やがて君になる を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
アジサイ。英名はhydrangea(ギリシャ語で”水の器”から)。頻繁に色を変えることから別名”七変化”
花言葉は『移り気、変節』小さい花が寄り集まる様子から『団欒』。色によって意味が変わり、青は『冷淡』赤は『元気な女性』白は『寛容』
有毒。非致死性なれど無視できず。
そんな感じ(どんな感じだ?)の、佐伯沙也加三部作最終回であり、宇宙の地獄を照らす侑&燈子回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
様々に色合いを変える少女たちの関係性を、紫陽花、リレーのバトン、信号機に反射させて見せる演出の切れ味が、非常に鋭かった。コンテ磐田義隆の才気か。
冒頭、前回の佐伯サーガの始末をつけるように、元クソレズ先輩との対峙が挟まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
『普通(ノーマル)ってどういうことだオイ?』とか『人の有り様を疫病めいた言い回しで語るな』とか、いろいろ言いたいことがあるけども、佐伯先輩は彼女に勝つ。完勝である。
『殴っちゃおうかな…』という怒りを込め握られた手は、『コイツに感情ぶつけても損だな…』というクレバーな諦めによって開放され、”彼女”の手を繋ぐ方向に使用される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
憎むよりも愛することで、過去に勝つ。クレバーだ。
©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会
『殴っちゃおうかな…』という怒りを込め握られた手は、『コイツに感情ぶつけても損だな…』というクレバーな諦めによって開放され、”彼女”の手を繋ぐ方向に使用される。
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憎むよりも愛することで、過去に勝つ。クレバーだ。
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しかし佐伯先輩は燈子の彼女でも何でもなく、接触に心躍らせるのは先輩だけである。かつての恋であり敵となった人を置き去りにして、先輩の愛は残酷に空回る。このシケ面と赤面の対比なーマジ。
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二人は晴れて霞む6月を、世界の果てを目指すように歩いていく。青く麗しい青春の光景…のはずなんだが、そこにはどうにも死が滲む。
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行き着くところまで行かないと、どこにも転がっていけない極限を隠したまま、少女たちの青春は踊る。
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冥界めいた景色は先輩だけの所有物ではなく、死せる姉に引き寄せられる女に恋した同志として、侑も引っ張る。晴れと雨、空転と過剰。それぞれ色合いは異なりながらも、似た匂いのする風景に、同じ女を好きになった女たちは共有する。
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お互い周囲が良く見え、何をするべきか敏感に感じ取っている者同士、二人はよく似ている。
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燈子を挟んでギクシャクしていた、バトンを明け渡せなかった二人が、距離を詰めてリレーできるようになるまでが、今回の軸の一つだ。
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二人は同じ釜の飯を食って、仮面で本音を鎧いつつお互い歩み寄り、なんとは無しに心を共有する。
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燈子が完璧の仮面の奥に、破綻を抱え込んでいること。そんな女を愛していること。お互い、好きとは言えないこと。
ポテトを侑から勧めるシーンの追加で、歩み寄りはより鮮明になっている。
真っ白な激詰め空間でのハードな接触を受けても、侑は佐伯先輩を嫌いにならない。燈子が引き寄せられた眼の良さと優しさで、その冷淡の奥にある体温を見て取って、静かに接触する。
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お互い仮面を外した瞬間の、あまりにグロテスクな照明
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それは今回切り取られる数多の変化の一つであり、二人がねっとりと重たい内乱の空、侑と燈子が既に共有している濃厚な感情へ、足を踏み入れたことを証明する。
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恋人たちと甘やかに名付けるには、あまりに生物的な逢魔が時の色彩。むき出しの感情。https://t.co/xIUrjLnL65
燈子と侑がそれを共有した時、二人は踏切の上…境界線上にいた。佐伯先輩と侑も、信号の前足を止めて、自分たちがどこにいるかを見据える。
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お互い同じ女が好きなのだと確信し、しかし片方は特別で、片方は特別ではないと知らないまま。
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二人は歩調を同じくして、線を超える。信号は赤から青、シンプルに切り替わる。危険から安全。ここで思いを共有し、無理な背伸び無しで付き合えると確認したから、二人は結構仲良しになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
賢い良い子達の交流は、緊張をはらみつつも善良で、ホッと息がつける。
悪い子相手ではこうは行かない。好きになるな、嫌いにもなるな、好きを拒絶するな。ダブルバインドでバッチバチに縛って、好意を簒奪する天才相手に、侑は背伸びをする。信号は赤、青、赤、青…”七変化”だ。
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佐伯先輩が魂の奥底で侑と共有する、根源的な善性。あるいは成熟。
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体重を預けられた侑は、燈子の体温が高いという。それは子供の特徴だ。冷たい雨が降りしきる中、侑は伸ばした手を繋げないまま、一筋だけ光明を見る。
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あんまりに残酷、無垢、幼稚に過ぎて最悪中の最悪であるが、これが七海燈子という人間であり、それを侑も佐伯先輩も好きになっちゃったんだから、まぁしょうがねぇ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
青と赤、冷淡と可愛げの間を行ったり来たりする幼い子供を、成熟してしまった女たちは見捨てられない。子供の情熱に、冷たく焦がれる
誰かを傷つけても、それに気づけない。誰かを傷つけていると知っても、歩みを止められない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
体温の高い燈子(”燈”と入るその名前自体が、既に周囲を焼く火を宿している)は、背伸びをした子供であり、残酷な暴君でもある。紫陽花は、有毒な花なのだ。
紫陽花は色合いを変えながら、様々な場面で顔を出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
燈子と佐伯先輩、佐伯先輩と侑、侑と燈子。シーンプレイヤーが移り変わるごとに、紫陽花の色彩、つまりは花言葉に象徴されるものが変遷していることには、注目していいだろう。
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冷淡さを表す”青”が、燈子の登場シーンにしか顔を見せないこと。傘を指しているつもりでずぶ濡れな、スキの多い子供のような燈子を、タオルのヴェールで守り、花嫁のように抱擁しているのが侑であること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
美麗な残酷が、花の香のように漂ってくる。足並みの揃わない、アンバランスな踊り。
一方的に感情と愛情を収奪しつつ、それこそが被害者の望みであるような共犯。都合の良さから抜け出せない、今の関係を維持したい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
それは沙弥香も侑も同じはずなのに、侑は常に、変化の可能性に心を踊らせている。遠い恋の星が、黒髪の女の姿で近づいてきた時のように、君になる日を夢見てる。
佐伯先輩がどうしても踏み出せないその一線を、侑がどう踏み越えていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
”有る人”という名前からして、彼女が高徳と可能性、主人公として物語をポジティブな方向に帰る特権を背負うのは必然だ。重要なのはその色彩、紫陽花のように変化する微細な気持ちの活写である。そこにこそ、物語が有る。
百の色彩、百の可能性、百の残酷を秘めた紫陽花は、そもそもにおいて沙弥香の花ではないのだ。それは二人の花、恋の花、青春と生と死の花である。
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美しき毒花、水のような感情を閉じ込めた美麗。ホントヒデェなこのアニメ(褒め言葉)
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生活音だけが響く、灰色の世界。それが色づき、音を立て始めるのが燈子の登場なのは、あまりにも明瞭なリフレインだ。
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世界に色を与えてくれる星。侑にとっての恋。それはいつでも、燈子の顔をしている。赤いアンタレスのような、致死の毒
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直上からのバロックなアングルで、『二人きり』と『たくさん』を傘に託して魅せる構図は、まぁ天才のそれである。
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世界は色に満ちている。でも、それは侑の色彩ではない。誰かの恋、誰かの物語でしかない…なかったのだ。でも侑は、恋と七海燈子、致命の毒に二つも出会ってしまった。
他人の恋、『ノーマル』な男女の恋を、侑は応援し、また応援される。文字通り背中を押し、ラブラブ相合い傘に放り込む。そこに残酷な顎が潜んでいることを、まだ知らない。
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お姉ちゃんカップルがこのアニメにいるの、バランス良いなと思う
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家族として妹を思う姉。身近にある、侑には届かない恋の形。どこか他人事の冷たさで、でも親密な体温を載せて、妹のことを語る姉。
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生徒会…燈子に差し掛かった時、信号は青、黄色、赤へと変化する。紫陽花は有毒の花である。別名、七変化
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侑が燈子に特別を伝えた時、燈子の瞳はグロテスクに冷える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
好きはいらない。暴力的だから。嫌いはいらない。寂しすぎるから。
でも、アナタのことは好きなの。その甘え。幼子だけが持つ、純粋な暴力の光。
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『とーこちゃんアンタねぇ…侑ちゃんから取ってばっかりいるんだから、少しはワガママ聞いて上げなさい!』って感じだけども、姉が死んだときに成長を止めてしまった花は、ただ奪い、吸い上げることしか知らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
それでも与えられていると思えるから、女たちは毒花に引き寄せられるのだ。
ままごとの結婚式みたいに、ヴェールをかけて水を拭ってあげる侑。燈子が被る完璧の、冷たく青い仮面とはまた違った、赤い嘘の優しい仮面。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
そこから流れ落ちない涙を代理して、感情と涙が紫陽花の葉を伝う。大人は泣いちゃダメなのだ
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こんなところまで高校一年生を追い込んでしまっている超絶性悪女が、しかし魅力的で目が離せないのだから、精美なるグロテスクというのは力強いものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
クローズアップで人間を書くと、どうやってもグロテスクになる。耐えきれないほどの接近が、恋の毒を甘く伝えてくる。
美しき毒を垂れ流す、無邪気なる花。その笑顔の先に待つ破綻、あるいは変化を待望する侑。停滞を望みつつ、変化の先にある救済を望む沙弥香。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
三者三様の咲き乱れ方が、あるいは接近し、あるいは離れ、また近づいていくエピソードでした。
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『少女の魂を唇からチューチュー啜って、満面の笑顔で嬉しいか?』と聞きたくもなるけども、この笑顔が沙弥香も侑も、そして僕も好きなのだからしょうがない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月25日
小さな花が寄り集まって、暖かな団欒を作る。紫陽花のもう一つの意味へ、少女たちがたどり着ける日は来るか。次回も楽しみですね。