーではなく、自分一人で全てを背負える種目。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
ある程度中学時代の別れに決着を付け、自分の専門で戦ってる他メンに比べると、郁弥の傷は深い。
ハイスピにおけるブラザー・コンプレックスの書き方を見ても、郁弥は気になっているもの、惹かれるものにこそ距離を取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
関係ない、興味ない、気にしてないと大声で吠えることで、自分は傷ついていないのだと暗示をかけるフシがある。わざわざ個人メドレーを泳いでいるのは、傷がどれだけ深いか。
そして中学時代がどれだけ楽しかったかを、如実に表している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
美しいものだからこそ、失ってしまった後は呪いになる。これは『フリーしか泳がない』と言い続けた遥も、小学校時代の呪いを解けずに感情を拗らせ、競泳の競技性を踏みつけにすることでしか開放されなかった凛と、同じ状況だ。
輝く時代が呪いに変わる。そこに踏み込み、傷つき傷つけながら黄金期を取り戻す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
凛と遥をそれぞれ主役に描かれた、呪詛と開放の青春。三期、そういうくっそめんどくさい浅瀬チャパチャパを担当するのは、郁弥だということだ。まぁその湿り気こそがFree! とも言えるか。
監督が変わった三期、他のあらゆるものを切り捨ててでも個人と個人の関係を煮詰めていく猛烈な筆は、そこまで唸ってはいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
競技制、公平性、他者性。モブの書き方などからも、広くて清潔な場所への目配せが行き届いているのはよく判る。だから郁弥と遥の青春闘争は、昔みたいな書き方にはならん…
と良いなぁ、とは思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
競技性に選ばれなかった真琴や宗介を描いてしまっている以上、大学でも競技の前線で泳げる遥や郁弥、旭には責務がある。もう、閉じた水槽で自分のためだけに泳げる子供時代は、少なくとも遥は通り過ぎてしまったのだ。学んでいるものが、あるはずだ。
そこら辺の変化を、遥が自分から『ごめん』と言えたことで感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
が、郁弥は中学時代の輝きに囚われ、時間が止まっている。誰にも心を開かず、リレーは泳がない。存在しなかった”二年目の夏”を一人で追って、メドレーに没頭する。
お前らが捨て去ったモノたちを燃やして、俺は誰よりも早く泳ぐ。
そういう呪詛が郁也を孤独にし、停滞させている現状。そこに微笑み鬼畜眼鏡・日和が隣り合っている…ように見えて、”二年目の夏”を共有していない日和が遠ざけられている事実。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
今回のお話は、そういうモノを書いていく。郁也と日和のすれ違いには、凛と宗介の関係をすこし見てしまうな。
今回のエピソードはとにかく”眼”のクローズアップが多く、誰かが誰かに運命的に出会ってしまう瞬間の感情を、劇的に切り取ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
金色の向日葵が周囲を覆う、青春の檻。そこで郁弥と遥の視線は交錯し、絡み合ってまた逃される。
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俺はお前に魅せられてて、尊敬していて、だから負けたくないんだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
そんな本音を無防備に預けられないプライドが、錯綜する視線に交じる。あるいは、己の蠱惑に気づいていない鈍感か。自覚のないカリスマは、時に周囲を傷つける。遥のそういう姿を、このアニメは何度も書いてきた。
郁也の視線は黄金の季節の中で、幾度も遥に囚われる。綺麗に見えたから真似をして、どうにか憧れとの距離を縮めていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
約束された破滅を知らず、無邪気に交わされる約束。回想される中学時代に、陰りは一切ない。夜すらも明るい時代。
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プールサイド最後のカットは、ロマンスのムードと動きを窃盗してくる見事な見せ場だ。不意打ちのキスそのものの速度で、郁也は遥に近づき、感情を乗せてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
しかしそれは一方通行ではなく、遥もまた、郁也に引き寄せられている。
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才能にか、人格にか、あるいは魂にか。少年たちはどうしようもなく惹かれ合い、永遠を約束する。しかし美しいものは必ず壊れる宿命にあって、”二年目の夏”はけしてやってこない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
綺麗なものが壊れた後の、残骸の世界。遥がうまく整理をして、一期二期と駆け抜けた場所に、郁也はまだ囚われている。
この不公平な一方通行こそが、郁也を闇に捉えているものであり、解消するべき課題なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
遥も郁也を強く思うが、しかし郁也の重たさ、薄暗さとは釣り合わない。己のあり方全てを”二年目の夏”に捧げる停滞感と、一応大人になれた天才の不均衡。
なので、同じ黄金の夕日の中で、過去と現在は違う顔を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
叶えられなかった約束そのままに、木の葉が散ったプール。金色の世界の中で、少年たちは約束をする。その感情の熱量が、お互いの瞳を通じわせていく。
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その時確かに通じ合っていたものは、時の流れ、すれ違いと裏切りによって壊れてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
遥の謝罪は郁也に届かず、郁也は本心を預けない。自分が傷つかないために積み上げた鎧を脱げず、全てを拒絶していく。
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中学時代の爽やかな黄金色に対し、現代の夕日は血の色が混じって、少し不穏で重い。その色合いの違いが、郁也と遥の距離感であり、あの時から遠く隔たってしまった現状そのままだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
今回のお話は、そういう色彩の違いを見せるエピソードだと言える。
とにかく、郁也周辺だけが特権的に薄暗い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
ロッカールーム(郁也を閉じ込める子宮)でも、シャワー室でも、郁也は心から漏れ出た暗黒を背負ってドン曇りである。
遥周辺の描写がそこまで暗くないのを見ると、やっぱ面倒くささは郁也が背負うんだろう
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そんな郁也の今カレ、日和は薄暗い心に分け入れている…ように見えて、一線を引かれている描写が多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
日和自身が認識しているように、郁也の根源にある後悔と痛みは、『岩鳶中学』という特権を持ってないと踏み込めない。一期における、怜とリレー組の断絶を思い出す。メガネはそういう宿命か…。
ファミレスでもシャワー室でも、日和と郁也の間には壁がある。傷ついた心を抱きしめるロッカールームには、そもそも入っていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
郁也が遥に向けている一方通行を、実は郁也自身も日和から受けている。視線の不均衡の犠牲であり、再生産している。
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ここら辺の不公平感をちゃんと精算するのか、はたまたイヤなメガネの当て馬で終わるのか。日和の書き方、使い方はかなり大事な気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
郁也はあの時俺の魂を奪ったツケを払えと、ふてくされた顔で遥に迫るけども、その郁也自身が日和の視線を奪い弾いていることに、無自覚なんだよな。
そういう視線の数珠つなぎ、衆目を否応なく集めてしまう才能、重たい感情故に周辺視野が狭くなる感じを、丁寧に追うエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
”眼”の描写が多いのは、そこから放射される強い感情だけでなく、それが捉える視野の狭さ(あるいは広さ)を描くためなのだろう。さー、感情が煮込まれてきたゾー。
ココらへんに風穴開ける仕事を、超絶怪しい黒服おじさんが担当するのか。マジ唐突に言いたいことだけ言って去ってたけども、どういうジョーカーなんだろうなあのオジサン…東京には笹部コーチも天ちゃん先生もいないんで、大人担当ってことだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
黒服オジサンはまだ、四人組の個人的なサークルには入り込んでいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
鮮明なオレンジの座席が、サークルと個人、あるいはサークルとサークルの境界線として機能する様子は、水泳部との衝突からも見える。
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今回オレンジとコンクリートに塗り分けられた境界線を踏み越えて、キャラクターは交流し変化していくのか。はたまた、硬い殻に閉じこもって進んでいくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
人数も舞台も多様な三期は、群像劇としての色が濃い。人数を活かし、混じり合う楽しさを巧く魅せてくれると良いな。
ちょろっと描写された新生岩鳶高校水泳部は、明朗快活、爽やかな青春ど真ん中であった。主役がきらびやかな過去と重苦しい現代のギャップで藻掻いているのとは好対照。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
まぁ話のエンジンが感情のネトネトにある以上、爽やかなのは”薄い”ってことだが
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白けた光に照らされ、特に問題なく楽しそうな新生岩鳶。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
ここで高校生組までヘヴィな感情地獄に投げ込むと、息継ぎポイントが無くなるという読みか。
重たければ偉いってわけでもないので、軽いなりの良さを生かして、存在感を出して欲しいところだ。クソデカ感情生物ども、みんな見返してやれ!
とはいうものの、やはり渦を巻く感情こそがドラマの種火であるというのは、しつこく描かれる明暗と視線から強く感じ取れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
男と男が出会い、瞳が揺らぐ。視線が奪われる。お前となら金色の世界、星星の海が見れたのに、綺麗だからこそ思い出は呪いにもなる。
そういう愛憎半ばする風景の中で、遥はそれなりに自由で、しかし充分には強くない。郁也に思いを届けるには、なにかが足りないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
オジサンの『まだ、フリーしか泳がないのか?』という詰問。
郁也が選んだ、個人メドレーという競技。
ココらへんに、三期の遥が果たすべき物語が隠れている気がする
そういう予感を巧くばらまき、物語のメインシャフトがどういう顔をしているか、丁寧に彫り込む第二話でした。コンテ演出の新鋭・澤真平の筆も冴え、良い感じの感情重力だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
スタートラインはしっかり描いて、さてどう展開させるか。次回はもう一つの舞台、シドニーのお話です。楽しみですね。
しかし『フリーしか泳がない』を決めゼリフ/キャラ記号にしてきた遥に、それを克服させる物語を用意するってのは、キャラを記号のまま使い潰せない京アニの性癖出たなぁ、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
オタクっぽい停滞感と心中できない強さであり弱さ、みたいな。”物語”しちゃうのよね、どうやっても(個人の感想です)
永遠の停滞の中で、己と己に親しい他者以外全てを蔑しつつ輪舞し続ける。その快楽と猛悪が内海版Freeの唯一性だったとしたら、やっぱ三期は別の話になりそう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月19日
個人的にはそっちのほうが、見てて楽だけどね。ありゃ俺には、キツい毒すぎた。魅力的な毒ではあったが。