ゾンビランドサガを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
”!?”
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そんな感じのサキちゃん回である。”特攻の拓””湘南爆走族””GTO””ロンタイBABY”…数多のヤンキー漫画にリスペクトを込め、画面に”!?”が乱舞するエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
バカだなーほんと…”!?”画面に映るだけで笑っちゃうの、ほんと良くない刷り込みだと思う。だいたいマガジンが悪い。
第5話まででお話の大体の構造、フランシュシュの基礎固めを受けて、第6話から続くメンバー個別エピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
それは彼女たちの死因、奪われた生との繋がり、欠落の痛みとそれを飛び越えて”アイドル”に、”ゾンビ”に飛翔する現状肯定という基本ラインで構成されている。
ゾンビランドサガがアイデンティティを巡るアニメだ、というのは第2話から明瞭であったが、個別編になってより鮮明になった気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
茫漠とした一般論ではなく、グループ全体が前進していく広いカメラではなく、個別の過去、個別の痛み、個別の輝きを掘り下げれるようになったのが大きいだろうか。
同時にゾンビとしてアイドルとして、運命を共同しているフランシュシュには共通の痛みがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
純子なら昭和のアイドル理想像。愛なら夢半ばで崩れたステージ。リリィならパピィとの離別。
みな大事な人、大事なものとの繋がりを突然切除され、永遠の少女として時に置き去りにされてしまった。
サキちゃんにとってそれは”チーム”であり、普通に大人に、母親になってしまったマブである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
最終決戦の現場に、サキちゃんはバイクではなく自転車でやって来る。アイドルがノーヘルで暴走したら、”チーム”の名前に傷がつく。巽の言いつけを守るリーダーが、健気で可愛い。
リリィが正雄という本名も、リリィという芸名も捨てて”六号”に(そしてそのことが、息子を喪失したパピィを新たな道に進ませる起爆剤に)なったように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
サキちゃんは単車に乗らない。昔のマブがガレージから蘇られた、青春の一瞬の夢。それも派手に飛び散って、伝説に変わる。
しかし死によって奪われたものは、ゾンビ化することで蘇ることが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
愛がかつて貫かれた稲妻を耐えきり、アイドルとしての新たなステージに結びつけたように。
かつて死んでしまった爆発からサキちゃんは立ち上がり、新しい伝説になる。ヤンキーではなく、”アイドル”としての自分を受け止める。
フランシュシュのアイドルたちはみな、そのような新生をくぐり抜け、”アイドル”になっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
あまりに愛おしく、だからこそ唐突に切断されてしまったことが苦しい過去。取り戻そうと思っても、もう戻らない時間。前にも進まない、死者の生。
降って湧いたそんな生き様を己のものと受け止め、胸を張って”ゾンビ”をやる。”アイドル”をやる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
そこにたどり着くまでのでこぼこ道を、笑いあり涙ありで感情を揺さぶりつつ描くのが、ゾンビランドサガのスタイルだと言える。振り幅を存分に活かした戦いだ。
リリィは性未分化な年齢、マミィの面影を止めようとする異性装、子役に求めれる期間限定のプレミア感を駆使して、ゾンビであることの強さ、哀しさを見せてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
リリィは永遠のピーターパンになった。それは大人になり、新しい自分に出会う喜びを捨てる、ということでもある。
サキちゃんも、マブが憧れ見つけたどり着いた”普通”を知ることは、もうない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
ゾンビであるから、メイクなしでは出歩けない。アイドルという仕事は、平穏無事とは程遠い。もうそう生きるしかないどん詰まりを、彼女は二話では『アタシら終わってんだよ』と吠えた。
あの時さくらがアンサーした『バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ』という言葉のとおり、フランシュシュは躍進し、ゾンビたちは己を受け入れつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
それでも、時に取り残された永遠のピーターパンが、自分の青春に決着を付ける必要はある。流星のように燃えつきた青春に、どんな名前をつけようか
そのための絵の具として、”家族”と”ヤンキー”をWエンジンでもってくるのは、力強い運びだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
親のようにはならない。そう決めて”普通”に生きてきた麗子は、暖かで幸せな家庭を気づいてた。まりあちゃーん、悪ぶってもお茶碗ピンクネコちゃんじゃん…。
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マブが死んだショックから、九州制覇を果たした初代総長の看板をおろした麗子。彼女にとって、ヤンキーを思わせるものは忌まわしい過去、否定するべき愚行なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
そんな”普通”の母の姿を、思春期の娘は真っ直ぐに見れない。青臭い暴走と愛を込めて、八代目、継がせてもらいます。
麗子は現役時代の単車を、ガレージに置いていた。青春はまだ終わっちゃいない。急に死んじまったアイツに、言えていない言葉がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
死人が別人の顔、別人の名前で、あの時言えなかった言葉を伝え、一瞬の夢で繋がり、そして別れていく。寂しくて、あまりに綺麗なサヨナラ。
あくまで”六号”としてメッセージを伝えたリリィと同じように、サキちゃんは自分の名前を呼ぶマブに『誰よ、そいつ』と突き放す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
そういう形でしか、死人は生者と触れ合えない。一瞬の夢、アイドルのステージ、優しい嘘。
それでも、一瞬出会えたことが救いなのか。あくまで儚い夢か。
そこら辺のなんとも言えない感覚が個別エピソードには色濃く漂っていて、非常に面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
安易にゾンビを怪物と切り捨てるのでも、超人類と肯定するのでもなく、その喜びも悲しみもしっかり見据えて物語に組み込むのは、とても良い。そういう優しく厳しい視座を代表しているのが、巽なのだろう。
巽はあくまで、ゾンビはむき出しのままでは人と触れ合えない、という。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
崩れた顔をエンバーミングし、名前と過去を隠蔽し、”フランシュシュ○号”という仮想のアイデンティティに身を寄せなければ、嘘と芸の中に生きなければ、銃で打たれて殺されてしまう。
序盤描いたように、それは事実だ。
それでも歌と思いには、奇跡を起こす力がある。他人の顔で触れ合っても、傷ついた過去、歪んだ現在を取り戻すことは可能だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
そのためにちょうどいい距離感を探し、傷つき、たどり着くまでの物語はベーシックで力強い。
時間から切り離されたゾンビが主役だからこそ、受け継がれるものの意味も見える。
万梨阿が母のトップクを継承したように、”殺女”(”怒羅美”といい、なんで藤子Fリスペクトなんだ…小学館の回し者か)のトップも過去の歴史を引き継いでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
堕天使ちゃんが単車を回すと、風を孕んだが髪が翼っぽくなるのが良い。初代スゲーな、ヴェルサイユ宮殿かよ。
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ゾンビへの、アイドルへ、ヤンキーへのサキの屈折した感情と、母を愛しつつ憎む万梨阿の想いが、時を越えてシンクロしているのも良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
麗子は取り残されたまま大人になっちゃって、永遠のスケバンであるサキちゃんの同年代は、現役な万梨阿なんだよね…時のめぐりが噛み合わない、永生者の哀しさ。
クソバカトンチキコメディアニメなのに、そういう苦さをちゃんと描いて、ヤンキー漫画がもってるリリシズムをしっかり現代に蘇られているところが、非常に良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
永遠ではない青春、一瞬の光条、生まれる伝説。根本的に、ヤンキー漫画はエモいのだ。”!?”でネタにしつつも、コアの部分にリスペクト。
サキちゃんは死んでも死なないゾンビとして、一日特攻隊長を引き受ける。万梨阿の想いを引き受け、麗子の過去を蘇らせ、新しい伝説を生む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
気合の入り方が違う新しいヤンキー伝説を、しかしサキちゃんはスルリとステージにつなげる。今の彼女は、フランシュシュ二号なのだ。
僕らの優しいリーダーは、自分含め色んな人の傷を繋げ、新しい道を見せた。家族を再生させ、決着がつかなかった過去に、ゾンビだから、アイドルだからこそ出来る答えを与えて駆け抜けていった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
それが彼女自身の笑顔にも繋がっているのが、優しくてとても良い。
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はーほんと可愛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
さておき、今回もEDはスペシャル仕様、”氣志團”つうか”マジジョテッペンブルース”の系譜を付いだ、アイドルヤンキーポップスである。
リリカルで感傷的なところが共通してて、アイドルとオタクとヤンキーとゾンビは相性がいい。全部混ぜれば無敵である。
巽の支援なども受けつつ、サキちゃんはほとんど独力で、自分の青春に決着をつけた。ヤンキーであり、アイドルであり、ゾンビでもある自分を肯定した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
その力強い足取りがなんとも彼女らしくて、とても良いエピソードでした。リーダーは頼れる上に可愛いからなぁ…マジ無敵。
観客席にヤンキーもデスメタルも、混沌と混ざっているライブシーンがすごく好きで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
人間から迫害されるゾンビが芸事をしてるなら、観客だって自由でいい。最古参であるデスおじ達が、『それこそがフランシュシュだ!』と肯定してるのが、マジでグッドナイス。
音楽ジャンルとして考えると、アイドルソングって属人的で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
アイドルが歌えばアニソンだろーがデスメタルだろうがテクノポップだろうが民謡だろうがヤンキーソングだろうが”アイドルソング”になってしまう自由さは、フランシュシュのフラフラ音楽遍歴を見てもわかる。
それを”間違ってる!”と切り捨てるのではなく、かといって純子が背負う”ザ・アイドル”という幻影を否定するでもなく、『そういうもんで良いんじゃ~い!』と肯定するスタンスが、運営にもアクターにもファンにも共有されてるフランシュシュは、良いアイドルだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
みんなで車で帰るシーンの、ワチャワチャしたフッド感も良かったなぁ…みんな好きなことやってんだけども、どっかで繋がってる感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
サキちゃんはそこから一旦離れることで、自分の過去に決着を付け、自分を見つけ直す。今の自分を、心の底から肯定できるようになる。
”サヨナラ”と”タダイマ”の扱い方に、青春モノ、ヤンキーモノに必要な寂寥と叙情がたっぷり詰まっていて、とても良かったです。その二言こそが、ゾンビが言うべきリリックなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
そして次回は雪山。一体何が起こるのか、ゆうぎり姐さん回なのか。高まる期待、来週も楽しみですね。
追記 アイツはなったんだよ……”伝説”によ。
ゾンビランドサガ追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
サキちゃんはほんとブレーキぶっ壊れた生粋のヤンキーで、衒いや強がりじゃなく”普通”が分かんなかったんだと思う。10代で死ぬべくして死んじゃったという意味でも、永年の子供になる宿命を背負っていた、というか。
そういう意味でも、”普通”が普通にやれてしまう、平和な家庭を無事築くことが出来た麗子とは距離があって、それでも二人は出会って、別れて、また出会った。そして永遠の青春と、普通に老いて普通に幸せに死んでいく者に別れていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
そういうの描けてて、いいアニメでした今回。
サキちゃんの伝説気質のぶっ壊れ加減、”普通”でい続ける大変さと尊さをしっかり見据えて、単純にサキちゃん称揚で終わんなかったのも良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
進む人、立ち止まる人。色んな人の幸福と悲しみがあって、それは確かに離れている。でも、歌と思い出が橋をかけてくれる。ゾンビ・メランコリア。
実際サキちゃんだけは、パッショーネに入団して矢で貫かれても『破壊力:A(超スゴい)』なスタンド出して立ち回れそうな”凄み”がある…姐さんもそうかな?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
あっちにもゾンビ出てくるし、佐賀はイタリアだった…?
追記 可愛かったね、八代目メンバー。
あと八代目怒羅美のメンバーが、制服ちゃんと着る良い子ちゃんなのに、老人ばっかの佐賀でマジ暇だし友達大事だからヤンキーすっか! という塩梅なのが、ローカルな味を生かしていてとても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月29日
佐賀は田舎だから、今でも”族”バリバリなんでしょ?(湘南からの偏見ブロウ)
追記 解決するべき和音をイントロにきっちり載せて、サビでしっかり解決できる楽曲は気持ちがいい。この話もそういう感じ。
ゾンビランドサガ追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月30日
アバンの過去回想で言ってたことは『そのままだと死ぬ(死んだ)』『ぜってー死なねぇ(永遠少女ゾンビになった)』『たまごっちも死なねー(麗子さんが守ってくれた)』『アクセル吹かすじゃ追いつけない(”普通”がわかった麗子は母になり、生者としてサキをおいていく)』と
全部叶ってんだよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月30日
いかにも不良漫画あるあるな武勇伝シーンと思いきや、出だしで全部暗示して本編で回収する手際の良さは、ゾンビランドサガだなぁ、と思う。奥行きの出し方が上手い、というか。