スター☆トゥインクルプリキュアを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
惑星サマーンを、悪意が塗りつぶす。
単眼の憎悪によってマザーAIをハックされた星は、意外なほどに脆かった。絶対のピンチに現れた”ララのAI”は、旅路を共にした仲間として、機械のイマジネーションを炸裂させる。
その思いを受けて、ララ、万感の変身ッ…!
そんな感じのサマーン後編ッ! さらばAI機械の涙は一度だけッ!!(死んでない)っていうお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
放課後の冒険を一緒に過ごしてきた仲間、AIとロケットのエモ力を最大限駆動させて、ララが家族と社会の前で堂々変身を果たすエピソードとなった。プリキュアになることが、社会に直結する展開は面白い。
第7話でロケットをピンクに塗る=パーソナライズする話をやったことが、AIが”自我”を手に入れる展開を下支えしていて、なかなか良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
レトロフューチャーな可愛さをまとった、私達だけのロケット。モノへの愛着を形にすることが、モノが愛を知る展開を可視化していく。
物語の上層をララとAIが担当したとすると、下層はアイワーンがガッチリ支えていて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
あの女の巨大な執着、人格の存在質量は画面に出るだけで話が立つレベルで、非常に良いところに引っ張ってきたなぁ、と思う。どす黒いんだが、妙な可愛げを残しているところが良い。
今回の話はララが家族に顔向けする話であり、そこに密接した社会に向き合う話でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
オリーフィオを中心とした”家族”を石化され、切り離されたユニが『信じてくれる家族がいるなら、信じて帰ったほうが良い』と言い出すのが、短い描写ながら重かった。そらそうだわなぁ…。
地球での体験によってパーソナライズされたララが、自分の実態を見てくれない家族と社会に向き合う前に、アイワーンにより社会インフラがハックされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
極度に均質化・効率化された社会は、想定外のハックに弱い。だから外れモノや弱者を均質化しきらず、多様性を残すことは(実利としても)大事だ。
ここら辺の脆さを、自分の足で走る体力がないサマーン人で描くのは、なかなかフィジカルで面白かった。プリキュアは歩くどころか、飛んだり跳ねたり殴ったりだからな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
野蛮から始まった文明は、必ず野蛮に染まる時が来る。その時どれだけ、タフな修復力を発揮できるか。非常時はそれを問われる。
惑星サマーンはおそらく、現行の社会体制で波風なく進む時間が凄く長かったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
マザーを中枢に据えた超効率社会の初期設定が優秀だった証拠だが、長い平穏は想像力を奪う。
『もし、社会システムがハックされたら』
イマジネーションは、そういう部分にも使われる。
アイワーンの黒いイマジネーションが、世界をハックしプリキュアを捕らえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
この危機的状況を、プリキュアによってpersonalize(個人化/人格化)されたAIロケットが助ける。マザーに繋がれないものとして、ララと同じ立場にあった”彼女”がいたことが、逆転の切り札だ。
AIが外れものなのは、彼女を”ララのAI”として所有する(サマーンのAI活用を考えると、AIに人間が所有”されている”感もあるが)ララの属性だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
社会の最下層と判断され、それに反逆するべく冒険に飛び込んだ。地球で新しい体験に出会い、自分を個性化しなおした。
オトナには秘密の、放課後の大冒険。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
みんなを乗せる船として。ご飯を食べ、体を休める家として、一緒に戦ってきた機械のトモダチ。
彼女が社会システムのくびきを超えて、自分の意志と多様性でもって望みに近づいていくのは、”ララのAI”だからだ。主と同じ冒険が、彼女を個性化していった。
それは同時に、AIに愛と勇気をもらってララが”大人”になる旅でもある。個性化は常に双方向に働くのだ(少なくとも、適切な自我と尊厳を持った個人の間では)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
そこら辺を、『私達とロケットの楽しい日々』回想で、無言で積み上げたのはとても良かった。喋るより遥かに雄弁に、物語はそこにある。
”ララのAI”が”マザー”を逆ハックして正気に返すように、ララもコンプレックスの対象である家族と社会に向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
均質化された価値観で自分を窒息させて、プライドを殺す社会。そこから逃げ出した彼女は、堂々変身を晒すことで家と世界を乗り越えていく。
地球では秘す英雄性を、ここでは誇る。
後に星空連合の追求を逃れるべく、再び故郷を去っていくとしても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
ララは冒険で手に入れたものを堂々吠えて、社会から切り離された自分がどれだけ大きくなったかを、家族と社会に問う。
制度に流されるまま13歳で”大人”になった少女に、成熟と責任がずっしり満ちる。
社会規範にマッチした成功者として、表彰され肯定されてきたロロが、妹が自分の想像力を超えてきたことを是認し、新しい可能性にイマジネーションを刺激されている様子も良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
つーかもっと均質化されてると思ったら、思いの外情があって柔軟な青年だったな兄貴…そら優秀だわ。
コンプレックス対象の兄が肯定してくれることで、ララは上手く馴染めなかった規範に同化することなく、自分を対置できる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
”プリキュアになったララ”のまま、自分の在り方を強制し、最下層と判断した社会と戦うことが出来る。
今回のお話は、ララが地球生活で獲得した自我を、社会に問う戦いでもある
サマーン全体(と、その背後にいる星空連合)はまだ、”プリキュアになったララ”を肯定してくれない。つーかククがヤバすぎる…良いんですかマザー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
プリキュアとして勝利した後、いそいそと星を後にする娘を、家族は特別扱いで見逃す。効率化社会にも、まだ情は残っている。
未開惑星を心配する母に、『ララはもう大人ルン!』と胸を張った姿を見て、少し泣いてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
序盤では頑なさの象徴だった『ララは大人』が、今回の家族と社会との対峙を経て、全く別の意味に逆転した瞬間だったと思う。抑圧に胸を貼れるだけの経験と信念を、彼女は積み上げたのだ。
システムが規定する年齢に達すること、あるいはシステムが用意する規範に順応すること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
それが”大人”の資格ではなく、誇れる自分を闘争の中もぎ取って吠えること、強い自我を下支えする関係性を手に入れることが大事。
『大人になること』へのアンサーを一つ、作品が返すエピソードだった。
今回の話でララは家族とはコンプレックスを解消し、その背後にあるサマーン規範との向き合い方も整った。しかしサマーン側はまだ、ララをどう御するか決めきれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
ここら辺、次回の星空連合回で色々見えてくんだろうな、と思う。
家、星、宇宙。SF的スケールを生かして、社会構造が多層だ…。
ララは家族が当然視するサマーンの規範を飲み込んで、デカいイマジネーションで逆に飲み込んだ。規範に背くプリキュアを、家族は肯定し送り出した。サマーンの均質化に抵抗したわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
”ララのAI”もマザーによるハックに抵抗して、パーソナライズされた自我を保つ。冒険に無事復帰する。
”ララのAI”と再開するシーンが好きで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
認識コードを読み上げた時、ララはAIが死んでる事実と向き合って、ゼロから関係を作り直す覚悟を決めてたんだと思う。”大人”である。
しかし機械の魔法は都合のいい奇跡を引っ張ってきて、”ララのAI”は死なない。プリキュアだもん、それがベストよ。
死なないほうが当然良いけど、終わってしまってもなお始め直すことが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
そういうタフさがララにあったのは、やっぱ地球で色々学んで、自分を作った結果だと思う。”死”という最大級のハッキングにも、崩れず自分を保ち続ける。そういうタフさが、何処から生まれてくるのか。
慌ただしく出港してしまったので、サマーンが今回の社会構造ハックを、顕にされた脆弱性をどう反省していくかは書かれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
(ララのように)未開惑星・地球の雑多さ、未完成さに学んで、ハックに抵抗する多様性を維持したまま、効率よい社会を編み直して欲しいところだ。
少なくとも、ララに密着する家族は地球で変わった家族を認めた。サマーンから離れてもなお、価値ある存在だと肯定してくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
そういう可能性を信じて、新たな自分を公開する勇気。まどかが先週見せた『嘘を付く優しさ』と併存する、パブリックな強さ。
そういうものが見れたのは、シリーズ全体の多様性としても良いことだったと思う。サマーンという、メインステージから切り離された特殊な舞台だからこそ可能な、公共性との戦いだったなぁ…面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
失敗を重ね、世界に”顔向け”出来なくなったアイワーンが、フードで顔を覆ってるのと良い対比よね…。
かくしてララは星の迷い子に戻るが、拗れた”家”との関係は見事に昇華された。ロケットと”ララのAI”を”家”にして、旅路は続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
残るカラーペンは一本。プリンセスの秩序が復活した後、物語はどう動くか。プリキュアを追う星空連合の狙いは。
プリキュア VS 社会の戦いは、まだまだ続く。次回も楽しみ。
追記 ロケットだってオシャレしたい!!
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
均質化された銀のロケットの中、滅茶苦茶目立つどピンクの勇姿。
”ララのAI”を積んだロケットが、異質だからこそハックに対抗できる今回は、外装を異質化するファッションの強さ、オシャレをする変身戦士としてのプリキュアの価値を、別角度から掘る話だったかな、とも思う。
スタプリはお洒落テーマではないので、あんま中軸には据えられないけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月1日
メイン消費者層の強い欲望として、『着飾ること』は大事であり続けて、だから変身グッズもパフュームやマニキュアを擬している。
そういう文脈を、鉄の躯体を桃に飾る戦い、個性化を力に変える展開で掘る。面白いSFだった。