色づく世界の明日から を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
恋色絵の具は白黒水色、色んな色に世界を塗る。
友情が壊れそうなときも、心が通じ合ったときも、絵の中に迷い込んだときも、封じ込めた気持ちの蓋が開いたときも。
世界はモノトーンとカラフルの間を行ったり来たりしながら、その形を美しく整えていく。
そんな感じの、このアニメにしてはかなりの起伏があるエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
どっしり腰を構え、一つの事象に一話、あるいはその準備をするのに一話。そういうペースで進んできたこのアニメが、今回はあさぎとの不和と融和、学園祭の準備とマジック・リハビリ、唯翔くんとの心の対話と、起伏が多い。
色んな事件がスルスルと流れていくけども、じっくりと歩いた物語が足場になって、充足感は強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
相変わらず独特のテンポとペースで、自分たちの色を作品に塗り込んでいくアニメである。終盤を控え、少しペースが上がってもその着実さ、多彩な色合いはボヤけない。むしろ鮮明に楽しい。
もともと”色”を演出と物語の基盤に据え、彩度と明度、ライティングとレイアウトで勝負してきたアニメであるが、物語の起伏を反映し今回はそれがより目立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
まずあさぎとの青春押し相撲。極端なモノクロームから心が通い、カラフルへと続く。
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開始時のドン曇りはこのアニメには珍しい色彩で、だからこそ不和の深さ、瞳美が抱え込んでいる感情の重たさがよく伝わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
恋とかよく解らないけど、流れ着いた異世界で初めて出来た友達は大事で。ままならないとしても、この灰色のままではいたくない。
引っ込み思案のダウナー系、色彩のない世界を諦めきっていた序盤とは、大違いの積極性で、瞳美ちゃんはグイグイ切り込んでいく。琥珀オババのいいところが、上手く感染した感じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
奇妙な時系列でねじれた友情、師弟関係だけども、やっぱいい友達だよなぁ若琥珀。祖母と孫なのに、同年代の親友で師弟
既存の枠にはハメられない関係だけど、なんか善くて、見守りたくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
このアニメそれ自体みたいな関係性が二人の間にはあって、それが状況が変化していく足場にもなる。
後半、マジックトレーニングをする場所でも確認される距離感は、”魔法”を題材にしたからこそ飲める捻じれなのかもしれない。
そんな積極性は光を連れてきて、二人は結構真っ直ぐ解決に向かう。このアニメらしく、仲直りのフェティッシュはとても綺麗なパフェ、可食性の色彩だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
鈍感男の悪口で盛り上がって、仲間と一緒にカラオケにゴー!
状況が全て解決した時の壁紙は、情熱と青春の赤だ。色彩の詩学と記号論が、今回冴える。
このモノトーン→カラフルの変化を受けて、瞳美のマジカルリハビリが始まる。教育とも鍛錬とも治療とも言える、魔法と瞳美の距離調整。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
それは未だ生まれ得ない”母”との関係に傷を追った彼女が、過去と融和する準備運動でもある。
魔法は、お母さんを奪ったから嫌い。ならば、魔法を好きになれば…
お母さんを取り戻せるかもしれない。自分を肯定し、魔法を肯定し、失われた母を肯定的に再獲得できるかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
1エピソードの中に”友情”との、”魔法”との、”母”との、”恋”との対峙と(このアニメにしては)詰め込んだのは、全てが連動して瞳美を助ける未来を、巧く圧縮するため…かな?
魔法鍛錬を見ている段階では、そこで修復されようとしている瞳美のモノトーンの理由はわからない。心に刻まれた”母”の不在が魔法と色彩を奪い、その原因ともなる若き祖母の導きで、アートマジックの能力を手に入れる(能力を持つ自己を肯定する)態勢を整えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
物語はこの後、瞳美の過去に潜り色濃いモノトーンに、再び塗られる。しかし唯翔くんが過去を共有し、気持ちを吐き出させたことで、世界には色彩が戻り、爽やかな希望を宿して次回に続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
そんなカラーサークルの中間点に、回復と獲得、変化と受容の描写がおいてあるのは、前向きで好きだ。
僕はこのアニメの、特に琥珀周辺に漂う医療的な雰囲気が好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
瞳美ちゃんはケアするべき患者(視覚障害者)であり、彼女が魔法を、色彩を取り戻すのはただの現象ではない。
その根本に自己肯定感の喪失、心の傷がある以上、琥珀師匠と魔法を学ぶのは、社会の中の自分、精神的自己像を修復する行為だ
今回のトレーニングも、奇妙な時間の流れで共有した”家”…高祖母と曾祖母との”血縁”に見守られつつ、”母”との傷を克服する足場を創っていく行為だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
魔法をアートとして…心に入り、心を動かす表現として扱うこと。それが私に出来ることなんだという実感を確保しつつ、一歩ずつ歩むこと。
琥珀自身はかなり充足した実力と感覚を保ちつつ、その特権に甘えず、持たない孫、傷ついた少女と同じ歩調で寄り添うこと。己の持つものを、重荷にならないよう明け渡すこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
そういう関係が幸福にも成り立っているのが、あの同世代の祖母と孫を見てて覚える多幸感の理由かもしれない。
琥珀がアートマジックの話を切り出した時、それを通じて『私に出来ること』を見つけようと手を差し伸べた時、光は琥珀の側にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
それは、傷ついて色が見えなくなった瞳美には遠いのだ。まだよくわからないけども、しかしそれが欲しいと手を伸ばす。
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友情において、魔法の師弟関係において琥珀に預けられているものが、恋においては、また美術においても唯翔くんに背負わされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
白と黒しかない闇に、分け入る特別な存在。将くんが求めて果たせず、でも爽やかにそれを認めた世界。
その光を、やっぱり瞳美ちゃんも求めている。綺麗だと憧れている
そんな盲の中のうずきが、体力が回復したからこそ見えはじめた光が、僕はやっぱり良いな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
序盤ゆったり進めたからこそ、瞳美ちゃんが身を置いた灰色の世界、そこで諦めるしかない停滞の重たさは、よく伝わっている。だから、それが動き出し光が見えてきたのが、とても嬉しいのだ。
光へと進む歩みは確かに結果を出し、瞳美は『魔法なんて大嫌い』だった自分から、魔法を使える自分へと変化/再獲得していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
それは未来への一歩であると同時に、傷ついた過去へと踏み入る歩みでもある。時間は前に進むと同時に、後ろへと逆戻りもするのだ。
そうしなければ、”母”の喪失とともにあるモノクロの世界は、新しい色には塗られない。閉じ込めてしまった感情、しがみついてしまった誤答を開放し、新しくすることは出来ないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
ここら辺の普遍的な歩みと、時間遡行魔術という特別な設定がしっかり噛み合っているのは、とても面白い。
絵の中に迷い込むという、全く新しい美術体験。”
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
魔法”という中世のアートが、3DエンタテインメントやVRといった最新鋭の娯楽体験、美術体験に繋がっているのも、なかなかに面白い。
今後技術が進むに連れて、幻想界をそのままに追体験するような娯楽は、確実に増えると思う。
絵画や写真でエミュレートしていた、アーティストの認識。彼らにしか見えなかった色を直接見て、その体験に飛び込むような鮮烈さが、未来に待っているのなら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
その一歩目を、”魔法使い”が成し遂げるのは、とても皮肉で、しかし同時に凄くしっくりも来る。
”魔法”を主題として、アートの一つとしてしっかり仮想したことが、逆に非常に生々しくうねる現実の諸相にしっかり噛み合い、不思議なリアリティを手に入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
それこそ空想の翼を広げ、ファンタジーを語る面白さのコアな気がする。徹底的に夢を見ることで、現実の半歩先を影ふみする感覚、というか。
それが作中(そして作外)の”現実”とどうコミットできるかは、”公”にむかってその意味を問う学園祭を待たないと、なかなか結論できないけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
お仕着せの美術論を後追いするだけではない、非常に鮮明な絵が一つ、生まれつつあるようにも感じる。”魔法”を選び、既存の美術と並列に考え拔いた産物だな
琥珀と瞳美と唯翔、魔法と絵と写真(三人の”絵”が、光学投影機によってオプティカルに処理されていることには注目したい)の合作は、色んなオマージュを秘めている。それを読むのも、(現実のアートを相手取る時と同じように)今回面白い。
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傘で舞うメリー・ポピンズ(に、魔法を使えない凡人も変えてくれる”美”の魔術)。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
海底と陸の街が繋がった世界は、監督の前作”凪のあすから”とアルベロベッロのトゥルッリの合作だ。
そして、金色の魚。これが色々読めるのは、以前書いた通り。https://t.co/zcfkWMPE5p
未来への希望そのままに輝いていた世界は、作者すら知らない闇へと恋の魚に導かれ、モノトーンに落ちる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
作者が意図すらしていない、合作者のトラウマ。それを知らず取り込んでしまうのも、アートの恐ろしさであり、強さでもある。
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この薄暗く恐ろしい心理切開のシーンが、溢れんばかりの優しさに満ちているのが、僕はとても好きだ。このアニメらしいシーンだな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
どれだけ薄暗くても、モノトーンのクレヨンしか画材がなくても、世界に色はある。部屋の主である瞳美ちゃんが、それに気づけないだけだ。
色を知るもの(この言葉が多重に含む意味を、美術と青春と恋愛を同じパレットで描くことで見事に切り抜いているのは、このアニメの凄さとして強調されていいだろう)として、唯翔くんは自分が持つものを手渡す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
琥珀が魔法を教えたように、唯翔くんは絵を手渡すのだ。それしか、自分にはないから。
そのおずおずとした不器用な優しさが、なんとも彼らしく美しくて、少し泣いてしまった。なんて優しく、強い少年なのだろうと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
言葉は巧く使えない。立ち回りも器用じゃない。だけど、その才と思い、言葉にならない言葉をタブレットに叩きつけて生まれた”美”は、言葉も時代も超えて届いた。
だからこそ物語が始まった場所へと、唯翔くんは静かに優しく、ある種の確信を持って足場を置く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
自分が絵を描くことは、それが瞳美に色彩を取り戻したことは、二人が出会って恋に落ちたことは、間違いじゃない。
それを言葉にできなくとも。その信念があるからこそ、紙の船を、鳥を、虹を手渡した。
灰色の絶望を前に一切引くことなく、自分が差し出せるものをすべて曝け出し、暗くて深い川に橋をかけようとしたこと。諦めず、思い上がらず、自分が見れない色彩を共有しようと、手を差し伸べたこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
それは多分とても大事で、それを忘れなければ生きていけるような、強いことなのだ。
それを結翔くんがちゃんと掴み取ってくれていたのが嬉しかったし、それを伝える手段としてアートが機能していたことも良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
”美術は凄い”と、空っぽな大言壮語を振り回すのではなく。質感と体温のある少女の傷をしっかり描いた後で、それを塞ぐ魔法として、”美”と”美”に愛された少年を描く。
『”絵”に入る』というワンダーに満ちた体験を、アニメーションだからこそ描ける表現力で味合わせることで、そんな”魔法”がするりと滑り込んでくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
やっぱいいアニメだし、アートを題材にした作品、エブリデイ・マジック、ありふれた青春のロマンスとして、腰が強いとも感じる。
心が重なり、秘めていたものを共有した二人。のんきにワンダーを消費する同年代が浴びる光を、二人は共有できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
記憶の薄暗い闇の中で、しかし色と光はそこにある。あり続けるのだ。その呑気ですらある世界肯定が、やっぱり僕は好きだ。
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”母”の喪失と、その理不尽に覚えた怒りを、唯翔くんは魔法にかかった同士として、瞳美から引き出す。共有する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
彩度は冒頭に戻ったように下がるが、しかし曖昧な夕焼けの紫が世界を染め、色は世界に満ちている。このアニメらしい、綺麗なシーンだ。
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瞳美が過去に置き去りにしてしまった、母との絆、怒り、色彩。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
それを語るシーンで沢山の柵がカメラを遮るのが、ぶっとい表現で好きだ。シルエットと化した柵はモノクロに重たく、世界を塗りつぶす。
でも、世界はやっぱり曖昧で複雑な色合いに染まって、とても綺麗だ。
そこに、二人がいる。
どれだけ切断面が、瞳美が塗りつぶしていた黒い河が世界に満ちていても、出会ってしまった二人を切り離すことはないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
その特別なロマンス、世界に二人きりの親密な孤独が、僕はとても綺麗だなぁ、と思う。綺麗なものを、綺麗なまま描けるアニメは、やっぱり好きだ。
おそらく血縁であるが故に、ねじれた時間で繋がっているが故に、琥珀には言えなかった過去。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
そこに分け入るパスが唯翔の持つ”美”の才覚(と、異性として恋を受け止める資格)という事と合わせて、重たくて上手い運びだと思った。
こんだけの爆弾が待ってるなら、そらあさぎちゃん問題は早めの解決だわ
作品全体が持つポジティブなトーン、過剰な起伏を作らない運び、薄暗さの中に未来を信じる力強さと合わせて、非常にこのアニメらしいエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
このアニメらしからぬ速いテンポが、明らかになる真相と変化する状況が、新しい楽しさを連れてくる回でもあったな…どっちも『らしく』て楽しい。
薄暗い記憶、戻らない色彩に取り囲まれていても、世界は美しい。その光の中心には、いつも貴方がいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月8日
恋の進路がバッチリ定まった感じもあって、クライマックスへの期待が高まるエピソードでした。
背中合わせの明暗、瞳美ちゃんはどちらに転がるか。来週も楽しみ
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