イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

"輪廻する99回公演"というドミニオン -BBT的視点から見たレヴュースタァライト-

唐突にスタァライトとBBTの話。
第7話は、これまで平穏無事な青春の花道と思われていた学園が、大場ななのエゴを拡大したループ世界だと判明する衝撃の展開だった。
ななは『みんなを守りたい』という優しい願いによって、『前に進みたい』という他人の想いを踏みにじることになる。

このように、良かれと思ってしていたことが実は身勝手なエゴであり、醜い欲望が実は綺麗な祈りによって作られているという裏腹な構造を、BBTはとてもゲーム化しやすい。
エゴと絆、罪と愛がシステムに深く食い込んでいるため、そういう相転移を演出するのが得意なのだ。

BBTのPC(”半魔”)は、怪物的な能力を持っているとか、特殊な血筋であることで定義されない。
世界を歪めてしまうほど強烈なエゴと、それでも人間で居続けようとする誰かへの絆の間で悩み続ける存在。
それがBBTのPCであり、主題である。
あまりに大場なな的だ。

もちろん生粋の怪物も世界にはいるし、猛烈なエゴを持たないただの犠牲者もいる。
しかし彼らはPCたり得ない。
自閉した自我と公正な世界。その両方に不安定にアクセスし、それ故強力な力を持ちうるドラマティックな存在を、BBTは主役に据えている。

これがゲームシステムによってしっかり補強されていることが、ドラマ・ブースターとしてのBBTの強みでもある。
自分を支える猛烈なエゴ(ななちゃんなら"みんなを守りたい")は"罪"という力に変わり、ダメージが増えたり達成地が伸びたり、1回使い切りの強力なパワーのコストになったりする。

力を使えば使うほど人間性は下がり、半魔は怪物の表情を顕にしていく。
他人への"絆"は"エゴ"へと変わり、半魔が人間でいられる手がかりは減っていく。
第7話は物語の進行に伴い、強力な半魔である大場ななが変異段階を上げた結果、と言えるかもしれない。
純那ちゃんの絆がエゴに!

そんな怪物を人間の領域に留めるのが、他人への強い思いである"絆"、そこから生まれる"愛"である。
具体的にはゲーム終了時に、"愛"を用いることでエゴとなってしまった絆を元に戻し、人間性の回復量を上げることが出来る。
愛と罪、エゴと絆は常に循環し、物語は波乱を含みつつ進む。

BBTで好きなのは、この"愛"による救済をNPCにも行えることだ。
道を見失い、エゴの罠に落ちてしまった人にも、自分の"愛"を分け与えることが(シナリオで想定されていれば)出来る。
救われてほしい敵役に、システム的な救済をスムーズに用意できるのだ。
無論、救いようのない極悪人をぶっ倒せもする。

例えばまひるちゃんは、華恋への絆を"そのままでいてほしい"というエゴに変えた。
レビューの中で華恋は"愛"を使用して、そのエゴを絆に戻したわけだ。
結果、まひるちゃんは自分の過去や家族(おそらく初期絆)を肯定的に取り戻し、ひかりちゃんとの関係も前向きに変わる。

スタァライトで描かれているような関係性と感情の危うさ、ポジティブな変化への可能性を、強い当事者性とスマートなゲーム的処理を伴い、楽しく遊べる。
BBTの視座からスタァライトを見ると、その強みが際立つような気がする。

そして強力なエゴは、他人を巻き込んで"王国(ドミニオン)"となる。 特定の願いが全てを支配する"ドミニオン"、支配者である"ドミネーター"の概念は、大場ななの庭と化した99回公演を見ることで、とても理解しやすい。
"みんなを守りたい""眩しくて遠い"
そんな大場ななのエゴが、拡大された理想郷

そこでは通常の物理法則ではなく、延々と繰り返す演劇原則が世界を支配している。
エゴを加速させ世界を歪めるに至ったドミネーターは、自分のエゴを他人に押し付けれるようになる。
レヴュー空間も、"輝きが見たい"というキリンのエゴが具象化した場所なのかもしれない。最後に必ず戦闘する作りは偉い

ドミネーターの力は強力だが、それは絆とエゴの間で揺らぐ半魔の挑戦を、常に受け付けている。
ひかりちゃんがイレギュラーとして介入することで、ドミニオン『永遠の99回公演』には風穴が空き、世界律にはほころびが生じた。
PCの介入で、シナリオは変化していくわけだ。

今後大場ななの世界律、強力なエゴに誰がどうアプローチしていくかは、まだまだ見えない。
大場なな個人に一番距離が近いのは、ルームメイトの純那ちゃんだ。
おそらく、シナリオで設定された絆が大場なななのだろう。
スタァライトキャンペーン全体の主役は華恋だが、ななシナリオは純那がPC1か。

個人的感情、社会的繋がりだけでなく、キャラクターの根っこ(BBT的に言えばエゴ)がななと繋がっているのは、とても良いキャラ造形だ。
永遠に繰り返す箱庭の中では、"自分の星をつかみたい"という純那のエゴは満たされない。
ななの優しさの檻では、彼女は未熟な凡人のままだからだ。

ドミニオンをぶち壊し、ドミネーターの悲しいエゴをすくい上げる。
愛を使って絆へと変える。
そのことが、半魔の根幹に関わるエゴと密接に関わっているという意味でも、大場ななの物語は優れたBBTだ。
このシナリオが今後どう展開していくか、とても楽しみである。BBTしてぇな…。

追記 TRPG的ヒロイン造形(に伴うストーリー体験)と、一般的フィクションのヒロイン造形は大きな差異をはらむ時が多々ある。

TRPGとしてみると、香子はアクが強すぎ身勝手すぎで、ヒロインとしては扱いが難しいキャラである。
あそこまでKUSO-AMAだと『なんで俺がこの子助けにゃならんの?』という疑問が、PCに浮かびかねない。
双葉は与えられたシナリオ絆に、本気で前のめりになる良いPLだなぁ…。

事故回避案としては、『クソアマでないと世界が滅ぶくらいの理由をつける』『クソアマだけど他人に優しい描写を太く入れる』『クソアマ要素が気にならないくらい超萌させる』などがある。
なんだかんだ、他人に優しいキャラのほうが、助けるべきNPCとしての安定度は上がるなぁ…。

追記 FEARゲーマーはアニメ見る時、大体こういう妄想仕上げてみてるから。(個人の感想、体験です)

 キャンペーン全体の枠割り振りはこんな感じか
PC1 愛城華恋 絆:神楽ひかり(約束)
遠い日に交わした約束に導かれ、キミはスタァを目指している。いつの間にか見失っていた光は、あの約束の少女が謎の決闘に巻き込まれ、キミが舞台に上がったとき再生産された。さぁ、幕が上がる。

PC2 星見純那 絆:大場なな(ルームメイト)
キミは遠いスタァを目指すべく、日々努力を続ける学生だ。どれだけ天が高くても、夢が遠いとしても、諦めることは燃え盛るエゴが許さない。 そんなキミの挑戦を、ルームメイトである大場ななも応援してくれている。そう、思っていた。

PC3 天堂真矢 絆:西條クロディーヌ(ライバル)
キミは99期生主席、天に煌く一つ星だ。トップの責務、下からの突き上げ。輝き続けるのは楽じゃないが、そこにこそキミのエゴ、キミの絆がある。 幾度破れても瞳をそらさず、キミを見つめ続けるあの子の瞳。それがキミの、もうひとつの星だ。

PC4 B組の裏方 絆:100回公演(憧憬)
キミは他の生徒と違い、表舞台には立たない。脚本、大道具、演出にマネージメント。舞台裏からレヴゥーを支えるキミにも、願いと望み、エゴと絆がある。 様々な役者の燃える思いを、より良い舞台にまとめ上げる。それがキミのスタイルだ。

PC1は物語全体の牽引役、PC2は別角度からの切り込みとドミネーター担当枠、PC3は天井からゲームを引っ張る強キャラPC、PC4は全体の調整役を想定。
真矢様は自分のリソース大事にしつつ、他PCへのハッパがけ、敬意の魅せ方、エゴと絆の表現が抜群に強く、おそらく一番巧い。

序盤のレヴューはPC同士の交流シーンの演出、第5話が華恋主役回、第6話がPC4を双葉に入れ替えての香子回、第7話が長い長いマスターシーン、といった感じか。
華恋がばななへの絆をどういうタイミング、どういう形で取るかが、一つの分水嶺になりそう。
あとシナリオヒロイン・ひかりシナリオの仕上がり