HUGっとプリキュアを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
お正月の次にはバレンタイン、その次にはひな祭り。無邪気に未来を夢見る少女に、善意の魔王が忍び寄る。その輝きが苦痛と腐敗を呼ぶのならば、美しき今よ、止まれ。
慟哭が世界を灰に染め上げる時、美しき永遠は残酷に支配する。『それでも』と、英雄は言い続けられるか。
そんな感じのHUGっと最終エピソード第一章、プレジデント・クライのオリジン開陳である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
あーぱー気味な中二にウェディングドレス着せて悦に入る”ヤバ”だった人が、それなりの説得力のある理屈と体験の結果魔王になった”ヤバ”だと解った。どっちにしても”ヤバ”ではある。
去年分ではな(と、彼女の鑑となるジョージ)以外は大体決着をつけて残り四話、どう展開させていくのかなぁと思ったら、相当にヘヴィで気持ち悪い限界人間爆弾が炸裂し、どういうアンサーを返すか非常に楽しみになった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
絶望を世界規模まで拡大する身勝手含めて、なかなか面白いラスボスだ。
時間ネタを最大限活かし、ジョージとはなの繋がりが見える回でもあった。まさか悲惨な運命が待ち構えるお嫁さんを地獄から救うために、最も輝いていた時を永遠にしたいマンだったとは…世界に絶望しているのに少女に希望を抱くところが、最悪最高にイケてるな、ジョージくん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
ジョージは凄く極端な善なる人間を定義して、そこからはみ出した世界に絶望している。その判断は多分、未来のはなが(今の彼女と同じように)美しく輝いた結果、彼に見せた夢だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
まぶたに焼き付いた美しいものは、たとえ鏡が歪んでも消えはしない。ヒーロー幻想は、時に残酷な結果を導く。
世界の全てと思えるほどに大事で、世界の全てと信じられるほどに尊かったものが奪われた時、世界の全てを否定するしか無かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
というか、それでも世界を肯定するために、肯定できるタイミングまで遡行し止めなきゃいけないあたりに、ジョージの超絶ドデカ感情がある。デカすぎでブラックホールに…
きっついトラウマを暴かれてトゲパワワを出し、『それでも、私はプリキュアだから』という強がり(あるいはトートロジー)で立ち直る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
はなの不屈は、なりたい自分を実際に引き寄せる儀式としての”変身”を通じて、実際体験し確信した信念でもあろう。
おそらく未来のクライも、そこに夢を見た。
それを踏みにじられたからこその世界停止だし、それを諦めきれないからこその時間剥奪でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
時の止まった世界は死都ポンペイ、あるいは原爆投下直後の広島のようで、ジョージのいう人間の悪性を治療する最終解決には、けして見えない。そこには、みっしりと死が満ちている(ように書かれている)
最終的に乗り越えるべき問なのだから、ジョージの永遠の一時停止がネガティブなものとして描かれるのは当然のことではある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
彼個人の絶望を、世界規模にまで拡大して本社ごと襲撃をかけ、問答無用に時間停止ビームをブッパするのは、あまりにもエゴが拡大しすぎてもいる。
野乃家のように当たり前の幸福に向けて、家族で歩き出すモノ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
アンリのように絶望を知ってなお、寄り添い新たに進もうとするモノ。
名も無き母のように迫り来る破滅を前に、愛おしいものを守ろうとするモノ。
ジョージが停止させた世界には、彼が定義する『世界の全て』に収まらないものが移る。
そういうものははなの…『プリキュア』の特権ではないし、可能性に満ち満ちた子供(メイン視聴者)だけのものではないということは、あのシーン一つ見ても判るし、『プリキュア』がずっと言ってきたことでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
何のために、ミラクルライトを毎年ブンブンしておると思っとるのか。
しかしそれでも、人は英雄を夢見る。このアニメのヒロイズムははなとえみるが主に背負ってきたと思うが、ジョージにとってのはなは世界全ての罪科を背負い、世界によって殺される特別なメサイアだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
『プリキュア』には、そう思わせるだけのアイコン性が確かにある。
この話はジョージ・クライが自分の痛みに絶叫(Cry)するのをやめて、自分も『プリキュア』であると…愛した人が背負う善性と、それへの信頼が自分にも反射しうることを認めれば終わる話でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
しかしジョージには、思い出は美しすぎ、英雄は貴すぎる。遠くに見つめても、手にとることは出来ない。
ここら辺、地獄めいたでこぼこ道を延々走り、同士をぶっ倒されても星を掴んだほまれのクエストと、なかなか面白い対比である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
プリキュアのようになりたい、プリキュアがいるようなお伽噺の世界が良いと望みつつ、その外側で排除されている(と受け取られがちだが、一度もそんな話はやってない)存在
それはプリキュアは所詮作りもので、放送は1月で終わって、はなたちはバレンタインもひな祭りも体験しないのだと見る、シニカルな視線にも通じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
その通り、お話は後三週間で幕だ。しかしカーテンが降りても、カメラが離れても、物語の先を確信できる終わりが、確かにある。
一つの戦いを終えても、その先にある戦いを戦士たちが乗り越え続け、夢が幾度も蘇るのだと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
コマの外側で、確かにキャラクターの人生が続いていくのだと思えるようなエンディングにたどり着けたのなら、はなが夢見る『未だ来ない時間』は、ただの題目ではなくなる。
逆に言えば、現実のシニカルな感触、希望が欲望に変わる身勝手さをちっとは思い知っている(そして悲しいことに、おそらく思い知ることになる)視聴者に、ジョージの絶望ではなくはなの希望を確かな答えと刻むためには、かなり頑張らないといけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
そういう地力はHUGっとには当然しっかりあって、今回も閉ざされたエレベーターを親友という光がこじ開ける描写、初日の出を閉ざすクライアス本社と、明暗のモティーフは鮮明だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
はなの心の傷はぜんっぜん癒えてなくて、簡単にトラウマが顔を出しトゲパワワが溢れるのも。
プリキュアですら、暗い感情がある。何処にも無辜の女神などいなくて、人はみな薄暗い感情、腐りゆく鮮烈さ、熱力学第二法則に支配されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
しかしはなは、トゲパワワを希望で塗りつぶして、怪物に落ちるのをやめた。リストルのように感情を凍結されなくても、幸福を前に強がった。
強がり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
自己評価が極端に低く、”キュアエール”という”変身後”の活躍は肯定できても、”野々はな”個人の存在をなかなか認めきれないはなにとって、闘争で膝を屈しないのはいつだって強がりだった。
才能が背骨を支えてくれるわけでもない。幸運が味方をするわけでもない。
それでも、やがて来る未来は『なりたい自分』になっているのだと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
そこにたどり着くためには、赤ん坊をおいて暴力から逃げ出すのは嫌だと。
心の傷と震える心を抱えて、それでも強がった第一話のように、はなは毅然と顔を上げる。成人男性がキモい圧を密室でかけてくるのは、マジ怖かったと思う。
ここら辺の生臭さはなかなか凄いことになってて、プリキュアの光に眼を焼かれた結果悪を許せぬ盲目の正義ぶんまわしマンになってたり、惚れた女はいても流されるまま部下と関係は持ったり、ジョージ関係は本当に凄い生っぽさだ。この臭みがたまらねぇぜ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
トラウムによって『何もしない』という起源を露わにされて見ると、確かにジョージは流されるまま、他者の絶望や悪意を増幅し、求められる形を演じ続けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
そのアパシーは0ではなく、放っておいてもエントロピーが拡大する世界においては-になるしかない。
”その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない”という赤の女王の警句を、自分が輝くものにはなれないと思い込むほどに美しいものに出会い、奪われてしまったがゆえに手放した男。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
底抜けの善性を拡大した結果、死とイコールの停止を世界にばらまくしかできなくなった男。
そんなジョージの停滞/逆行と、親子関係を再構築したトラウムの対比が面白いエピソードでもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
トラウムはルールーとだけではなく、野々家にも『面白いパパ』と認められ、悪の幹部以外の可能性を広げている。トンチキ凸凹しているが、その生活は楽しそうだ。
餅つきに勤しむ芸能事務所の面々も、歯を食いしばってリハビリするアンリも、苦しみを希望に相転移させ…てもらうべく、誰かの手を借り、誰かに手を貸して、それぞれの夜明けを過ごしていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
ジョージが押し付ける世界は、その個別の歩みを塗りつぶしてしまう。そこまで、あんたは偉くはない。
そんな傲慢な絶望、純白の希望に停滞してしまった男を前にしても、色々説得して自分をわかってもらおうとする所が、はなの良いところである。そういう所が好きになったのかなぁ、ジョージくん…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
よりにもよって自分と出会う前に最大の輝きを見出すとこ路が、マジ拗らせてんなと思う。
魔王がいてもいなくても、世界は暗い。放っておいても人は絶望し、欲望し、美しい英雄を食いつぶす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
確かに、世界なんてそんなもんだろう。それでも、そのニヒリズムだけが真実だと諦めてしまえば、赤ん坊は飢えて死ぬだけだ。はぐたんがコマ回しできる未来は、なんとか遺したほうが善い。
無垢なるベビーを泣かせて攫う、最もシンプルでド許せねぇ悪事をぶっこんでくるところに、クライの生臭さとエグさがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
あれはエールに対してやったように、保護なのだ。翼をへし折り、未来のない檻に閉じ込めれば、不幸はない。幸福もない。凪のように永遠に続く、穏やかなるアパシーが拡大する。
しかしそうなると、一年経って今だ何者でもないはなは、『イケてる自分』にはたどり着けないままだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
これを強調させるために、ある程度強引な省略など含みつつ、さあやとほまれには形のある成長、確かな未来地図を背負わせたのかなぁ、と思う。
何も出来ないものが、なにか出来るようになる。それは善と悪両方に開かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
飢えているものに食事を与えるかもしれない。ナイフを突き刺して命を奪うかもしれない。どちらかと言えば、悪に進む方向のほうが色濃いのかもしれない。善を求める心は無力で、身勝手な悪に塗りつぶされるかもしれない
それでも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
一度為せなかった善を、透明な嵐に傷つけられた心をもう一度奮い立たせて、ヒーローになろうと強がった少女の決意が。
胸を震わせる鼓動が、まだ鳴り止まないなら。
戦いはまだ終わってないし、始まってすらいない。
まずは攫われたガキ、取り戻す。”プリキュア”、ナメてんじゃねぇぞ
はな自身のヒロイズムに、ジョージの絶望が強く接続されている所が、なかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
プリキュア世界においては特権的な存在である”女の子”には、絶対になれない、だからこそ憧れ守り手を伸ばす”男の子”は、過去作においてはだいたい味方だった。岡田しかり、誠司しかり、カナタしかり。
彼らはまるで父のように強く、母のように優しく、時に戦えとプリキュアを肯定し、時に戦うなと立ちふさがる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
乗り越えられ、否定され、『それでも』と歯を食いしばる強がり(ヒロイズム)を受け止めるべく、変身できない傍観者に甘んじる。主役にはなれない、永遠のサイドキック達。
その憧れと諦めが、キモイキモイジョージに圧縮されて、ラスボスとして立ちふさがっている感じを少し受ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
ヒーローに憧れた。でも、ヒーローにはなれなかった。世界のルールと己の諦めが、それを許さなかった。それでもヒーローは好きで、あらゆるものと天秤にかけても守りたかった。
そこで今までの”男”は翼を支える方向に行ったわけだが、ジョージは翼をもぎに行った。ある意味、GOプリ第39話で記憶喪失のカナタが叩きつけた魔弾が、再び舞い戻ってきた感じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
英雄は気高く戦い、尊く散る。それを民衆は感受し、救われる。
なら、英雄は誰が救えばいい。
そこに”プリキュア”ならざる”男”は今までなかなか関与できなかったわけだが、”敵”に回る(自分を否定させる/否定してもらう)ことで、ちょっと新しいものが見えそうな感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
さて、ジョージ・クライは甘えた一人泣きをやめて、自分の中の”プリキュア”と向き合えるのか。
その前に、もうひとりの”男”、そこに強く接合された”男たち”の物語が待っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
激重巨大感情のブラックホール、アニメ史上最も鮮烈な思いを焼き付けたげっ歯類達の最終章が、来週待っている。
自分の胸に抱いていたはずのはぐたんを、横から掻っ攫わられた銀河一の好青年は、ヒーローになれるか
ビシンくんがハリーだけでなく、リストルさんにも激重巨大感情を叩きつけているシーンが、抜け目なく今回挿入されていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
リストルさんも、心があればこそあまりに辛くて、差し出された純白の救済を飲んだ。このげっ歯類共、ホント感情デカすぎませんかね? 村焼かれてるしさー。
今回過去キャラ総出演(日常編)の趣もあったけども、次回は戦闘編って感じでもあり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月6日
”プリキュア”が剣ではなく歌を、停滞ではなく前進を、殴打ではなく抱擁を選んで生まれたものが、どういう結論を引き寄せるのか。”プリキュア”の外側からまず描くかんじになるのかなぁ…とても楽しみです。
追記 ”HAPPY EVER AFTER”で終わるような拙いロマンスなら、美しいキメシーンとしてでも使われそうな真心の花束。そこに込められた捻じれと歪み、愛ゆえに愛を略口達し未来を否定することでしか未来を掴めない矛盾を花束に込めて描くのは、かなり好きな演出である。
HUGっと追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月7日
『将来不幸になる最愛の人に、彼女が一番輝いていた時間を止めて贈る』というジョージの行為(”プリキュア”が打倒するべき”ラスボス”の計画)は、凄い歪だけど愛のこもった花束ではあるんだな。
作中で花束贈って突っ返される演出が強調されてたのは納得。まぁキモいし怖いからな…。